Googleカスタム検索

私の好きな日本酒ブログ

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

Qchanpapa

  • 日本酒
無料ブログはココログ

蔵元を囲む会

2017年12月 8日 (金)

東大蔵元会の惣誉と喜多屋の酒の秘密をご紹介します

毎年10月の第3土曜日は東京大学の本郷キャンパスでホームカミングデイが開かれます。ホームカミングデイというのはどの大学でも行われているようですが、年に一度卒業生の交流を深めるのを目的としたイベントを行う日を言うようです。東大では講演会やシンポジウムなどの真面目なものから、東大オーケストラOBやOGによる室内楽演奏会や親と子供が楽しめる広場や東大落語会など気軽に参加できるイベントもたくさん開催されています。 

その中にお酒の好きな人には絶対見逃せない東大蔵元会という利き酒会のイベントがあります。これは東大出身または東大で教えている日本酒の蔵元の説明を聞きながら、その蔵のお酒を試飲できるイベントです。いつも安田講堂前の銀杏並木の所で開催されており、1杯100円から200円(30mlくらいかな)で自由に飲むことができます。この会には卒業生でなくてもだれでも参加できますが、卒業生が主体となっているためかあまり混んでいないので、酒好きの人には絶好の穴場のイベントです。 

今年はあいにく雨になってしまいましたので、屋外のイベントなので準備が大変そうでしたが、11時には予定通りオープンしていました。その時の写真を下に載せておきます。まだあまり人がいませんね。 

Dsc07662

今年の参加蔵は去年より1蔵増えて11蔵になっていました。会のメンバは下記の通りですが、今年は新政酒造、出羽桜酒造、金水晶酒造、大七酒造は他の仕事の関係で、本人が出席できずに代理人が来られていました。本人が参加していないとやっぱり寂しいですね。その代わり去年来られなかった喜多屋の社長の木下浩太郎さんと花の露の社長の冨安 拓良がお見えになっていました。 

1.わしの尾 代表取締役 工藤  (工学部2003年卒)  

2.新政酒造  代表取締役 佐藤 祐輔(文学部1999年卒)  

3.出羽桜酒造 代表取締役 仲野 益美(東大非常勤講師)  

4.金晶水酒造 常務取締役 斎藤 美幸(教養学部1988年卒)  

5.大七酒造   代表取締役 太田 英晴(法学部1982年卒)  

6.下越酒造   代表取締役 佐藤 俊一(農学部卒) 

7.惣誉酒造   代表取締役 河野 遵(経済学部1983年卒)             

8.武重本家酒造 代表取締役 武重 有正(工学部1981年卒) 

9.長龍酒造   代表取締役 飯田豊彦(経済学部卒1986年卒) 

10.喜多屋  代表取締役 木下浩太郎(農学部1987年卒) 

11.花の露  代表取締役 冨安 拓良 

東大蔵元会が発足したのは3年前でそんなに前のことではなく、僕はこの会に去年初めて参加したので、その時のことについては下記のブログにまとめましたので興味のある方はご覧ください。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-e423.html 

今年は僕の仕事の関係で1時間ほどしかいられなかったので、去年ほどの情報は得られませんでしたが、去年来られなかった蔵を中心に新しい情報だけを纏めてみることにしました。花の露とは初めてお会いしたのですが、時間をゆっくり取れなかったので、この蔵の紹介は来年にすることにします。 

1.惣誉酒造 

この蔵は栃木県の市貝町にありますが、市貝町はJR宇都宮駅から東へ10㎞程入ったところで、小貝川の最上流の人口12000人の小さな町です。創業は明治5年で、約150年弱の歴史を持つ蔵ですが、もともと江戸時代に滋賀県で酒造りをしていた蔵がここに出店として始まったそうです。どうしてこんな田舎町に滋賀からわざわざ出てきたのかはよくわかりませんが、鬼怒川の伏流水と冬場は厳しく冷え込むという土地が酒造りに向いていたからでしょうね。それ以降、地元に愛されるお酒造りを続けていて、今では3000石の生産量がありますが、そのほとんどを県内で消費してるそうです。それだけ地元の人に信頼される酒質を守っていたのでしょう。 

現在の社長は5代目の河野遵さんですが、1961年生まれで、1983年に東京大学経済学部を卒業された後、松下政経塾など色々なところを経験されたあと、1989年に蔵に戻って1995年に社長に就任しています。社長になってすぐやられたことは新しい杜氏の阿部孝男さんと協力して2001年に生酛造りを復活させたことです。生酛造りは酒母に乳酸を投入する速醸法が開発されるまでの酒母造りとしてに用いられた方法です。生酛造りは、蒸米と米麹を丁寧に櫂で磨り潰すことにより、自然の力で乳酸が程よくわいてくるのを待つ方法のために、速醸法に比べて酒母を造るのに手間と時間がかかるけれども、コクがあって、きりりとした酸と色々な旨みが出る味わい深いお酒になります。 

生酛造りは江戸時代に完成した伝統ある製法ですが、その技術に現代の技術をかみ合わせて開発したのが惣誉の生酛造りで、惣誉では生酛ルネッサンスと呼んで今ではその技術で多くの酒を造っています。そして今目指しているのは伝統と現代の技術を融合させた製法によりエレガントな味わいを出すお酒造りだそうです。 

こうして生まれたお酒の一つに東京大学コミュニケーっションセンター(UTCC)だけでしか販売していない「淡青 純米大吟醸」と「淡青特別純米」があります。淡青という色は今や東大のスクールカラーとなっていますが、それは第1回東大・京大対抗レガッタをやる際に抽選で東大のボートのオールの色がライトブルーに、京大のオールの色がダークブルーなったという経緯があります。そのスクールカラーの発祥の当事者となった東大ボート部のOBが懇親会で飲むお酒の「淡青」を造ろうということになり、惣誉の河野さんに依頼したというわけで、今年の9月15日に発売となりました。どんなお酒なのでしょうか。 

Dsc_0464
この2本が僕が購入した「淡青」で左が純米大吟醸、右が特別純米です。ラベルがおもしろいでしょう。青い水の上にはボートを漕ぐ様子が書かれていますが、これは東大ボート部が勝利した時のシーンを版画家の原田維夫さんが描いたものだそうです。この酒は東大の卒業生や関係者が同窓会や宴席の場で利用していただくとともに、母校への愛好心を醸成し同窓会活動の活性化につなげてほしいという思いで商品化したものだそうです。 

主な製品の概要を下記に示します。 

・ 淡青 純米大吟醸 生酛造り 

   原料米: 兵庫県東条と吉川(特A地区)産山田錦
   精米度: 45%精米
   酵 母: 協会7号、協会9号、協会14号
   アルコール度数:15%
   価 格: 3585円
4合瓶

・ 淡青 特別純米 生酛造り 

   原料米: 兵庫県吉川(特A地区)産山田錦
   精米度: 60%精米
   酵 母: 協会7号、協会9号、協会14号
   アルコール度数:15%
   価 格: 1720円 4合瓶
 

ここに示した数値ではどんなお酒はわからないと思いますので、このお酒のコンセプトを社長にお聞きしましたので、ご紹介します。今流行りのお酒はカプロン酸エチルの香りが強く、甘目でフレッシュなお酒が多いですが、このお酒は冷蔵保管しないと品質が維持できない欠点があるので、冷蔵庫に保管しなくても味がへこたれないこと、海外でもおいしく飲めるように熟成によってますます味が乗ってくること、味が複雑で深みがあって品の良い香りのある酒を目指したそうです。 

そのために凄いことをしています。それは3種類の酵母を使った別々の醪を造り、それに製造年度の違う2種類のお酒も含めて瓶に詰めるときにブレンドして、2回火入れをして作っているそうです。そこまで気合を入れているお酒とは思いませんでした。 

特別純米を飲んでみると、強くはないけど品のある香りとともに口に含むとしっかりした味わいがあるけれども後味は少し辛みを感じながら切れていくお酒でした。日本酒度は4で。グルコース濃度を1.1~1.2に抑えて酸度1.8にして切れの良さを出しているようですが、それほど強く酸は感じませんでした。これは生酛造りの味わいのある酸のせいではないかなと思いました。 

純米大吟醸の方は香りは全く同じですが、口に含んだ時の甘みが違いました。グルコース濃度を1.8まで上げてうまみを出していますが、精米度を上げることによる奇麗さがあるので、後味の切れと余韻に差が出るようです。やはり僕がこっちのほうが好きだな。 

こんなに気合を入れたお酒ですから、ぜひ皆さん呑んでください。飲む価値のあるお酒です。最後に社長にこのお酒を持ってもらいました。見てください。お酒が違いますね。それは淡青は東大のUTCCでしか販売できないお酒なので、この蔵元会には持ってこれないので、中身は同じですが、ラベルに惣誉と書いてあるお酒を持ってきたそうです。 

Dsc07667_2

 

2.喜多屋 

この蔵は九州一の穀倉地帯の南にある八女市にあります。八女市と言ってよくわかりませんが、久留米市から南に十数km南に下がったところのようです。江戸時代末期の文政年間に米屋をしていた木下家の長男の斉吉が喜多屋という酒屋を始めたようです。喜多屋という名は酒を通して多くの人に喜びを与えたいという気持ちから付けられたようです。その斉吉さんは酒造りに情熱を燃やし、自ら蔵に入ってさけつくりをしたので、「主人自ら酒造りをすべし」が家憲となっているそうですからすごいですね。 

現在は7代目の木下宏太郎さんが社長として蔵を引っ張ていますが、宏太郎さんの時代になっても家憲は守り継いでおり、造りたいお酒のコンセプトを自分で考えるだけでなく、その作り方のレシピも考え、蔵人に指導をするなど、酒造りのすべてをコントロールしているそうです。この会社は全員社員なので、昔の杜氏制度はやめていますが、製造責任者は当然いますが、その人を含めて蔵人全員で技術を共有してお互いの役割をはっきり認識したたうえで酒造りをするように努力しているそうです。 

常に今までの常識を打ち破って新しい酒造りにチャレンジして、今までになかった理想のお酒を目指しているそうですが。それはどんなお酒なのでしょうか。それは芳醇でかつ透明感のあるお酒、つまり芳醇さと透明感を両立させたお酒を追及しているそうです。それは別の言葉でいえば、優しく、丸く膨らんで、余韻が奇麗に消えていく酒だそうです。その追及には終わりはないですが、2013年にその成果が実を結んだようです。それは2013年のIWCの酒部門に出品した「大吟醸 極上 喜多屋」が日本酒5部門の中で最優秀賞を獲得したからです。つまり世界一と評価されたのです。社長のお話では世界一になったことが重要ではなく、賞をいただいた時の表彰のコメントが「Intensity and Purity]ということで、目指した味わいが評価されたことが非常にうれしかったそうです。 

宏太郎さんはどんな人なのでしょうか。1962年に八女市に生まれ、久留米大学付属高等学校を卒業した後、東京大学農芸化学科に入学されています。一浪して1回留年したので卒業は1987年だそうです。その後5年間宝酒造で修業したあと、1992年に蔵にもどっています。そのあと、東京の醸造研究所に2年3か月勉強したそうですが、その時学んだことがその後一番役に立っているそうです。特にその時の先生であった岩野君夫さんを師と仰ぎ、一番の弟子と自称するほど、先生の理論や考え方を身に着け酒造りに生かしているそうです。先生はその後秋田県立大学の教授として赴任しましたが、そちらにもよく出かけて教わったそうです。その先生が言われた言葉に、「いいお酒は「残らず寂しからず」と言われており、それを自分流に解釈して現在の理想の酒の姿としているそうです。 

お話を聞くととても考え方がはっきりして、明快にお話しされる方で、しかも自信たっぷりのお話されるので、ついつい引き込まれてしまいますね。 

Dsc07675_2
社長になったのは1999年ですが、自ら蔵に入って色々な改革をしています。現在の蔵の生産高は4700石で、そのうちの特定名称酒は3000石でその平均精米度は54%ですから非常に質の高いお酒を中心においていることが判ります。これだけの生産をするには、ある程度の機械化を進める必要がありますが、伝統的な作りの良いところはきちっと抑えたうえで機械化しているようで、蓋麹法の良さをきちっと踏まえた独自の自動製麹装置を開発しても、蔵人全員に、蓋麹法をマスターするように指導しているそうです。 

こうやって平成9年には最新鋭の設備を備えた新工場を建設し、さらなる品質向上に努め最近は海外への輸出にも力を入れすでに販売している国は17か国にもなっているそうです。その喜多屋が蔵元会にはどんなお酒を持ってきていただけたのでしょうか。 

持ってきていただいたのは下の写真の3本です。この写真ではよくわからないので、お酒の紹介の時には特別純米 蒼田はインターネットから借用し、他の二本は購入したものを家で撮ったものを載せました。 

Dsc07674

それからお酒の特徴は社長が語ってくれましたが、酒質については説明がなかったので日本酒サービス研究会からインターネットで載せていたものを書き写して載せました。これからどうして社長が説明したお酒になったかも考えてみました。 

<特別純米酒 蒼田 山廃仕込み 

Skitaya05_2原料米:福岡県産山田錦60%精米
ALC度数:15~16
日本酒度:-3~ー1
酸   度:1.9~2.1
アミノ酸度:1.8
 

このお酒は山廃仕込みが出す酸味を活かした肉料理に合わせたフルーティな日本酒を目指したお酒です。酵母は18号と9号を使っているそうです。18号の華やかなかおりと9号の発酵力の強さを活かすためですが、同時使用のブレンドではなく、18号と9号を時間差でいれるそうです 

飲んでみるとフルーティだけど旨みも酸味もあり、あまり飲んだことのないバランスのお酒でした。これは酒質の数字を見ても良くわかりますね。食中酒としての甘みを最初に感じさせながら、中盤で旨みと酸をバランスさせて切れを出しながら、味も濃い料理にも合わせられるお酒になっているようです。 

純米大吟醸 喜多屋 50%磨き> 

Dsc_0466原料米:山田錦と雄町50%精米
ALC度数:15~16
日本酒度:+2~+4
酸   度:1.2~1.4
アミノ酸度:1.5
 

このお酒は山田錦の柔らかい味の良さと雄町の押しの強さをうまく引き出したお酒を目指したものです。山田錦と雄町の使用量の日は6:4だそうです。麹米と掛米を別のお米を使うことはよくありますが、2つの原料の良さを引き出すためには、そのやり方ではできないそうです。具体的には酒母、初添、仲添、留添で原料米の味が引き出せるように原料米の比率を変えるそうです。難しそうですね。 

酵母は自社酵母ですが、M310酵母をベースとしとしていて、大吟醸系は皆この酵母を使っているそうです。 

飲んでみるとフルーティな上品な香りの中に、複雑な味わいを感じさせるお酒になっていました。あまり酸味を上げない代わりに、甘みを少し抑えてる割にはアミノ酸を少し高めに持ってきているのは適度な旨みを持たせて、食事に合うお酒を狙ったのではないでしょうか。 

<大吟醸 極醸 喜多屋 

Dsc_0469原料米:福岡県産山田錦35%精米
ALC度数:16~17
日本酒度:+3~+5
酸   度:1.0~1.2
アミノ酸度:0.9
 

このお酒はIWC2013で最優秀賞を取ったお酒で、芳醇でありながら透明感を持たせたお酒を狙ったものです。 

飲んでみると上品な香りと共に柔らかく甘みが広がって口の中にすっと入っていき、その後ぱっと膨らんで消えていくお酒でした。確かに芳醇な味を色々感じるけど、最後にそれが一つになって消えていくのが透明感につながるのでしょう 

酒質から見るとちょっと辛口で酸味が少なく、アミノ酸を抑えて奇麗さを出す大吟醸の標準的な数字ですが、数字には見えない秘密があるのでしょう。これについての蔵しい説明はありませんでしたが、今までの経験の中で天から降りてきたような手法を思いつき出来たものだそうです。その手法はよくわからないけど、確かに一度飲む価値は絶対にあるお酒であることは間違いないです。

これで今回の東大蔵元会のお酒の紹介は終わりまが、両方の蔵とも今までにないお酒を造ろうという気概を感じました。これが現状に満足しない東大蔵の魂かな?

最後に新しく参加された花の露 社長の冨安 拓良のお写真を載せて終わりにします。来年に詳しく紹介しますので必ず来てください。待っています。

Dsc07677_2
 にほんブログ村 酒ブログ 日本酒・地酒へご覧になったら、この日本酒マークをクリックしていただくとブログ村のページに戻ります。これでポイントが増えます。携帯やスマートフォーンでご覧の方はMobileModeではクリックしてもポイントは増えませんので、PC-Modeにしてからクリックしてください。よろしくお願いします。

2017年11月20日 (月)

蒼天伝はさわやかでも味のあるお酒でした。

10月1日の日本酒の日に南澤正昭さんが企画している今年15回目の「蔵と語る会」として、品川区旗の台にある小さな呑み屋・ぶちで蒼天伝(男山本店)の柏杜氏を囲むが開催されましたので、参加してきました。蒼天伝は宮城県のお酒だということは知っていましたが、今まであまり飲んだことがないけど、最近IWC酒部門で2年連続GOLDメダルを受賞したり、ワイングラスでおいしい日本酒アワード2016で最高金賞を取ったり、2016年にはANAの国際線のファーストクラスのお酒選ばれるなど、輝かしい結果を出している蔵だと知り、その秘密を少しでも知りたいと思い参加しました

Dsc_0229_2

呑み屋・ぶちさんは去年オープンしたばかりの新しいお店ですが、店長の岩渕英和(いわぶちひでかす)さんは石巻市出身で、東京でお酒を勉強しているときに蒼天伝を知り気に入って、お店では蒼天伝をメインに扱っているそうで、蒼天伝なしではお店が成り立たないほど重要なお酒だそうです。 

カウンターの後ろから覗いている方が岩渕さんで、手前の方が杜氏の柏大輔さんです。

Dsc_0239_2

このお酒を提供している酒屋さんは南小岩にある「なだや酒店」で、その3代目として活躍している渡部知佳さんがこられていて、この日もこのお店で囲っていたお酒を含めて色々提供していただきました。とても元気で明るい酒屋さんです。 

右から柏大輔さん、南澤正昭さん、渡部知佳さんです。 

Dsc_0236

では早速まず蔵の紹介をいたします。 

この蔵は宮城県の気仙沼にありますが、創業は大正元年ですから比較的新しい蔵です。気仙沼は東北屈指の漁港で、明治時代から港に出入りする漁船が増えて酒の需要も上がってきたのを機会に、創業者・菅原昭治が酒造免許を取り、京都伏見の岩清水八幡宮(別名・男山八幡宮)に大願成就の御礼祈願に行った時に、八幡宮宮司より拝受した名前が伏見男山です。ですから、気仙沼にありながら伏見男山が代表銘柄となっております。 

その後、気仙沼のカツオやサンマを食べながら飲むお酒として地元中心にお酒を造り続けてきましたが、伏見男山が京都のお酒と間違われたり、男山と名がつくお酒が全国に10件くらいあり、他のお酒と混同してしまうということがあったので、現在の4代目の社長の菅原明彦さんが、約15年前に気仙沼を表現する名前にかえることを思いつきました。 

名前だけでなく、気仙沼のお酒らしい味に変えることも行いましたが、まず行ったのが「蒼天伝」という名前つけでした。気仙沼の自然の素晴らしさをお酒にこめて表現しようと、気仙沼の青い空、青い海を表す「蒼天伝」としたそうです。 

「蒼天伝」とするからにはさわやかさがあり、香り控えめだけど味わいのあるお酒造りを目指しましたが、開発を初めて最初の5年はなかなか思うような味を造ることができなかったそうです。杜氏が南部杜氏の鎌田勝平さんに代わってやっと狙い通りのお酒になり始めたのが2007年だったそうです。それを切っ掛けに「蒼天伝」のPRをするために、カツオが水揚げされる父の日に「蒼天伝おいしんぼの会」を開催して、やっと名前が知られるようになった時に起きたのが東日本大震災でした。 

それは2011年の3月11日のことです。海沿いにあった国の登録有形文化財にもなっていた木造3階建ての本社は地震では壊れなかったのですが、後から来た津波で1、2階部分全壊流失する被害を受けたそうです。下の写真が被害前の本社の建物と震災後の建物です。 

Otokoyama4

木造には思えない風格のある建物ですが、一階が構造的に弱そうなので、つぶれてしまったのでしょうね。 

Img10

本社近くにあった資材置き場や瓶詰めラインが全部浸水したそうですが、幸い酒蔵の方は30mくらい離れたところにあったので、津波は門から数mまで迫ったけれど、直接的な被害は受けなかったそうです。蔵には出荷前のお酒が2タンク残っていたので、翌日から作業を開催しましたが、停電のため計測装置が動かない中、タンクの温度管理だけはしたそうです。 

その時のことを柏杜氏はよく覚えていて、社員の中には家族を亡くした人も大勢いるし、町はほとんど全壊状態で多くのお客さんを失っているので、これで酒造りは終わったなと感じたそうです。その中で社長が何としてでも残った酒をすぐにでも世に出したいと言われた時は、なんでこんな時に酒を出しても仕方がないと反発をしながら、しぶしぶ従ったそうです。でも、町が落ち着いてくると周りから酒を出してくれとの要望も出てきたので、周り町がまだ停電の中、瓶詰めするために発電機で電気を起こして使ったけれども、周りの人から何も文句を言われないので、ますますやらざるを得ない状況になったそうです。 

2つのタンクのお酒も夏にはすべて売り切ったものですから、お酒が無くなったたので初めて夏場の仕込みにチャレンジしたそうです。その時柏さんが副杜氏で鎌田さんが杜氏でしたが、二人とも全く経験のない夏仕込みを、いろいろ知恵を絞って(たとえは瓶貯蔵の冷蔵庫で酒米を冷却するなど)冬仕込みに近い環境で行い、思いのほかうまく成功したそうで、この経験がその後の酒造りの勉強になったそうです。 

