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蔵元を囲む会

2018年7月 4日 (水)

若の井酒造には驚きの復活ドラマがありました。

5月のことですが、大塚の木の字で若の井酒造の蔵元の大沼秀和さんをお呼びしての日本酒の会がありましたので、参加しました。僕が若の井酒造を知ったのは今年の3月に米沢で行われた置賜地区の地酒サミットに参加した時ですが、その時はたまたま蔵元さんには会えなかったので、蔵の紹介もしていません。ただ置賜地区の5人の蔵元杜氏が集まってできた5蔵会の一人だったことは知っていました。木の字の会の主催者の一人である大塚の地酒屋こだまの武さんがFACEBOOKにちょっとだけこの会の案内を出したのを見て、若の井酒造の酒をこだまさんが扱っていることを初めて知って、驚いて参加したというわけです。
 
置賜地区の地酒サミットについてはブログにまとめてありますので、興味があったら読んでみてください。 
 
若の井酒造は米沢市から出ている長井線の南長井の駅から西へ2㎞程行った飯豊町(いいでまち)にあります。この地は田んぼの中に家が点在しているようなところで、米は豊富に取れるのではないかと思われますが、冬はとても雪深い地のようです。創業は明治33年のようですが、この村の鎮守様の若宮八幡宮のそばを流れていた野川の下流で井戸を掘ったところ奇麗な清水が湧き出てきて、これが酒造りによく合う水質だったことから「若の井酒造」と名を付けたようです。
 
<大沼秀和が杜氏になった経緯>

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今までこの蔵がどのような経緯で今に至っているかはよくわかりませんが、大沼秀和がどうやってこの蔵の杜氏になったかについては、驚きの経緯がありますので、それを紹介しましょう。
 
大沼さんの出身地はよくわかりませんが山形市ではないかと思います。小さい時からスキーが好きで、スキーをやりたいために、高校を卒業後、蔵王の旅館に親父のコネで就職することになります。写真でもお分かりのように、柔道をやっているような体格をしているのですが、スキーは自分に合わないと1年ほどでやめて、スノーボードにのめり込みます。その体格を生かしたスノーボークロスが得意のようで、随分活躍していたそうです。
 
そんな時に一つ年下の女の子がこの旅館に入社してきます。そこ方が奥様の優子さんです。優子さんとは20歳の時からお付き合いし、24才で結婚されます。ですから夫婦で旅館に勤めながら楽しい生活送られていたその時に事件が起きます
 
優子さんの実家が若の井酒造で、その当主である父が病気のため余命4年と言われて、後継者を探したけど、誰もいないのでその白羽の矢が大沼夫妻に当たることになります。当然秀和さんは酒造りのことは全くわからないけど、蔵には秋田から山内杜氏が来ていたので、蔵に戻っても何もしなくていいという条件で蔵に行くことになります。その時は秀和さんは30才、2001年のことです。 
 
蔵に入ってから判ったのは蔵の経営が相当まずい状態にあることが判ります。蔵に入った時から専務取締役でしたので、義父からは酒造りはすべてお前に任すと丸投げだったそうです。まもなく義父が無くなり、蔵にいた山内杜氏はすでに高齢でしたが、10年は努めるという約束でやっていただき、杜氏が辞めた後は蔵で杜氏の下で働いていた頭に、後を任せることになります。ところが新しい杜氏になって2造り目の冬(25BY)に突然造りをやめてこなくなると事件が起きます。

その時秀和さんは42才ですが、蔵の手伝いをしていましたが専門知識はないので、他の蔵人に杜氏をやる気があるかどうかを聞いても誰も引き受け手がないことから、どうせ蔵の責任は自分でとらなくてはいけないので、僕がどうにかしようと杜氏を引きうけることになります。杜氏を引き受けたからには蔵人には聞けないので、秋田に戻った前杜氏に毎日のように電話をして教えを請いながら蔵人に指示することになります。

最初の造りは何とか切り抜け、2年目の造り(26BY)の前には前杜氏に来てもらい、造りの全体スケジュールを造るなどしてがむしゃらに働いたそうです。ですから自分の造りとしては今年の造りで(29BY)4年目の造りになります。頑張ったせいか、27BYの特別純米えびす寿がワイングラスでおいしい日本酒アワード2016で最高金賞を取ることができたそうです。でもそれからは何も賞を取っていないですよと笑っておっしゃっていました。現在の生産高は約400石位だそうです。

ですから今では蔵の杜氏として活躍されており、今年47才で代表取締役社長になられたと聞きましたが、業界ニュースでは確認できませんでした。
 
<地酒屋こだまさんとの関係> 
 
下の写真の左から地酒屋こだまのさん、若の井酒造の大沼さん、主催者のZENさんです。
 
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元々若の井酒造と親しかったのは日本酒好きなサラリーマンのZENさんで、たまたま長野県で行われた日本酒の会で山形県の若の井酒造を知り、この酒がすごく気に入って若の井のお酒を広くPRすることを思いついたそうです。若の井酒造のお酒は色々な食事に合わせられるので、その特徴を生かして大塚の木の字のお料理と合わせる会を初めて開催したのが7年前のことだそうです。ですから当時はまだ大沼さんが杜氏になっていない時で、若の井酒造の前杜氏がお酒を造っていた時代と思われます。
 
ZENさんは10年ぐらい前からこだまさんとは友達で、ZENさんがこの会をやっているのをこだまさんが知り、この会に参加したのがこだまさんが若の井酒造を知ったきっかけです。その後、ZENさんからこだまさんに若の井酒造のお酒を扱ってくれるように頼まれたのが、ちょうど大沼さんが杜氏を引き受けたころと思われます。その当時のお酒はこだまさんとしては、食中酒としては面白いものを持っているものの、まだちょっと物足らないお酒だと思いましたが、これからもこの味をさらに深める努力をする大沼さんの思いを感じたので、取り扱いをすることにしたそうです。最近になって、努力の成果が出て酒のバランスが良くなってきたので、若の井酒造のお酒を広く知ってもらうために、今年初めてZENさんとコラボをしてこの会を開いたそうです。どんなお酒になったのでしょうね。後でご紹介することにします。
 
<置賜お蔵の会について>
 
置賜の5蔵の会は置賜地区には若手の蔵元杜氏が酒造りをしている蔵が5蔵あるので、このメンバーが集まってPR活動をすれば、酒のPRだけでなく、地域の観光にも貢献できるということで、この5蔵と飲食店や酒販店有志が集まって2013年に発足した会です。参加蔵の蔵元は以下の通りです。
 
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・ 加茂川酒造    鈴木一成  
・ 鈴木酒造長井蔵 鈴木大介  
・ 若の井酒造    大沼秀和  
・ 中沖酒造     高橋義孝  
・ 長沼酒造     長沼伸行
 
どんな活動をしているかというと、酒蔵を地域資源と位置づけ、地域内外から誘客し通年で燗交流ができる仕掛け造りを慕いますが、5蔵が協力して純米吟醸日本酒セットを出しています。第1段は2016年に出したもので、お米の酒類、精米度、麹菌、酵母、仕込みスケジュールをまったく同じにしたお酒で、違うのは水だけという「伍連者(ごれんじゃ)」を出しました。第2弾としては2018年に出したもので、各蔵ごとに酒母を変えたお酒セットを出しました。加茂川が生酛、若の井が速醸酛、中沖が長期酛、長沼が中温酛、鈴木が山廃元を担当したそうです。どんなお酒ができたのでしょうね。でも首都圏にはそんな情報はあまり入ってこないけど、地方活性には役に立っているのでしょう。
 
<飲んだお酒の紹介>
 
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1.大吟醸 雪女神 29BY 

Dsc00621このお酒は出品酒を目指して造ったお酒で、去年までは兵庫県産の山田錦を使っていましたが、他のお酒の米はすべて山形県産なので、今年から雪女神を採用してALL山形県産のお米としたそうです。
 
雪女神は山形県初の大吟醸向けに開発された酒造好適ましで、父親が蔵の華、母親が出羽の里をかけ合わせてできたお米で、短稈で耐倒伏性の強いけど、心白は小さいが心白発現率が高く、高精米に向いているので、大吟醸向きと言われています。最近は雪女神金賞を追っている蔵も多くなっています。
 
この雪女神を35%精米した大吟醸ですが、確かにきれいに仕上がっていましたが、僕としてはもう一つだったかな。
 
2.純米吟醸 華丸 29BY

Dsc00622このお酒は出羽燦燦50%精米の純米吟醸で、原酒に割り水してアルコール濃度を15%にしています。
飲んでみると香りはあまり強くなく、軽い甘みを感じるけど全体的には透明感のある飲みやすいお酒でした。僕にはちょっと物足りなかったかな。
このお酒もそうですが、この蔵のお酒の純米吟醸と特別純米は雪室で貯蔵しています。飯豊町の雪室は体育館の大きさの建物の中にお酒や農産物などの商品を貯蔵する部屋があって、その間に雪をびっしり詰め込む構造をしているそうです。
山形県では色々なところで、雪室を造って貯蔵することを奨励しているようです。雪室は単に雪で冷やすだけではなく湿度を高く保てるのが特徴で、農産物の鮮度を保ちながら保存ができる長所があるようです。
 
3.特別純米 春宝 生酒  
4.特別純米 春宝 28BY 常温熟成 by ZEN 
 
Dsc00637この蔵の特別純米は美山錦60%精米ですが、季節に応じてその時期に合わせたお酒にして出荷しています。春に出すお酒は生酒で、春宝と呼んでいます。
特別純米は季節によって造りを少し変えているようですが、基本的な酒質は日本酒度は+0~4、酸度1.4、アミノ酸度1.4、アルコール度数が15度です。
 
飲んでみると穏やかな香りと少しだけ甘さを感じる飲み口ですが、柔らかな甘みと酸とのバランスが良く、アミノ酸が1.4もあるので、うま味を感じるけど奇麗に消えていきます。春宝は生酒なので澱の甘みと爽やかさが重なって、ちょっと華やかさを感じる仕上がりになっていました。これは良いです。
 
4番のお酒は生酒を常温で1年間保存したお酒なので、飲んでみると熟成の香りは出ていますが、それほど強くありません。たぶん腰が強い酒なので、常温でも熟成が進まないものと思われますが、でも折角の新鮮さがになくなっているので、僕は春宝は常温熟成させない方が好きですね。

5.特別純米 夏宝 28BY 常温熟成 by こだま 
 
Dsc00631この夏宝は春宝と同じ美山錦60%精米ですが、生のまま夏まで瓶貯蔵し、出荷する前に1回火入れしたお酒ですが、そのお酒を地酒屋こだまで1年熟成したお酒です。
従ってやはり熟成香を感じるし、春宝の1年熟成酒よりちょっと辛さを感じました。僕としては29BYを飲んでみたかったけど、この時点ではまだ発売前だったので、28BYの低温熟成を飲んでみたかったです。
この蔵のお酒のラベルはちょっと凝っていて、ラベルが紙製ではなくて布製なのです。ですから機械張りは出来ないので手がかかるけど、少し高級感を出すためにやっているそうです。ラベルの色でお酒の種類はわかるけど、表のラベルに生か火入れかの表示がないので、これは消費者に対して不親切だと思いました。
 
6.特別純米 秋宝 28BY 常温熟成 by こだま

Dsc00629秋宝は春に出来たお酒を2回火入れして瓶詰めしたお酒を雪室で秋まで貯蔵したお酒だそうです。ラベルが赤いのが特徴です。
今回飲んだのはこだまでさらに1年間常温熟成したお酒なので、普通の秋宝とは違うと思います。今回の飲んだお酒は結構酸味を感じましたが、どうしてかはわかりません。
 
僕は常温熟成していないお酒を飲みたかったです。それは蔵としては蔵独自の火入れのタイミングや雪室での熟成の仕方で味をコントロールしていると思うので、それを1年常温熟成させると違ったものになると思うからです。。
 
販売店の考えで、熟成させることはそれ自体は問題ないと思いますが、蔵の味を伝えるという観点からは熟成させないお酒も比較して飲ませた方が良いと考えます。 

7.特別純米 冬宝 27BY 常温熟成 byこだま  
8、特別純米 冬宝 26BY 常温熟成 byこだま 
 
Dsc00640冬宝は火入れしたお酒を雪室で約2年間熟成させたお酒を言うそうです。従って28BYが今年の冬に出荷されることになりますので、7番のお酒は27BYのお酒をこだまで半年常温熟成したものになります。
 
7番のお酒は酸が柔らかいお酒になっていましたが、8番の酒は意外とジューシーで熟成の香りは意外と強くありませんでした。熟成酒は熟成の仕方で変わるので、難しいですね。
 
9.特別純米 出羽の里 火入れ 29BY
 
このお酒は写真がないので言葉だけの説明になります。出羽の里は山形県で開発した出羽燦燦を父に持ち、耐冷性に強い吟吹雪を母に持つ酒造好適米で、心白が大きく高精米には向かないと言われています。
 
逆に低精米でもいいお酒ができやすく、酸が出にくいので良いお酒ができやすいそうですが、このお酒は60%精米の純米酒で、あたりも柔らかく程よい透明感があり飲みやすいお酒でした。
 
10.本醸造 生酒 29BY 
11、そのまんま 生原酒 28BY 
 
Dsc0064610番のお酒は大沼さんが毎日晩酌用として飲んでいる手汲みの生酒で市販していないお酒だそうです。
お米は一般米60%精米を使った本醸造なので約10%の醸造読アルコールが入っていますが、それを火入れしない搾りだて生のままで瓶詰めしたお酒です。
飲んでみると旨みもありバランスもとてもおいしいお酒でした。こだまさん手に入らないかな。今回のお気に入りの一つです。
11番のお酒も生酒ですが、地元しか売っていない酒で、その一般米を使った純米酒ではないかと思われますが、中身はよくわかりませんが、うまい酒でした。
以上で飲んだお酒の紹介は終わりますが、全体を通して感じたことを述べてみます。
この蔵のお酒はアルコール度数は15度と少し抑え気味にして飲みやすさを優先しており、香りも酸もあまり出さないので、すっと飲めてしまうお酒なのですが、アミノ酸が少し多めなので味わjは壽分に感じられるけど切れがあるので、食中酒に向いていると感じました。 
大沼さんの考えで筋が通おっているのは、お酒は造るタイミングでも変わるし、タンクでも変わるけど、その一つ一つの味わいをきちっと知ってもらいたいと考えていることで、同じお米の特別純米を色々な形で飲んでもらおうという考えはとても共感で切る考え方出す。
だからこそ、常温熟成ではなく、蔵の造ったお酒そのものを味わってみたかったと思っています.。

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2018年5月26日 (土)

基峰鶴の蔵元との会は驚きの会でした

4月の最初の日曜でしたが、南小岩にある「なだや酒店」の渡部知佳が企画した会で、南澤正昭シェアしてFacebookでご案内していただいた会がありましたので参加しました。この会は佐賀県の基山商店(基峰鶴)の女将さんの小森綾子(りょうこ)さんをお呼びしての会でしたが、基峰鶴という酒は飲んだことがないけど、女性の蔵元さんが来るということで興味がわいたので申し込んだ次第です。 

日曜日の13時にJR小岩の栃錦関の銅像の前に集合というだけで、どこに行くのかも、何時から日本酒の会が開かれるのかもわからず(実際には柴又のイタリアンレストランで15:30から行うと書いてあったのですが、僕がよく読まなかっただけのようです)、行ってみるとそれらしい人が誰もいないし、時間になっても渡部さんも南澤さんも現れないし、間違えたかなと思っていたら、渡部さんがにこやかに現れてほっとしました.。南澤さんは体調が悪くて欠席とのことでした。小森綾子もおられましたので、ここで初めてご挨拶しました。 

そこで、ここから柴又の帝釈天までバスで移動したあと帝釈天に行ってからイタリアンレストランに行くことを初めて知りました。簡単に言えば柴又帝釈天の観光付き日本酒の会だということが判り驚いたのですが、柴又の帝釈天は単にお参りするだけでなく、結構観光できるところが多いのにまたまた驚いてしまいました。知らない方も多いと思いますので、日本酒の会の紹介の前に、ちょっとそれをご紹介します。 

<柴又帝釈天> 

柴又帝釈天は映画「男はつらいよ」の主人公のフーテンの寅さんの出身地として有名なとことですが、帝釈天はどんなところであるかは良く知りませんでした。ちょっとインターネットで調べてみると帝釈天とはもともとインドの最古の経典の中では軍神と呼ばれた神様で、仏教の中では守護神としてあがめられている神様のようです。この守護神は仏の教えを信仰し従うものは病難や火難などの災難に逢えば、帝釈天が必ず守護し、悪魔を除き退散してくれると言われており、古くから厄除けのご利益があると信じられてきたようです。 

この帝釈天の板本尊が安置されているのが帝釈堂で、正式名称は経栄山題経寺という日蓮宗の寺院で、この寺ができたのが江戸時代の初期ですが、現在の帝釈堂の内殿は大正4年に、拝殿は昭和4年に完成したそうです。 

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<彫刻ギャラリー> 

帝釈堂内殿の外部は東・北・西の全面が装飾彫刻で覆われており、法華経に説かれる代表的な説話10話を選び視覚化したもので、大正11年(1922年)から昭和9年(1934年)にかけて、加藤寅之助ら10人の彫刻師が1面ずつ分担制作したそうです。 

この羽目板の中央の段には十二支と天人、下方の段には千羽鶴が表され、高欄(縁)より下の部分には花鳥および亀を浮き彫りで表わしています。これらの彫刻を保護するため、内殿は建物ごとガラスの壁で覆われ、見学者用の通路を設け、「彫刻ギャラリー」と称して一般公開しています。 

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たまたまこの彫刻ギャラリーのガイドをしている人にお会いして、お聞きすることができましたが、本格的に行われたのは関東大震災以降で、材料を調達するのも、職人を集めるのも大変だったそうです。1枚の板の大きさは縦1.3m、横2.3m、厚み20cmもあり、表面から少しずつ掘っていくのですが、立体構造になっているので最後はどうやって掘るのか想像できないほど、ただただ感心してしまい、本当は色々触りたくなるほど感激しました。見たことのない人は是非行ってみてください。法華経を知らなくても十分楽しめます。 

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<大客殿と大庭園(邃渓園)> 

帝釈堂に内殿にある彫刻ギャラリーを見終わったらそのまま廊下を通って大客殿に行けます。大客殿は大きな座敷を4部屋を一列に配した総檜造りの平屋建てが特徴で、昭和10年に完成しました。その建屋から眺める日本庭園は邃渓園と呼ばれ、大客殿の竣工に合わせて造られ始め、少しずつ手を加えながら昭和40年に現在の形となり、2016年には東京都指定名勝庭園に指定されています。 

庭園が回廊でゆっくり楽しめるようにデザインされており、下の写真は一番奥の回廊からから大客殿を眺めた時の写真です。奥に大客殿が見えますね。大客殿と彫刻ギャラリー両方で400円ですから大変割安です。

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<帝釈天参道> 

柴又駅から帝釈天に向かう参道で、なかなかの風情ですね。寅さんに関するお土産がたくさん売られていました。 

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<ピッツェリア・ルナ・エ・トルチェ> 

柴又帝釈天の観光も終わり、柴又駅のすぐそばのイタリアンレストラン「ピッツェリア・ルナ・エ・トルチェ」で基山商店(基峰鶴)の女将さんの小森綾子(りょうこ)さんを囲んでの日本酒の会が始まりました。実は綾子さんは小岩駅から柴又帝釈天の観光もご一緒でした。下の写真はお店の入り口の写真です。 

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お店は本格的なイタリアン料理店で、ナポリからピザを焼く釜を輸入したほどの凝りようです。この窯の燃料は薪ですから本格的なもので、こんな窯を持っているお店は日本広と言えども少ないと思います。

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下の写真は鶴見さんのブログに載っていた写真をお借りしました。右から中央の方がこのお店の店長に鶴見直人さんで、右の方が蔵元の小森さん、左の方がなだやの渡部さんです。みんないい顔していますね。 

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鶴見直人さんは柴又そだちですが、辻料理師専門学校のフランス校を卒業したあと、フランス料理店で研修を積んでいる時に、縁があってイタリア料理に興味を持ってイタリアナポリのピッツアが気に入って数々の有名店で修業をし、ついに柴又にお店を持つことになったそうです。現在は日本ナポリピッツア職人協会の一員となり、、ピッツアの技術向上や普及に努めているそうです。また、本場にはナポリピッツア職人協会があってそこにも属しているそうです。 

写真の釜はナポリから船便で50日かけて横浜に運び、そこから10トントラックで柴又まで運んだそうですが、イタリア人らしく全く梱包もなく裸でついたそうですが、無事何事もなく動いたようです。 

僕たちはピッツアとは呼ばないでピザと呼ぶことが多いようですが、もともとナポリ生まれのピッツアがアメリカにわたっていろいろな形になってから日本にピザの名前で輸入されたので、この方が有名になっていますが、本場のピザはピッツアと呼ばないといけないようです。この日に頂いたピッツアをお見せします。旨そうでしょう。具が生地の上に載っているだけでなく包み込むようになっていました。

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鶴見さんの夢は全国大会で優勝して、ナポリに行くことだそうです。今年は入賞だたようですから、近いうちに実現するかもね。そうなったら盛大にお祝いするそうです。 

<基山商店について> 

基山商店は福岡市から南に約20㎞くらい下がった福岡県との県境にある佐賀県の基山町にある蔵です。創業は明治の初期に地主数名が共同で酒造りを始め、その後小森初蔵さんが一人で引き受けた後小森商店として酒造りをしていましたが、大正9年に現在の合資会社基山商店となっています。その後、地元に愛され、親しまれる酒を造ってきた蔵ですが、杜氏は肥後杜氏の鶴田岩一さんが担当してきました。 

蔵の社長は2代目当主の小森純一ですが、確か2005年から2017年まで基山町の町長をしていたのようで、なかなか蔵の仕事に手が回らなかったようです。息子の小森健一郎が2001年に東京農大の醸造学部を卒業後、奈良県の梅乃宿酒造で1年半修行して、2002年に蔵に戻ってきて鶴田杜氏のもとで酒造りをしていましたが、父の町長の仕事が忙しくなったことから、蔵を閉めようという話が持ち上がった時に、長女の綾子(りょうこ)さんが、店の販売を担当することになったようです。 

綾子(りょうこ)さんは結婚されて20年くらい専業主婦をしていたのですが、100年近く続けてきた蔵を閉めるのは忍びないと思い、弟と手を組んで蔵の仕事を始めたのが2013年で、もう5年になりますが、すっかり板についている感じですね。健一郎さんは2015年から杜氏兼専務取締役として、綾子さんは営業販売部長として活躍されています。 

写真の方が綾子さんです。蔵の生産量は350石と小さいので、なかなか東京の酒屋さんでは買えるところが少ないようですが、数少ない酒屋の中になだやが選ばれるなんて、渡部さんは先見の目があるなと思ったんですが、色々聞いてみると渡部さんは奇麗な綾子さんに惹かれて食いついたようで、下心満杯の渡部さんでした。

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この会が始まった経緯は渡部さんが小岩のあるピザ屋でここのピザおいしいねと店長に行ったら、柴又のピザ屋にはとてもかなわないと教えてくれたので、渡部さんがここにきて店長と仲良くなったのが始まりですが、この会が鶴見さんが柴又の店でピッツアを食べながらの日本酒の会をやりたいと渡部さんに声をかけたのがきっかけで、今回が第1回目だそうです。 

<基峰鶴のお酒の紹介>

ですからお酒はすべて渡部さんが料理に合わせて用意したのですが、基峰鶴はたった4種類で他に8種類のお酒を飲む会になったのですが、僕の目的が基峰鶴のお酒なので、それだけを紹介することにしました。 

1.基峰鶴 純米大吟醸 きたしずく 生 

Dsc_0753きたしずくは北海道で2013年に開発された酒造好適米で、親に雄町とほしのゆめの交配種であるF1と吟風を掛け合わせてて造ったお米で、吟風より酒質は落ちるが蛋白質が少ないので、雑味が少ないけど耐寒冷が強く育てやすいお米のようです。 

このきたしずく40%精米した純米大吟醸の生酒です。飲んでみるとしっかりした味とは言えないけど、奇麗な味わいが広がり、余韻も残るバランスのいいお酒でした 

この蔵の酵母は9号系がベースですが、純米吟醸以上はM310を入れて、香りを出すようにしているようです。このお酒なら首都圏でもOKだなと思いました。  

2.基峰鶴 純米吟醸 山田錦 生 

Dsc_0755この蔵では25年くらい前から地元産の山田錦を使いたいと、基山町の農家に依頼して契約栽培をしています。この山田錦を50%精米した純米吟醸です。 

飲んでみると、さすが山田錦ですね、うま味とふくらみを感じるおさけでした。香りはきたしずくの方が強く感じたけど、酸はこちらの方が少し多いような気がしました。お米によって味わいの出方が違うので、それに合わせた酸のバランスを取っているものと思われます。 