鎌田杜氏は岩手県からくる季節対応の南部杜氏でしたが、2012年の冬の仕込みをした後で退社することになり、2013年からは副杜氏の柏さんが杜氏となり、酒造りの全責任を負うことになったそうです。柏さんのお父さんは気仙沼の遠洋漁業をするひとでしたが、蔵と密接な方だったようで、息子の大輔さんは大学を出られた後すぐに蔵で酒造りに従事したようです。特に蒼天伝の開発はすべてを任されたので、その思い入れは強く、蒼天伝の名前もラベルの文字もすべて柏さんの発案で、たまたま父が書道を勉強していたので、外部に頼むお金もなかったことから、父にラベルの字を書いてもらったとのことでした。 

Dsc_0241
柏さんとは初めてお会いしたのですが、名杜氏のような威厳のある雰囲気の方ではなく、とても謙虚で自分は何も知らない素人の杜氏ですと言いながら、好奇心旺盛で他の人の良いところは何でもすぐ取り入れる柔軟性のある方のように思えました。酒造りそのものは鎌田杜氏の技術をしっかり受け継いでいるだけでなく、酒造りのセンスがある方で、独自で常に改善させる努力をしているように思いました。 

その証拠に杜氏になった翌年の2014年には数々の賞をいただき、さらに前述した輝かしい賞を取るまでに至っているのは、単なる偶然ではないと思います。会の終わりに柏さんの今後の夢は何ですかとお聞きしたら、早く杜氏をやめることだと言われたのには驚きました。それはほとんど冗談だとは思いますが、杜氏への責任の重さをひしひしと感じてるからだと思います。柏さんのブログを見ますと自転車のロードレースがお好きなようで、趣味が色々あってそちらに時間を割きたいのかもしれませんね。そのためには後継者の育成が最大の課題ではないでしょうか。当分は頑張って良いお酒を造くるしかないですね。 

今は震災からもう6年が経過しましたが、蔵の生産量は以前と同じ600石位だそうです。良い話としては、全壊した本社が近いうちに震災前と同じ形で復興すると聞きました。いつできるのでしょうね。楽しみです。 

この会は下のような雰囲気で開催されました。こじんまりとしているけどいい雰囲気ですよね。 

Dsc_0252_3

では早速柏さんが造ったお酒を紹介しましょう。この会はお話を聞きやすいというメリットはあるのですが、僕のような飲んだお酒を1本1本写真に撮りたいと思う者にとってはなかなかそのチャンスがなかったので、一本一本の写真は「はせがわ酒店」のホームページからコピーさせていただきました。まず最後に取った全体写真をお見せします。 

Dsc_0253_2

右から下の順番に並んでいて、この順番で飲んでいきました。 

・ 純米大吟醸 蔵の華45%精米
・ 特別純米 蔵の華55%精米
・ 美禄 春 山田錦
・ 美禄 夏 山田錦
・ 美禄 秋 雄町50%精米
・ 純米吟醸 蔵の華50%精米
・ 特別純米 生 蔵の華55%精米
・ 美禄 冬 26BY 美山錦
 

1. 純米大吟醸 蔵の華45%精米 

Dsc_0242このお酒は宮城県産の蔵の華45%精米の純米大吟醸で、酵母は宮城県のB酵母だそうです。このお酒はこの蔵で最も高級なお酒で桐箱入りで1升税込みで5400円です。桐箱なしでも4500円もします。 

1月にタンク2本作って、2月に絞って瓶燗火入れを1回行たお酒です。 

飲んでみると香りは華やかですが、それほど強くはなく、柔らかで繊細な味わいが素敵なお酒でした。1回火入れのお酒でしたが、フレッシュ感があり、まるで生酒のようでした。どんな火入れをしているかは聞きませんでしたが、火入れの腕もしっかりしていると思われました。 

この蔵の仕込み水は超軟水で発酵力は弱いけれど、うまく作ると繊細な良いお酒になるそうです。確かにその通りのお酒でした。 

2. 特別純米 蔵の華55%精米 

32223115このお酒は蔵の華55%精米の特別純米で酵母は宮城マイ酵母です。 

この特別純米は15年まえに蒼天伝として初めて作った蔵の定番のお酒ですが、毎年少しずつ進化しているようです。 

飲んでみると香りは華やかではないけど落ち着いたさわやかな香りで、酸味があって甘みと酸味のバランスがいい食中酒と言ったお酒でした。 

酸度は2.0くらいで日本酒度は±0くらいにしているそうです。なかなかいいお酒です。価格は1升税込みで2808円ですから高くも安くもない手ごろな価格ですね。 

<美禄シリーズ> 

美禄シリーズは県外のお米を使ったお酒のシリーズで、「酒は天の美禄」ということわざがあるように、美禄には「すばらしい贈り物」という意味があるそうです。蒼天伝の美禄は春・夏・秋・冬の四季に合わせて4回だけ出荷するもので、季節ごとに味わいを変えて出す旬なお酒なので、まさに日本の風土からの「すばらしい贈り物」と感じてほしいそうです。美禄の具体例を下記にしまします。美禄を都内で取り扱っているのは「なだや」と「長谷川酒店」だけだそうです。 

・ 蒼天伝 美禄 春 山田錦 搾ってそのまま瓶詰めした生原酒 

・ 蒼天伝 美禄 夏 山田錦 夏まで熟成させた1回火入れの酒 

・ 蒼天伝 美禄 秋 雄町らしさを出すため秋まで熟成した酒 

・ 蒼天伝 美禄 冬 美山錦  冬の生貯蔵酒

3.蒼天伝 美禄 春 山田錦55%精米

Photo_6
山田錦55%精米、酵母は宮城マイ酵母を使った特別純米酒で、澱がらみのしぼりたての生原酒で価格は1升3132円だそうです。 

蔵の華の特別純米とと同じ酵母のお酒ですが、飲んでみると酸味は同じくらいですが少し甘みを出している感じでした。でも熟成したせいか、少し丸みを感じました。このお酒は半年以上熟成しているので、半年たった効果がどのくらいあるかは比較しないとわからないですね。 

美禄シリーズはラベルに色のついた十字線があります。春はその機構を表すのかピンク色ですね。 

4.蒼天伝 美禄 夏 山田錦55%精米

06111631_5579396936a52
このお酒は美禄の春と同じ時期に別のタンクで作った特別純米で、お米の精米度も酵母も同じですが、1回火入れをして、瓶詰めの状態で-2℃の冷蔵庫で熟成したお酒です 

春のようなフレッシュさはなくなっているけれども、熟成の良さが出ていて、口に含んだ時にぱっと横に膨らむような味わいと切れの良さがあって、とても良いバランスの酒になっていました。これはなかなかいいです。価格は春の同じ1升3132円です。 

ラベルは夏らしく白色をバックに青い色の十字線が入っています。

 

5.蒼天伝 美禄 秋 雄町50%精米 

Photo_5
このお酒は岡山県産の雄町50%精米の純米吟醸で酵母は9号酵母を使っているそうで、美禄シリーズではもっとの新しいお酒です。価格は1升3600円です。お米の値段が高いので割高になっています。 

飲んでみたら香りはそれほど華やかではないし、雄町にしてはふくらみが少ないし、切れがシャープで少し雄町らしくがないと感じました。ぜひこの蔵らしい奇麗さがあって、余韻が楽しめるようなお酒を造ってもらいたい気がしました。 

ラベルは秋らしく紅葉色の十字線が入っていました。 

6. 純米吟醸 蔵の華50%精米 

32222961_3このお酒は蔵の華50%精米の純米吟醸で、酵母は純米大吟醸と同じ宮城B酵母を使っています。造りは純米大吟醸とほぼ同じですが、純米大吟醸は600kg仕込みで、純米吟醸は900㎏仕込みです。でも当然造りの細かいところは違うそうです。 

でも価格は大幅に違っていて、純米大吟醸は木箱なしでも1升4500円しますが、この純米吟醸は1升3085円ととても割安です。 

飲んでみると香りは純米大吟醸と同じさわやかな香りがして、味は甘みと酸味のバランスが良くとても良いお酒でした。これほど価格が違うのなら純米吟醸でいい気がしました。 

特別純米と同じ色の文字ですが、瓶が緑から茶になっていました。 

7. 特別純米 生酒 

このお酒はNO.2の特別純米の生酒で「なだや酒店」オリジナルの限定200本のお酒です。お店で残っていた最後の1本です。ですから写真はありません。全体写真から見てください。 

飲んでみると火入れに比べると口に含んだ時の甘みが強く感じます。香りにフレッシュ感があるけれども、後味の感じは同じでした。火入れは全体に柔らかいけど、生酒は尖った感じがします。どちらが好き化は好みの問題ですね。 

8. 美禄 冬 26BY 美山錦55%精米 

Photo_7
このお酒は美禄に冬バージョンですから美山錦55%精米の特別純米のはずですが未確認です。26BYの酒でなだや酒店の2℃の冷蔵庫で年、その後5℃の冷蔵庫で1年熟成したもので、たまたま冷蔵庫の中で見つけた最後の1本だそうです。 

美禄の冬を飲んだことがないので、新酒との比較はできませんが、このお酒は凄いお酒でした。飲んでみると当たりがすごく柔らかくて含んだ時の味わいがフラットで天鵞絨のようにスルーっと入ってきます。こんなにうまく熟成しているのは、酒質が良いからだと思います。こんなお酒がいつも飲めたらうれしいですね。 

この酒のラベルは文字が鼠色で、十字の線薄い青色でした。 

以上で飲んだお酒の紹介を終わります。

<まとめ> 

今回初めて蒼天伝シリーズをいろいろ飲みましたが、この蔵のお酒の味は非常に安定していて、あたりが柔らかくて軽い感じですが、しっかりと味を乗せてくる飲みやすいお酒でした。 

造りの特徴はどこにあるのですかと柏杜氏にお聞きしたら、一番大切なのは原料処理で米の特徴に合わせて丁寧に吸水量を管理することで、やればやっただけの結果がついてくるとのことでした。

柏杜氏は謙遜していますが、とても前向きにチャレンジされているのでこれからが楽しみな蔵ですね。
 

最後にこの会の関係者がわっと騒いでいるお姿をも見せしましょう。なだやの渡部さんが一番乗っているみたいですね。

Dsc_0250

南澤さんありがとうございました。また面白い企画がありましたら、教えてください。

にほんブログ村 酒ブログ 日本酒・地酒へ ←ご覧になったら、この日本酒マークをクリックしていただくとブログ村のページに戻ります。これでポイントが増えます。携帯やスマートフォーンでご覧の方はMobileModeではクリックしてもポイントは増えませんので、PC-Modeにしてからクリックしてください。よろしくお願いします。

2017年10月29日 (日)

万齢と福祝の蔵元の会はとても楽しかったよ

先月錦糸町のある居酒屋の「だれやめ」で、万齢を醸している小松酒造の社長小松大祐さんと福祝を醸している藤平酒造の常務取締役の藤平淳三さんをお呼びしての会が開かれましたので、参加してきました。 

この会は僕の酒飲み友達のお誘いで行ってきたのですが、「だれやめ」というお店は知らなかったけど、こじんまりとしたお店と聞いていましたが、2蔵もお呼びするのはなかなかできないことで、どんなお店なのか興味津々でお邪魔しました。お店は錦糸町の南口から南へ歩いて3分の所にありました。 

Dsc_0142

お邪魔して驚きました。本当に小さなお店でカウンタと奥の小さな部屋でたった10人程度しか入らないこじっまりの店ですが、大変こだわりうを感じるお店でした。店長は福永健太さんで、大学を卒業後、宮内庁御用達の料理師会とかよろずや料理師会などの修業をされ、現在のお店「小さな蔵だれやめ」を持ったそうです。だれやめとは鹿児島弁で晩酌をするという意味だそうです。「小さな蔵」と銘打つだけあって、色々な蔵とのつながりがあるようで、この会も10回目を迎えたそうです。凄いところに来たな・・・ 

Dsc_0144

この方が店長の福永さんです。にこやかのお顔の中に何かこだわりを感じますよね。 

Dsc_0202

福永さんのこだわりに後で凄いものをお見せしますが、カウンターの前にある骨付きの豚のハムですが、2年がかりで作るそうですが、こんなものがお店のカウンターに置いてあるだけでも驚きです。 

Dsc_0146

本日のお刺身はひがしものマグロの赤身の塊です。大間の本マグロの半額で買えるそうですがそれでも8000円/kgするそうです。 

Dsc_0157

 マグロの塊をガスバーナーで表面を炙っていました。今度僕もやってみようかな。

Dsc_0161

今回は万齢の小松社長と福祝の淳三常務さんおお二人をお迎えしましたが、このお二人に対してお客様がたった6人という超こじんまりの会でした。 

<仕込み水に違いによるご飯と出汁の差> 

福永店長が特別なものを出していただきました。それは小松酒造の仕込み水と藤平酒造の仕込み水を使ったご飯と昆布だし汁でした。お米はひとめぼれで、水加減をまったく同じで炊いたものと昆布の量とお塩も量を同じにした出汁だそうです。白米おにぎりは下の写真ですが、お吸い物の写真を撮り忘れました。 

Dsc_0147

小松酒造の仕込み水は敷地内の130mの井戸から出た軟水で、福祝の仕込み水は敷地内の600mの井戸からとった中硬水だそうです。驚いたことに仕込み水だけで味が変わるのです。 

 ・ 昆布だし: 小松酒造より福祝の方が昆布の味が良く出ていました。福永さんのコメントではかつおだしは小松酒造の方があっているかもとの話でした。 

 ・ 白米ご飯 : 福祝の方が全体に柔らかく、小松酒造の方が表面が硬い感じがしました。味の差はわかりませんでした。 

いずれにしても仕込み水によって酒の味が変わるということはよく聞きますが、ご飯や出汁までも変わるとは驚きでした。 

では蔵の紹介と飲んだお酒の紹介に入ります。 

<福祝 藤平酒造(とうへいしゅぞう)> 

この蔵は千葉県の久留里市内にあり、久留里線の久留里駅から歩いて数分の所にあります。もともと城下町として栄えたところで、平成の名水100選に選ばれるほどの名水が出るので、この小さな町に昔は多くの蔵があったというほど酒造りが盛んなところです。 

創業は享保元年ですから1716年ですからいまから約300年も前のことです。もともと藤久盛(とうきゅうさかり)というブランドのお酒を造っていましたが、淳三さんのお父さんがおめでたい行事には必ず清酒が飲まれていたので、七福神の福とお祝いを重ねた福祝という銘柄にしたそうです。その父は昭和55年に亡くなったそうで、その後母の恵子さんが社長となっています。この蔵には南部杜氏がおられましたが、15年前から息子3兄弟だけで酒造りをしています。 

Dsc_0171

長男の和也さんが経営を担当、次男の典久さんが醸造を担当、3男の淳三さんが営業を担当していますが、酒造りの方針は3人が議論をして決め、仕込みの時には3人が力を合わせて酒つくりをするそうです。今年は一人蔵人が増えて4人で行っているそうですが、蔵の生産量はまだ320石だそうです。 酒造りは蔵におられた高橋杜氏に指導を受けただけで、特別な修業はしていないそうです。

<万齢 小松酒造> 

小松社長とは3年前の八芳園の槐樹で日本酒の会をやって、その時のブログに小松さんの蔵と小松さんの経歴について詳しく紹介していますので、下記のURLをクリックしてご覧ください。万齢は長生きをしてもらいたいという意味だそうです 

槐樹:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-5858.html 

Dsc_0170_2

 小松酒造の現在の生産量は350石に増加していますが、400石以上にはしないそうです。それは小松さんが余裕をもって酒造りができる限界だからだそうです。この会の時にお話になったロマネコンティの夢についてお聞きしたら、今もそれを目指しているそうです。具体的には生産量は増やさず、価値の高い酒を造って多少高くてもお客様が納得して買っていただく酒造りを目指しているそうです。この考えの底辺にはこれからは日本酒の幅を広げていかないと日本酒業界全体が低下してしまう恐れがあると考えておられるからです。個性的なお酒を造りには、奇麗すぎる環境では作れないので、個性的なお酒を造れる環境整備も大切だと考えておられるようです。 

小松さんを紹介するうえで外せないイベントがあります。それは小松さんが九州の清酒協議会の会長の時に開催した九州S1グランプリです。それは九州の清酒を東京の人にPRするために企画したもので、決められたお食事をしながら九州のお酒を飲みどの酒が一番人気かを参加者の投票できめるというとてもユニークな企画です。その仕組みはとてもよく考えられていて、少し複雑なので詳細については、僕が書いた下記のブログを読んでください。 

S1グランプリhttp://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/s-1-1979.html 

このイベントにより確かに九州の地酒のPR度は高まりましたが、この企画の準備があまりにも大変なので2014年の第4回を最後に中止されたそうです。 

もう一つ今年新しいイベントがありました。それは佐賀県酒造組合が日本酒ダンスを造りYOUTUBEに流したのですが、見たことはありますか?佐賀県のほとんどの蔵の社長が出演して踊っていますが、小松さんも2回登場しています。下記にそのURLを書いておきますので、ご覧になって小松さんを見つけてください。うさぎと帽子が目印です。 

https://www.youtube.com/watch?v=5N4l_TklNlM 

それでは飲んだお酒の紹介をします。 

福祝が7種類 

Dsc_0189

 万齢が7種類でした 

Dsc_0186

Dsc_0149_3<福祝 特別純米 山田錦55> 

このお酒は福祝のお中でも一番売れ口のお酒で、日本酒度は+1、酸度1.4、アルコール度数15-16度で酵母は協会1501の1回火入れです。口に含むと旨みがふわっと広がりつつ消えていく、切れの良いお酒でした。 

<万齢 純米吟醸 夏の生 薄にごり> 

アルコール度数は16度で麹米が山田錦50%精米、掛米が雄町50%精米の純米吟醸です。夏酒として6月より販売しているお酒ですが、少しシュワシュワ感があって飲みやすいお酒でした。酵母は協会9号系の佐賀9号です。この蔵では基本的には、麹米に山田錦を使用するそうで、これはよりおいしいお酒を造る仕掛けの一つと思われます。 

Dsc_0153<福祝 純米 雄町60> 

このお酒は原料に全量雄町60%精米を使た純米酒で、この蔵としては初めて熊本酵母を使ったそうです。熊本酵母は協会9号の基になった酵母で、協会9号より香りは少ないがしっかり味を出せるそうです。 

飲んでみると確かに香りは少なめですが適度な旨みが出て、後味の余韻もあるので雄町の良さを引き出しているように思えました。 

<万齢 純米大吟醸 灯> 

このお酒は、お米は佐賀県の一般米の佐賀ひより45%精米の純米大吟醸です。酵母は協会9号と協会1801号のブレンドですから、ある程度フルーティな香りを出した純米大吟醸ですが、それほどカプの香りは強くないお酒でした。 

Dsc_0165_3<福祝 純米吟醸 彗星55> 

彗星というのは北海道で生まれた酒造好適米で、飯沼酒造より紹介されて使ったものですが、今まで使っていた五百万石は新酒の時は良いけど秋口まで引っ張っても味が伸びないので、少し熟成してもおいしくなるお米として使用したそうです。 

酵母は協会1801の前に開発された協会1601を使っているそうです。1601は1801に比べて発酵力が弱いけど奇麗な香りを出す酵母で、奇麗な味わいが出るそうです。飲んでみたら、軽い奇麗なカプロン酸と程よいうまみのバランスが良くなかなかいいお酒でした。 

<万齢 純米全量雄町 生原酒> 

この蔵では麹米を通常山田錦を使うのですが、このお酒は全量68%精米の雄町を使ったお酒で、酵母は佐賀9号を使った無濾過生原酒で、半年間生のまま熟成させたお酒です。 

飲んでみると確かにうまみは出てきていますが、僕には生熟成の香りが気になりましたが、小松さんのお話では海外で人気だそうです。 

Dsc_0174<福祝 中汲純米 生原酒> 

このお酒は山田錦55%精米の特別純米で、最初のお酒の中組を絞ったまますぐ瓶に詰めた生原酒です。日本酒度は+1で酸度は+1.4、アルコール度数17度でした。 

飲んでみると生の味とガス感が残っていて最初に香りと旨みがドンと膨らみすぐ消えるお酒でした。うまく生の良さを引き出していると思いました。

<万齢 特別純米 超辛口>
 

このお酒は小松酒造で一番売れているお酒で、ラベルが5月人形で有名な鍾馗様がついているのが特徴で、平成17BYに初めて作った辛口のお酒だそうです。お米は西海55%精米で、酵母は佐賀9号で日本酒度+9、酸度1.6の辛口ですが、鍾馗様は守り神と言われているせいか、蔵一番の売り上げを達成しているそうです。飲んでみるとスルッと口に入る飲みやすいお酒でした。 

Dsc_0193_2<万齢 秋の酒 特別純米超辛口> 

小松酒造では現在辛口シリーズを出していて、春は通常の辛口、夏は後味が少し甘い辛口、秋は雄町を使った辛口、冬はお燗がおいしい辛口だそうです。 

このお酒は秋に出している麹米が山田錦で、掛米が雄町55%精米の特別純米で日本酒度+9、酸度1.4のお酒です。秋まで熟成したお酒ですが、ひやおろしではないそうで、この蔵ではひやおろしは1回火入れ生詰め原酒を言い、このお酒は加水して15度のお酒だそうで、ひやおろしと呼んでいません。 

このお酒もなかなかいいとおおもいましたが、この蔵のお酒はやはり辛口系の方があっているかもしれませんね。 

福祝 山田錦 純米吟醸50    福祝 山田錦70 辛口純米 

01221105_54c05ad1ad578Dsc_0196

 

 <福祝 山田錦 純米吟醸50> 

山田錦50の純米吟醸は特別純米55の次に売れているお酒だそうです。酵母は協会1801号と金沢酵母(協会14号)とのブレンドだそうです。飲んでみるとカプロン酸の香りと酢酸イソアミル系の香りが混じって、さわやかな香りに仕上がっていて、口に含むと味わいがぱっと膨らんですぐにすっと消えていくお酒でした。 

<福祝 山田錦70 辛口純米> 

このお酒は山田錦70%精米の純米酒で、酵母は協会14号です。ですから飲んでみると酢酸イソアミル系のさわやかで穏やかな香りがします。精米度70%にしてはうまみも感じるし、とてもきれいに感じるお酒でした。 

<福祝 燗酒純米酒> 

Fuku_kan_1800_sq_5このお酒が最後に飲んだ福祝のお酒で、お燗して香りを立てないように香りの少ない酵母を使った上に完全発酵させるために、少し高温で自由に発酵させ最後に温度を下げる方法を取っているそうです。具体的には秋田県で開発した花酵母の協会1501を使ったそうです。 

飲んでみると昔流行ったお燗酒とは違った透明感がある上にふくらみも感じるお酒でした。なかなかのものでした 

これで福祝のお酒の説明は終わりますが、福祝の共通の味わいは香りはあまり立てずに、じわっと味のふくらみを中ほどに持って行って、余韻を持たせるような造りをしているように思えました。

全国新酒鑑評会で連続金賞を取ったころのお酒は香りが高くあまり膨らみがないように思えましたが、最近の造りはだいぶ変わってきているように思えましたし、かなり野心的なお酒造りに挑戦しているようなのでこれからが楽しみです。 

<万齢 純米吟醸 希(のぞみ)> 

Dsc_0948_3このお酒は3年前のS1グランプリに出品するために作ったお酒で、香りがあって甘口ですっきり飲めるお酒として造ったお酒です。それまでのS1グランプリで優勝したお酒はどれも甘口で、辛口のお酒はすぐに落選してきたのを見て、自分の蔵は辛口が主体でしたが、思い切って甘口にチャレンジしたそうです。 

S1グランプリはおつまみを食べてまだ口の中におつまみがある時にお酒を飲んだ場合は辛口は合わないそうですが、おつまみを食べ終わって飲む場合は辛口でもいいことが判ったそうです。 

お米は佐賀ひより50%精米で酵母は聞きませんでしたが、9号系と18号系のブレンドではないかと思います。日本酒度は-14もありますが、飲んでみるとそれほど甘さを感じませんでした。このお酒はS1グランプリで第4位になったそうですから成功したと言えますね。 

<のみりんこ> 

Dsc_0185このお酒は飲むための味醂を目指して造たものだそうです。本来味醂は呑むためのお酒で室町時代に造られた和酒でしたが、江戸時代に砂糖の代わりにお料理に使われるようになって明治時代に料理用として定着してしまったそうです。 

甘酒は日持ちしないで腐りやすいので、何とか腐らない甘酒を造るために焼酎の中で甘酒を造ることで出来たのが味醂です。飲む味醂と料理の味醂は何が違うかというと、料理の味醂は出来た味醂を一度火入れをして炭素ろ過したしたお酒を言って、飲む味醂は生のお酒だそうです。このお酒は平成25年から造っていますが、日本で初めてだそうです。 

日本酒度は-180ありアルコール度は14%ですが、食後の味醂は消化を助ける働きがあるそうです。 

以上で万齢のお酒の説明を終わります。最後に各蔵の今後目指している方向の説明がありましたので、これを紹介します。 

福祝:来年度は秋田のあきたこまちを使った高温山廃にチャレンジするそうです。また特Aの山田錦をを使ったお酒を11月に発売するそうです。 

万齢:日本酒は決して売れているわけではないので、今後一人でも多くの人を日本酒を飲む場に連れてきて日本酒のPRをしてもらいたい 

最後に小松大さん、祐藤平淳三さん、福永健太さんにお礼を申し上げます。

 にほんブログ村 酒ブログ 日本酒・地酒へ ←ご覧になったら、この日本酒マークをクリックしていただくとブログ村のページに戻ります。これでポイントが増えます。携帯やスマートフォーンでご覧の方はMobileModeではクリックしてもポイントは増えませんので、PC-Modeにしてからクリックしてください。よろしくお願いします。

2017年10月16日 (月)

七賢のお酒は最近すごく酒質が上がっています

調布市の仙川にある日本酒バーあふぎ山梨県の七賢を醸している山梨銘醸の専務取締役北原対馬さんをお呼びしての会が開かれましたので、参加してきました。お店のママが静岡県藤枝育ちなので、いつもは静岡の蔵をお呼びすることが多いのですが、今回はゆえあって、ママが去年七賢の蔵を訪問する機会があって、今日の日を迎えることになったそうです。お店の詳細は下記のブログを見てください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-c472.html 

最初にお店の前でのママと対馬さんのツーショットをお見せします。 

Dsc_0228_2

今回は早速蔵の紹介と北原対馬さんの紹介をいたします。蔵は山梨県の北杜市白州町のあります。この地はJR中央線の長浜駅から南西に2-3Km行った釜無川と尾白川の間に挟まれた場所にあり、甲斐駒ヶ岳からの伏流水が豊富に出る場所で、近くにはサントリーの白州蒸留所があります。ウイスキー蒸留所は近くに川があって冷気があふれていて豊富な水がある場所に作られますから、日本酒の醸造にも適したところだ思われます。 

山梨銘醸は元々長野県の信州・高遠で酒造業を営んでいた北原伊兵衛光義さんが分家をして白州の水のほれ込んで1750年にこの地で大中屋として創業したそうです。この大中屋の母屋を新築した際に、高遠城の城主よりお祝いに贈られた「竹林の七賢」の欄間にちなんで七賢という名がついたようです。その後10代目の北原庫三郎山梨銘醸に改組設立したのが大正14年ですが、蔵としては250年の歴史を持つ老舗の酒造会社と言えます。 

現在は12代目の北原兵庫さんが1977年に社長となって、長男の北原対馬さんが営業に、次男の北原亮庫さんが杜氏として、新し酒造りを営んでします。この地は昔は宿場町として栄え、ほとんど地元向けの普通酒や本醸造を主体とした酒造りをして、生産量も年間9000石を超えるほどだったそうです。兵庫さんの代に入り、特定名称酒への切り替えを始めるとともに、農業法人の「大中屋」の設立や直営レストランの開業などを取り組み、現在の礎を造っています。現在のの生産高は2500石です。 

でも、山梨銘醸が大きく変わったのは、北原兄弟が蔵に戻ってからと言われています。兄の対馬さんは青山学院大学の経営学部を卒業し、弟の亮庫さんは父と同じ東京農大の醸造学部を卒業し8年前の25才の時に蔵に戻って酒造りを始めたそうですが、蔵元が蔵人として酒造りを始めたのは今まで初めてのことだったそうです。そして、亮庫さんが杜氏になったのは今から6年まえの2011年だそうです。最初はあらゆることが問題だらけで、何から手を付けてよいか解らない状態でしたが、兄の対馬さんと話し合い、15年先までのビジョンを5年刻みで描いて、目指す酒質、体制、売り上げや利益まで考えたうえで、新しい設備投資をしたそうで、現在は大掛かりな改革が一段落したところだそうですが、まだまだやりたいことは色々あるそうです。 

それではお二人でどんな改革をしてきたのでしょうか。 

<目指す酒質の決定> 

  この蔵の仕込み水は硬度が20で、透明感があり、奇麗で潤いのある水ですが、ミネラルが少ないので、発酵力が弱く味の豊かなお酒にはなりにくいという欠点があります。でも逆にその特徴を生かした酒造りを目指すことにしたそうです。具体的には水の特徴である柔らかくてすっきりとしたお酒で、軽めのお料理に合わせられるお酒に絞り込み、吟醸系をベースとして不得意な生酛系の酒造りはやめることにしたそうです。 

そのために麹は固く締め、吟醸酵母を使って低温でじっくりと発酵させるだけでなく、アルコール耐性の弱い吟醸酵母が死滅して発生する雑味や香りを防ぐために、原酒でアルコール度数を16度以下に仕上げるようにしたそうです。さらに、上槽後は3-4日以内に火入れすることを励行し常にフレッシュな味が保てるっようにしたそうです。 

更に酵母の選択にも特徴がありました。協会酵母18号は通常最初に甘みが出て、カプロン酸エチルの香りが強く出るのが特徴ですが、この蔵の水では香りが弱く、味にくどさが出ないので、これを主体として使っていますが、後味の切れを出すために協会18号と協会9号酵母のブレンドを使っているそうです。9号酵母だけでもいいのではと思いましたが、9号酵母だけでは味が薄くて辛いお酒になるそうです。仕込み水によってこんなに違うのですね。、 

<蔵の主な設備改造> 

 最近の醸造設備の進歩は凄いものがありますが、非常にお金のかかることなので、小さい蔵ではなかなか難しいですが、この蔵では酒質向上のために少しずつ変えてきたそうです。蔵見学をしていませんので、詳しいことは分かりませんが、酒造萬流の記事から引用すると次のような設備改善が行われたようです。
 ・ 仕込み蔵の空調化と1.5トンの小仕込み化
 ・ 洗米と浸漬の自動化
 ・ 麹室の建て替え
 ・ 酒質測定機の導入による自動化
 ・ 貯蔵設備の充実化
 

<酒造体制の改革> 

 これまでは期間雇用の蔵人が24時間体制で行っていた酒造りをやめて、原則月曜日から金曜日までの8時間勤務を実施しました。このために作業の効率化と酒造計画の組み立て直しを行い土日の作業の撤廃をしたそうです。また、蔵人全員が無線通話機をもって各人の作業の共有化をしたそうで、これにより蔵人に心の余裕が出て酒質の向上が図れたそうです。たとえ生産量が減っても蔵人ののやる気の向上と酒質の向上が会社としての利益を生むのでしょう。 

それから今まで作ってきた品ぞろえを統廃合して、原料米の品種は山田錦、ひとごこち、夢山水、あさひの夢だけとし、精米歩合は70%、57%、47%、37%の4パターンに絞って作業性と品質向上を目指したそうです。 7の数字が多いのは七賢の名前とのこだわりのようです。

以上がこれまで行った蔵の改革で、これにはまだまだ終わりがないようですが、これらの改革で明らかに酒の資質は良くなってきていることは確かだと思いますが、それについてはこの会で飲んだお酒の紹介の中で、説明したいと思います。 

それでは飲んだお酒の紹介に入ります。 

1.スパークリング酒 星の輝 

Dsc_0208このお酒は瓶内2次発酵のスパークリング酒で、お米はひとごこち70%精米の純米酒です。まずタンク内でアルコール度数が10度くらいのもろみを造り、それを瓶に澱を絡ませて詰めてから、室温で瓶内発酵させると、9気圧くらいに圧力が上昇した時に瓶の口を冷凍して澱を凍らせてから、口を瞬間にあけて澱を抜いて再び栓をするそうです。その時120CCくらい抜けてしまいますが、それはお互いに補充をして商品にするそうです。その作業は手作業だそうですが、自動化することもできるけれども非常に高価だそうです。 

このお酒の開発は2015年から始めたそうで、開発にあたっては勝沼のスパークリングワイン工場や県の技術センターに行って勉強したそうです。ワイン.スパークリングと違うところは火入れをすることや、リキュールを入れられないことです。開発の当っては変動要因として一次発酵後の残存の糖の量、アルコール度数、澱の量、発酵温度があり、これを色々変えて決めたそうです。その結果、アルコール度数は11度になったようですが、今年発足したawa酒協会に発表に間に合わせています。 

シャンパングラスで飲んでみましたが、さわやかな香りと奇麗な泡が立ち上がり、軽やかでさらりとしたと甘みを持ったシャンパンと言いたいようなお酒でした。精米度が70%なのでややナッツのような香りがしますが、ほとんど気になりません。価格は720mlで税抜きで5000円です。 

対馬さんがこのお酒を注いでいる写真を見てください。落ち着いた雰囲気を持った方でした。対馬という名前は長男なので本家との関連でつけられたとのことでした。 

Dsc_0206

このスパークリングを超える新しいスパークリングの「杜の奏(もりのかなで)」というお酒が10月1日に発売されました。サントリーの白州蒸留所とコラボレーションして出来たスパークリングで、1次発酵させた日本酒をウイスキー樽で熟成した後、瓶詰めして2次発酵させたスパークリング酒で、720mlで1万円もするそうですが、今までのスパークリングとは次元が違う味わいだそうです。飲んでみたいですね・・・・・

2.鑑評会用出品酒

Dsc_0210このお酒は山田錦37%精米の大吟醸で、アルコール度数17度の原酒です。酵母は協会18号酵母だけを使った鑑評会用の出品酒で、市販していないお酒です。 

飲んでみるとカプロン酸エチルの香りは立ちますがそれほど強くはありません。甘みと酸味がうまくバランスしたいかにも出品酒らしいお酒でした。 

鑑評会用のお酒は市販酒とは違って、車でいうとF-1に相当するもので、技術的なチャレンジはありますが、これに重きを置いているわけではなく、市販酒のコンテストであるIWCへの出品も大切にしているそうです。今年はアルコール添加の大吟醸で挑戦したけれども、来年以降は純米酒で挑戦するそうです。 

3.純米酒 風凛美山

115781_2このお酒は麹米がひとごこち57%精米で、掛米があさひの夢70%精米の純米酒です。風凛美山という名前は甲斐駒ヶ岳の凛とした美しさから名前を付けたそうです。酵母は協会18号と協会9号のブレンドだそうです。このお酒は写真を撮るのを忘れたので、インターネットからお借りしました。 

アルコール度数は16度の原酒ですが、飲んでみるとべったりとした甘さではなく優しい甘さを最初に感じながら、後味がすっきりと消えていくバランスのお酒でした。これは9号酵母からできる奇麗な酸が上手くバランスしているからだと思いました。 

温度が上がるとちょっとベタっとなるので冷で飲むの良いと思いました。 

70%精米の掛米を使っているとは思えないほど、奇麗に仕上がっていて、これで税抜きで1升2000円とは安すぎる感じですが、ちゃんと利益は出しているそうです。このコスパは驚きです。しかもIWCで連続して受賞をしているそうですからすごいですよね 

4.純米吟醸酒 天鵞絨 (びろーど)

Dsc_0215このお酒は夢山水57%精米の純米吟醸酒でアルコール度数は15度とやや低めですが、これも原酒だそうです。天鵞絨の味という名前がついているのはビロードのような舌触りのお酒という意味だそうです。

飲んでみると香りは穏やかなですが、飲んだ後の中頃からふわっとふくらんで、消えていくお酒で、今日飲んだお酒とは少しバランスが違っているようです。このお酒は温度が上がってもあまり変わりませんでした。 

淡い味のお料理に合わせられるお酒で、お料理の素材を引き立てるお酒を目指して作ったそうです。アルコール度数は低いけれどもお料理ののマッチングはとても良いと思いました。価格は税抜きで1升2700円ですからコスパは良いです。 

5.純米大吟醸 絹の味 

Dsc_0217このお酒は夢山水47%精米の純米大吟醸でアルコール度数は16度の原酒です。このお酒も1回火入れで、基本的には生酒はあまり出していないそうです。絹の味という名はなめらかなお酒をイメージしたそうです。酵母は18号酵母です。 

飲んでみるとカプロン酸エチルの香りが強くはないけど、しっかり感じられ、うま味と甘さが最初にポンと広がるお酒でした。お食事に合わせて飲むお酒というよりは、お酒だけで香りと味を楽しむお酒のように思われました。 

価格は税抜きで1升3000円ですから、このお酒のコスパもとても良いと思います。 

6.純米酒 ひやおろし 

Dsc_0219このお酒は6月に作った純米酒を1回火入れして瓶に詰めてから15度から20度くらいの室温で約3か月熟成をしたお酒です。 

お米はは3番のお酒と同じだと思いますので、ひとごこち57%精米で、掛米があさひの夢70%精米と思われます。(これについては説明はありませんでした)。 

ひやおろしの定義は難しいのですが、昔は冬に作ったお酒を火入れした後、常温のタンクで秋まで熟成して瓶詰めして出すお酒を言っていたと思います。最近は初めから瓶詰めして熟成させるところが多いようですが、熟成の温度は決まっていません。これを秋上がりと呼ぶ蔵も多いようですが、ひやおろしは秋に限らす半年くらい熟成して出すことを言うという説もあります。 

飲んだ感じでは甘みは少し減った分スウット口に入ってくれますが、ちょっと辛みを感じました。でも新酒の若々しさは残っているように思えました。 

7.燗熟純米 2年熟成 

Dsc_0222このお酒は2014年にお燗用のお酒として造った山廃純米酒で、今は製造していないお酒です、お店のママが去年蔵見学した時に蔵で売っているのを見つけて購入したものです。 

お米の名前は聞き忘れましたが、精米は70%の純米酒で酵母は7号酵母で、アルコール度数は17度です 

飲んでみると、香りはほとんどなく、奥に甘みを感じるけど適度な酸と辛みを感じるお酒でしたが、お燗をすると透明感とフラット感が出てすっと飲めるお酒へと劇的な変化をしました。 

こんなに良いお燗酒になるのなら、また作ってくださいとお願いしたけれども、山廃造りはやめたそうなので、もう2度と飲めない貴重なお酒となってしまいました。残念・・・・・・ 

このお酒を買ってきたママに乾杯! こういうタイプの燗酒もいいと思うけどね。

Dsc_0224

以上で飲んだお酒の紹介は終わりますが、この蔵のお酒はどのレベルのお酒も酒質が高くきれいであるけれど、きちっと味を出していながら、嫌みのないお酒に仕上がっていますが、同じ味の酒はなく、一つ一つ目的を持った味わいに仕上げているのが良いなと思いました。確かに高級なお酒もありますが、どの酒もコストパフォーマンスはよく、特に純米酒の風凛美山は凄いです。対馬さんの説明ではお酒をあまり飲まない人でも、飲めるお酒を目指しているそうです。前段で説明したとおり、最近の蔵の大改革で、お酒の酒質が大幅に上がったことは間違いありません。

にほんブログ村 酒ブログ 日本酒・地酒へ ←ご覧になったら、この日本酒マークをクリックしていただくとブログ村のページに戻ります。これでポイントが増えます。携帯やスマートフォーンでご覧の方はMobileModeではクリックしてもポイントは増えませんので、PC-Modeにしてからクリックしてください。よろしくお願いします。

2017年10月 9日 (月)

ジャズと日本酒蔵元のコラボの会はとても良かった

僕の日本酒友達の高橋さとみさんから日本酒でジャズを楽しむ会へのお誘いがありました。僕はジャスを好んで聞くことはしませんが、ニューヨークに行った時にブルーノートに顔を出したくなるくらいジャズの雰囲気が好きな人間でしたので、喜んで参加することにしました。 

開催された場所は目白駅から池袋の方に数分歩いたところにあるMAC’s CARRORT というお店でした。僕は初めて訪れたので、全くどんなお店か知らなかったのですが、下の写真のようにイタリアンレストランの雰囲気を持っ店構えでした。 

Dsc_0111

Dsc_0110

中に入ると店の右側に大きなグランドピアノがあって、そのわきに洋酒用のカウンターがあり、40人くらい座れるテーブルがあるちょっとクラシックな大人の雰囲気のお店でした。 

Dsc_0105

Dsc_0106

たまたま僕(黄色い帽子をかぶっているおじさん)が写っている写真がさとみさんのFACEBOOKに載っていましたので、使わせていただきました。お店の人に聞いたらここはイタリアンレストランで、夜にはジャスの生演奏をして、お客様に楽しんでもらっているそうです。ここは学習院の人が良く来るそうで、たまには皇族の方が来られるみたいです。 

食事をしないでジャズだけを聞きに来るのはだめだそうです。残念・・・・

21430572_1560313384026191_4975317_2

この会には正雪(神沢川酒造)の社長の望月正隆さんと麓井(麓井酒造)の専務取締役の佐藤市郎さんが、参加されて、蔵から持ってこられたお酒の紹介をされました。各蔵から、とっておきの日本酒が3種類ずつ計6本が提供されましたが、その紹介は後で行います。 

まずはジャズバンドの皆様を紹介します。僕は素人なので、インターネットで調べた情報です。 

・ ピアノ 福田重男 

福田さんは群馬県出身で、小さい時からクラシックピアノをやり、明治大学に入ってジャスに目覚め、辛島文雄に師事されて、1980年にプロデビューをしたからだそうです。現在60歳のベテランジャズピアニストです。 

Dsc_0125_2

・ ギター 高内春彦 

高内さんは栃木県出身で東京造形大学の美術科に進みましたが、主にジャズ研で活躍し、1980年にニューヨークに渡りジャズギターリストとしてデビューをしたそうです。何といっても1990年に女優の松坂慶子さんと結婚され一躍有名になったことは良く知られている話で、現在63歳のベテランジャズキターリストです。 

Dsc_0139
・ ボーカル Mamiko Bird 

まみこさんのプロフィルはよくわかりませんが、アメリカでジャズを勉強し、プロとなり、ジャズボーカルだけでなく作曲も行い、2014年には第7回澤村美司子音楽賞をとるなど活躍されていて、最近は福田さんとデユオを組んでいるようです。 

Dsc_0126

 以上で3人の紹介を終わりますが、、せっかくですから会の最後のアンコールに応えたルート66の唄をお聞きください。僕のを声や手拍子が少しうるさいですが、雰囲気はわかると思います。下のファイルをクリックするとちょっと時間がかかりますが、始まります。

 「170909_003.mp3」をダウンロード 

ジャズの紹介はこのぐらいにして蔵とお酒の紹介をします。

1.神沢川酒造 

この蔵は静岡県の静岡市と富士市の間にある由比町にありますが、北は山が迫り南は府駿河湾に接する比較的狭い場所なので、昔から東海道の交通の要所の宿場町としてだけでなく、、桜エビとシラスで有名な港町として栄えた地です。この地に蔵を創業したのは望月金蔵さんで大正元年のことですから、比較的新しい蔵と言えます。 

この蔵を造るにあたって、水のいい場所を探して見つけたのが今の場所で、そばに川が流れていますが、それが神沢川(かんざわがわ)ということから神沢川酒造となずけたものと思われます。この水はミネラルをほとんど含まない軟水ですから、軽やかできれいなお酒造りにお適しているようです。 

代表銘柄の正雪の名を付けたのは2代目の望月由松さんで静岡が生んだ反骨精神の高い由比正雪にちなんでつけたそうです。蔵を支えてきたのは岩手県花巻出身の南部杜氏の山影純悦さんで、昭和57年からずっと杜氏をされています。静岡のお酒と言えば、沼津工業技術センターの河村傳兵衛さんの指導による吟醸造りが有名ですが、それは甘、辛、苦、渋、酸の5味のバランスと上品でさわやかな香りを調和させて、何杯飲んでも飽きないお酒といえますが、まさにそれを目指している蔵と言えます。 