2017年からフランスの地で、フランス人によるフランス人のための日本酒の会が開かれましたが、そこでプラチナ賞に選ばれたお酒だそうです。  

3.基峰鶴 純米吟醸 レイホウ 生 

Dsc_0759レイホウは昭和44年に安定して数量が取れる飯米として開発され、昭和40年代には九州全体に普及しましたが、食味と耐病性に劣ることから徐々に減少し、最近は酒造用に栽培されてきたようですが、後で開発された夢一献に圧され気味とのことです。 

この蔵ではレイホウとの相性が良いので、昔からつかってきたようですが、飲んでみるとそこそこおいしいお酒でした。華やかではないけど、癖のない飲みやすいお酒で、普段呑みには良いのかもしれないと思いました。 

レイホウは飯米なので50%磨くことは少ないですが、50%精米の純米吟醸を出しているのは蔵の実力かもしれはないと思いました。  

4.基峰鶴 純米吟醸 雄町 生

Dsc_0761このお酒は55%精米の雄町の純米吟醸です。雄町と言えば山田錦の親にあたる古い生まれの米だけど、雄町ストと言われる人が大勢いるほど有名な酒造好適米です。雄町は造り手により、色々な味わいを出せるお米と言われているので、どんな味わいか興味がありました。 

飲んでみると上記の3つの酒とはバランスが違い、旨が口に含んだ時にすぐ立ち上がるのではなく、少し後ろに来るのでアミノ酸が多いのかなと思っていたら、これは蔵で1年熟成したお酒なのが判りました。それならこのバランスになったのは理解できます。

杜氏の弟さんが造りたてのお酒が奇麗すぎたので熟成させたそうですが、生なので熟成が少し進み過ぎたのかもしれません。特に温度が上がると重たく感じました。 

雄町は難しいけどやりがいのあるお酒なので、これからもチャレンジしてください。僭越ですが、雄町の酒としては茨城県の結城酒造の結を是非飲んでみてください。絶対に参考になると思います。 

以上で飲んだお酒の紹介は終わりますが、この蔵のお酒は派手さはないけど柔らかさを持ったバランスの良いお酒を目指していることはわかりましたが、もう一つきらりの光るものがほしい気がしました。。よろしくお願いします。 

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2018年5月17日 (木)

鏡山酒造は新しさを求めて頑張っています

古いことで申し訳ありませんが3月の中旬に八芳園内にある日本料理の槐樹で第22回の蔵元さんと一緒に日本酒を楽しむ会が開かれましたので参加してきました。今回は川越市にある小江戸鏡山酒造の営業部長の五十嵐昭洋さんをお招きしての会でした。昭洋さんは営業部長で、現社長は五十嵐さんのお兄さんの五十嵐智勇さんのようですが、智勇さんは天覧山を醸している五十嵐酒造の蔵元社長ですから、昭洋さんは実質小江戸鏡山酒造の社長と言える方だと思います。 

僕が鏡山酒造を知ったのは2013年の神田の醇の日本酒の会で初めてお会いしたので、その時のことは下記のブログに書いてありますのでご覧ください。

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-6adf.html 

<小江戸鏡山の創立の経緯> 

このブログを読めばこの蔵ができたいきさつなどは大体わかりますが、改めて整理してみます。川越には昔から鏡山酒造という蔵がありましたが、2000年に急所廃業することになりました。川越は昔から小江戸と言われたほど、伝統ある町で蔵造りの街並みや菓子屋横丁など和の文化を持った町でここに酒蔵がないのは寂しいと立ち上がったのが五十嵐昭洋さんだったのです。 

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昭洋さんは五十嵐酒造の次男として育ちましたが、兄がいたので蔵を継ぐつもりもなく、酒造りをするつもりはなかったそうで、大学を卒業してからヤナセ自動車の販売をしていたそうです。もちろん蔵の再建には川越に住む多くの人の支援と協力があった出来たのですが、もともとの鏡山酒造があった場所は別の事業の場所に充てられていて利用することができなかったので、場所選びが大変だったそうです。そんな時に川越にある老舗の醤油蔵の一角を酒蔵として借りくことが決まったそうで、この地に2007年小江戸鏡山が誕生することになります。 

酒蔵造りにはまずは仕込み水が大切なのですが、醤油蔵にはきれいな湧水があったのは幸いしたのですが、そこに酒蔵を立てるには大きな問題がありました。それは醤油蔵が使っている麹菌も酵母菌も酒蔵が使う菌とは相いれないものでしたので、その影響を断ち切ることが大変だったそうです。醤油の生産初期には大量菌が空中に放散されるので、酒蔵が醤油蔵のそばに建設することはあり得ないことだそうです。 

ここまでは槐樹の会で昭洋さんから聞いた話ですが、実際にどんな蔵になっているのかとても興味深かったので、後日5月の連休明けに蔵を見学させていただきましたので、まずそれを紹介します。 

<小江戸鏡山の蔵見学> 

蔵は西武新宿線の終点の本川越駅から蔵の並木通りを北に向けで1㎞程北に行った仲町の交差点を左に曲がったところにある松本醤油商店の右側の建物です。下の写真は販売店ですが、お酒と醤油の両方を売っているお店になっています。右側の建屋に小江戸川越自家製面と書いてありますが、人気のラーメン屋さんだそうです。 

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鏡山の蔵はこの鉄筋コンクリート造りの奥にあり、テニスコート1面くらいの広さだそうです。下の写真は松本醤油の入り口から見た鏡山酒造の建屋です。窓のない鉄筋コンクリート造りなのはわかりますが、全容はわかりません。

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この建屋の裏側にまわると蔵の全容が見えてきます。ここの写真を撮り忘れましたので、グーグルマップのストリートビューからお借りしました。この建屋が蔵の裏側で、こちらには小さな窓がついていますが、とても密閉性の良い鉄筋コンクリート造りなのが良くわかります。

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それでは中に入ってみましょう。訪問した時はたまたま新酒の生酒の出荷にぶつかったので蔵の中に販売前のお酒が山積になっていたので、ちょっと普段より雑然としているのは仕方がないですね。 

では蔵のの中に入ってみます。下の写真は洗い場で、洗米機が奥に見えます。袋などの選択等の大潟洗濯機がドンと置いてありました。奥に見える窓は一般見学者のためのものです

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このステンレス製の扉が麹室の入り口です。

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麹室の中も見せていただきました。壁は奇麗な杉製の板張りで、とてもきれいな室でした。麹造りの効率を考えると2室欲しいですね。 

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ここが仕込み室で2200Lのサーマルタンクが6基ありましたが、一つは仕込み水用で、もう一つは出荷のための貯蔵用のようでした。通常は1週間で1タンクの仕込みで、総米600kgで、1200Ⅼ(1升瓶660本)のお酒ができるようです。確かに4つのタンクがあれば、まわせますが、3期醸造のはずなので、1か月4造りの9か月だと計算上約250石しかできないことになるけど、400石の生産となると1週間2本の醸造もやっているのでしょうね。そうなるとタンクも6本フル稼働せざるをえないと思うけど、どのようにしているのかはお聞きしませんでした。でも生産スケジュール管理が大切なことはわかります。

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下の写真は仕込み室の2階のフロアです。とても作業のしやすい環境で、完全にコンクリート製の壁に囲まれていました。

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搾りは小型の槽が2台用意されていて、1タンクのお酒を同時に2台の槽で絞るようで、ある程度搾ったら、袋を積み替えて1台の槽で搾るそうですが、油圧式でないので粕の比率が多くなるそうです。

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以上で蔵の紹介は終わりますが、確かに狭い場所での酒造りですが、造りに支障があるようには思えませんでした。強いて言えば槽を薮田式に変えた方が効率的なような気がすいました。もう一つは床や壁を特殊塗装することにより清潔性を上げるとか、へパフィルターを使ってより奇麗な空気の取入れをすれば、もっといいお酒ができるような気がしましたが、今のままでも十分おいしいお酒を造れる環境にあることはわかりました 

<槐樹で飲んだお酒の紹介> 

今回は5種類のお酒をいただきました。この蔵のお酒の生産量は3期醸造で年間400石だそうで、辛みや渋みを抑えた芳醇でやや甘口のお酒を目指しているそうです。杜氏は柿沼和洋さんが創業以来ずっと担当してきており、造りは蔵人3人と季節パートで頑張っているそうですが、忙しい時期は五十嵐さんもお手伝いするそうです。 

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1.ワイン酵母仕込み 純米酒 

Dsc00366_2このお酒はワイン酵母を使ったお酒で、原料米は一般米(彩のみのり)60%精米、アルコール度数13度のお酒です。この蔵はラベルに酒質を一切公開していませんが、SSIの報告では75%精米と書いてありましたが、最近変わったのかもしれません。 

このお酒は半年くらいの熟成しかしていませんが、やや色がついていて、飲んでみると香りはワインの果実香とお酢に近い香りが混ざった香りで、甘くて酸っぱいお酒でした。 

酸度は不明ですが、3.0以上はありそうで、コハク酸が通常の倍以上あるそうです。油性分の多いお料理にはぴったりではないかと思いました。 

2.純米無濾過生原酒 雄町 3.純米吟醸 澱がらみ 

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2番のお酒は右側の白いラベルに赤い文字の鏡山と書いている雄町60%精米の純米酒です。3月の段階ではまだ販売前のお酒で、タンクから直汲みして持ってきたお酒だそうです。ですからやや澱がらみで、シュワシュワ感もあるお酒でした。 

アルコール度数は17度もあるしっかりした甘みがあるお酒で、雄町らしさを出すにはもう少し奇麗さがいるかなと思いました。でも雄町らしいパワーはあったと思います。 

3番のお酒は黒いラベルに銀色の鏡山と書いてるお酒で、玉栄50%精米の純米吟醸です。玉栄は滋賀県お米ですが、もともと近江との関係があって使っているとのことでした。飲んでみるとアルコール度数は16度ですが、厚みがしっかりあって、後味に若干の渋みがあるので、コクのあるお酒に感じました。

4.斗瓶どり滴酒 5.純米酒 澱がらみ 

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4番のお酒は薄い黄色のラベルに金の鏡山と書かれた大吟醸です。埼玉県で開発されたさけ武蔵35%精米の大吟醸斗瓶どり雫酒です。さけ武蔵は埼玉県が開発した最初の酒造好適米で、12年の歳月をかけて2004年に発表され、今では熊谷周辺で主に栽培されているお米です。改良八反流れと五百万石のDNAを持つ若水ををかけ合わせて造られたものです。 

酵母はM310を使ったそうです。飲んでみると確かに奇麗な味わいになっているものの、やや膨らみが足りないような気がしました。この蔵は25BYで初めて全国新酒鑑評会で金賞を取りましたが、その時のお米は山田錦でしたので、まだ全国新酒鑑評会で金賞を取っていないさけ武蔵で金賞を取るべくチャレンジしているそうです。さけ武蔵は扱いにくいお米で、溶けやすいのにすぐ固まる傾向があって、これで賞を取るのは大変だそうです。でも着実にレベルは上がってきているので、近いうちに目的が達成されることを期待しています。 29BYの全国新酒鑑評会では入賞で、惜しくも金賞を逃しました。

5番のお酒は薄黄色いラベルに緑の鏡山と書かれた澱がらみの純米酒です。原料米はさけ武蔵60%精米で、酵母は協会1801酵母だそうです。飲んでみるとカプロン酸エチルの香りはするけど、それほど強くはなく、含んだ時にふくらみを感じるので、これは良いと思いました。もしかしたらさけ武蔵はM310より1801酵母の方が合うのかなと思いました。素人考えですが・・・・

以上で飲んだお酒の紹介は終わりますが、山田錦をやめてあくまでも埼玉県産のさけ武蔵にこだわるのはとてもいいことだと思いますので、これからもチャレンジを続けてください。この蔵が最も得意としているお酒の味は軽やかできれいなお酒ではなく、味わいのある甘口系のお酒だけに後味の切れだけは大切にしてもらいたいと思っています。

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2018年4月20日 (金)

豊酒造(華燭)は一味も2味も違うお酒を目指しています

今年も3月の21日の行われた福井県酒造組合が主催する春の新酒まつりに参加することにしましたので、その前日にどこか蔵見学をしたいと思い、いろいろお願いした結果、鯖江市にある豊酒造・華燭を訪問することになりました。この蔵には18年前に訪問したことのある蔵で、去年の春の新酒まつりで久しぶりに社長のお逢いして、飲ましてもらった20年古酒が素晴らしかったので、ぜひ訪問したいと思っていました。 