河村傳兵衛さんや静岡酵母のことなら下記のブログを見てください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-27e3.html

今回は社長の望月正隆さんに来ていただきました。 

Dsc_0107

望月さんはどんな方なのでしょうか。この蔵の長男として1962年にお生まれになりましたので、蔵の後を継ぐことは決まっていましたが、若い頃は蔵が苦手で、大学も玉川大学の文学部に行ったそうです。でも先代の社長が大きなけがをしたために、卒業と同時に蔵に戻ったのですが、はじめは酒造りはほとんどしなかったそうです。その時には山影杜氏はすでに蔵におられていました。 

でも、酒造りを勉強したい気持ちはあったそうで、醸造技術者養成の通信講座を受けて、念願かなって沼津工業技術センターの河村先生について研修生として1年間勉強をしたそうです。そんな時に蔵人の一人が怪我で欠けたので、生まれて初めて酒造りを経験したそうで、それで、だんだん酒造りがおもしろくなったそうです 

その後、2006年せいか5代目のに社長に就任し、弟さんの正明さんと力を合わせて順調に成長しており、現在の生産高は1300石位だと思います。 

飲んだ正雪のお酒の紹介をします 

・ 雪 純米大吟醸 山田錦斗瓶どり 

Dsc_0113_2このお酒は兵庫県の山田錦35%精米の純米大吟醸の斗瓶どりで、中取りの部分を生のまま瓶詰めして、瓶燗火入れをしたものを低温で熟成したものです。 

酵母は静岡酵母のHD-1で、酒質はアルコール度数は見落としましたが、日本酒度が+3、酸度は1.1といかにも静岡吟醸を代表するスペックでした。 

飲んでみると酢酸イソアミルと酢酸エチルのさわやかな香りがたち、ちょっとシャープで少し後口に辛みを感じるバランスです。最近の静岡の吟醸酒は香りの低いものが多くなってきている感じがしていますが、このお酒はいかにもHD-1の香りが良く出ていると思いました。これも杜氏さんの実力なのでしょう。 

・ 正雪 純米大吟醸 備前雄町 

11181229271x361このお酒は岡山県の備前雄町45%精米の純米大吟醸です。このお酒の写真を撮りそこないましたので、インターネットから探してきましたが、たぶん同じものと思います。 

酵母は雄町の味を引き出すために、M310を使いましたが、M310だけでは発酵力が弱いので、静岡県酵母のNO-1をブレンドして使ったそうです 

残念ながら酒質は分かりませんが、日本酒度は±0くらいだそうです。飲んでみると香りは抑え気味ですが、カプロン酸エチルの香も、酢酸イソアミルの香もするお酒でした。 

口に含むと雄町らしい柔らかい甘いが広がり、後味でゆっくりと消えていく雄町らしい余韻を感じました。一言でいえばどっしりとした雄町ではなく奇麗な雄町の部類に入ると思います。 僕はこのお酒はお気に入りです。

・ 正雪 純米吟醸山田錦 

Dsc_0130_2このお酒は山田穂50%精米の純米大吟醸です。山田穂は山田錦の母親にあたるお米で、全国で栽培しているところは少なく、兵庫県の山田錦を栽培している近くで取れるそうです。 

山田錦よりはやや小粒で心白発生率も低いが酒造特性は良いけど、やや溶けにくいので味を出すのが難しいそうです。 

飲んでみると山田錦に比べるとふくらみが少なく、少しシャープで辛みを感じました。 

この瓶はラベルをよく見ると縞が入って売る特殊なもので、山田穂と愛山があるそうです。色は山田穂の純米吟醸はみどり、純米大吟醸は青緑のようです。 

2.麓井酒造 

この蔵は山形県の酒田市から北東に10KMほど行った八幡地区にある蔵で、鳥海山の麓にあるので良質で豊富な湧水に恵まれていますので、庄内藩主の酒井家の人から酒つくりをやらない手はないと言われて始まったようです。創業は明治27年で、麓と酒井家の井を取って麓井酒造としたそうです。 

当主の佐藤家では長男の久吉が回船問屋をしているときに、酒井家から醸造技術を学んで、明治26年に酒田市の南に酒蔵を立ち上げたのが、現在の初孫を譲する東北銘醸株式会社です。麓井酒造は久吉の姉が養子を迎えてその1年後に創業したそうです。ですから麓井と東北銘譲は今でも兄弟会社で、社長の佐藤淳司さんはは両方の蔵の社長を兼務しています。 

東北銘譲の生産高は約7000石と言われるほど大きな蔵ですが、麓井酒造は約500石とこじんまりとした蔵です。

蔵から専務取締役の佐藤市郎さんに来ていただきました。

Dsc_0117
佐藤さんは夏は営業、冬場は酒つくりを担当しています。麓井酒造には杜氏の高橋幸夫さんがおられるので、市郎さんは酒つくり全体を管理しておられるようです 

市郎さんは蔵に戻る前はアサヒビールに勤務していて東京に住んでおられたので、吉祥寺にあるライブバー・イタリアンレストランの吉祥寺ストリングスに行くことがよくあって、ジャズが好きになったとのことでした。こんなところでジャズとの接点があるのですね。 

・ フモト井 純米大吟醸 

Dsc_0120このお酒は山田錦40%精米の純米大吟醸で、酵母は山形酵母のKAだそうです。山形酵母KAは熊本酵母系の流れを持つ酵母で、香りは抑えめですが、味をしっかり出す酵母だそうです。 

酒質はよくわかりませんが、インターネットでの情報ではアルコール度17、日本酒度+1、酸度1.6でした。 

飲んでみると香りは軽いですが、さわやかな酢酸イソアミル系の香りを感じました。口に含むと奇麗な甘みが広がり、後味にも少し甘みが残る感じでした。佐藤さんは日本酒度は+4ですと言われたので、どうして甘く感じるのかと聞いたら、今回はグルコース濃度を増やすようにしているからではないかといわれました。だから軽くても甘く感じて、しかも後味にも甘さを感じたのかもしれません。 

酒造りは奥が深いですね。

・ フモト井 純米大吟醸雪女神 

Dsc_0128このお酒は山形県が最近開発した大吟醸酒向けの酒造好適米の雪女神を35%精米した純米大吟醸です。雪女神は山形県の工業技術センターが開発したもので、山形県の出羽の里と宮城県の蔵の華をかけ合わせた品種です。 

雑味につながる蛋白質が少ない特性があるので、透明感がありすっきりしたお酒になると言われています。 

雪女神という名がついたのは去年のことで、それまでは山形104号と言われてもので、酒造好適米に女性的な名前が付くのは珍しいそうです。今年から山形県の各蔵で雪女神の醸造が始まりました。 

この蔵でも初めての造りでしたが、米の溶けが悪く、造ったばかりの今年の冬では味が薄くどうしようかと思っていましたが、秋まで熟成をしてやっと飲めるようになったそうです 

実際に飲んでみると、香りは山田錦と同じぐらいですが、味は口の中で少し膨らむ程度で全体に奇麗な、いかにも女神といった感じのお酒でした。 

・ 麓井のまどか 

Dsc_0133このお酒は山形県の美山錦55%精米の生酛純米本辛口の圓(まどか)です。独自の生酛造りで醸造した定番のお酒で、燗に向いたお酒だそうです。 

酒質はアルコール分16度、日本酒ぞ+7~+10、酸度1.4~1.5で、酵母は山形酵母です。 

飲んでみるとソフトな飲み口で後味が生酛独特の酸が奇麗に切ってくれる、辛いというよりはドライな感じのお酒でした。 

以上で飲んだお酒と蔵の紹介は終わりますが、ジャズを楽しみながらお酒を飲むのも結構楽しいものでした。

お客様のほとんどが日本酒を楽しむというより、ジャスを楽しんでいるようでしたし、お客様の質が日本酒の好きな仲間とは少し違った雰囲気が感じられました。これも主催した高橋さとみさんの雰囲気が醸し出すものなのでしょうね。

僕のように日本酒が好きなものにとっては、蔵元と色々お話ができる時間が多く取れたというメリットもありました。 

このような会を計画した高橋さとみさんのご苦労は大変なものだったと思います。また今回を陰でサポートしている高橋さとみさんの旦那様にもお礼を言いたいと思います。 

今年の末にまた開催されるようなので、また参加したいと思います

最後にさとみさんと演奏仲間との写真を高橋さんのFACEBOOKからお借りして貼り付けてみました。少し明るくしておきました。

21462581_1560239504033579_197869163

高橋さんありがとうございました 

にほんブログ村 酒ブログ 日本酒・地酒へ ←ご覧になったら、この日本酒マークをクリックしていただくとブログ村のページに戻ります。これでポイントが増えます。携帯やスマートフォーンでご覧の方はMobileModeではクリックしてもポイントは増えませんので、PC-Modeにしてからクリックしてください。よろしくお願いします。

2017年9月22日 (金)

梅乃宿のお酒には新しさと伝統を感じました

8月の末の平日の夕方に横浜の居酒屋で梅乃宿の蔵人をお呼びしての試飲会があることを日本酒カレンダーで見つけて、お電話したら10人強の小人数の会ですが、宜しかったら参加くださいと言われたので参加してきました。 

そのお店は横浜駅の東口から歩いて5分くらいの高島2丁目にある「いざか屋若蔵」でした。この辺の地理に疎い僕でしたので、行くのに迷ったのですが、横浜駅東口から万里橋を渡ってすぐの通りの左側にあるのですが、それらしいお店が見つかりません。でもビルの1階に梅乃宿の垂れ幕があったので、そのビルの裏側にまわってみたらありました。 

Dsc_0077

とてもこじんまりとした素敵な雰囲気のお店で、ここに開店してまだ2年目だそうで、お店の店長の鈴木良太さんは元々横浜育ちで、京都のお店に修業してから横浜に9年前に帰って最初に井土ガ谷に店を出したそうで、この店が一番新しく3店目だそうです。 

お店はカウンターと10人くらいが座れるテーブルがあるだけのお店で、日本酒は色々置いてありましたが、梅乃宿のお酒は昔から入れているお酒だそうです。下の写真が店長でタンポポ自業株式会社の代表取締役の鈴木さんです。会社の事務所は隣のビルなので、このお店が本命かもしれませんね。なかなかかっこいい人ですね。 

Dsc_0075_3

梅乃宿からが2人の営業マンがこられていて、お酒の説明をしていただきましたが、その説明は主に奈良からこられた横田和士さんです。 

Dsc_0053_2

梅乃宿酒造はどんな蔵なのでしょうか。ちょっと調べてみましたので、まず蔵の紹介からいたします。 

蔵は奈良県葛城市東室にあり、近鉄御所線の近鉄新庄の近くにあります。創業は明治26年で創業者は吉田熊太郎さんです。その後蔵がどのように発展したかはよくわかりませんが、昭和25年に今の蔵の名前の梅乃宿酒造となります。この蔵には樹齢300年の大きな梅の木があって、春になると鶯が良く遊びに来たことから「梅乃宿」という名がついたそうです。 

昭和35年には清酒売上高が3500石にもなったようですが、たぶん大手の桶売りもだいぶあったようで、大手が桶買いをやめ始めて昭和54年には自社ブランド中心に移行し、本格的に吟醸酒の方向にシフトします。当時は吟醸酒がまだ出回っていない時でしたので、大変人気が出たようです。この時に社長になったのが、4代目社長の吉田暁さんです。それが昭和59年のことです。 

暁さんはそこから酒造りを大きく方向転換することになります。この時代はちょうど日本酒離れが多くなり、日本中の蔵がどうやって生きていくか大変苦労していた時代でした。暁さんはもちろん本物の日本酒造りに力を入れる気持ちはありましたが、このままではじり貧になるという思いから、大きな決断をします。自分の蔵が持っている強みは何かと考えて、思い立ったのが自社の得意技術の「伝統ある発酵技術」を活かして清酒以外の色々なものを造ろうということでした 

まず最初に行ったのが、瓶内発酵のの低アルコールの発泡性・純米酒「月うさぎ」の開発でした。この商品は夏場によく売れて、夏場でも製造できる環境になりました。夏場は杜氏がいない期間ですので、若い社員だけで行なわざるを得なくて、これで杜氏がいなくても酒造りをする環境が生まれたそうです。 

次の取り組んだのがリキュールの生産です。それは大量に生産した月うさぎの酒粕は酒粕としての人気がなく、産廃にせざるを得ない状況でしたので、その酒粕から焼酎を造ることを思いつき、平成13年にリキュールと焼酎の製造免許を取り、焼酎の生産を始めました。この焼酎は販売は考えておらず、アルコール添加用の醸造用アルコールとして使うつもりでしたが、南紅梅を焼酎に漬け込んだ梅酒を造ることにしました。それだけでは面白くないので、日本酒につけた梅酒も造りそれをブレンドした梅酒を「蛍梅・おうばい」として平成14年に販売を開始しました。このお酒が大ヒットしたのです。 

その後は、梅酒だけでなくリキュールの製造販売の方向に動き出しました。いちご、ゆず、もも、リンゴ、ミカン、マンゴーなど次々と新しいものを開発していきます。現在の販売量は清酒が1600石、梅酒が1000石、その他が1400石で合計4000石の生産となり、今ではリキュール生産蔵としての方が有名になっています。 

この間日本酒の製造に力を抜いていたわけではありません。吟醸酒にシフトしたことは上で説明しましたが、現在の清酒の平均精米率は55%ですから特に高級酒に力を入れているようです。このような発展をしてきた裏には暁社長の強い思いがあったのです。 

暁さんが社長になった時はこの困難な時代をどう乗り切るかと同時に5代目にどう繋いでいくかの思いがあり、その時に出会った言葉が「1年を計る人は花を育てる、10年を計る人は木を育てる、100年を計る人は人を育てる」という言葉だったそうです。それまでも人を育てることはやってきたつもりでいましたが、一人一人の能力を最大限引き出すまではやっていなかったことに気が付き、組織全体としての理念や文化、雰囲気、人が生き生きとする人事制度の強化などを行うと心に決めたそうです。そして、その土壌がほぼできた平成25年に娘の吉田佳代さんに社長を譲り、会長に退き現在に至っています。 

佳代さんに社長を引き継いだ年は創業120年になる年で、そこで新しい酒文化を造っていく理念を明らかにし、その象徴として新しいブランド山風香を立ち上げました。山風香は蔵が葛城山の麓にあることから、山から吹く新しい風の香りを表現したもので、山香と風香の2種類から成り立っています。山香はどっしりと構えた山のように梅乃宿の伝統を生かしたお酒、、風香は革新と新しい酒文化を表していて、搾りたてのようなフレッシュな味わいを楽しめるお酒です。瓶の色とラベルの色でお酒の酒質が一目で判るように、山香は茶色い瓶、風香は透明瓶、ラベルの文字は大吟醸は金色、純米吟醸は銀色、純米酒は黒色、生酛は緑、山廃は橙したのではないかと思います。これは蔵人から直接聞いたことではないので間違っているかもしれません。 

この会社のホームページみますと、他社にはない雰囲気があります。それは会社としての理念が明確に描かれていることと、従業員一人一人の声が描かれていることです。若い人が多く活気ある気持ちで、前に向いている様子が目に留まります。本当にこのまま素直に発展するのかどうかはわかりませんが、何が生まれるのだろうという期待感はありますね。とても楽しみです。 

以上で蔵の紹介は終わりますが、最後に新社長のプロフィルを紹介しておきます。 

 ・ 1979年生まれ現在38才
 ・ 平成14年 帝塚山大学経営情報学部卒
 ・ 株式会社モリタに入社
 ・ 平成16年 梅乃宿酒造株式会社入社
 ・ 平成25年 同社 代表取締役社長 就任
 ・ コンセプト 新しい酒文化を創造する蔵
          具体的には伝統ある技術を守り研鑽し続け、伝
          統技術をもとに価値ある商品や提案を時代に合
          わせて提供することだそうです。
 

それでは今回飲んだお酒の紹介をします。 

1.ARAGOSHI×MINOH 

Dsc_0054このお酒は日本酒ではありません。乾杯用に飲んだビールです。この蔵ではあらごし梅酒という銘柄の梅酒を造っていますが、これは南紅梅のうめをあらごしした果実をたっぷり使った梅酒で、この梅酒が発売されて10年目の今年に発売10周年記念に作ったビールで、今年限りだそうです。 

大阪のクラフトビールの名門の箕面ビールと梅乃宿酒造がコアラボレーションして作ったビールです。 

飲んでみると梅の酸っぱさはあまりなく、少し甘めのビールでした。麦芽の苦みとマッチした面白い味でした。アルコール度数は5.5%ですから普通のビールと同じです。 

2.UK-02 

Dsc_0057このお酒は梅錦蔵人の酒No.02という名前がついていて、その頭文字をとって、UK-02というラベルになっています。 

杜氏から託された蔵人がタンク1本を自由なコンセプトで造り上げる形で醸造したもので、2年前に初めて作ったお酒をUK-01としたので、今年はその第2弾としてUK-02となったわけです。 

UK-01は甘くて酸で締めるジューシーなお酒で評判が良かったそうで、UK-2は奇麗な酸を出すさわやかなお酒を目指して、リンゴ酸の出る協会77号と6号酵母のブレンドを試みたそうです。 

飲んでみると意外と酸が弱くおとなしめのお酒でした。もう少しリンゴ酸を出したほうがおもしろい気がしました。このバランスだと冷やして飲むほうが向いているようでした。 

3.風香純米吟醸袋搾り生原酒 

Dsc_0060_2このお酒は24BYから定番として造られていて、今年で4年目になるお酒です。岡山県雄高島地区で取れた備前雄町60%精米を使った純米吟醸で袋搾りのあらばしりと中取を詰めた生原酒です。酵母は9号酵母です。ラベルの文字は銀色で、瓶は透明でした。 

ここでは説明がありませんでしたが、ホームページで調べた酒質はALC17度、日本酒度、+2.4、酸度2.1でした。 

のんでみますと、香りは抑えめですが、カプロン酸エステルの香りと酢酸イソアミルの両方を感じるさわやかなもので、フレッシュな味わいとドライな口当たりで、最後に雄町らしい余韻を感じる味わいでした。澱の甘さと酸が打ち消しあっていてなかなかいいバランスをしていると思いました。 

4.風香純米無圧搾り生原酒 

Dsc_0064このお酒は山田錦65%精米の純米酒の生原酒です。酵母は6号酵母で、薮田の搾り機でプレスをかけないで、ポンプだけの力で最初に出てきたものを瓶詰めしたお酒です。ラベルの文字は黒で瓶は透明でした。 

このお酒の酒質もホームページで調べたものを紹介すると、ALC17度、日本酒度-4.6、酸度1.7でした。 

香はさわやかな香りですが、あまり強くなく、口に含んだ時に甘さを感じて味がしっかり出ているが、後味は切れを感じました。 

生原酒はすべて-7度の冷蔵庫で保管しているそうで、瓶詰め後の品質管理もしっかりしているようです。 

5.風香 純米吟醸 

Dsc_0066このお酒は岡山県産の備前雄町60%精米の純米酒で1回火入れのお酒です。文字の色は銀色でしたが、瓶の色は茶色でした。風香でも1回火入れのお酒の瓶の色は茶色のようです。一回火入れするとフレッシュ感がなくなるのでそうしたのかもしれません。だったら山香したほうがよかったのではと思いました。 

ホームページで調べた酒質はALC16度、日本酒度+1.7、酸度1.6でした。 

飲んでみると熟成の香りがしたので、聞いてみると火入れはパストライザーを使った瓶燗火入れなので、この香りは火入れによるのではなく酒販店で熟成したのではないかとの説明でした。このお酒は窓乃梅の自信作のお酒のようですが、雄町らしい余韻は消えてしまっていて、残念でした。お酒の管理は大切ですね。 

6.山香生酛純米吟醸 

Dsc_0070このお酒は岡山県産の備前雄町60%精米の生酛造りの1回火入れの純米吟醸原酒で、蔵で1年以上熟成させたお酒です。その中でも今回のお酒は2年熟成のお酒でした。 

瓶の色は茶い色で文字は緑でした。ホームページで調べた酒質はALC17度、日本酒度1.5、酸度1.5でした。 

飲んでみると軽い熟成の香りはしますが、角が取れてマイルドで嫌みのない大人のお酒になっていました。口に含んだ時にドンと旨みを感じるわけではないけど、バランスが良く後味に漂いう軽い余韻が素敵で、個人的には僕が最も気に入ったお酒でした。 

山廃も含めて生酛系は全生産の2割くらい作っているそうですが、山廃は主に本醸造の隠し味のブレンドとして使っているそうです。 なかなかのテクニックですね。

7.クールゆず 

Dsc_0078この蔵では、梅乃宿ゆずとクールゆずの2種類のゆず酒を造っていて、どちらもアルコール度数は8度と同じで、ゆずの果汁を日本酒とブレンドして作っています。 

最初に開発されたのが梅乃宿のゆずの方で、1升に対して18個のゆずの果汁を低温で調合して作ったものに対して、クールゆずはさらに果汁を増やして、20個分のゆずを、生酒と調合して造ったそうです 

飲んでみるとゆずの香りが口中の広がるフレッシュなお酒でなので、つい飲み過ぎてしまいそうになります。  

8.梅乃宿辛口純米吟醸酒 

Dsc_0068このお酒は限定のお店しか出していない特別の純米酒だそうです。お米は麹米が山田錦55%精米、掛米があけぼの55%精米の純米吟醸です 

ホームページで調べた酒質はALC16度、日本酒度+10.4、酸度1.4でした。 

飲んでみると甘みは抑えられていますが、それほど辛くは感じないで、トロットした感触で口の中に広がりました。なかなかうまく作られていると思いました。晩酌ように色々なお食事と合わせることのできるお酒だとおもいました。 

以上で飲んだお酒の紹介を終わります。 

最後にこの蔵のお酒を飲んで感じたことを纏めてみます。 

5年前に女性社長に代わってから新しい山風香シリーズのお酒が出て、新しい風を出してきてはいますが、伝統ある造りの良さとの調和を図っている感じがして、そのバランスが良いなと思いました。今の若者が好きな流行りの味のお酒を追うだけでなく、さらに先を見た新しいもの目指している予感がしました。この蔵は当面目が離せないと思います。 

それからホームページもしっかりしていて販売しているお酒の酒質をきちっと書いてあるるのは大変珍しくて、それだけ酒造りに自信があるとだとおもいます。僕のようなお酒マニアにとっては大変うれしいことです。

京都の丹後にある木下酒造の杜氏をしているフィリップハーパーさんは1991年から10年間梅乃宿で修業をして、南部杜氏の資格を取ったことは酒通の人には有名な話ですが、ハーパーさんを育てた風土がこの蔵のベースになって息づいていると感じました。

 にほんブログ村 酒ブログ 日本酒・地酒へ ←ご覧になったら、この日本酒マークをクリックしていただくとブログ村のページに戻ります。これでポイントが増えます。携帯やスマートフォーンでご覧の方はMobileModeではクリックしてもポイントは増えませんので、PC-Modeにしてからクリックしてください。よろしくお願いします。

2017年9月13日 (水)

喜多方の若手の蔵は個性豊かで楽しみですよ

8月の20日に西日暮里の稲毛屋で喜多方の若手5蔵の造り手を囲む会が開かれましたので参加してきました。稲毛屋主催の通常の日本酒会でこのような会がおこなわれることはありませんが、今回は大塚の地酒屋「こだま」の児玉武也さんが企画したものです。 

地酒屋「こだま」は武也さんが、今の場所にあった酒屋の「つたや」を2010年に買い取って開いたお店で、もともと「つたや」は福島のお酒が強くて、武也さんはその流れを継いで福島を幅広く取り扱っています。でも武也さんは普通の酒屋さんとは違います。もともとお酒の趣味が高じて酒屋になった方ですので、お酒を売って儲けようという気持ちが少なく、たとえ完成度が低く、生産量の少ない蔵であっても、一生懸命に良いお酒を造ろうとしている蔵をお酒を売ることで応援しようという人です。ですから福島の蔵の場合も、武也さんは自分の目で蔵を見つめなおして、応援しようと決めた蔵だけを扱っているものと思います。取り扱う福島の蔵数が多いと言っても、現在その数は16蔵で、福島全体の1/4ほどにしかなりませんが、全蔵武也さんが足を運んで見定めた蔵ばかりです。 

武也さんの地道な応援の成果が出たのか、最近福島の若手の杜氏が造るお酒の質が上がり色々なところで表彰されるようになってきました。それを受けてか、2014年には福島の新試飲気鋭の6蔵をディープに感じる会を武也さんが開催いたしました。この会のことについては僕が参加をしてブログで紹介していますのでご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/6-656f.html 

喜多方には11の蔵がありますが、その中でこだまで扱っている蔵は7つあります。その中でも若手が杜氏として造りをしている5蔵を取り上げて、蔵元を囲む会が行われることになりました。その蔵をご紹介します。5人のうち3人が上述のディープな会に参加していますので、紹介内容に重なることがありますので、ご容赦ください。 

・ 峰の雪酒造場 大和屋善内 佐藤健信  

・ 笹政宗酒造 ささまさむね 岩田悠二郎  

・ 喜多の華酒造場 星自慢 星里英  

・ 合資会社会津錦 会津錦 斎藤孝典  

・ 大和川酒造 弥右衛門 佐藤哲 

各蔵の杜氏の紹介とお酒の紹介をいたしますが、お話の中お米、酵母、アカデミーの話が良く出ますので、この3つは事前に紹介した置きます。 

1.福島県清酒アカデミー 

この組織の正式な名前は福島県清酒アカデミー職業能力開発校で、福島県が認めた色々な職業の労働者の職業能力の開発・向上を目的とした職業訓練校の一つです。平成のはじめごろは新潟の端麗辛口の酒造りが持てはやされ、新潟県ではそれを支えるために技能者要請機関として「新潟清酒学校」を設置するなど先を見据えた活動をしていたようです。 

福島県酒造組合としては、新潟より10年も遅れを取ってると思い、平成4年に新潟の事例を参考にしながら清酒アカデミーの前身となる技術研修を開始し、翌5年に県から普通職業訓練短期課程の認識意を受け、現在の組織がスタートすることになったようです。最初から3年のカリキュラムだったとすると、最初の卒業生は平成7年になります 

現在の訓練内容は初級・中級・上級の3年課程に分かれていて、それぞれ約100時間強、3年で300時間強の講義と実習をするそうです。その訓練科目には醸造にかかわる様々な専門科目(醸造数学、微生物学等の基礎科目から醸造実務科目、各種関連法律、醸造の歴史など)を教わるようです。 

今年の4月で23期生が卒業し、毎年約10名強の人が卒業するので、卒業生は延べ256人だそうで、福島県の蔵は62蔵あるようですが、造り手のほとんどの人がこの卒業生になっているものと思われます。 

平成17年度に全国新酒鑑評会での金賞受賞数で全国1位になって以来、今年までほとんど1位か2位(平成20年度だけが3位)の成績を残しており、大きな飛躍をしています。その陰にはアカデミーの講師をしている福島県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターの醸造科長の鈴木賢二先生がおられます。鈴木先生は新しい情報を得たり、お互いが刺激しあうことで、それぞれの蔵の意欲も技術も高まるという思いで活動されていますが、自分の研究成果として、平成14年に吟醸酒製造マニュアルを作り、蔵元に配ったそうです。そこには搾りから火入れまでの最適な期間や酵母が順調に育っているかを確かめる計算式など先生独自の方法を書くと同時に、酵母は特定せず各蔵の工夫が生かせるような幅を持たせたものになっています。このマニュアルはわかり易いということで評判となり、瞬く間に各蔵に広がり、それが平成17年度の1位につながったわけです。いまでも鈴木先生はさらなる研究を続けており、先生の努力によって福島県の醸造レベルが向上したことは間違いのないと思います。インターネットからお写真をお借りしました。 

20141031001

 2.福島県産酒米 

福島県が開発した酒造好適米で今使われているのは「夢の香」しかありません。夢の香は八反錦と出羽燦燦の交配種で、耐冷性や耐倒伏性が弱い五百万石に代わる米を目指したもので、耐冷性は五百万石より強く、耐倒伏性もやや強いものができました。酒米としての特性も五百万石より心白の発現率が高く、粒形も大きく吸水性も優れていて、醪中で溶けやすい軟質性のある酒造好適米です。 

一般米としてはコシヒカリやチヨニシキやひとめぼれ、天のつぶやミルキークインが造られています。チヨニシキはこしひかりとトヨニシキを親に持つ飯米で、酒米としては掛米に使われています。天のつぶはコシヒカリに匹敵する味を持つお米として、福島県が15年かけて開発し、平成22年に県の奨励種となったお米ですが、酒米としてはあまり使われていません。  

3.福島県産酵母 

福島県で開発された酵母は非常のたくさんあるようですが、それを纏めて統一的に紹介した文献が見つからなかったので、今回紹介する酵母は蔵で使っているものに絞って紹介します。酵母の開発もハイテクプラザ会津若松技術支援センターが担当されており、最近の開発には鈴木先生が担当しているものと思われます。 

<うつくしま夢酵母(F7-01)> 

 この酵母はハイテクプラザ会津若松技術支援センターが昭和63年より開発を進めてきて、協会酵母701号から改良された酵母が様々な苦労をした後、平成3年に夢酵母として発表されました。この酵母は酢酸イソアミル系の酵母で、洋ナシやメロンのようなさわやかな香りがして、酸味が少なくソフトでマイルドな味わいがする酵母です。 

<うつくしま煌酵母C10(701-15),R50(901-A113)、G30(701-g31)> 

 夢酵母が開発された後、カプロン酸系の香りの酵母が求められ、協会7号系酵母と協会9号系酵母から改良されて開発された3種類の酵母が平成20年に煌酵母として発表されました。C10はカプロン酸エステルの華やかな香りが強く、R50はイソ系とカプ系の2種類の香りが楽しめ発酵力の強い辛口系に向いている。G3は香りのバランスが良く、高級酒向けの上品なお酒に向いていると言われています。  

<TM-1> 

福島県で開発された酵母で、全体的な酸味を抑えながらきれいな酸味だけをだけを出す特徴がある酵母のようです。 

<TUA> 

 これも福島県開発の酵母で、低温で発酵力が強い酵母らしいですが、使っている蔵は喜多の華酒造くらいしかないようです。 

以上で前知識の紹介を終わり、今回参加した蔵を紹介しますが、たまたま飲んだ蔵の順で紹介することにします。 

下の写真は武也さんが5人の蔵元に説教しているわけではありません。会の終了時に5人の人たちのすばらしさを会の参加者にPRしているときの写真です。お店の構造上こんな風にしかできなかったようです。蔵元さんもみんな一生懸命武也さんのお話を聞いている姿が印象的ですね。 

Dsc_0060

 <峰の雪酒造場 大和屋善内 > 

Dsc_0052この蔵は昭和17年に佐藤信八さんが創業した新しい蔵ですが、現在の会津ほまれの真向かいにあった大和錦の第2工場として東京向けのお酒(峰の雪)を造る目的でスタートしたそうです。その後昭和30年に本家から独立し峰の雪酒となったそうです。 

写真の方は4代目蔵元の佐藤健信さんです。健信さんは東京農大の醸造学科を卒業された後、新潟の麒麟山に6年務め、製造と販売の勉強をした後平成21年に蔵に戻ってきます。 

その後福島清酒アカデミーに3年勉強した後、平成23年の造りから製造部長(実質の杜氏)となり自ら求めるお酒を造り始めることになります。 

まず、今までは普通酒しか作っていなかったのを変えて、特定名称酒に力を入れると同時に自分の好きな味のお酒、あまいけど、重たくなく軽く飲めるお酒を造り始めることになります。 

自分が狙った甘くても飲み飽きしないお酒を造るのは結構難しく、アミノ酸を1.0以下になるようにするそうです。そのためには洗米から全ての工程を見直したが、あまいお酒を造るには強い麹菌を使って糖を増やせばいいけど、蛋白混濁という白く濁るお酒になる可能性があるので注意をしているそうです。飲んだお酒は以下の通りです。 

.大和屋善内 純米生詰め
2.大和屋善内 純米大吟醸
3.Yamatoya Zennai
 

Dsc_0023_5Dsc_0020_3Dsc_00181.大和屋善内 純米生詰め(1回火入れ) 

このお酒は喜多方産の五百万石60%精米の純米無濾過生原酒です。甘みがあっても飲みやすいお酒を目指していて、強い麹菌を使って糖分を多く出すとともに、醪の発酵を最後までは行わずに糖分があるうちに絞るそうです。でも若いうちに絞ってしまうとヨーグルトのようなつわり臭(ジアセチルの香)が出るので、もろみの中のピルビン酸がなくなったのを確認して絞るそうです。この香りは絞ってからしばらくしてから出てくるので、この蔵のように絞ってすぐ瓶詰めするところでは、出荷前に瓶詰めしたお酒を確認して、クレームが出ないよう気を付けているそうです。 

飲んでみるとさわやかなイソアミル系の香りと程よい甘みとさわやかな酸を感じるお酒でしたが、この酸は福島県のTM-1という酵母からくるもののようです。確かに飲み飽きないタイプのお酒と言えます。 

2.大和屋善内 純米大吟醸 

大和屋善内のお酒はすべて喜多方産の五百万石を使っていますが、このお酒は出品酒を狙った40%精米の大吟醸ですので、カプロン酸エチルの華やかな香りが出るM-310という酵母を使っています。出品酒は袋撮りをしますが市販品は薮田で絞っているそうです。薮田で絞った場合最後に絞る責めの部分はどうしてもアミノ酸が増えるので使用していないそうです。結構細かいとろろに気を使っているのですね。 

3.Yamatoya Zennai. 

 このお酒は蔵に戻って自分では締めて造ったお酒で、今までにないタイプのお酒なので、横文字の表示にしたそうです。五百万石60%精米の純米酒で、アルコール度数14度、日本酒度-3、酸度3.8のお酒です。かなり酸味が効いていますので、バーベキューや肉料理に合うそうです。この酸はもろみの中で乳酸を増やして出しているようです。 

飲んでみると酸味は感じますが、甘さとかき消されてそれほど強くは感じられませんが、白ワインの感覚で飲めそうです。 

(まとめ)  

佐藤さんもアカデミーの出身ですが、先生の物まねではなく独自のお酒を造ろうという姿が印象的でしたし、醸造の理論にも詳しい方のように思えました。 

<笹政宗酒造 ささまさむね> 

Dsc_0051この蔵は1818年に岩田善次郎が喜多方市で創業した蔵で、喜多方駅から北へ4㎞程行ったところにあります。僕は行ったことはないけど、写真を見ると昔ながらの趣のある建屋とお庭が素敵な蔵でした。 

写真の方が社長兼杜氏の8代目の岩田悠二郎さんで、まだ31才で、喜多方では最年少の社長だそうです。大学卒業後は普通のサラーリマンをして、酒造りは全くしていなかったそうですが、4年前に蔵に戻ってきて、このままでは蔵には未来はないと感じて、杜氏のもとで勉強をしつつ、清酒アカデミーで研修をして3年前から自分のお酒を造り始めました。 

当時は生産量も落ち込んでいたので、売れるお酒の造りをアカデミーの鈴木先生のアドバイスを受けて始めたそうで、その意味では広戸川の松崎さんと同じですね。 

そして、最初のお酒はどんな名前にするか悩んだそうですが、いい案が思いつかずにひらがなの「ささまさむね」としたそうですが、字体は書道家に書いてもらったそうです。字だけ見ると女性のように思えますが男性だそうです。 

1.ささまさむね 純米吟醸 生酒
2.ささまさむね 特別純米 無濾過生原酒
3.ささまさむね 特別純米 熟成
 

Dsc_0024_4Dsc_0025_5Dsc_0027_2*
1.ささまさむね 純米吟醸 生酒 

このお酒は喜多方産五百万石50%精米の純米吟醸生酒で、ガス感が残るように気を配ったお酒だそうです。酵母はF7-01(夢酵母)で、日本酒度は±0、酸度1.4の少し甘口のお酒、さわやかな酸とガス感で切れを出しているようです。 

飲んでみると、イソアミル系のさわやかの香りとともに、口に含んだ時の甘みのぐわいが素晴らしく、しっかりした味わいを感じました。アミノ酸度は0.9ですからアミノ酸の旨みよりはグルコースの甘さなのかもしれませんね。 

2.ささまさむね 特別純米 無濾過生原酒 

このお酒は同じ五百万石精米度55%を麹米に、華吹雪精米度55%を掛米に使った特別純米の1回火入れです。アルコール度数15度、日本酒度は+2くらいですが、酸度が1.6~1.7もあってすっきりした味わいです。最初は味が物足りないくらいでしたが、半年寝かすことによりだんだんまろやかさが出てきているので、晩酌用としておすすめだそうです。 

3.ささまさむね 特別純米 熟成 

このお酒は広島県産の千本錦50%精米の特別純米の1回火入れのお酒です。このお酒は2015年に作った最初のお酒で五万石が手に入らないので、広島県の千本錦にしたそうで、インタナショナル・ワイン・チャレンジに出したら純米酒の部門で入賞したそうです。そのお酒をこだま店で熟成したのもだそうです。 

酵母は他のお酒と同じ夢酵母ですが、飲んでみると熟成香したためかイソアミル系の香りも少なく、熟成香もない飲みやすいお酒になっていました。 

(まとめ)  

彼もアカデミー出身ですが、先生のいいとこどりをしてうまく自分お酒を造っているように思えました。この会の前日の福島の地酒の会で、純米大吟醸原酒の生一本を飲みましたが、甘口ですがとてもパワフルなのにバランスの良いお酒になっていました。たった3年でこんなお酒が造れるのはとてもいいセンスを持っていると感じました。 

<喜多の華酒造場 星自慢 > 

Dsc_0053この蔵は喜多方駅から歩いて数分の所にある駅に最も近い蔵です。創業は大正8年で、星金吾さんが味噌醤油を営んでいた本家より分家をして始めたそうです。最初の銘柄は「星正宗」でしたが、戦時中一時休業していた蔵を昭和31年に復活させた時「喜多の華}と改名したそうです。 

喜多方にある多くの蔵の中で最も新しい蔵だったので、喜多方の華になる思いでつけられたようです。この蔵を今の形にしたのは現社長の星啓志さんです。早くして父を亡くした啓志さんは、醸造研究所の先生に指導を仰ぐだけでなく、自ら色々な蔵に足を運んで勉強した結果、今のベースを作り上げたのですが、娘3人の家族なので、いずれ自分の代で蔵を閉じようと思っていたようです。 

写真の方が長女の星里英(りえ)さんで、若い頃は家を継ぐつもりはなく東京でOLをしていたそうですが、東京での試飲会で蔵のお酒の販売を手伝っているうちに、自ら勉強しなおして蔵を継ぐことを決めたそうで、東京農大短期大学に行くことを決め、卒業後蔵に戻ったのが4年前の2013年です。 

その後福島清酒アカデミーで研修を受けた(岩田悠二郎君の同期)後、今では杜氏としてつくりをまかされているそうです。お酒は蔵に戻ってからすぐにお酒を造り始めているそうで、今年で4年目になるお酒もあります。 

1.蔵太鼓 純米辛口 生酒
2.星自慢 特別純米 無濾過生原酒
3.喜多の華 純米吟醸
 

Dsc_0036_2Dsc_0034Dsc_0033_21.蔵太鼓 純米辛口 生酒 

このお酒はご飯を食べながらお酒を飲む人のために作ったお酒で、香りが少なめで辛口に仕上げたそうです。原料米は麹米がたかねみのり50%精米、掛米が一般米60%精米の純米酒で、日本酒度+10、アルコール度数15%としてアルコール度数を抑え、飲み飽きしないように作っています。酵母はTUAで7号系の福島酵母ですが、この酵母を使っているのは喜多の華酒造だけではないかと思います。 

このお酒は生原酒と生酒と火入れの3種類を造っているそうで、この蔵の定番となっているお酒です。 

2.星自慢 特別純米 無濾過生原酒 

このお酒はしっかりお酒を嗜む人のために作ったお酒で、社長の啓志さんが造った自信作で、星自慢という銘柄として平成元年から売り出しています。お米は麹米が五百万石50%精米、掛米がたかねみのり55%精米の純米酒で、酵母は9号系を使用していて、アルコール度数は18度、日本酒度-1、酸度1.7のお酒です。飲んでみるとしっかりとした味わいがあるけれども、飲んだ後の切れもありとても良いバランスになっています。お酒の好きな人にはぴったりのお酒と言えます。 

3.喜多の華 純米吟醸 

このお酒は理英さんが蔵に戻ってからすぐに作り始めたお酒で、今年4年目になるので星が4つついています。ですからこの星は毎年数が増えるそうです。このお酒は麹米が五百万石50%精米、掛米チヨニシキ55%精米を使った純米吟醸で、日本酒を飲まない人にも飲んでもらいたいような甘みがあって香りがあるお酒を目指したそうです。でもアルコール度数は17度もあり、飲みやすいけど、軽いお酒ではありません。それはこれをきっかけに普通のお酒も好きになってもらいたかったからだそうです。 

(まとめ)  

里英さんは蔵に戻った時に東京で知り合った人と結婚して、2人で酒を造ろうとスタートしたのですが、事情があって離婚したそうです。でも里英さんはお父さん似でとても明るい方なので、すぐに良い方に巡り合うとおもいます。これからどんなお酒を造りたいですかとお聞きしたら、この蔵の基本となる3つのお酒をベースにしてさらにブラシュアップしていきたいと、笑って答えてくれました。どんなお酒に進化するか楽しみですね。 

<合資会社会津錦 会津錦 斎藤孝典> 

Dsc_0054この蔵は耶麻郡高畑村にある蔵で、喜多方駅から西に10㎞程行った山間にある蔵で、最近合併して喜多方市になったそうです。 

創業は江戸時代のようですが、大火によって記録がなく、形上創業は明治元年となっている古い蔵です。創業は戦時中は休業していましたが、昭和22年に斎藤酒造を設立し、現在の会津錦となったのは昭和42年だそうです。 

写真お方は6代目の専務取締役の斎藤孝典さんです。孝典さんは1976年生まれの現在41歳ですが、大学は東京農大の醸造学部に行き、卒業後家庭の事情ですぐに蔵に戻って後、清酒アカデミーにはいきましたが、現在のようなシステムはまだ出来上がっていなかったそうです。 

造りの勉強は主に蔵にいた越後杜氏から教わり、26才の時には杜氏になったそうです。蔵の生産高は300石にも満たない小さな蔵で、若い孝典さんと蔵人の小竹さんだけで酒造りを始めることになったそうですが、酒造りは基本を大切にした真正直な酒を目指しているそうです。 

他の人とは違うお酒をつくりたい常々思っていたので、地元のお米を積極的に使うことを考え、最初はチヨニシキを使っていました。6年前にミルキークインという米を使ったら、もち米のような粘りがあり酒米としては大変使いにくかったのですが、出来上がった酒は日本酒度が+9もあるのにお米の甘さを感じることに驚いたそうです。そこで、飯米の良さを生かすことを考え、色々試験をした結果、今ではほとんどのお酒を天のつぶという飯米を使っているそうです。 

1.純米大吟醸 袋吊り生原酒
2.純米 火入れ原酒
3.純米 すっべったこっぺった
 

Dsc_0040_3Dsc_0042_3Dsc_0045_31.KU 純米大吟醸 袋吊り生原酒 

このお酒は新しいブランをのQ(KU)シリーズの最初に作ったお酒で、天のつぶ50%精米で、M310を酵母に使った純米大吟醸です。どうしてQ(KU)というかというと、福島9号の天のつぶを使っていることと、人が本来喰う米で、人が喜ぶお酒を造りたいということからQと呼んだそうです。どんなお酒なのでしょうか。 

飲んでみると飯米とはおもえないような甘みと切れの良さを持つお酒で、このお酒を気に入ってくれた日本料理店の店主が黒龍の雫に負けないお酒ということで雫と同じ瓶に入れたとのことでした。 