<蔵の歴史と現状>

この蔵は鯖江駅から西に2-3㎞程行ったところにある小さな蔵で、創業は1753年と古い蔵ですが、9代目の佐々木惣吉さんが明治時代にj国立醸造試験所の一期生として醸造学を学び近代的な造りを取り入れて、蔵元が酒造りに深くかかわるようになったそうです。その後清酒鑑評会に入賞するためにYK35といわれた山田錦と協会9号酵母を使った酒造りを行うなど一定の成果を上げてきましたが、それを大きく変えたのが現在の社長で11代目の蔵元の佐々木宗利さんです。下の写真の左の方です。 

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右側の方が息子さんの佐々木克宗さんです。 

この蔵には以前には杜氏がおられて、古くは丹波杜氏、次が新潟杜氏、そして最近は能登杜氏と変わってこられて、宗利さんはこの3流派の杜氏の杜氏のもとで修業をし、数々の技術を習得し、全国新酒鑑評会や金沢国税局酒類鑑評会で金賞を取るまでになり、酒の生産高も頑張って1000石を達成するまでになったそうです。それで、販路を広げようと東京の酒販店に交渉すると、東京で売るためにはこういう味の酒にしろとかいろいろ言われているうちに、知らず知らずのうちに当社の当蔵の個性が失われてきたことに気が付いたそうです。特に最近は金賞を取るためのレシピが出来上がっていて、誰でも同じようなお酒が造れる時代になり、ある意味では蔵の個性が失われる傾向があることに危機感を感じたそうです。 

そこで平成14年(2002年)からは自らが杜氏になり、自分の造りたいお酒だけを造るようにしたそうです。僕が蔵を初めて訪れたすぐ後のことだったのですね。具体的には福井県の気候風土が生み出す地酒に徹して、基本的には山田錦はやめて福井県産の五百万石に特化して、協会9号酵母もやめて福井県で開発した酵母とM310酵母だけを使った、昔からの伝統ある淡麗なお酒造りを徹底するようにしたそうです。家族+αだけで酒造りをするので、お米の洗米、蒸し、麹造り、酒母、醪造りを見直し、必要最低限の作業に抑える努力をしてきたそうです。ですから蔵元杜氏だけで自分のやりたい酒を造るのであればどんなに頑張っても500石どまりだそうで、現在は約300石の生産量で少しずつ二したいそうです。 

宗利さんが杜氏になって酒造りを初めて16年目になり、今年で62才になるそうですが、6年前に息子の佐々木克宗さんが茨木大学の農学部を卒業して、蔵に戻ってきて酒造りを始めたので、いずれ息子に引き継いでもらいたいと思い、自分が持つ技術を全て教えてきました。その結果、昨年度に息子が造った精米度50%の五百万石の純米大吟醸が全国新酒鑑評会で入賞する実績を上げたので、今年の造りから商売のための酒造りはすべて息子に任せるようにしたそうです。宗利さんはこれからどうするのですかとお聞きすると、やりたいことは一杯あり、今までやりたくてもやれなかったことや商売の幅を広げる新しいことをやるそうです。 

その具体的なものの一つに昨年から販売し始めた「20年古酒の1997酒造り宗利」や、今年初めて造った酒で、これから販売する「華燭 無吟香吟醸酒」があります。前者は常温のタンクで20年熟成した古酒ですが、普通の古酒のよりずっと色が薄く熟成香が弱いけどテクスチャーが素晴らしく、柔らかくスウットと飲めるお酒です。後者は吟醸造りだけれでも吟醸香が全くないお酒を造ったそうで、お燗にすると最高にその実力を発揮する酒でした。いずれも宗利さんが造った逸品だと思います。詳しい内容は後で紹介します。そのほか発酵食品の開発に凝っていて、すでに食べる甘酒、塩麹より優しい醴塩、造り酒屋のこだわりの味噌を造って販売していますが、これからもっといろいろな発酵商品を増やしていくそうです。 

克宗さんも負けてはいません。売りを目的としたお酒造りは宗利さんの酒造り技術を踏襲するだけでなく、その中に自分の技をきらりと埋め込んで一層完成させると同時に、新しいチェレンジもしているそうです。新しいチャレンジを行うと言っても今風なものではなく、オリジナリティの高い新しい酒造りのようです。一つだけ見せてもらった物のは4-5%の微炭酸低アルコール酒で、飲ませてもらったけど僕には飲みやすいけどアルコールが低すぎる気がしましたが、さらに改良して何とか商品化したいそうです。 

こうやって見ると、今年から新しい弥次喜多コンビの親子による新しい酒造りがスタートする元年になりような予感がします。業界をあっと言わせるお酒を発信してもらいたいけど、お話を聞いてみると、これで儲けてやろうというような気合は感じない、とても自然体の取り組んでいる姿勢が良いなと思いました。とても息の合ったお二人のように思えました。 

<蔵見学>

それではどんな蔵で酒造りをしているのかを見学させていただきました。次に蔵の見学の様子をお見せしますが、2000年一度訪問したことがあるのですが、外観はほとんど変わっていない気がしました。 

蔵の正面の建屋です。昔のままです。 

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書面玄関の入口の土間です。18年前とほとんど変わっていませんでした。 

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洗い場のようですが、奥に薮田の搾り機が見えます。床はコンクリートで今流行りのリノリウムではありませんでした。 

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次の写真には和釜と放冷機が見えますが、古いものを使っています。

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麹室は石壁でしたが、内部は木製だそうです。室は1部屋しかないので、温度管理が大変だそうです。いずれ変えなければいけないと考えているようでした。中には天幕式の製麹機と中箱(10~15kg)の床があるだけだそうです。 

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仕込み部屋の2階が麹のさらしと酒母室になっているようです。 

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仕込み蔵は解放タンクが並んでいました。空調はしていません。 

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搾り機の隣に手製の袋搾り機のようなものがありました。組み立て型の槽搾り機のようなものらしいです。この写真ではどう使うかわからないでしょうね。良いお酒はこれで絞った後薮田を使うそうです。 

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貯蔵室は結構広くて沢山の密閉型のタンクが並んでしました。ここのどこかに20年古酒のタンクがあるようです。 空調設備はありません。

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ご覧いただければわかるようにサーマルタンクが1本もありません。それはこの蔵のお酒は基本が火入れして常温貯蔵するのがベースなので、生原酒は冬場だけしているためにサーマルタンクがいらないそうです。 

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火入れの基準は瓶貯蔵するものは1回火入れ、タンク貯蔵するのは2回火入れだそうです。

以上で蔵の内部の紹介は終わりますが、特に蔵の設備には新しいものはなく、ごく普通の昔ながらの蔵をそのまま使用しているのようでした。でもあまり整理整頓されていないのがちょっと気になりました。蔵の中を奇麗にしないと奇麗なお酒にならないと思っているので、それだけは気になりました。

<試飲したお酒について>

最後に写真のようなお酒を試飲させていただきました。この写真はちょっとピンボケで拡大しても良くわからないと思いますので、左からその銘柄を示すことにします。この蔵が扱っている普通酒以外のほとんどすべての銘柄だと思います。蔵訪問でこんなに用意していただいたのは生まれて初めての経験です。 

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① 華燭大吟醸 滴 五百万石40%精米、ALC17度、日本酒度+5、酸度1.2 3年熟成酒 

② 華燭大吟醸 五百万石40%精米、ALC15度、日本酒度+4.5、酸度1.3 10年熟成酒 

③ 華燭純米大吟醸 五百万石40%精米、ALC16度、日本酒度+2、酸度1.2 

④ 華燭純米大吟醸 五百万石50%精米、ALC16度、日本酒度+1、酸度1.2 

⑤ 華燭純米大吟醸 五百万石50%精米、ALC16度、日本酒度+1、酸度1.2 

⑥ 華燭純吟 山田錦55%精米、ALC15度、日本酒度+0、酸度1.3 

⑦ 五穀豊穣 五百万石麹55%、掛60%精米、ALC15度、日本酒度+10、酸度1.2 

⑧ 華燭純米酒 低温瓶内貯蔵酒 五百万石60%精米、ALC18度、日本酒度+1、酸度1.7 

⑨ 越前国府 五百万石麹65%、掛60%精米、ALC155度、日本酒度+3月、酸度1.4 

⑩ 華燭特別純米 土蔵育ち 五百万石60%精米、ALC16度、日本酒度+6、酸度1.3 

⑪ 華燭本醸造 五百万石65%精米、ALC14.5度、日本酒度+0.5、酸度1.2 

⑫ 華燭1997酒造り人宗利 酒質すべて非公開 

⑬ 華燭 澄み透る吟醸酒 無吟香 五百万石55%精米、ALC15度 日本酒度+10、酸度1.2 

これらのお酒をひとつづつは説明しませんが、この蔵のお酒は+0~+5ぐらいで、酸度は1.2~1.3を標準としているようで、たぶんアミノ酸もあまり出さないお酒なので、淡麗と言われていますが、熟成させることにより味を調えているのだと思います。どのくらい熟成させるかは銘柄によって違うようですが、表示がないので詳しいことはわかりません。低温で熟成しているのは②と⑧だけではないかと思います。 

酵母は精米度50%以下の大吟醸クラスは福井県のF501酵母を使い、純米酒以下はM310(10号酵母)を使っているそうです。 

⑥のお酒だけ山田錦を使っているのは、福井県産の山田錦を使ったお酒を町おこしのために造ったためで、来年も山田錦でと言われたら造らないそうです。 

この中で興味があるのは④と⑫と⑬のお酒でしたので、それだけを紹介します。 

④ 華燭 純米大吟醸 

Dsc_0786_2のお酒は息子さんの克宗さんが造った28BYの出品酒で、特別の農家に作ってもらった五百万石を50%精米したものを使た純米大吟醸で、酵母は福井県のF501です。このお酒が全国新酒鑑評会で入賞したお酒です。 

精米度50%の純米酒で全国新酒鑑評会で入賞した例はほとんどないと思うので、凄いことだと思います。このお酒はラベルが2種類あって、写真の④のラベルは宗利さんが造ったもので、⑤のラベルが克宗さんが造ったラベルです。克宗さんのラベルは五百万石、50%精米、F501の5-5-5という意味をあらわしたものだそうです。少し漫画チックで、やっぱり若い人の感性は違うね。 

味の方はというと、酢酸イソアミル系の爽やかな香りの中に、奇麗なふくらみを感じるお酒で、この蔵としてはちょっと今風かな。でもこのお酒が2000円で買えるのならコストパフォーマンスは良いと思います。 

⑫ 華燭1997酒造り人宗利 

Dsc_0784このお酒が去年発売した20年古酒です。この蔵は昔からタンクにいろいろなお酒を寝かせていたようですが、このお酒だけは熟成がすごくうまくいって出来たようです。 

酒質に関する情報は一切非公開で、想像してくださいとのことでした。精米度は60%と聞いたことがありますので、日本酒度や酸度はきっとここの定番の辛口系と同じだと思います。要はどのように熟成させるかだと思いますが、20年間タンクに放置していたわけではないそうです。ここに何かノウハウがあるのかもしれません。 

飲んでみると20年の古酒とは言えない軽い熟成香がすれけどあまり気になりません。このお酒の良いのは何といっても口当たりの柔らかさで、甘いわけではないけど口の中に軽いうまみが残ります。これは精米度が60%なので熟成中で淡白質がアミノ酸に変化したのではないかと思いました。このお酒の良さを楽しむのであれば常温が良いと思います。 

普通の古酒は色も香りも付いて紹興酒のようになるけど、それはむしろ積極的に古酒になるように甘みや旨みをのあるお酒を熟成しているからだと思います。僕のお酒の先生の菅田さんが自宅で大関のワンカップを部屋で熟成させた実験をしていますが、3-5年は色が濃くなってきましたが、それを過ぎるとほとんど色が変わらなかったそうです。きっと甘みや旨みが少ないお酒は熟成が遅いのだと思います。 

しかもこのお酒の販売方法が変わっています。この蔵に来た人には問屋でも酒販店でも個人でも価格は同じで500mlが2000円で、購入した人がいくらで売ろうとかまわないそうです。 

⑬ 華燭 澄み透る吟醸酒 無吟香 

Dsc_0785このお酒は今年4月から発売されつ吟醸酒ですが、摩訶不思議なお酒です。原料米は麹は五百万石55%ですが、掛米は不明です。アルコール度数は15度、日本酒度は+10、酸度は1.2とごく普通の辛口の吟醸酒のようですが、実は造りが違うようです。吟醸酒造りですが、吟醸香を一切出さないように作ったそうです。どうしてそんなお酒を造ったのでしょうか 

飲んでみると確かに吟醸香はしないし、うま味は少ないので、ちょっと物足りないお酒でした。不思議なことに、これをお燗すると、全く姿を変えます。少し甘みが出てくるのですが、お燗独特の香りもなく後味に嫌みがなく、飲み飽きしないいくらでもおいしく飲めるお酒になりました。