確かにすごくうまいお酒でしたが、飯米の50%精米の大吟醸が4合瓶で5000円もするのは高すぎです  

2.KU 純米 火入れ原酒 

このお酒はQシリーズの第2弾として2年まえに作られた純米酒の火入れ原酒です。お米は当然天のつぶ70%精米で酵母はうつくしま夢酵母です。このお酒のラベルがユニークでQの文字の中に侍がいて、ご飯を食べている姿が描かれています。 

飲んでみると70%精米とは思えない奇麗さのあるお酒でした。確かにすごいお酒ですが、4合瓶1550円は仕方がないのかな。 

3.純米 すっべったこっぺった 

このお酒は「つべこべ言わないで」という意味の方言で、孝典さんが杜氏になってすぐ作ったお酒ですが、今はお米を昔はチヨニシキだったのをこれも天のつぶに変えています。精米度は同じ70%で優しい甘みと酸を感じるお酒でしたが、KUとは格が違う感じでした。 

KUの純米とどうしてこんなに味が違うかをお聞きしたら、KU純米は大吟醸と同じ麹を使っているのと酵母の違いから来ていると言われました。火入れの回数はどちらも2回火入れだそうです。同じお米で精米度が同じでも造りで随分違うのですね。 

(まとめ)  

孝典さんは41歳でこの5蔵の若者の中では一番年上ですが、そのせいかとても自信をもってお酒を造っているように感じました。確かに70%精米の飯米からあれだけの味を出せるのですから、清酒アカデミーの教えだけではできない技だと思いました。これからどんなお酒が飛び出すのか注目していく蔵だと負いました 

<大和川酒造 弥右衛門 佐藤哲野> 

Dsc_0050_2この蔵は喜多方駅から北に5分ほど歩いたところにある蔵ですが、創業はとても古く、江戸時代の中期の1790年だそうです。今まで紹介した4蔵の生産高は300石前後でしたが、この蔵は約1500石以ある立派な蔵で、平成2年には郊外に飯能蔵を新設して近代化を図っています。 

写真の方は杜氏の佐藤哲野さんです。哲野さんは大学を卒業後、酒造りをしたくて、すぐ蔵に入って蔵人として酒造りをする一方、清酒アカデミーで研修を受けたり、東京の醸造研究所で勉強したりして腕を磨いてきたそうです。 

哲野さんのお父さんの房伸さんが現在9代目の佐藤彌右衛門を名乗っていますが、東日本大震災で原子力の不評被害が出たことから、こちらの問題を解決すべく会長に退いたので、それまで杜氏をしていた父の弟の和典さんが社長になったそうです。哲野さんはそのタイミングで3年前に杜氏になったそうです。ちょっと棚ぼたですね・・・ 

お酒を紹介します。 

1.彌右衛門 純米辛口
2.彌右衛門 純米カスモチ
3.彌右衛門 別
 

Dsc_0046Dsc_0047_2Dsc_0048_21.彌右衛門 純米辛口 

このお酒は彌右衛門の柱となっているお酒で、お米は麹米が夢の香50%精米で、掛米がチヨニシキ60%の純米酒です。2年前から本醸造を含めてすべてのお酒の麹米は夢の香50%にしているそうで、、そうすることにより非常に安定してきたそうです。この考えは新政の佐藤祐輔さんの考えと同じですね。今後真似するところが増えそうな気がします。 

飲んでみると米の甘みを感じる優しい味わいでした。冷でもお燗でもあうお酒でした。 

2.彌右衛門 純米カスモチ原酒 

昔から同じ方法で造ている伝統的なお酒で、麹米は夢の香50あ5、掛米がチヨニシキ65%精米で、麹の量は通常20%ですか、カスモチでは倍の40%とし、醪の水の量も少なめにして濃度の濃い状態で発酵させ、原酒のまま搾ったお酒です。 

カスとは醪のことを言い、モチは4段仕込みに使うもち米のことで、日本酒度-25もあり非常に甘いけど切れもあるお酒になっていて、常温熟成に向いたお酒だそうです。 

3.彌右衛門 別品 

このお酒は哲野さんが杜氏になってから始めた生酛造りのお酒で、お米は夢の香55%精米で酵母は別品は天然の蔵付き酵母で、酵母添加の生酛はすっぴんと言うそうです。柔らかくてクリアな甘みと優しい酸味のバランスの良い生酛でした。

まとめ)  

哲野さんの蔵はある程度仕組みもガッチリきまっっている大きな蔵なので、杜氏と言えどもやりたいことが勝手にできるわけではないけど、やれる範囲の中で、新しいことにチャレンジしているのはわかります。とてもまじめに取り組む方のようですが、思い切って色々チャレンジしてもらいたい気がしました。 

以上で喜多方の5蔵の紹介を終わりますが、僕の感想としては、清酒アカデミーの鈴木先生の教えが行き届いていて、みんな同じような造りをしているのかと思っていたら、鈴木先生の教えは理解したうえで、皆が個性ある造りをしていたので驚かされました、喜多方の蔵の将来は楽しみですね・・・・

にほんブログ村 酒ブログ 日本酒・地酒へ ←ご覧になったら、この日本酒マークをクリックしていただくとブログ村のページに戻ります。これでポイントが増えます。携帯やスマートフォーンでご覧の方はMobileModeではクリックしてもポイントは増えませんので、PC-Modeにしてからクリックしてください。よろしくお願いします。

2017年8月 6日 (日)

杉錦の生酛系のお酒は赤ワインをイメージしています

Dsc_0869

先日調布市の仙川にある日本酒バー「あふぎ」で静岡県の杉井酒造の杉井社長をおよびして杉錦のお酒を楽しむ会がありましたので、参加してきました。「あふぎ」は十数人しか入れないとても小さなお店ですが、ママの板垣さんが、静岡県の藤枝市出身で静岡県のお酒が大好きで去年この地にお店を構えてから、静岡県のお蔵さんをお招きして、時々日本酒の会を開いていまして、今回は第3回目だそうです。 

前回の志田泉のお酒のことやお店のことならば下記のブログを見てください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-c472.html 

Dsc_0907

今回は杉錦を醸している杉井酒造の社長兼杜氏の杉井均乃介さんをお呼びしての会です。僕は最近静岡のお酒には大変興味を持っていて、昔は毎年東京の如水会館で行われる静岡県の地酒祭りに行っていたのですが、それでは本当の静岡のお酒が判らないと、2017年には浜松市のオークラアクトシティホテル浜松で行われ地酒祭りに行って静岡のお酒を勉強してきたほどです。その時のことは下記のブログに書いてありますので、興味があればご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-7f5e.html 

そのブログで最初に取り上げたのは小夜衣を醸している森本酒造の森本社長で、次に紹介したのが杉錦の杉井社長です。この二つの蔵はとても小さな蔵で、静岡県のお酒造りを指導してきた河村伝兵衛さんが指導してき静岡県のお酒とはだいぶ違うお酒を造っていますが、お二人とも静岡県の蔵人では知らない人はいないほど有名な方です。その杉錦のお酒を、杉井さんの言葉で説明を受けながら飲める機会を逃してはなるまいと、勇んで参加しました。ところが当日は僕の勘違いで仙川駅を通り過ぎて調布駅まで行ってしまい、慌てて仙川駅まで戻るというチョンボをしてしまい、開宴に10分も送れることになりました。前にお邪魔したことがあるので安心していた油断ですね。 

静岡県の酵母や河村伝兵衛のことを知りたい方は下記のブログを読んでください。静岡県のお酒や酵母のことが良く判ると思います。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-27e3.html 

では早速、杉井酒造と杉井さんの紹介をしましょう。杉井酒造は静岡県藤枝市小石川町にある蔵で、藤枝駅から約1㎞程焼津の方の戻った瀬戸川の近くにあります。創業は天保13年ですから、江戸時代末期に杉井家本家から分離した杉井才助さんが今の地で商いを始めたのが最初で、酒造りを始めたのは明治に入ってからのようです。 

明治の中頃までは「亀川」、大正期は「杉政宗」という銘柄の酒を造っていて、「杉錦」を始めたのは昭和に入ってからのようです。そして現在の杉井均乃介さんは6代目に当たるそうです。 

Dsc_0890
杉井さんは昭和32年(1957年)生まれで、今年60歳になられますが、静岡市の高校を卒業後、東京農業大学に入学され、卒業後24才で蔵に戻って酒造りを始めました。最初の2年は東京の醸造試験所で研修をされたのち、蔵におられた南部杜氏と一緒に酒造りをしながら勉強してきたそうです。それだけでなく静岡県の工業技術センターの主任研究員の河村伝兵衛さんから吟醸造りについて色々と指導を受けたそうで、それがとても役になっているそうです。 

1994年7月に杉井酒造の社長になられましたが、まだその時は杜氏にはなっておりません。その頃、理由はお聞きしませんでしたが、杉井酒造の杜氏が森本酒造の杜氏も兼務していたことがあり、森本さんからお前の蔵の杜氏の酒はよくないと言われて、森本さん自らが杜氏となって造りを始めたので、自分もそうしようと思い杜氏になったのが2000年だそうで、酒造りの面では森本さんと同じ年に始めたことになるそうです 

それで杉井さんはどんなお酒を醸し出しているのでしょか。杉井さんが杜氏になったすぐは、お酒の味が変わったと言われたそうですが、3年努力した結果全国新酒鑑評会で3年連続金賞を受賞することができ、お客様の信頼を回復したのですが、なにか納得がいかない気がしていたそうです。 

今は吟醸造りが良い酒を造る基本という風潮があるようですが、吟醸造りだけがすべてではない、自分らしい切り口を考えようと思ったそうです。その時出会ったのが東京大学の農学博士の「坂口謹一郎」さんの本の「日本の酒」で、日本の長い稲作と食文化の歴史と共に歩んできた清酒は「日本人が大昔から育て上げてきた一大芸術作品である」という言葉だったそうです。 

その本の中で、日本の酒造りはうまい酒を作りだすための先人の知恵と工夫が凝縮されていて米と水、麹菌、酵母、乳酸菌などの自然の働きによって醸し出されることが書かれてあり、昔の技術を使えば深い味わいの酒が造れる可能性があるに違いないと、昔の造りの勉強を始めたそうです。そうしてたどり着いたのが「生酛・山廃」と「熟成」だったそうです。現在の生産高は400石位しかありませんが、全体の85%を生酛・山廃つくりで熟成するようになっています。 

でも吟醸造りのお酒の研究をやめたわけはありません。その証拠に今年の(平成28年醸造度)の静岡県清酒鑑評会で、純米吟醸部門と、吟醸部門の両方でナンバーワンとなる知事賞を獲得したからでも判ります。本日はそのお酒が飲めることなので、とても楽しみです。このお酒は全国新酒鑑評会にも出したのですが、金賞ではなく、入賞だったそうですが、金賞を取るためには、カプロン酸エチルの香りが出る酵母をつかって、マニュアル通り造れば誰でも金賞が取れる時代になっているので、あまり価値がなくなっているかもしれないとのことでした。 

この蔵の水は発酵力の強い中硬水だそうですから。生酛・山廃の造りには向いていたのでしょうね。もちろん杉井さんは知っていたからおやりになったなだと思います。 

Dsc_0901_3 

ではこの会で飲んだお酒を順次説明していきましょう。

1.誉富士 生酛純米酒 しずおか地元研究会20週記念酒
 

Dsc_0870_2このお酒は鈴木真弓さんが主宰する「しずおか地酒研究会」の20周年記念として杉井さんが造った生酛純米酒です。一般的に静岡のお酒は酢酸イソアミル系のさわやかな香りがして、酸が少なく日本酒度が高くすっきりした味わいのお酒が多いのですが、静岡らしい味を保った生酛を造ってもらいたいと依頼されて作ったお酒だそうです。 

具体的には生酛は湧き遅れをしないように総破精で立ち上げて、醪の麹は突き破精にした吟醸造りをするそうです。

お米は静岡県産の誉富士で、麹米が70%精米、掛米60%精米で酵母はHD-1で1回火入れの純米酒酒質は、アルコール分15.4度、日本酒度+8.5、酸度1.6のお酒となりました。 

飲んでみると、酸味は穏やかで、べたついた甘みはなく口に含んだ時にうまみがポット広がり後味でキレを感じるとともに、ほのかな酢酸イソアミル系の香りがするお酒になっていて、生酛とはわからないお酒に仕上がっていました。でも生酛らしい深みを感じる静岡流生酛酒と言えるかもしれませんね。 

2.杉錦 純米大吟醸 知事賞受賞記念酒 

Dsc_0872このお酒は出品酒として造ったお酒で、お米は兵庫県産の山田錦40%精米、酵母はHD-1を使用した純米大吟醸酒です。このお酒は出品酒原酒を少し加水して作った出品記念酒です。 

酒質はアルコール分15.5度、日本酒度+0、酸度1.5です。原酒の酸度は1.7もあったので、賞は取れないと思ってだしたら、全国新酒鑑評会では入賞、静岡県清酒鑑評会では純米吟醸部と吟醸部の2つの部門とも1位の知事賞を取ることになったそうです(出品酒は原酒で出しています) 

吟醸酒は純米大吟醸酒にわずかアルコールを添加しただけなのでほとんど同じものだそうです。 

賞に至った裏話を聞きました。静岡の審査では出品されたお酒を4回きき酒をして決めるそうで、4回目の最後に残った2つお酒(杉錦と磯自慢)を投票で決まったそうです。おめでとうございます。 

飲んだ印象は香りは意外に高くなく、甘みと酸味のバランスが良くてきれいの飲めるお酒で、生酛の味を知っている僕にとっては少し物足りない感じでした。 原酒のお酒を飲みたかったな。

3.杉錦 生酛純米吟醸 

Dsc_0876このお酒は兵庫県の山田錦60%精米で、掛米を48%精米を使った純米吟醸で、酵母はHD-1ですが、去年までは山田錦50%精米でやって純米大吟醸としていたものを今年は変えたので、純米吟醸としたそうです。それは生酛の酒母造りは精米度が悪いほうがやりやすいので、60%にしたそうです。 

酒質はアルコール分15~16度、日本酒度+5、酸度1.4でしたが、飲んでみると生酛らしいしっかりした味わいで、甘みもそこそこ感じられるお酒でした。それは酸度が1.5と比較的少なかったからだと思います。どうしてこんなバランスのお酒にしたのかはお聞きしませんでした。山田錦の品の良さを生かすためだったのでしょうか? 

一般的に生酛系のお酒は速醸より酸が高いのは、酒母の段階では速醸の場合は酸度が7で、生酛系では酸度が10位を狙って作るので、醪の段階で速醸は酸度が1.2~1.4で、生酛系では酸度は1.7~2.0になるそうです。乳酸を添加しない生酛系の酒母では乳酸がしっかり出ているのを確認する必要があるので、酸がどうしても高めにせざるを得ないようです。 

4.杉錦 玉栄山廃純米酒 

Dsc_0879このお酒は滋賀県産の玉栄を使ったお酒で、玉栄は心白の発生率が低く、硬いお米なので、味が濃く雑味を出やすいので、吟醸系には向いておらず、熟成には向いているので、味をしっかり出せる生酛系のお酒に適しているそうです 

この蔵では2004年から生酛系の造りを初めて行ったのですが、最初のトライが玉栄を使った山廃で、その時のお酒がダンチュウで普段のみの純米酒のベスト1として評価されてあっという間に売り切れたそうです。ですから、その後はずっと玉栄のお酒は山廃つくりをしていて、今後変更するつもりはないそうです。 

生酛系には山廃と生酛の2種類がありますが、生酛は小さなたらいに酛を入れて櫂で擦る酛擦り作業をするのに対して、山廃は酛を酒母タンクに一緒にいれて、電動ドリルでかき混ぜてとかす方法を取っているそうですが、味わいは基本的には同じだそうです。どちらが良い味を出せるかは出来次第ですが、生酛の方が早湧きが起きにくいので、失敗が少ないそうです。でもうまくいった場合は生酛の方が時間がかかっているだけ、良くなるかなという思い入れがあるそうです。 

玉栄の精米度は65%で、酵母は泡なし7号酵母だそうで、酒質はアルコール度は15~16度、日本酒度+10、酸度1.6で、飲んでみると日本酒度の割には辛く感じないで、軽い酸味を感じる飲み飽きしないお酒になっていました。不思議なことにお燗をしたら甘みがぐっと出てきたのには驚かされました。 

杉井さんのお話では今回のお酒は1年熟成しているけど、貯蔵温度が低かったので、もう少し熟成した方が良いと思うとのコメントをいただきました。 

5.杉錦 菩提酛 

Dsc_0881江戸時代に安定した酒母を作る方法として生酛が開発されましたが、その前は菩提酛と言われる方法が使われていました。提酛は平安時代後期に奈良県の菩提山正暦寺で開発された方法です。 

その方法は変わったやり方で、新酒を作るのに残暑の暑い日を選び、いかきという籠の中に生米9割、蒸米1割の比率で入れて水の中に3日間浸しておくと酸性で泡立った「そやし水」ができます。この水を仕込水として使って麹や蒸米を投入してお酒を造るやり方です。このそやし水は乳酸菌が造った乳酸が多く含まれた水で、気温の高い時期の方が乳酸菌が良く増殖して素早く乳酸ができるからいいそうです。  

この方法は江戸時代になって水酛と呼ばれて広く使われるようになったようですが、安定性が悪く、混入する微生物の種類によって酒質が大きく変わる欠点がありましたので、生酛ができてから次第に衰退したようです。  

菩提酛はは昭和の時代になって日本酒の醸造教科書からなくなり、今まで詳しいことがわかなかったようですが、1996年に奈良県工業技術センターと奈良県内の醸造元が菩提酛研究センターを立ち上げて、研究を重ね1999年に菩提酛を使った醸造に成功したのです。 

杉井さんは勉強家で好奇心旺盛の方ですから、この菩提酛を使ってお酒を造ってみようと思い立ち、菊姫が復活出版をした酒造教科書の一つの「杜氏醸造要訣」に詳しい記述があったので、それを基に試験をして見事に成功させました。その方法はホームページに書いてありましたのでそれを載せておきます。杉井さんのお話では蔵内で菩提酛を立てて、これを使った醪から醸造しているのは千葉県の五人娘と杉錦だけではないかとのことでした。 

その造り方ですが一合ほどの炊いた飯と一掴みの麹を布の袋に入れて一斗ほどの水に漬けます。この時、酛の掛米にする白米を生のまま一緒に水に入れます。7日くらい放置しておくと軟らかな飯は自然に溶け出して乳酸菌が繁殖して水はすっぱくなり、自然に酵母菌も生えてきます。そこで漬けておいた白米を取り出して蒸し、麹とこのすっぱい水を加えて酛を仕込みます。乳酸により雑菌の繁殖は抑えられ自然に繁殖した酵母はすぐに醗酵し始めます。酸とアルコールが蓄積されて仕込み後10日ほどで酛ができあがります。この酛を使って通常の3段仕込みを行います。 

他の蔵の菩提酛は少し甘めに作るのですが、杉井さんは糖分を抑えた辛口に仕上げたのはワインのように酸味があって糖分が少なくアルコール度数を下げたお酒を狙ったようです。原酒はアルコール度数が19%、酸度が3.0もあったそうですが、割り水をして、アルコール度数13~14度、日本酒度+10、酸度19というお酒にしています。お米は誉富士70%精米、酵母は無添加です。 

今回飲んだお酒は2015BYで1年半熟成したもので、飲んでみるとあたりが柔らかく、そんなに辛く感じない飲みやすいお酒でした。お食事と一緒に飲むにはスイット呑めてしまいますね。 

6.杉錦 生酛純米酒 八十八(やそはち) 

Dsc_0883このお酒は明治時代の酒をイメージして作ったお酒で、精米度を約88%にして生酛作りしたお酒です。 

明治時代は精米技術がなく、生酛造りで温度の高い状態で醸造していたので、日本酒度は+17、酸度は4~5くらいだったと思われます。昔の酒には現代のお酒とは異なる味わいの良さや深さがあったのではないかと思ったのが、このお酒を造った理由だそうです。 坂口先生の本には明治時代の金賞受賞酒の日本酒度は+10で酸度は2.7であったことが書いてあります。

お米は麹米は静岡県産誉富士70%精米、掛米は静岡県産ひとめぼれ90%精米なので、八十八と名前を付けたのでしょう。酵母は協会701号の純米酒です。昔は清酒はすべて純米酒だたtのですよね。 

出来上がった酒質はアルコール分13~14度、日本酒度+17、酸度2.0でした。この原酒はアルコール分は19度、酸度は3.0で割り水してこの値になっています。このままではすごく辛くてのめないのですが、室温で1年以上熟成させると甘みが出て、丸みも感じるようになるそうです。このお酒は2014BYのお酒なので、2年以上の熟成をしています。 

実際に飲んでみると穀物的な香りがするけれども、普通のお酒のような甘さはなく、アルコール分が低いので酔ってからも飲める飲み飽きしないおになっていました。昔の人も割り水をして飲んでいたのかな? 

7.杉錦 山廃純米 天保13年 

Dsc_0888_2このお酒は蔵の創業年の天保13年という名前を付けたお酒で、安価な一般米を使った純米酒だけど昔ながらのお酒の良さを持っているお酒を狙ったものです。 

具体的にはお米は麹米は静岡県産ひとめぼれ70%精米、掛米は静岡県産あいちのかおり78%、酵母は協会7号を使った純米酒です。一言でいえば、アルコール度数を上げた辛口で、酸度の高いお酒ですが、 醸造年度で日本酒度は違っているようです。年々色々と試されているんではないかと思います。

出来上がったお酒の酒質は2015年度醸造のもので、アルコール分15~16度、日本酒度+9、酸度2.6でした。 

冷えたまま飲んでみると軽い熟成の香りがして、ちょっと酸っぱいドライなお酒ですが、温度が上がってくると甘みを感じだし、良いバランスとなってきます。酸味が強いので焼肉に合わせると良いと思います。お燗をするとしっかりした味を感じながらソフトな柔らかさを感じるお酒になります。これは冷やして飲むお酒ではありませんね。 冷えているとただ酸っぱいお酒です。

この蔵の熟成はすべて1回火入れの瓶貯蔵で行っています。一般的には吟醸酒で香りを大事にするお酒は1回火入れで貯蔵しますが、一般酒は1回火入れしたお酒をタンク貯蔵して、瓶詰めする前にもう1回火入れするようです。 

8.純米 本みりん 飛鳥山 

Dsc_0906このみりんは静岡県で生産されている唯一の本みりんで、江戸時代に確立されたみりん本来の製法に従って復刻製造した本みりんです。原料にはもち米と米麹と米から作った焼酎を使うので、普通のみりんのように水飴や醸造用糖分や醸造用アルコールは使いません。従って普通のみりんの倍の価格がします。 

その製法は日本酒とはだいぶ違っていて、蒸したもち米に米麹をまぶし、冷やしてから米焼酎と一緒にタンクに入れて約2か月間発酵させます。こうしてできた熟成液を袋に入れて槽搾りで絞れば完成です。ろ過や火入れはしません。 

飲んでみると、濃厚だけれども自然で深い甘みをもち、フルーティで後味がすっきりする味わいでした。でもアルコール度数は日本酒と同じ14~15度もあるので、要注意です。 

以上でこの会で飲んだお酒の紹介を終わります。 

最後に杉井さんの酒について、全体を通じて感じたことを述べてみます。杉井さんはお酒造りに研究熱心でかつ好奇心が旺盛なので、自分で思いついたことをどんどん実行してしまう方だと思いますが、単なる思い付きではなく、裏打ちされたしっかりしたお考えを持っているように思えます。 

吟醸造りに関しては静岡県の先生であった河村傳兵衛さんの教えをきちっと学び、それを身に着けるだけでなく自分なりのお酒に仕上げていく技術と姿勢を感じました。また、今流行りの吟醸酒を造るだけでは満足せず、日本が昔から育ててきた日本酒古来の酒造りの手法を使うことを積極的にチャレンジし、菩提酛、生酛、山廃のお酒を造ってきましたが、凄いのはこの技術で今風の味のお酒を造るのではなく、昔のお酒の味を再現することにチャレンジされたのには驚かされました。失敗したら売れないお酒ができてしまう可能性があると思いますが、熟成の技術と組み合わせることにより、なんとなるとの自信があったものと思います。 

この杉井さんの考えのにはもっと先を見たお考えがあるように思えました。それは赤ワインの世界を日本酒で実現しようと考えておられるのだと思います。高級な赤ワインは味わいが奥深くて、良いものを飲むと何とも言えないほどの幸せ感を与えるお酒になると思っている人は多いと思います。その赤ワインは酸味が強く糖分がほとんどないお酒ですが、ブドウの持つ独特の成分と熟成の技術により醸し出されるものであることを杉井さんは良く知っておられるので、日本酒の場合も酸が多くて糖分の少ないお酒を熟成させることにより赤ワインに近いお酒を実現しようとしているように感じました。 

鯵の深みという点では、まだまだ道半ばと言えますが、きっと杉井さんならいずれか達成できる日が来るのではないかという期待があります。 

大変難しい課題かも知れませんが、ぜひ実現させてもらいたいものですね 

最後に「あふぎ」のママと杉井さんの2ショットをお見せします。いい雰囲気でしょう。 

Dsc_0903

いつもお料理の最後に作っていただく静岡おでんをお見せします。
とてもおいしいですよ。

Dsc_0893

にほんブログ村 酒ブログ 日本酒・地酒へ ←ご覧になったら、この日本酒マークをクリックしていただくとブログ村のページに戻ります。これでポイントが増えます。携帯やスマートフォーンでご覧の方はMobileModeではクリックしてもポイントは増えませんので、PC-Modeにしてからクリックしてください。よろしくお願いします。

杉錦の生酛系のお酒は赤ワインをイメージしています

Dsc_0869

先日調布市の仙川にある日本酒バー「あふぎ」で静岡県の杉井酒造の杉井社長をおよびして杉錦のお酒を楽しむ会がありましたので、参加してきました。「あふぎ」は十数人しか入れないとても小さなお店ですが、ママの板垣さんが、静岡県の藤枝市出身で静岡県のお酒が大好きで去年この地にお店を構えてから、静岡県のお蔵さんをお招きして、時々日本酒の会を開いていまして、今回は第3回目だそうです。 

前回の志田泉のお酒のことやお店のことならば下記のブログを見てください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-c472.html 

Dsc_0907

今回は杉錦を醸している杉井酒造の社長兼杜氏の杉井均乃介さんをお呼びしての会です。僕は最近静岡のお酒には大変興味を持っていて、昔は毎年東京の如水会館で行われる静岡県の地酒祭りに行っていたのですが、それでは本当の静岡のお酒が判らないと、2017年には浜松市のオークラアクトシティホテル浜松で行われ地酒祭りに行って静岡のお酒を勉強してきたほどです。その時のことは下記のブログに書いてありますので、興味があればご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-7f5e.html 

そのブログで最初に取り上げたのは小夜衣を醸している森本酒造の森本社長で、次に紹介したのが杉錦の杉井社長です。この二つの蔵はとても小さな蔵で、静岡県のお酒造りを指導してきた河村伝兵衛さんが指導してき静岡県のお酒とはだいぶ違うお酒を造っていますが、お二人とも静岡県の蔵人では知らない人はいないほど有名な方です。その杉錦のお酒を、杉井さんの言葉で説明を受けながら飲める機会を逃してはなるまいと、勇んで参加しました。ところが当日は僕の勘違いで仙川駅を通り過ぎて調布駅まで行ってしまい、慌てて仙川駅まで戻るというチョンボをしてしまい、開宴に10分も送れることになりました。前にお邪魔したことがあるので安心していた油断ですね。 

静岡県の酵母や河村伝兵衛のことを知りたい方は下記のブログを読んでください。静岡県のお酒や酵母のことが良く判ると思います。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-27e3.html 

では早速、杉井酒造と杉井さんの紹介をしましょう。杉井酒造は静岡県藤枝市小石川町にある蔵で、藤枝駅から約1㎞程焼津の方の戻った瀬戸川の近くにあります。創業は天保13年ですから、江戸時代末期に杉井家本家から分離した杉井才助さんが今の地で商いを始めたのが最初で、酒造りを始めたのは明治に入ってからのようです。 

明治の中頃までは「亀川」、大正期は「杉政宗」という銘柄の酒を造っていて、「杉錦」を始めたのは昭和に入ってからのようです。そして現在の杉井均乃介さんは6代目に当たるそうです。 

Dsc_0890
杉井さんは昭和32年(1957年)生まれで、今年60歳になられますが、静岡市の高校を卒業後、東京農業大学に入学され、卒業後24才で蔵に戻って酒造りを始めました。最初の2年は東京の醸造試験所で研修をされたのち、蔵におられた南部杜氏と一緒に酒造りをしながら勉強してきたそうです。それだけでなく静岡県の工業技術センターの主任研究員の河村伝兵衛さんから吟醸造りについて色々と指導を受けたそうで、それがとても役になっているそうです。 

1994年7月に杉井酒造の社長になられましたが、まだその時は杜氏にはなっておりません。その頃、理由はお聞きしませんでしたが、杉井酒造の杜氏が森本酒造の杜氏も兼務していたことがあり、森本さんからお前の蔵の杜氏の酒はよくないと言われて、森本さん自らが杜氏となって造りを始めたので、自分もそうしようと思い杜氏になったのが2000年だそうで、酒造りの面では森本さんと同じ年に始めたことになるそうです 

それで杉井さんはどんなお酒を醸し出しているのでしょか。杉井さんが杜氏になったすぐは、お酒の味が変わったと言われたそうですが、3年努力した結果全国新酒鑑評会で3年連続金賞を受賞することができ、お客様の信頼を回復したのですが、なにか納得がいかない気がしていたそうです。 

今は吟醸造りが良い酒を造る基本という風潮があるようですが、吟醸造りだけがすべてではない、自分らしい切り口を考えようと思ったそうです。その時出会ったのが東京大学の農学博士の「坂口謹一郎」さんの本の「日本の酒」で、日本の長い稲作と食文化の歴史と共に歩んできた清酒は「日本人が大昔から育て上げてきた一大芸術作品である」という言葉だったそうです。 

その本の中で、日本の酒造りはうまい酒を作りだすための先人の知恵と工夫が凝縮されていて米と水、麹菌、酵母、乳酸菌などの自然の働きによって醸し出されることが書かれてあり、昔の技術を使えば深い味わいの酒が造れる可能性があるに違いないと、昔の造りの勉強を始めたそうです。そうしてたどり着いたのが「生酛・山廃」と「熟成」だったそうです。現在の生産高は400石位しかありませんが、全体の85%を生酛・山廃つくりで熟成するようになっています。 

でも吟醸造りのお酒の研究をやめたわけはありません。その証拠に今年の(平成28年醸造度)の静岡県清酒鑑評会で、純米吟醸部門と、吟醸部門の両方でナンバーワンとなる知事賞を獲得したからでも判ります。本日はそのお酒が飲めることなので、とても楽しみです。このお酒は全国新酒鑑評会にも出したのですが、金賞ではなく、入賞だったそうですが、金賞を取るためには、カプロン酸エチルの香りが出る酵母をつかって、マニュアル通り造れば誰でも金賞が取れる時代になっているので、あまり価値がなくなっているかもしれないとのことでした。 

この蔵の水は発酵力の強い中硬水だそうですから。生酛・山廃の造りには向いていたのでしょうね。もちろん杉井さんは知っていたからおやりになったなだと思います。 

Dsc_0901_3 

ではこの会で飲んだお酒を順次説明していきましょう。

1.誉富士 生酛純米酒 しずおか地元研究会20週記念酒
 

Dsc_0870_2このお酒は鈴木真弓さんが主宰する「しずおか地酒研究会」の20周年記念として杉井さんが造った生酛純米酒です。一般的に静岡のお酒は酢酸イソアミル系のさわやかな香りがして、酸が少なく日本酒度が高くすっきりした味わいのお酒が多いのですが、静岡らしい味を保った生酛を造ってもらいたいと依頼されて作ったお酒だそうです。 

具体的には生酛は湧き遅れをしないように総破精で立ち上げて、醪の麹は突き破精にした吟醸造りをするそうです。

お米は静岡県産の誉富士で、麹米が70%精米、掛米60%精米で酵母はHD-1で1回火入れの純米酒酒質は、アルコール分15.4度、日本酒度+8.5、酸度1.6のお酒となりました。 

飲んでみると、酸味は穏やかで、べたついた甘みはなく口に含んだ時にうまみがポット広がり後味でキレを感じるとともに、ほのかな酢酸イソアミル系の香りがするお酒になっていて、生酛とはわからないお酒に仕上がっていました。でも生酛らしい深みを感じる静岡流生酛酒と言えるかもしれませんね。 

2.杉錦 純米大吟醸 知事賞受賞記念酒 

Dsc_0872このお酒は出品酒として造ったお酒で、お米は兵庫県産の山田錦40%精米、酵母はHD-1を使用した純米大吟醸酒です。このお酒は出品酒原酒を少し加水して作った出品記念酒です。 

酒質はアルコール分15.5度、日本酒度+0、酸度1.5です。原酒の酸度は1.7もあったので、賞は取れないと思ってだしたら、全国新酒鑑評会では入賞、静岡県清酒鑑評会では純米吟醸部と吟醸部の2つの部門とも1位の知事賞を取ることになったそうです(出品酒は原酒で出しています) 

吟醸酒は純米大吟醸酒にわずかアルコールを添加しただけなのでほとんど同じものだそうです。 

賞に至った裏話を聞きました。静岡の審査では出品されたお酒を4回きき酒をして決めるそうで、4回目の最後に残った2つお酒(杉錦と磯自慢)を投票で決まったそうです。おめでとうございます。 

飲んだ印象は香りは意外に高くなく、甘みと酸味のバランスが良くてきれいの飲めるお酒で、生酛の味を知っている僕にとっては少し物足りない感じでした。 原酒のお酒を飲みたかったな。

3.杉錦 生酛純米吟醸 

Dsc_0876このお酒は兵庫県の山田錦60%精米で、掛米を48%精米を使った純米吟醸で、酵母はHD-1ですが、去年までは山田錦50%精米でやって純米大吟醸としていたものを今年は変えたので、純米吟醸としたそうです。それは生酛の酒母造りは精米度が悪いほうがやりやすいので、60%にしたそうです。 

酒質はアルコール分15~16度、日本酒度+5、酸度1.4でしたが、飲んでみると生酛らしいしっかりした味わいで、甘みもそこそこ感じられるお酒でした。それは酸度が1.5と比較的少なかったからだと思います。どうしてこんなバランスのお酒にしたのかはお聞きしませんでした。山田錦の品の良さを生かすためだったのでしょうか? 

一般的に生酛系のお酒は速醸より酸が高いのは、酒母の段階では速醸の場合は酸度が7で、生酛系では酸度が10位を狙って作るので、醪の段階で速醸は酸度が1.2~1.4で、生酛系では酸度は1.7~2.0になるそうです。乳酸を添加しない生酛系の酒母では乳酸がしっかり出ているのを確認する必要があるので、酸がどうしても高めにせざるを得ないようです。 

4.杉錦 玉栄山廃純米酒 

Dsc_0879このお酒は滋賀県産の玉栄を使ったお酒で、玉栄は心白の発生率が低く、硬いお米なので、味が濃く雑味を出やすいので、吟醸系には向いておらず、熟成には向いているので、味をしっかり出せる生酛系のお酒に適しているそうです 

この蔵では2004年から生酛系の造りを初めて行ったのですが、最初のトライが玉栄を使った山廃で、その時のお酒がダンチュウで普段のみの純米酒のベスト1として評価されてあっという間に売り切れたそうです。ですから、その後はずっと玉栄のお酒は山廃つくりをしていて、今後変更するつもりはないそうです。 

生酛系には山廃と生酛の2種類がありますが、生酛は小さなたらいに酛を入れて櫂で擦る酛擦り作業をするのに対して、山廃は酛を酒母タンクに一緒にいれて、電動ドリルでかき混ぜてとかす方法を取っているそうですが、味わいは基本的には同じだそうです。どちらが良い味を出せるかは出来次第ですが、生酛の方が早湧きが起きにくいので、失敗が少ないそうです。でもうまくいった場合は生酛の方が時間がかかっているだけ、良くなるかなという思い入れがあるそうです。 

玉栄の精米度は65%で、酵母は泡なし7号酵母だそうで、酒質はアルコール度は15~16度、日本酒度+10、酸度1.6で、飲んでみると日本酒度の割には辛く感じないで、軽い酸味を感じる飲み飽きしないお酒になっていました。不思議なことにお燗をしたら甘みがぐっと出てきたのには驚かされました。 

杉井さんのお話では今回のお酒は1年熟成しているけど、貯蔵温度が低かったので、もう少し熟成した方が良いと思うとのコメントをいただきました。 

5.杉錦 菩提酛 

Dsc_0881江戸時代に安定した酒母を作る方法として生酛が開発されましたが、その前は菩提酛と言われる方法が使われていました。提酛は平安時代後期に奈良県の菩提山正暦寺で開発された方法です。 

その方法は変わったやり方で、新酒を作るのに残暑の暑い日を選び、いかきという籠の中に生米9割、蒸米1割の比率で入れて水の中に3日間浸しておくと酸性で泡立った「そやし水」ができます。この水を仕込水として使って麹や蒸米を投入してお酒を造るやり方です。このそやし水は乳酸菌が造った乳酸が多く含まれた水で、気温の高い時期の方が乳酸菌が良く増殖して素早く乳酸ができるからいいそうです。  

この方法は江戸時代になって水酛と呼ばれて広く使われるようになったようですが、安定性が悪く、混入する微生物の種類によって酒質が大きく変わる欠点がありましたので、生酛ができてから次第に衰退したようです。  

菩提酛はは昭和の時代になって日本酒の醸造教科書からなくなり、今まで詳しいことがわかなかったようですが、1996年に奈良県工業技術センターと奈良県内の醸造元が菩提酛研究センターを立ち上げて、研究を重ね1999年に菩提酛を使った醸造に成功したのです。 

杉井さんは勉強家で好奇心旺盛の方ですから、この菩提酛を使ってお酒を造ってみようと思い立ち、菊姫が復活出版をした酒造教科書の一つの「杜氏醸造要訣」に詳しい記述があったので、それを基に試験をして見事に成功させました。その方法はホームページに書いてありましたのでそれを載せておきます。杉井さんのお話では蔵内で菩提酛を立てて、これを使った醪から醸造しているのは千葉県の五人娘と杉錦だけではないかとのことでした。 

その造り方ですが一合ほどの炊いた飯と一掴みの麹を布の袋に入れて一斗ほどの水に漬けます。この時、酛の掛米にする白米を生のまま一緒に水に入れます。7日くらい放置しておくと軟らかな飯は自然に溶け出して乳酸菌が繁殖して水はすっぱくなり、自然に酵母菌も生えてきます。そこで漬けておいた白米を取り出して蒸し、麹とこのすっぱい水を加えて酛を仕込みます。乳酸により雑菌の繁殖は抑えられ自然に繁殖した酵母はすぐに醗酵し始めます。酸とアルコールが蓄積されて仕込み後10日ほどで酛ができあがります。この酛を使って通常の3段仕込みを行います。 

他の蔵の菩提酛は少し甘めに作るのですが、杉井さんは糖分を抑えた辛口に仕上げたのはワインのように酸味があって糖分が少なくアルコール度数を下げたお酒を狙ったようです。原酒はアルコール度数が19%、酸度が3.0もあったそうですが、割り水をして、アルコール度数13~14度、日本酒度+10、酸度19というお酒にしています。お米は誉富士70%精米、酵母は無添加です。 

今回飲んだお酒は2015BYで1年半熟成したもので、飲んでみるとあたりが柔らかく、そんなに辛く感じない飲みやすいお酒でした。お食事と一緒に飲むにはスイット呑めてしまいますね。 

6.杉錦 生酛純米酒 八十八(やそはち) 

Dsc_0883このお酒は明治時代の酒をイメージして作ったお酒で、精米度を約88%にして生酛作りしたお酒です。 

明治時代は精米技術がなく、生酛造りで温度の高い状態で醸造していたので、日本酒度は+17、酸度は4~5くらいだったと思われます。昔の酒には現代のお酒とは異なる味わいの良さや深さがあったのではないかと思ったのが、このお酒を造った理由だそうです。 坂口先生の本には明治時代の金賞受賞酒の日本酒度は+10で酸度は2.7であったことが書いてあります。

お米は麹米は静岡県産誉富士70%精米、掛米は静岡県産ひとめぼれ90%精米なので、八十八と名前を付けたのでしょう。酵母は協会701号の純米酒です。昔は清酒はすべて純米酒だたtのですよね。 

出来上がった酒質はアルコール分13~14度、日本酒度+17、酸度2.0でした。この原酒はアルコール分は19度、酸度は3.0で割り水してこの値になっています。このままではすごく辛くてのめないのですが、室温で1年以上熟成させると甘みが出て、丸みも感じるようになるそうです。このお酒は2014BYのお酒なので、2年以上の熟成をしています。 

実際に飲んでみると穀物的な香りがするけれども、普通のお酒のような甘さはなく、アルコール分が低いので酔ってからも飲める飲み飽きしないおになっていました。昔の人も割り水をして飲んでいたのかな? 