吟醸香のない吟醸酒を造るとこんなお酒になることを、前もって予測していたとしたら、凄いことです。

価格は500mlで1000円ですが、相談すれば1升瓶でも売ってくれるようです。 

以上でお酒の紹介は終わりますが、このほかにも色々な古酒がでてきました。30年ものもあり、飲んでみるとウイスキーのようなおさけもsりました。この蔵の古酒造りの技術は凄いものがあります。 

<発酵食品について> 

この蔵では醴塩、甘酒、味噌を扱っていますが、僕は醴塩(れいしお)が気に入りました 

Reishio_2塩は古代の甘酒(醴)を造る過程に天然塩を加え発酵することにより、塩糀の塩の使用量を1/3(当社比)で甘味と塩味が特徴の塩糀とは一味違う調味料になったそうです。タンパク質分解酵素・アミノ酸などの成分は塩糀と変わりませんので
塩分を控えたい方には最適だそうです。
 

ここではねぎを生のままで切ったものと醴塩を合わせたものを出していただきました。ねぎの香と感触を残しているものの、醴塩の塩分と旨みがバランスしているので、最高のつまみでした。これはそのまま冷凍しておくといつでも食べられるそうです。 

写真をお見せしますが左はへしこの醴塩あえで、右がねぎと醴塩和えです。 

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社長から醴塩の絶品レシピを教えてもらったので、家に帰ってから造ってみました。妻にも褒められたのでご紹介します。それは豚肉の醴塩漬けです。豚肉のロース部分(バラでもいい)を醴塩と混ぜてチャック袋に入れ24時間冷蔵庫で保存します。それをお湯の中で約40分煮るだけです。豚肉の中に醴塩の旨みが入り、それだけで絶品のおつまみになります。しかもゆでた残り湯はスープとして使えます。僕はコンソメとわかめともやしを入れて食べました。騙されたと思って造ってみてください。

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2018年2月27日 (火)

寒菊銘醸はこれからがますます楽しみな蔵です

去年の暮れのことですが、八芳園内の日本酒料理店の槐樹蔵元と日本酒を楽しむ会が開かれましたので、参加してきました。今回は千葉県の寒菊銘醸の社長の佐瀬建一さんをお呼びしての会でした。寒菊銘醸の大吟醸の「夢のまた夢」がモンドセレクションの最高金賞を取ったことのある蔵だとは知っていましたが、今まで飲む機会がなかったので、この蔵がどんなお酒を造ってるかを勉強するつもりで参加しました。 

寒菊銘醸は九十九里浜のちょうど中央部分の浜に向かって広がる穀倉地帯の中心にある山武市(さむし)にある蔵で、明治16年に佐瀬源作がこの地に湧き出す水と、米処に目を付けて酒造りを始めたようです。小粒ながら一徹さを持つ冬菊になぞらえて、寒菊(かんきく)と命名したそうです。、最初はこの地の人たちのためだけの酒造りだったようで、生産量も100石足らずの小さな蔵だったようです。 

この蔵の庭には樹齢200年を超える大きな柿の木があり、この柿の木の根元から湧き出る清水を使って酒造りをしていますが、この水はミネラル分の多い硬なので発酵力が強く、味のあるお酒になるそうです。杜氏は以前は越後杜氏でしたが、1995年より岩手県から来ている南部杜氏の高橋正芳さんが酒造りをしていました。高橋さんは腕の立つ杜氏で、2009年にはモンドセレクションjで最高金賞を取った名誉大吟醸「夢の又夢」を造っただけでなく、全国新酒鑑評会で10年連続金賞を取っています。

その高橋さんを見つけて杜氏として育てたのが建一さんの父の4代目当主の佐瀬光久さんです。この蔵には昔から南部杜氏の仲間が来ていましたが、この中でこの蔵の杜氏として定着した人がいないことを問題としてとらえ、、杜氏補佐をしていた高橋さんに目を付け、まずこの蔵で修業させ、さらに他の蔵にまでいかせて教育して、ついにこの蔵専属の杜氏としたそうです。 

また、光久さんはビジネスにたけた人で、夏はお酒が造れないので夏に売れるビールの製造を思いつき、1億円を投じて製造設備を建設し、97年に「九十九里オーシャンビール」の発売を開始して、今では年間20万本も製造している立派な事業になっています。地ビール事業を酒蔵がやるのは獺祭の桜井さんもやって失敗したほど誰もが思いつくのですが、それを成功させることは難しく、成功させるには大変な努力があったと思われます。始めたころは蔵内部から猛反発を受けたと聞いています。光久さんの時代にお酒の生産量が一時1000石にまでになったようですが、現在は600石位の生産量のようです。

下の写真は九十九里オーシャンビールの製造工場の写真です。 

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久光さんを引き継いで5代目当主になったのが今回参加していただいた佐瀬建一さんです。建一さんは地元の高校を卒業後、千葉工業大学の化学科に入学されましたが、家業を継ぐつもりはなかったので就職して営業をするつもりで入ったら、なんと経理の仕事をさせられたそうです。そこで3年たった時に蔵に戻るように父に言われて戻ったのが15年前だったそうです。

下の写真は5代目社長の佐瀬建一さんです。

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ですから酒造りのことは何も知らなくて蔵に戻ったのですが、戻った理由は父が造った純米吟醸酒がとても良くできていらからだそうで、戻ってきてからは特に外に修業に行くこともなく、蔵の杜氏から勉強したのと、父が廃業した蔵に連れ行ってくれて、酒事業もうまくやらないと失敗することを教えてくれたことくらいだそうです。お父さんは息子をよく見ていて、うまくコントロールしていたことが判りました。 

その健一さんも5年前に父の後を継いで5代目の社長になってからは、酒造りはすべて任されていて、父は町の仕事だけをやり、酒造りには全くタッチしないそうです。このあたりも父の計画通りなのだと思います。高橋杜氏は高齢のため平成28年に退職されたので、28BYより30歳の社員杜氏に切り替わったそうです。この杜氏は元々成田飛行場の整備士をしていて、この蔵に入って酒造りの勉強した人だそうですが、感覚が繊細で、綺麗好きできちっと仕事をするこだわりの人なので、安心して任されるそうです。建一さんとはいつも酒造りの熱い議論を交わしているので、建一さんは自分のやりたいことをやっていけるそうです。 

自分が社長になってまずやったことは、酒は造った時の状態をできるだけそのまま維持したいので、200石の氷温冷蔵庫と200石の低温冷蔵庫を造ったそうです。現在は純米酒は全部無濾過にしたり、直汲みができる瓶詰め装置を使い生の直汲みの酒造りに力を入れているのと、来年度は火入れのレベルを上げるためにパスとライザーを導入すつもりだそうです。酒造りには高橋杜氏が築いたしっかりした技術があるので、後処理に力を入れているのはさすがですね。 

寒菊銘醸と槐樹さんとの関係は昔からあったようで、槐樹オリジナルな大吟醸「槐樹」は寒菊銘醸が造っているそうです。だからこの会ができたのですね。 

蔵の紹介はこのくらいにして、飲んだお酒を紹介します。お酒は5種類でした。 

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飲んだ順番に紹介していきます。 

1.寒菊 スパークリング 

Dsc_0526夏の日本酒の会でも日本酒で乾杯することが多いので、自分はビールで乾杯したかったことがよくあったそうです。それで、蔵が持っているビール会社で発泡酒を造ってみようと思い立って出来たのがこのお酒だそうです。日本酒は地元産のきたにしき(地元産の山田錦の別名らしい)とリンゴ酸が良く出る酵母77号を使った4段仕込みのお酒をビール工場のタンクに入れて、ビール工場のラインで炭酸ガスを吹き込んで作ったそうです。 

ですからビール瓶にスパークリング酒が入っている珍しい日本酒です。ラベルがとてもかわいらしいですが、これは蔵にある柿の木のイメージしたもので、建一さんがデザインしたそうです。 

アルコール度数は13度で、日本酒度はー20、酸度が2.7もありますが、飲んでみるととても飲みやすく、甘みもそれほど強くなく、辛みもないさわやかな酸を感じるお酒でした。これなら乾杯酒として良いですね。 

2.寒菊 純米酒 幻の花 

Dsc_0530このお酒は千葉県産の食料米のコシヒカリを60%精米して使った2回火入れの純米原です。この地域は米が豊富に取れるところで、コシヒカリが容易に手に入るそうです。 

このお酒は9号酵母のお酒とM310のお酒を調合して瓶詰めたもので、アルコール度数は17-18度、日本酒度+1、酸度1.7だそうです。 

飲んでみるとそれほど強くはないけど2回火入れ独特の香りが出ていたので、火入れの仕方をお聞きしたら、火入れは蛇管による火入れで、加熱後すぐ瓶詰め氏し、5℃の冷蔵庫で冷却したものだそうです。これだと冷えるのに時間がかかり香りがつくので、来年はパストライザーを購入するそうです。 

味の方は口に含んだ時のテクスチャーが柔らかく、口に入れた少し後から旨みが広がり後味がスウット消えるバランスの良いお酒でした。ぜひパストライザーに変えるともっといいお酒になると思われます。 

3.寒菊銘醸 純米大吟醸 雄町20 

Dsc_0533この蔵は兵庫産山田錦と地元産の五百万石をメインに扱ってきましたが、五百万石は熟成が早いし、山田錦は熟成が遅いので困っていましたが、3年ぐらい前から雄町を使うようになって判ったことは、雄町は春はさわやかだけど、秋になると味が乗って飲み頃になることだったそうです。 

去年岡山の米問屋が量は少ないけど20%精米の米があるけどどうするかとの問い合わせがあり、思い切って購入することにしたのですが、量が19俵と少なかったので200kg仕込みで造ったのがこの純米大吟醸だそうです。販売価格は4合瓶で税なしで15000円だそうです。凄く高いけど思いの分が上乗せされるのかな。酵母はM310です。 

飲んでみましたが、20%精米とは思えない爽やかだけど程よい味わいがあり、しかも雄町らしい余韻を感じるお酒でした。蔵には10年寝かせるために200本貯蔵しているそうです。火入れ回数は何と1回だそうです。このお酒がどのように変化するかは全くわからないし、自信もないけどチャレンジしますとのことでした。まずは5年後には飲んでみたいですね。 

4.寒菊 純米大吟醸 無濾過山田錦50 

Dsc_0537このお酒は山田錦50%精米の無濾過の純米大吟醸生酒で、28BYの2月に絞ったお酒で12月まで熟成したものです。この蔵では山田錦に適した酵母を色々試してきたのですが、18号酵母とは全く相性が悪く、結局M310酵母に落ち着いたそうです。 

今まで飲んだお酒の中では一番香りが高くて、カプロン酸エチルと酢酸イソアミルの両方の香りがして、今流行りのお酒に少し近づいているかなと思いました。 

でも旨みが奇麗で香りが高いというお酒ではなく、香りはやや抑え気味にですが、味がしっかり乗ってきていてしかも後味を残しながら最後にすっと消えていくとてもバランスのお酒に仕上がっていました 

5.寒菊 純米吟醸50 限定品 

Dsc_0539_2寒菊銘醸は九十九里の近くにあるので、色々なお魚と合わせてお酒を飲む機会が多いのですが、このお酒はイワシのような足の速いお魚の料理、例えばイワシの胡麻付けの魚の臭みを取ってくれるようなお酒を目指したものだそうです。 

お米の精米度は50%ですが、お米に何を使うかは年によって変えているそうで、敢えて純米大吟醸とは命名していないそうです。50%精米で1升3000円で販売しているので、とてもコストパフォーマンスの良いお酒です。 

酵母は4番のお酒と同じM310だそうですが、香りの立ち方が違うのでたぶん醪の立て方が違うのでしょうね。飲んでみるとテクスチャーが柔らかく、うま味は少し抑え気味ですが奇麗な立ち上がりと切れの良さを感じる呑みやすいお酒でした。 

Dsc_0701以上で飲んだお酒の紹介を終わりますが、2月末に西武デパートの日本酒売り名で社長自らが来て試飲販売していたので、寒菊のお酒を飲ませてもらいました。ここで大吟醸「夢の又夢」と純米大吟醸「源作」を飲みましたが、前者は優等生的な奇麗な酒で、後者は奇麗でありながら、味に厚みがあり飲みごたえのあるお酒でしたので、「源作」を購入しました。左の写真がそれです。またそのほか新酒として直汲みの無濾過生原を多く出していましたが、とてもフレッシュなお酒で面白かったので、大吟醸の生酒を買いました。 

ここで飲んだお酒から感じたことは、この蔵は杜氏が変わってまだ最初の年であること、社長が今出来るありとあらゆる酒造りにチャレンジしているところですから、これからがとても期待できると思います。生産高は600石と少ないですが、ビール会社も順調なようで、まだ基礎体力もあるので、今のうちにいろいろ試して、最終的には他の蔵とは違うオリジナルな立つ位置を明確にした造りをしていくと社長が語っていましたのが印象的でした。

これだけしっかりしていながらバランスの良いお酒を造っているのですから、これからどんなお酒に落ち着いてくるのかが非常に楽しみに感じました。

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2018年2月12日 (月)

まんさくの花と美濃紅梅とジャズの夕べ

去年の12月の中頃に目白のイタリアンレストランのMAC’s CARRORT日本酒をジャズで楽しむ会(SAKE&JAZZ)が開かれましたので、参加してきました。この会は日本酒マニアで、一般社団法人「日本の酒」の理事長をしている高橋さとさん夫婦が開催している会で、今回が26回目だそうです。さとみさんはジャズを聴くことが好きで、よく旦那様とお二人でジャスをジャズを聴きにいかれたそうで、特にピアニストの福田重男さんのフアンだったそうです。福田さんと交流をされているうちに福田さんが日本酒がお好きなことがわかり、生バンドのジャズを聴きながら日本酒を楽しむ会を開いてくださいとお願いされ開催したのが始まりだったようです。 

新橋のお店で開いたのが最初だったそうですが、開催の要領もわからないまま始めただけでなく、お店の場所代も高かったせいもあって、大赤字のスタートだたそうです。でもその後色々な人からのサポートもあり、赤字を出さない程度にはなってきているそうですが、26回も続けるのは凄いことです。こんな企画は他にはほとんど聞いたことはありません。ジャズと日本酒が好きな方は是非来ていただきたいそうです。 

今回のMAC’s CARRORTはJR目白駅から歩いてくらい2分くらいのところにあるお店で詳しいことは僕の下記のブログを見てください。このブログは第25回の時に初めて僕が参加した時の様子を描いたものです。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/10/post-225a.html
 

今回は暮れの忘年会と重なっているためか人数は少なめでゆったりと楽しめることができました。 

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今回参加された蔵元はまんさくの花を醸造している秋田県の日の丸醸造の社長の佐藤譲治さんと美濃紅梅を醸している岐阜県の武内合資会社の社長の武内昌史さんのお二人です。出品していただいたお酒は下記のとおりです。 

1.日の丸醸造 

・ まんさくの花 H29年3冠受賞酒 大吟醸 28BY
・ まんさくの花 純米大吟醸 亀GOLD 生詰原酒 28BY
・ まんさくの花 純米吟醸 ダイヤモンドドロップ28BY
 

2.武内合資会社

・ 一滴千山 純米直詰め荒走り生原酒 29BY
・ 美濃紅梅 特別純米酒 28BY
・ 兄花金紋 28BY
・ 美濃紅梅 純米吟醸酒 28BY
 

蔵とお酒の紹介は後で行うとして、まず演奏者の紹介をします.。誰をお呼びするかはすべてピアノの福田さんがアレンジしているそうですが、基本はお酒の好きな人に声をかけているようです。 今回のメンバーは以下の通りです。

・ ピアノ    福田重男
・ ベース   藍沢栄治
・ ボーカル Mamiko Bird
 

この方たちの詳しい情報は良く知りませんが、会の途中で福田さんとはちょっとお話したので、そこでお聞きしたことを少しだけ紹介します。 

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福田さんは群馬県前橋出身で、お父様は全く音楽教育を受けていない人ですが、クラッシックが大好きで、非常に高価なレコードを購入したり、FM放送が出始めた時にはそのためのアンテナを自分で立てたりするほどの凝り性だったそうです。ですから重男さんは小さい時からをクラシックを聴かされ、父は息子を指揮者にするのが夢だったので、好きでもないピアノを習わされたそうです。ジャスに出会ったのは中学の時だったそうですが、大学に入った時に良い師匠と出会ってジャズにのめり込んだとのことです。でも小さい時からピアノに慣れ親しんだのが今のベースになっているのは間違いないですね。指揮者にはならなかったけど有名なジャズピアニストになったのですから、大したものです。 

福田さんはワインが大好きでしたが、沢山飲みたいので高級なワインではなく安いワイン買うのが常だったそうです。今では日本酒も好きになったけど、やはり沢山飲まないと気が済まないそうです。要はお酒が好きなのですね。でもお酒が好きでないと、このような企画をサポートすることはできませんよね。この会が発足した原点が判ったような気がしました。 

会の終わりに演奏された軽快なジャス(名前はわかりません)を聞いてください。

「171216_003.MP3」をダウンロード

それでは蔵とお酒の紹介に入ります。 

<まんさくの花、日の丸醸造> 

この蔵は秋田県の横手市増田町にある蔵で、創業は江戸時代のはじめの1689年ですからとても古い歴史のある蔵です。この地は江戸時代は物資の集散地として、明治に入っては商業活動の地として、そして大正時代には吉野鉱山の増産などがあり、流通の中心の町として県内随一に繁栄したところで、大正時代が最盛期だったようです。しかも豪雪で有名な土地なので、蔵を建屋の中に造った内蔵(うちくら)が有名な街です。 

内蔵とは屋の背後に土蔵を立てて、これを鞘とする上屋で建物で覆い、母屋と連結した構造になっています。この土蔵を増田町では内蔵と呼んでいて、外からはその存在もわからない構造をした建物で、雪国ならではものです。内蔵は雪国にはよく見られるようですが、増田町は内蔵がある地区に集中しているのと、今でも沢山の内蔵が現存していて、内部が豪華なことから注目されています。そして、平成13年より公開されるようになっています。 

それを模式的に描いたのが下の図で、右の写真はある旧金物店の内蔵で、内部はとても豪華な蔵になっています。 

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その蔵の母屋の写真がありましたので、載せておきます。中の様子が全く分からないですね。現在は観光物産センターの「蔵の駅」として使われています。

 

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この内蔵は増田町の繁栄の象徴と言えそうです。日の丸醸造の建物も内蔵構造をしており、文庫蔵として国登録有形文化財となっています。内蔵は大別して物を仕舞っておく文書蔵と座敷として使っている座敷蔵があるそうですが、もともと文書蔵が多かったのが、明治以降座敷蔵が増えたそうです。この文庫蔵は増田町の数多い内蔵の中でも、その意匠や豪華で繊細な装飾がひと際際立った内蔵となっているそうです。醸造用に使っている蔵もあり、日の丸醸造もその一つだと思いますが、文化財としては文書庫の分類に入っているようです。日の丸醸造の内蔵の写真を下に載せておきます。

 

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日の丸醸造は大正時代は生産量が5000石もあったそうで、東北を代表する蔵として栄えたそうです。しかし、戦時下の企業整備令によって廃業に追い込まれることになったそうで、戦後先代の佐藤光男さんが買い取って蔵の歴史を継承したようです。静岡県出身の先代は仕事も全く場違い酒造りは大変だったと思いますが、努力も実って一時は1万石近くにまでなったそうですが、現在は特定名称酒を重視した造りで1400石位の生産量を維持しています。 

日の丸醸造という名前は蔵の名前としては珍しい名前ですが、この名前は秋田藩主佐竹公の紋所が扇に日の丸だったことから付けられています。この名前の商標登録は明治40年だそうで、それ以来「日の丸」を主要銘柄として酒造りをしてきました。しかし、戦後日の丸のイメージが国粋主義に感じる人が多かったので、他の銘柄を考えていた時に、NHKの朝の連続ドラマで秋田県横田市を舞台に「まんさくの花」が放映されたのを機に新たな銘柄として「まんさくの花」が誕生したそうです。 

「まんさくの花」はそれまでの主力製品の「日の丸」の重みのある酒質とは異なり、奇麗で優しい酒質のお酒を目指し、今では日の丸醸造の代表銘柄となっています。この蔵の酒造りの特徴は何といっても仕込み水の良さです。栗駒山系の伏流水を蔵内の4本の井戸からくみ上げて使っていますが、硬度5の軟水で柔らかくて優しい水だそうです。もう一つの特徴は出来たお酒は全量瓶貯蔵で保管できる低温貯蔵庫を持っていて、火入れに関しても酒質が変わりにくいパストライザーなどの専用設備を使うなど、お酒の酒質を変化させない努力をしていることです。 

もう一つの特徴はこの蔵には秋田県が生んだ3人の名杜氏の一人である高橋良治さん(70才)がおられることです。他の二人は阿桜の照井俊男さんと雪の茅舎の高橋藤一さんです。この3人は山内杜氏で仲が良いそうで、雪の茅舎の高橋杜氏の息子さんは阿櫻で酒造りをしていて、照井さんの後を継ぐと言われているのは有名な話です。この蔵の高橋杜氏が大切にしているのは蔵の清潔さと仲間との一体感で、楽しく、明るく、前向きに酒造りをすることだそうです。初めて知ったのですが、「まんさくの花」は熟成を楽しめるお酒を目指しているそうなので、今後はまんさくの花を熟成して飲んでみたいと思っています。 

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最後に社長の佐藤譲治さんをご紹介します。譲治さんはこの蔵で育った後、京の大手銀行に就職され、120人の部下を持つ支店長にまでになった方ですが、47才になった時に、蔵に戻る決意をされたそうです。平成10年に蔵に戻ったそうですから現在66歳ではないかと思います。まんさくの花に2011年に訪問したことがあるのですが、蔵の中にJBLのスピーカーを見つけて驚いた記憶があります。 

JBLスピーカーはジャズを聴くのに良いスピーカーと言われていますので、譲治さんはきっとジャズがお好きなのだと思います。譲治さんは蔵の人らしからぬ風貌がおありなのは、東京で育った上級ビジネスマンの経歴とジャスのセンスから来ているものと感じました。蔵を訪問した時のJBLの写真を下に載せておきます。なかなかのスピーカーだと思いますよ。 

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次に飲んだお酒を紹介します。 

<まんさくの花 H29年3冠受賞酒 大吟醸 28BY> 

Dsc_0479このお酒は平成29年度の全国新酒鑑評会で金賞を、東北清酒鑑評会で優秀賞を、秋田県清酒品評会で県知事賞を受賞した3冠受賞酒の大吟醸です。お米は兵庫県の山田錦38%精米で、M310酵母を使った大吟醸の原酒です。 

酒質は日本酒度が+3.0、酸度1.1、アルコール度数16%でしたが、約1年間蔵の5度の冷蔵庫で熟成したお酒でしたが。 

飲んでみると香りは、全く熟成香はなく、熟成によって吟醸香は抑えられていましたとてもきれいなふくらみがふわっと広がった後にスウット消えていくお酒でしたが、後味に奇麗な余韻を感じるお酒に仕上がっていました。これはうまい!