7.杉錦 山廃純米 天保13年 

Dsc_0888_2このお酒は蔵の創業年の天保13年という名前を付けたお酒で、安価な一般米を使った純米酒だけど昔ながらのお酒の良さを持っているお酒を狙ったものです。 

具体的にはお米は麹米は静岡県産ひとめぼれ70%精米、掛米は静岡県産あいちのかおり78%、酵母は協会7号を使った純米酒です。一言でいえば、アルコール度数を上げた辛口で、酸度の高いお酒ですが、 醸造年度で日本酒度は違っているようです。年々色々と試されているんではないかと思います。

出来上がったお酒の酒質は2015年度醸造のもので、アルコール分15~16度、日本酒度+9、酸度2.6でした。 

冷えたまま飲んでみると軽い熟成の香りがして、ちょっと酸っぱいドライなお酒ですが、温度が上がってくると甘みを感じだし、良いバランスとなってきます。酸味が強いので焼肉に合わせると良いと思います。お燗をするとしっかりした味を感じながらソフトな柔らかさを感じるお酒になります。これは冷やして飲むお酒ではありませんね。 冷えているとただ酸っぱいお酒です。

この蔵の熟成はすべて1回火入れの瓶貯蔵で行っています。一般的には吟醸酒で香りを大事にするお酒は1回火入れで貯蔵しますが、一般酒は1回火入れしたお酒をタンク貯蔵して、瓶詰めする前にもう1回火入れするようです。 

8.純米 本みりん 飛鳥山 

Dsc_0906このみりんは静岡県で生産されている唯一の本みりんで、江戸時代に確立されたみりん本来の製法に従って復刻製造した本みりんです。原料にはもち米と米麹と米から作った焼酎を使うので、普通のみりんのように水飴や醸造用糖分や醸造用アルコールは使いません。従って普通のみりんの倍の価格がします。 

その製法は日本酒とはだいぶ違っていて、蒸したもち米に米麹をまぶし、冷やしてから米焼酎と一緒にタンクに入れて約2か月間発酵させます。こうしてできた熟成液を袋に入れて槽搾りで絞れば完成です。ろ過や火入れはしません。 

飲んでみると、濃厚だけれども自然で深い甘みをもち、フルーティで後味がすっきりする味わいでした。でもアルコール度数は日本酒と同じ14~15度もあるので、要注意です。 

以上でこの会で飲んだお酒の紹介を終わります。 

最後に杉井さんの酒について、全体を通じて感じたことを述べてみます。杉井さんはお酒造りに研究熱心でかつ好奇心が旺盛なので、自分で思いついたことをどんどん実行してしまう方だと思いますが、単なる思い付きではなく、裏打ちされたしっかりしたお考えを持っているように思えます。 

吟醸造りに関しては静岡県の先生であった河村傳兵衛さんの教えをきちっと学び、それを身に着けるだけでなく自分なりのお酒に仕上げていく技術と姿勢を感じました。また、今流行りの吟醸酒を造るだけでは満足せず、日本が昔から育ててきた日本酒古来の酒造りの手法を使うことを積極的にチャレンジし、菩提酛、生酛、山廃のお酒を造ってきましたが、凄いのはこの技術で今風の味のお酒を造るのではなく、昔のお酒の味を再現することにチャレンジされたのには驚かされました。失敗したら売れないお酒ができてしまう可能性があると思いますが、熟成の技術と組み合わせることにより、なんとなるとの自信があったものと思います。 

この杉井さんの考えのにはもっと先を見たお考えがあるように思えました。それは赤ワインの世界を日本酒で実現しようと考えておられるのだと思います。高級な赤ワインは味わいが奥深くて、良いものを飲むと何とも言えないほどの幸せ感を与えるお酒になると思っている人は多いと思います。その赤ワインは酸味が強く糖分がほとんどないお酒ですが、ブドウの持つ独特の成分と熟成の技術により醸し出されるものであることを杉井さんは良く知っておられるので、日本酒の場合も酸が多くて糖分の少ないお酒を熟成させることにより赤ワインに近いお酒を実現しようとしているように感じました。 

鯵の深みという点では、まだまだ道半ばと言えますが、きっと杉井さんならいずれか達成できる日が来るのではないかという期待があります。 

大変難しい課題かも知れませんが、ぜひ実現させてもらいたいものですね 

最後に「あふぎ」のママと杉井さんの2ショットをお見せします。いい雰囲気でしょう。 

Dsc_0903

いつもお料理の最後に作っていただく静岡おでんをお見せします。
とてもおいしいですよ。

Dsc_0893

にほんブログ村 酒ブログ 日本酒・地酒へ ←ご覧になったら、この日本酒マークをクリックしていただくとブログ村のページに戻ります。これでポイントが増えます。携帯やスマートフォーンでご覧の方はMobileModeではクリックしてもポイントは増えませんので、PC-Modeにしてからクリックしてください。よろしくお願いします。

杉錦の生酛系のお酒は赤ワインをイメージしています

Dsc_0869

先日調布市の仙川にある日本酒バー「あふぎ」で静岡県の杉井酒造の杉井社長をおよびして杉錦のお酒を楽しむ会がありましたので、参加してきました。「あふぎ」は十数人しか入れないとても小さなお店ですが、ママの板垣さんが、静岡県の藤枝市出身で静岡県のお酒が大好きで去年この地にお店を構えてから、静岡県のお蔵さんをお招きして、時々日本酒の会を開いていまして、今回は第3回目だそうです。 

前回の志田泉のお酒のことやお店のことならば下記のブログを見てください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-c472.html 

Dsc_0907

今回は杉錦を醸している杉井酒造の社長兼杜氏の杉井均乃介さんをお呼びしての会です。僕は最近静岡のお酒には大変興味を持っていて、昔は毎年東京の如水会館で行われる静岡県の地酒祭りに行っていたのですが、それでは本当の静岡のお酒が判らないと、2017年には浜松市のオークラアクトシティホテル浜松で行われ地酒祭りに行って静岡のお酒を勉強してきたほどです。その時のことは下記のブログに書いてありますので、興味があればご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-7f5e.html 

そのブログで最初に取り上げたのは小夜衣を醸している森本酒造の森本社長で、次に紹介したのが杉錦の杉井社長です。この二つの蔵はとても小さな蔵で、静岡県のお酒造りを指導してきた河村伝兵衛さんが指導してき静岡県のお酒とはだいぶ違うお酒を造っていますが、お二人とも静岡県の蔵人では知らない人はいないほど有名な方です。その杉錦のお酒を、杉井さんの言葉で説明を受けながら飲める機会を逃してはなるまいと、勇んで参加しました。ところが当日は僕の勘違いで仙川駅を通り過ぎて調布駅まで行ってしまい、慌てて仙川駅まで戻るというチョンボをしてしまい、開宴に10分も送れることになりました。前にお邪魔したことがあるので安心していた油断ですね。 

静岡県の酵母や河村伝兵衛のことを知りたい方は下記のブログを読んでください。静岡県のお酒や酵母のことが良く判ると思います。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-27e3.html 

では早速、杉井酒造と杉井さんの紹介をしましょう。杉井酒造は静岡県藤枝市小石川町にある蔵で、藤枝駅から約1㎞程焼津の方の戻った瀬戸川の近くにあります。創業は天保13年ですから、江戸時代末期に杉井家本家から分離した杉井才助さんが今の地で商いを始めたのが最初で、酒造りを始めたのは明治に入ってからのようです。 

明治の中頃までは「亀川」、大正期は「杉政宗」という銘柄の酒を造っていて、「杉錦」を始めたのは昭和に入ってからのようです。そして現在の杉井均乃介さんは6代目に当たるそうです。 

Dsc_0890
杉井さんは昭和32年(1957年)生まれで、今年60歳になられますが、静岡市の高校を卒業後、東京農業大学に入学され、卒業後24才で蔵に戻って酒造りを始めました。最初の2年は東京の醸造試験所で研修をされたのち、蔵におられた南部杜氏と一緒に酒造りをしながら勉強してきたそうです。それだけでなく静岡県の工業技術センターの主任研究員の河村伝兵衛さんから吟醸造りについて色々と指導を受けたそうで、それがとても役になっているそうです。 

1994年7月に杉井酒造の社長になられましたが、まだその時は杜氏にはなっておりません。その頃、理由はお聞きしませんでしたが、杉井酒造の杜氏が森本酒造の杜氏も兼務していたことがあり、森本さんからお前の蔵の杜氏の酒はよくないと言われて、森本さん自らが杜氏となって造りを始めたので、自分もそうしようと思い杜氏になったのが2000年だそうで、酒造りの面では森本さんと同じ年に始めたことになるそうです 

それで杉井さんはどんなお酒を醸し出しているのでしょか。杉井さんが杜氏になったすぐは、お酒の味が変わったと言われたそうですが、3年努力した結果全国新酒鑑評会で3年連続金賞を受賞することができ、お客様の信頼を回復したのですが、なにか納得がいかない気がしていたそうです。 

今は吟醸造りが良い酒を造る基本という風潮があるようですが、吟醸造りだけがすべてではない、自分らしい切り口を考えようと思ったそうです。その時出会ったのが東京大学の農学博士の「坂口謹一郎」さんの本の「日本の酒」で、日本の長い稲作と食文化の歴史と共に歩んできた清酒は「日本人が大昔から育て上げてきた一大芸術作品である」という言葉だったそうです。 

その本の中で、日本の酒造りはうまい酒を作りだすための先人の知恵と工夫が凝縮されていて米と水、麹菌、酵母、乳酸菌などの自然の働きによって醸し出されることが書かれてあり、昔の技術を使えば深い味わいの酒が造れる可能性があるに違いないと、昔の造りの勉強を始めたそうです。そうしてたどり着いたのが「生酛・山廃」と「熟成」だったそうです。現在の生産高は400石位しかありませんが、全体の85%を生酛・山廃つくりで熟成するようになっています。 

でも吟醸造りのお酒の研究をやめたわけはありません。その証拠に今年の(平成28年醸造度)の静岡県清酒鑑評会で、純米吟醸部門と、吟醸部門の両方でナンバーワンとなる知事賞を獲得したからでも判ります。本日はそのお酒が飲めることなので、とても楽しみです。このお酒は全国新酒鑑評会にも出したのですが、金賞ではなく、入賞だったそうですが、金賞を取るためには、カプロン酸エチルの香りが出る酵母をつかって、マニュアル通り造れば誰でも金賞が取れる時代になっているので、あまり価値がなくなっているかもしれないとのことでした。 

この蔵の水は発酵力の強い中硬水だそうですから。生酛・山廃の造りには向いていたのでしょうね。もちろん杉井さんは知っていたからおやりになったなだと思います。 

Dsc_0901_3 

ではこの会で飲んだお酒を順次説明していきましょう。

1.誉富士 生酛純米酒 しずおか地元研究会20週記念酒
 

Dsc_0870_2このお酒は鈴木真弓さんが主宰する「しずおか地酒研究会」の20周年記念として杉井さんが造った生酛純米酒です。一般的に静岡のお酒は酢酸イソアミル系のさわやかな香りがして、酸が少なく日本酒度が高くすっきりした味わいのお酒が多いのですが、静岡らしい味を保った生酛を造ってもらいたいと依頼されて作ったお酒だそうです。 

具体的には生酛は湧き遅れをしないように総破精で立ち上げて、醪の麹は突き破精にした吟醸造りをするそうです。

お米は静岡県産の誉富士で、麹米が70%精米、掛米60%精米で酵母はHD-1で1回火入れの純米酒酒質は、アルコール分15.4度、日本酒度+8.5、酸度1.6のお酒となりました。 

飲んでみると、酸味は穏やかで、べたついた甘みはなく口に含んだ時にうまみがポット広がり後味でキレを感じるとともに、ほのかな酢酸イソアミル系の香りがするお酒になっていて、生酛とはわからないお酒に仕上がっていました。でも生酛らしい深みを感じる静岡流生酛酒と言えるかもしれませんね。 

2.杉錦 純米大吟醸 知事賞受賞記念酒 

Dsc_0872このお酒は出品酒として造ったお酒で、お米は兵庫県産の山田錦40%精米、酵母はHD-1を使用した純米大吟醸酒です。このお酒は出品酒原酒を少し加水して作った出品記念酒です。 

酒質はアルコール分15.5度、日本酒度+0、酸度1.5です。原酒の酸度は1.7もあったので、賞は取れないと思ってだしたら、全国新酒鑑評会では入賞、静岡県清酒鑑評会では純米吟醸部と吟醸部の2つの部門とも1位の知事賞を取ることになったそうです(出品酒は原酒で出しています) 

吟醸酒は純米大吟醸酒にわずかアルコールを添加しただけなのでほとんど同じものだそうです。 

賞に至った裏話を聞きました。静岡の審査では出品されたお酒を4回きき酒をして決めるそうで、4回目の最後に残った2つお酒(杉錦と磯自慢)を投票で決まったそうです。おめでとうございます。 

飲んだ印象は香りは意外に高くなく、甘みと酸味のバランスが良くてきれいの飲めるお酒で、生酛の味を知っている僕にとっては少し物足りない感じでした。 原酒のお酒を飲みたかったな。

3.杉錦 生酛純米吟醸 

Dsc_0876このお酒は兵庫県の山田錦60%精米で、掛米を48%精米を使った純米吟醸で、酵母はHD-1ですが、去年までは山田錦50%精米でやって純米大吟醸としていたものを今年は変えたので、純米吟醸としたそうです。それは生酛の酒母造りは精米度が悪いほうがやりやすいので、60%にしたそうです。 

酒質はアルコール分15~16度、日本酒度+5、酸度1.4でしたが、飲んでみると生酛らしいしっかりした味わいで、甘みもそこそこ感じられるお酒でした。それは酸度が1.5と比較的少なかったからだと思います。どうしてこんなバランスのお酒にしたのかはお聞きしませんでした。山田錦の品の良さを生かすためだったのでしょうか? 

一般的に生酛系のお酒は速醸より酸が高いのは、酒母の段階では速醸の場合は酸度が7で、生酛系では酸度が10位を狙って作るので、醪の段階で速醸は酸度が1.2~1.4で、生酛系では酸度は1.7~2.0になるそうです。乳酸を添加しない生酛系の酒母では乳酸がしっかり出ているのを確認する必要があるので、酸がどうしても高めにせざるを得ないようです。 

4.杉錦 玉栄山廃純米酒 

Dsc_0879このお酒は滋賀県産の玉栄を使ったお酒で、玉栄は心白の発生率が低く、硬いお米なので、味が濃く雑味を出やすいので、吟醸系には向いておらず、熟成には向いているので、味をしっかり出せる生酛系のお酒に適しているそうです 

この蔵では2004年から生酛系の造りを初めて行ったのですが、最初のトライが玉栄を使った山廃で、その時のお酒がダンチュウで普段のみの純米酒のベスト1として評価されてあっという間に売り切れたそうです。ですから、その後はずっと玉栄のお酒は山廃つくりをしていて、今後変更するつもりはないそうです。 

生酛系には山廃と生酛の2種類がありますが、生酛は小さなたらいに酛を入れて櫂で擦る酛擦り作業をするのに対して、山廃は酛を酒母タンクに一緒にいれて、電動ドリルでかき混ぜてとかす方法を取っているそうですが、味わいは基本的には同じだそうです。どちらが良い味を出せるかは出来次第ですが、生酛の方が早湧きが起きにくいので、失敗が少ないそうです。でもうまくいった場合は生酛の方が時間がかかっているだけ、良くなるかなという思い入れがあるそうです。 

玉栄の精米度は65%で、酵母は泡なし7号酵母だそうで、酒質はアルコール度は15~16度、日本酒度+10、酸度1.6で、飲んでみると日本酒度の割には辛く感じないで、軽い酸味を感じる飲み飽きしないお酒になっていました。不思議なことにお燗をしたら甘みがぐっと出てきたのには驚かされました。 

杉井さんのお話では今回のお酒は1年熟成しているけど、貯蔵温度が低かったので、もう少し熟成した方が良いと思うとのコメントをいただきました。 

5.杉錦 菩提酛 

Dsc_0881江戸時代に安定した酒母を作る方法として生酛が開発されましたが、その前は菩提酛と言われる方法が使われていました。提酛は平安時代後期に奈良県の菩提山正暦寺で開発された方法です。 

その方法は変わったやり方で、新酒を作るのに残暑の暑い日を選び、いかきという籠の中に生米9割、蒸米1割の比率で入れて水の中に3日間浸しておくと酸性で泡立った「そやし水」ができます。この水を仕込水として使って麹や蒸米を投入してお酒を造るやり方です。このそやし水は乳酸菌が造った乳酸が多く含まれた水で、気温の高い時期の方が乳酸菌が良く増殖して素早く乳酸ができるからいいそうです。  

この方法は江戸時代になって水酛と呼ばれて広く使われるようになったようですが、安定性が悪く、混入する微生物の種類によって酒質が大きく変わる欠点がありましたので、生酛ができてから次第に衰退したようです。  

菩提酛はは昭和の時代になって日本酒の醸造教科書からなくなり、今まで詳しいことがわかなかったようですが、1996年に奈良県工業技術センターと奈良県内の醸造元が菩提酛研究センターを立ち上げて、研究を重ね1999年に菩提酛を使った醸造に成功したのです。 

杉井さんは勉強家で好奇心旺盛の方ですから、この菩提酛を使ってお酒を造ってみようと思い立ち、菊姫が復活出版をした酒造教科書の一つの「杜氏醸造要訣」に詳しい記述があったので、それを基に試験をして見事に成功させました。その方法はホームページに書いてありましたのでそれを載せておきます。杉井さんのお話では蔵内で菩提酛を立てて、これを使った醪から醸造しているのは千葉県の五人娘と杉錦だけではないかとのことでした。 

その造り方ですが一合ほどの炊いた飯と一掴みの麹を布の袋に入れて一斗ほどの水に漬けます。この時、酛の掛米にする白米を生のまま一緒に水に入れます。7日くらい放置しておくと軟らかな飯は自然に溶け出して乳酸菌が繁殖して水はすっぱくなり、自然に酵母菌も生えてきます。そこで漬けておいた白米を取り出して蒸し、麹とこのすっぱい水を加えて酛を仕込みます。乳酸により雑菌の繁殖は抑えられ自然に繁殖した酵母はすぐに醗酵し始めます。酸とアルコールが蓄積されて仕込み後10日ほどで酛ができあがります。この酛を使って通常の3段仕込みを行います。 

他の蔵の菩提酛は少し甘めに作るのですが、杉井さんは糖分を抑えた辛口に仕上げたのはワインのように酸味があって糖分が少なくアルコール度数を下げたお酒を狙ったようです。原酒はアルコール度数が19%、酸度が3.0もあったそうですが、割り水をして、アルコール度数13~14度、日本酒度+10、酸度19というお酒にしています。お米は誉富士70%精米、酵母は無添加です。 

今回飲んだお酒は2015BYで1年半熟成したもので、飲んでみるとあたりが柔らかく、そんなに辛く感じない飲みやすいお酒でした。お食事と一緒に飲むにはスイット呑めてしまいますね。 

6.杉錦 生酛純米酒 八十八(やそはち) 

Dsc_0883このお酒は明治時代の酒をイメージして作ったお酒で、精米度を約88%にして生酛作りしたお酒です。 

明治時代は精米技術がなく、生酛造りで温度の高い状態で醸造していたので、日本酒度は+17、酸度は4~5くらいだったと思われます。昔の酒には現代のお酒とは異なる味わいの良さや深さがあったのではないかと思ったのが、このお酒を造った理由だそうです。 坂口先生の本には明治時代の金賞受賞酒の日本酒度は+10で酸度は2.7であったことが書いてあります。

お米は麹米は静岡県産誉富士70%精米、掛米は静岡県産ひとめぼれ90%精米なので、八十八と名前を付けたのでしょう。酵母は協会701号の純米酒です。昔は清酒はすべて純米酒だたtのですよね。 

出来上がった酒質はアルコール分13~14度、日本酒度+17、酸度2.0でした。この原酒はアルコール分は19度、酸度は3.0で割り水してこの値になっています。このままではすごく辛くてのめないのですが、室温で1年以上熟成させると甘みが出て、丸みも感じるようになるそうです。このお酒は2014BYのお酒なので、2年以上の熟成をしています。 

実際に飲んでみると穀物的な香りがするけれども、普通のお酒のような甘さはなく、アルコール分が低いので酔ってからも飲める飲み飽きしないおになっていました。昔の人も割り水をして飲んでいたのかな? 

7.杉錦 山廃純米 天保13年 

Dsc_0888_2このお酒は蔵の創業年の天保13年という名前を付けたお酒で、安価な一般米を使った純米酒だけど昔ながらのお酒の良さを持っているお酒を狙ったものです。 

具体的にはお米は麹米は静岡県産ひとめぼれ70%精米、掛米は静岡県産あいちのかおり78%、酵母は協会7号を使った純米酒です。一言でいえば、アルコール度数を上げた辛口で、酸度の高いお酒ですが、 醸造年度で日本酒度は違っているようです。年々色々と試されているんではないかと思います。

出来上がったお酒の酒質は2015年度醸造のもので、アルコール分15~16度、日本酒度+9、酸度2.6でした。 

冷えたまま飲んでみると軽い熟成の香りがして、ちょっと酸っぱいドライなお酒ですが、温度が上がってくると甘みを感じだし、良いバランスとなってきます。酸味が強いので焼肉に合わせると良いと思います。お燗をするとしっかりした味を感じながらソフトな柔らかさを感じるお酒になります。これは冷やして飲むお酒ではありませんね。 冷えているとただ酸っぱいお酒です。

この蔵の熟成はすべて1回火入れの瓶貯蔵で行っています。一般的には吟醸酒で香りを大事にするお酒は1回火入れで貯蔵しますが、一般酒は1回火入れしたお酒をタンク貯蔵して、瓶詰めする前にもう1回火入れするようです。 

8.純米 本みりん 飛鳥山 

Dsc_0906このみりんは静岡県で生産されている唯一の本みりんで、江戸時代に確立されたみりん本来の製法に従って復刻製造した本みりんです。原料にはもち米と米麹と米から作った焼酎を使うので、普通のみりんのように水飴や醸造用糖分や醸造用アルコールは使いません。従って普通のみりんの倍の価格がします。 

その製法は日本酒とはだいぶ違っていて、蒸したもち米に米麹をまぶし、冷やしてから米焼酎と一緒にタンクに入れて約2か月間発酵させます。こうしてできた熟成液を袋に入れて槽搾りで絞れば完成です。ろ過や火入れはしません。 

飲んでみると、濃厚だけれども自然で深い甘みをもち、フルーティで後味がすっきりする味わいでした。でもアルコール度数は日本酒と同じ14~15度もあるので、要注意です。 

以上でこの会で飲んだお酒の紹介を終わります。 

最後に杉井さんの酒について、全体を通じて感じたことを述べてみます。杉井さんはお酒造りに研究熱心でかつ好奇心が旺盛なので、自分で思いついたことをどんどん実行してしまう方だと思いますが、単なる思い付きではなく、裏打ちされたしっかりしたお考えを持っているように思えます。 

吟醸造りに関しては静岡県の先生であった河村傳兵衛さんの教えをきちっと学び、それを身に着けるだけでなく自分なりのお酒に仕上げていく技術と姿勢を感じました。また、今流行りの吟醸酒を造るだけでは満足せず、日本が昔から育ててきた日本酒古来の酒造りの手法を使うことを積極的にチャレンジし、菩提酛、生酛、山廃のお酒を造ってきましたが、凄いのはこの技術で今風の味のお酒を造るのではなく、昔のお酒の味を再現することにチャレンジされたのには驚かされました。失敗したら売れないお酒ができてしまう可能性があると思いますが、熟成の技術と組み合わせることにより、なんとなるとの自信があったものと思います。 

この杉井さんの考えのにはもっと先を見たお考えがあるように思えました。それは赤ワインの世界を日本酒で実現しようと考えておられるのだと思います。高級な赤ワインは味わいが奥深くて、良いものを飲むと何とも言えないほどの幸せ感を与えるお酒になると思っている人は多いと思います。その赤ワインは酸味が強く糖分がほとんどないお酒ですが、ブドウの持つ独特の成分と熟成の技術により醸し出されるものであることを杉井さんは良く知っておられるので、日本酒の場合も酸が多くて糖分の少ないお酒を熟成させることにより赤ワインに近いお酒を実現しようとしているように感じました。 

鯵の深みという点では、まだまだ道半ばと言えますが、きっと杉井さんならいずれか達成できる日が来るのではないかという期待があります。 

大変難しい課題かも知れませんが、ぜひ実現させてもらいたいものですね 

最後に「あふぎ」のママと杉井さんの2ショットをお見せします。いい雰囲気でしょう。 

Dsc_0903

いつもお料理の最後に作っていただく静岡おでんをお見せします。
とてもおいしいですよ。

Dsc_0893

にほんブログ村 酒ブログ 日本酒・地酒へ ←ご覧になったら、この日本酒マークをクリックしていただくとブログ村のページに戻ります。これでポイントが増えます。携帯やスマートフォーンでご覧の方はMobileModeではクリックしてもポイントは増えませんので、PC-Modeにしてからクリックしてください。よろしくお願いします。

より以前の記事一覧