東武デパートで売っているのを聞きすぐ購入しました。 

<まんさくの花 純米大吟醸 亀GOLD 生詰原酒 28BY> 

Dsc_0493このお酒は亀の尾を使っている純米大吟醸です。亀の尾は昔は東日本の食料米として一大勢力のあったおお米ですが、近年は他のお米にとってかわられ、1970年代にはほとんど作られなかったお米です。その後1980年に入ると新潟の久須美酒造と山形の鯉川酒造が相次いで酒米として復活させて、現在では秋田県を中心に酒米として栽培されるようになっています。 

このお米は溶けにくいけど硬いので精米しやすい特徴があるので吟醸用として使われることが多いけど、味の出しにくいお米と言われていますが、この蔵ではあえてこのお米のお酒を10年前から使うようになったそうです。このお酒のラベルはかわいいでしょう。社長が書いたそうです。 

精米度は45%で、酵母が自社酵母(9号系と他の酵母のブレンド)の純米大吟醸で、酒質は日本酒度が+1、酸度が1.3、アルコール度数は15%で、1回火入れの半年熟成のお酒です。 

飲んでみるとしっかりした味わいのあるお酒で、後味に少し辛みを感じるけどとてもバランスの良いお酒でした。亀の尾でこれだけしっかり味を出せるのは大したものだと思います。 

<まんさくの花 純米吟醸 ダイヤモンドドロップ28BY> 

Dsc_0515このお酒は麹米を50%精米の山田錦、掛米を50%精米の美山錦を使った純米吟醸酒の1回火入れで半年熟成の原酒です。 

酒質は日本酒度や酸度は書いてありませんが、アルコール度数は16度です。ラベルは日本酒がドリップしている習慣をとらえたもので、金環食のように輝いているので、ダイヤモンドドリップと呼んでいるようですが、袋搾りではなく普通の槽搾りのお酒です。 

飲んでみるとさわやかな飲み口ですが、ラベルがイメージするような透明感はない比較的普通のお酒のように感じました。ちょっとラベルのイメージが強すぎるので、このレベルのお酒でも袋搾りをした新しさがほしかったように思えました。 

<美濃紅梅 武内合資会社> 

この蔵は岐阜県大垣市の伝馬町にあり、この地は濃尾平野の西の根っこにある江戸から京都に行く東西の交通の要所として栄えたところです。また、昔から大垣は水の都と言われたほど豊富で清廉な湧水に恵まれていて、その水はとても柔らかい軟水なので酒造りに適した水と言われています。しかも冬は西にそびえる伊吹山から吹き下ろす伊吹おろしの寒風が吹き、一面雪になるほどの寒い土地なので酒造りの向いていた土地なのです。ですから昔から酒造りが盛んで、今でも酒造りの蔵が3蔵もあります。 

創業は江戸時代の中期の1744年に大垣城の近くに居を構え、清酒「兄花’(このはな)」を造り始めました。その後一時味噌、醤油、お酢なども手がけましたが、6代目の当主が酒業を専業とすることを決意して、現代に至っています。兄花とは寒梅に中でも一番先に咲く花のことを言うそうですが、「このはな」とは呼びにくいので、先代が特定名称酒を「美濃紅梅」という名にして発売することになったそうです。 

この蔵の杜氏は長年新潟杜氏の岡住一昭さんが勤めてきておられてきましたが、最近高齢になったのでやめられたので、今は社員の若手杜氏に変わっています。蔵の生産量は約150石と小さいですが、国内外の鑑評会でも様々な賞を取るほどのレベルのお酒を造っています。 

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武内昌史は地元の高校を出られた後、大阪学院大学にすすまれ、卒業後蔵に戻ってきました。父は東京農大を出ていましたが、蔵の仕事にあまり首を出さないようにしていたそうです。前杜氏の後釜が心配なので蔵の仕事をしようとすると、お前は造りには首を出すなと言われたので、仕方がなく杜氏に任せていたそうです。その父も5年前に亡くなり、現在は9代目の蔵元となっていますが、亡くなる前は体調が悪くなっていたので、10年前くらいから実質的に社長の代役をしてきたそうです。でも、酒の酒質のコンセプトは自分で決めて、杜氏と相談して造りをしてきたそうです。 

<一滴千山 純米直詰め荒走り生原酒 29BY> 

Dsc_0488一滴千山シリーズは2012年に首都圏向けのお酒として造ったお酒で、今までは炭素ろ過のお酒が多かったので、無濾過で生の原酒にチャレンジしたものです。その後このシリーズは低アルコール、超甘口のお酒のTAKE1を出すなどのお酒を出しているようです。これは武内社長の新しい狙いだと思います。 

このお酒は岐阜県産のこだわりがあり、お米は岐阜県産のあさひの夢はつしも(いずれも精米度65%)を、酵母は岐阜県が開発したG酵母を使っています。 

一滴千山とは「一滴の水でさえ沢山になり、多くの山々をゆったりと潤す」の意味で、「飲んで頂いた方々の心を潤すような、そんなお酒でありたいとの想いを込めて名付けましたそうです。 

酒質は日本酒度が+1.0、酸度1.6、アルコール度16~17度のお酒ですが、今年から新しい杜氏になった初めての酒のようです。 

飲んでみるといかにも新酒の生酒らしい香りとフレッシュさがあり、その中に程よい甘みと旨みを感じるお酒でした。一般米でこれだけの味とバランスが出せればなかなかのものだと思います。 

<美濃紅梅 特別純米酒 28BY> 

Dsc_0499このお酒は岐阜県産のひだほまれ60%精米で、10号系の岐阜県酵母を使った特別純米酒で、去年からフランスで始まった、フランス人によるフランス人のためのフランスで行う品評会の純米部門でプラチナ賞に選ばれたお酒です。 

このお酒の酒質の表示はありませんが、飲んでみると香りが抑え気味で、いわゆる吟醸香が少なく、うま味が口に含んだ後半に感じるので、これは吟醸造りですかとかアミノ酸が少し多いのではとお聞きしてみました。 

社長の話ではもろみの発酵温度がすこし高めで、アミノ酸は1.3くらいで、フランス料理にも合わせられる食中酒を狙ったものだそうです。 

ラベルが少し古風的ですが、フランス人には喜ばれるかもしれませんね。 

<兄花金紋 28BY> 

Dsc_0513このお酒はこの蔵が出している普通酒で、お米は岐阜県産のあさひの夢65%のアルコール添加のお酒です。まずお燗酒として出ましたが、常温と比較して飲んでみました。 

飲んでみたら吟醸香はほとんどしなかったので、吟醸造りではないお酒であることはすぐわかりましたが、このお酒の気に入ったところはテクスチャーの柔らかさでした。アルコール添加のピリピリ感がなかったので、社長にお聞きしたら特別なことはしていないというのです。 

もっといろいろ聞いてみると一番の理由は水の良さということになったのですが、このお酒は一度火入れしたのもをタンクで貯蔵して、瓶詰めの時にもう一度火入れするので、タンクを小分けにして貯蔵して、払い出した後の残ったお酒が酸化しないように管理していることと添加用のアルコールは少し寝かせてから使っていることぐらいだそうです。 

<美濃紅梅 純米吟醸酒 28BY> 

Dsc_0517このお酒は雄町55%精米の純米吟醸で、この蔵としては初めて雄町を使ったお酒だそうですが、「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2017」において、 【COMMENDED(コメンデッド)賞】を受賞したお酒です。

酒質については記述がないのでわかりませんが、飲んでみるとちょっと普通のお酒にはない変な香りがするので、社長にお聞きしたら、確かのこれはおかしい。最初のお酒にはなかった香なので、戻って調べてみるとのコメントをいただきました。

ですからこのお酒のコメントは控えさせていただきます。

以上で武内酒造のお酒の紹介は終わりますが、この蔵の特徴がいまいちよくわからない気がしましたが、お酒造りの腕は良いものを持っていると思いました。新しいブランドを出したばかりなので、まだ安定していないこともあるのかもしれませんが、水の良さとか腕の良さを生かしたこの蔵らしいお酒造りを目指してもらいたい気がしました。

最後に集まった全員の集合写真を載せておきます。クリックすると大きくなりますよ。この写真が高橋さとみさんのFACEBOOKよりお借りしました。

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2018年1月 8日 (月)

若竹屋酒造は不思議な蔵です

今まではブログを書くための貴重なデータをネットワークHDDであるNASに保存していたのですが、暮れのかたずけで、レイアウトを変えることをしていたら、NASの電源を誤って抜いてしまいました慌てて電源を入れなおしたのですが、ファイルだけは見えたけど、中身が読めない状態になったので、早速そのメーカーに問い合わせて色々確認しているうちに、ついにレッドランプがついてお手上げの状態になってしまいました。メーカーの話では、「こうなったら復帰はできません。リカバリー専門の会社でデータ復帰しかない」とのことでした。 

それからが大変で、ある専門の会社に持ち込んだら、HDDが破損しているらしいけど何とかデータは読めるかもしれない。だけど急いでやると80万円はかかるとの返事でしたので、それなら諦めますと言って交渉しているうちに、年明けの出来上がりなら20万円以下で対応しますということなので、手打ったら、なんと年度末に全データが読み込んだ新しいHDDと壊れたNASが戻ってきました。きっと技術的にはすぐ読めたのに吹っ掛けられたのだと思いましたが、貴重なデータが戻ってきたので良しとしました。戻ってきた壊れたNASのHDDを取り出してチェックしてみましたが、読めないのはしかたがないけど、再利用のためのフォーマットもできない状態でした。どうやって読んだのでしょうね。この経験で分かったことは以下のことです。 

1.RAIDタイプのNASは停電に弱いので使わないほうがいい。使うのなら無停電電源装置と電源が抜けにくいタイプのNASを選ぶしかないですね。 

2.貴重なデータもいつも使う本体のハードディスクに保存しておき、定期的に専門のバックアップソフトで外付けのHDDに保存する方が確実です。最近はクラウドの方が良いとの意見も聞きますが、DOSから復帰できるかが心配です。 

3.万が一HDDが読めなくなって専門のリカバリー会社と交渉する時はあせらず1社だけでなく数社と交渉をする。 

そのおかげで年明けからブログの再開を始めました。今回は一般社団法人「酒類ビジネス推進協会が主催する「応援しよう 頑張る蔵の美味しいお」の第4回目です。第1回は千葉の小泉酒造、第2回は東京の田村酒造場、第3回は千葉の東薫酒造、そして今回は福岡県の若竹酒造場の副社長の篠田成剛さんをお迎えしての会でした。 

小泉酒造と東薫酒造の時は参加してブログに書いていますので、良かったらご覧ください。 

小泉酒造:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-e160.html 

東薫酒造:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/05/post-79c5.html 

この方が協会の代表者の宮坂芳絵さんです。まだお若いので協会の運営は大変だと思いますが、精力的に頑張っておられます。彼女の凄いのは会のために案内のオリジナルな冊子と造って全員に配ることです。これはなかなかできないことです。 

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この協会の設立の趣旨は小泉酒造のブログで書きましたので、それをご覧ください。本来は良いお酒を造っている比較的小さな蔵を応援しようというのが一つの目的だったと思うのですが、田村酒造はお金持ちの蔵なのでどうかなと思っていました。でも小泉酒造や東薫酒造ならその対象としてもいいかなと思ったのですが、今回の若竹酒造場はどんな蔵なのでしょうか。僕はよく知らないで参加しました。副社長のお話では生産量が250石と言っておられたので、これは良い蔵をキャッチしたなと思っていましたが、このブログを書くにあたって、インターネットで色々調べてみるとそんなに小さな蔵ではないことが判りましたので、まずは蔵の紹介をしたいと思います。 

この蔵は福岡県久留米市の田主丸(たぬしまる)町にありますが、JR久留米駅から東に20㎞くらい行った筑後平野の東のはずれです。創業は1699年の元禄で初代の若竹屋伝兵衛がこの地に蔵を開いたそうですが、伝兵衛さんは余ったお米で酒を造るような大地主ではなく、単純にお酒そのものに魅力を感じて酒を造り始めたそうです。ですから、自分で、米を選び購入し、酒を造ることに資産を注いできたようですから、苦労されて酒造りをしてきたのでしょう。 

それから今日までずっと酒を造り続けてきたわけですが、、その間には飢餓や革命や戦争など色々な時代を切り抜けたのは、伝統の技術を守り抜こうという努力ではなく、意欲的に革新し続ける努力をしたからようです。若竹屋の家訓に「若竹屋は先祖から受け継ぎ志商いにあらず、。子孫より預かりしものなり」という言葉があるそうです。この言葉には深い意味を感じますね。昔からの伝統を守っていくのではなくて、子孫へ残していくために変えていかなければいけないことと、残していくべきことをバランスさせて意欲的にチャレンジしなさいという意味があるように思えます。家訓のようにこの蔵は色々なことにチャレンジしてきているようですので、それについてご紹介します。 

<林田春野さんの例>

まずは最初は12代蔵元の林田博行さんの奥様である林田春さんのチャレンジを紹介します。春野さんは久留米の日本酒の造り酒屋に生まれ、昭和5年に若竹屋に嫁ぎ、蔵の女将として支えてきましたが、日本酒に変わる新しいお酒の開発を思いつき、色々な研究を進めた結果、麦焼酎をベースに胡麻油を添加すると、独特のくさみがきえることに気が付き、長い間試行錯誤をして、胡麻と麦を使った焼酎(もちろん麹米は使います)をある程度の貯蔵期間熟成した焼酎の「胡麻祥酎」を開発することに成功し、1978年にそれを製造する紅乙女酒造を立ち上げています。この焼酎は国内の鑑評会でも多くの受賞を受けるだけでなく、海外では2006年から5年連続国際味覚品質審査会で三ツ星賞を受賞するなど輝かしい成果を上げています。2014年からは九州をめぐる豪華列車のななつ星の車内ドリンクとして選定されています。未来につながる新しいビジネスを立ち上げたことになります。 

<林田博行さんの例>

春野さんのご主人の林田博行さんも凄い人のようです。この田主丸地区は古くから独自の産業を立ち上げる努力を色々していたのですが、その一つが巨峰の栽培でした。巨峰は伊豆の大井上先生がこの品種を編み出した人ですが、その栽培が難しく、大井上先生の代には成功しなかったのです。しかし、その弟子の越智先生が耳納連山に囲まれて水はけが良い田主丸の土地が巨峰の栽培に適していると判断し、そこで巨峰の栽培の研究をしたいと思ったそうです。でも資金がないので博行さんに支援を頼み込んだそうです。博行さんはその話を聞き、気前よく研究所の土地と建物を提供して、巨峰の栽培の研究所の設立の貢献しました。研究所の設立は昭和31年でしたが、その後栽培を重ねて昭和35年には巨峰栽培に成功し現在に至っています。そういう意味で、博行さんは巨峰栽培の生みの親として高く評価をされています。 

その後巨峰の栽培は次第に拡大していきますが、この巨峰からワインを造ることを思い立ったのが息子の13代蔵元の林田正典さんでした。正典さんは醸造学の博士でしたので、こういった発想ができたものと思われます。そして、1972年(昭和47年)にワインを生産する株式会社巨峰ワインを設立させ、今でもその生産を続けていますが、現在は14代蔵元の林田浩暢さんが社長をしています。 

<林田浩暢の例>

この方が林田浩暢さんですが,インターネットから拝借しましたので、いつ頃のお写真かはわかりません。 

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この林田浩暢さんも凄い人のようです。つぎに浩暢さんが何をしたかをご紹介しましょう。浩暢さんは1965年に13代の正典さんの長男に生まれ、蔵の跡取りとして育ってきたのですが、大阪大学の博士号をもつ父親に対するコンプレックスもあり、若竹屋なんて継ぎたくないと高校を卒業すると東京に飛び出して明治大学の夜学に通いながら、広告代理店のアルバイトをして生活をしていたそうです。そんな折に実家から池袋の西武百貨店で試飲販売をするので手伝えという知らせが来ました。バイト代をはずむということで引き受けて、販売をしたのですが、最初は人前で声も出せなく全く売れない状態だったそうです。これではいけないと恥ずかしさをこらえて下を向いて声を出したら、お客様が来るようになったので、思い切って顔を上げて博多弁で声を出したら大勢お客様が来て、お酒がすごく売れたという経験をしたそうです。この経験が大きく彼を変えるチャンスとなったようです。 

お酒を売るということはお酒を造る人だけではなく、米を作る人、瓶にラベルを張る人、それを運ぶ人、お店で売る人など多くの人の手によって成り立っていることを初めて感じたので、この全体の仕組みを考えられる若竹屋の仕事が面白い、これなら好きになれるかもしれないと思ったそうです。その後広告代理店をやめて、西武デパートに雇ってもらって大学を卒業するまで営業を勉強したそうです。 

蔵に戻ったのは1992年27歳の時でした。家に戻った時の若竹屋の年商は7億円弱ありましたが、毎年赤字経営で億単位の債務超過があり、何とかしないといけない状況のようでした。当時は量産量販型の経営でしたので、生産量を抑えて高品質高粗利益販売にする改革を断行したそうです。具体的には今後の経営計画を立ててそれを仕入れメーカーに説明することにより、お互いにハピーになることを理解してもらい、仕入れ価格を下げてもらう交渉をしたことと営業部の廃止しお客様部に変えて営業することでした。それまでの営業は主に問屋に商品を売り込みどのくらい売上を出したかで評価していたのを、問屋ではなく販売店に買っていただく提案をどのくらいやったかで評価するようにしたそうです。その効果は徐々に出てきて、2006年には売上3億円と半分に減りましたが、経常利益が2000万円になるまでに持ち直して現在に至っています。 これは頭でわかってもなかなか実行が難しいことだと思います。

現在売り上げがどのくらいの会社なのかはデータがないのでわかりませんが、3億円以上あるものと思われます。日本酒の生産量が250石だとするとその売り上げだけでは到底3億円にはなりません。上述した会社などの関連の売り上げがあって達成しているものと想像できます。ですから若竹屋は日本酒の生産量は少なくても、それだけで経営している蔵ではないので、本当に小さな蔵とはだいぶ違うことをが判りました。そういったことを理解して若竹屋のお酒を見てみたいと思います。 

お酒の紹介に入る前に今回お酒の説明をしていただいたのは副社長の篠田成剛さんです。、まずこの人の紹介をしましょう。下の写真が成剛さんです。頭の毛は薄いけど若い感じですね。 

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成剛さんは社長の林田さんとは名字が違いますが、社長の弟で8歳年下だそうです。成剛さんも父のことが嫌いで、兄と同じように東京にあこがれていたので、東京の大学に行ったそうですが、卒業の時、就職の内定が4社あって迷ったので兄に相談に行ったら、若竹屋の現状を説明して、問題点が多く抱えていて解決しなければならいことがいっぱいあり、弟の力が必要だと説得されて、蔵に戻ることになったそうです。兄とは仲が良く、スナックに行くとよくデュエットをするほどだそうです。また、最初は日本酒が嫌いだったそうですが、愛知県の会社に修業した時に、日本酒が好きになり利き酒も得意になったとのことでした。 

ちょっと下の写真を見てください。 

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画面をクリックして拡大してみるとわかるのですが、すごく目によって表現される方です。この目で営業されたら相手はイチコロですね。声もとても良い方で、今回でも周りが騒がしくて話を聞いてくれない時に彼の良く通る声で聴いてくださいというと、会場がぱっと静まったくらいです。この方もなかなかの人ですね。血筋は争えません。 

それでは早速飲んだお酒の紹介に入ります。 篠田さんはお話は面白いのですが、あまり専門的なことをお話しされなかったのと、他の人の話し声で聞き取りにくかったので、肝心なことが書けなかったのはお許しください。

1.「響(もてなし)」大吟醸  

Dsc_0324このお酒は田主丸の山田錦38%精米した大吟醸で、酵母は9号系の自社酵母だそうです。銘柄は「響」と書き、もてなしと読むようですが、その字がラベルに書いてあります。でも、読めないですね。 

ラベルのデザインは成剛さんがやってるそうで、ある書道家が畳2畳敷きの大きさの紙に書いた文字を写真で撮り縮小したものを使っているそうです。 

このお酒は全国新酒鑑評会に出した出品酒でこっそり蔵から持ってきたそうです。酒質は日本酒度+1、酸度1.1、アルコール度数16度のお酒でした。 

飲んでみると香りは抑え気味で、奇麗な甘みが広がり余韻も少し感じるお酒ですが、ちょっと辛みを感じてしまいましたがそれが特徴なのかもしれません。 

2.「極」 純米大吟醸 

Dsc_0325このお酒は「響」と全く同じお米、同じ酵母で、スペックも同じですがアルコール添加をしていない純米大吟醸です。 

極というブランドのお酒は今は販売していない銘柄だそうで、極と名をつけないで単純に純米大吟醸という銘柄で売っているそうです。 

飲んでみると、香りは「響」と同じ香りですが、やはり抑え気味です。こちらの方が旨みがあって、辛みが少ないので全体的に奇麗さ感じました。この味なら純米大吟醸を全国新酒鑑評会に出品してもいいような気がしました。 

3.「渓(たに)」 ひやおろし 

Dsc_0327このお酒は山田錦50%精米の純米吟醸を1回火入れしたのち、蔵の18℃のタンクで半年熟成してそのまま瓶詰めしたひやおろしです。 

酒質は日本酒度+3、酸度1.2、アルコール度数15%ですが、飲んでみるとj、熟成の香りはあまりしないけrど、うま味は増してバランスはよくなっているように思えました。 

5で紹介する「渓」と同じスペックのはずですが、熟成するとこんなに変わるのだということが良くわかる典型ではないかと思われます。 

4.「坐」 無濾過 生原酒  

Dsc_0330このお酒は福岡県産の夢一献を68%精米の純米酒の無濾過生原酒です。 

夢一献は福岡県で開発した酒造好適米ですが、病気に強く味の良い飯米の開発を目的に育成中に偶然できたお米だそうです。粒が大きくて、蛋白含有量が少ない酒造適性のあるお米で、レイホウに変わる米として現在作付け面積が広がってきているそうです。 

酒質は日本酒度+4、酸度1.7、アルコール度数17%というお酒で、飲んでみると最初にうまみと甘みがドンと来るけど、酸が強いので後味を切ってくれるのが特徴です。 

アルコール度数が上がるとパワーが出る分、切味が悪くなるので、酸を高くしてバランスさせたようです。低温で1年ぐらい寝かせるともっと面白くなるのではと思いました。 

5.「渓」 純米吟醸 

Dsc_0332_2このお酒は前述したひやおろしの1回火入れのお酒のはずです。特にそういった説明はありませんでした。副社長のお話では特徴のないのが特徴のお酒だそうです。 

確かに飲んでみると口に含んだ時にうまみがぱっと広がるのではなく、ゆっくりと奥に広がっていって、いつの間にか消えてしまうお酒でした。 

悪く言うとコクのある柔らかい水のようなお酒で、特徴がない分どんなお料理にも合わせやすいかもしれませんね 

6.「坐」 純米 夢一献  

Dsc_0306このお酒は4番のお酒のアルコール度数を15.5%まで下げて、2回火入れをした純米酒です。 

たしかにアルコール度数が下がった分だけ飲みやすくはなっていますが、2回火入れ独特の老香的な香りが出てしまっているのが、残念です。 

やっぱり、2回火入れする場合はこの香りが出ないように管理してもらいたいです。

 

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 7.ヌーディ 無濾過 

Dsc_0335このお酒のラベルを見てください。お米にビキニを履かせたデザインになったセクシーなイメージのお酒です。この蔵にはこの蔵に38年間ずっと杜氏をしていた横尾正敏さんがおられますが、彼は東京農大を卒業後、若竹屋に入って蔵を背負ってきた杜氏ですが、まじめな性格で努力家なので、副社長が横尾さんらしいいやらしさを出したお酒を造ってくださいと3年間言い続けてきて今年やっと気に入ったものができたので出したお酒だそうです。

お米は全量雄町を使っていて、精米度は60%で酵母は9号酵母を使った特別純米酒だそうです。 

飲んでみると珍しく香りが立って、甘みと酸味を感じるおさけで、全体にねっとり感があって、後味に余韻を感じるお酒でした。確かに今までの酒とは違うちょっといやらしさが出ているのかもしれません。 

8.デザート酒 博多練り酒 

Dsc_0340このお酒は室町時代の造りを再現した練り酒です。練り酒の作り方は米ともち米を乳酸発酵させ、その乳酸液に米、麹、水を入れて再び発酵させて、それを臼で引いたのちに絹布で濾すもので、アルコール度数が低い白く濁ったお酒で、日本酒の原点と言えるようなお酒です。 

練り酒は室町時代から江戸時代にかけて造られていて、その中でも博多練り酒の評価が高かったようです。豊臣秀吉が九州に行った時に、愛飲したと言われています。 

実際に飲んでみるとねっとりとした甘酸っぱいお酒で、アルコール度数が3度なので、今ではデザート酒でしか使えないのではと思いました。このお酒は13代目の蔵元が十数年かけて再現したおで、現在も引き続き造られています。 

9.馥員元禄之酒 

Dsc_0342このお酒の13代目の蔵元が創業時代のお酒を再現するために元禄時代の書を読み漁って、再現したお酒だそうです。 

ですから精米はあまりしていない玄米に近い米で作られていますが、手法はわかりません。お酒の色は琥珀色をしています。 

5年の熟成酒のようなので、飲んでみると香りは熟成のカラメルとか醤油のような香りがしますが、普通の熟成酒とは少し違うような気がしました。まずは甘さを感じて軽い酸味も感じますが、うま味は複雑で濃厚な感じです。ロックで飲みたい気がしました。沢でも山飲めるお酒ではないですね。 

練り酒や馥員元禄之酒を造ろうという13代目の蔵元は大変勉強家で、伝統を重んじる理論追求型の人ではないでしょうか。

以上で飲んだお酒の紹介を終わりますが、この蔵のお酒を一言で表現するのは難しいですね。色々なお酒を造っている割には今一つ特徴が捉えにくかったけども、チャレンジする姿勢は感じました。今後どう変わるか、じっくり見守っていきたいですね。

最後にこの協会のお酒の会は第4回を迎えて感じたことを述べてみます。会の趣旨はよくわかるし、努力をされていますが、折角蔵元さんが来ているのですからもう少しじっくり蔵元さんのお話を聞くように仕向けた方が良いと思います。そのためには会のはじめにそのことをお願いすることと、この人数でやるならマイクとスピーカーを用意することです。ぜひ携帯用の質の良いものをお買いになったらどうでしょうか。 

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2017年12月20日 (水)

富士錦酒造の蔵開きは日本一の規模らしい

先日、調布市の仙川にある日本酒バーあふぎでの今年最後の蔵元を囲む会がありましたので、参加してきました。今回は静岡県の富士錦酒造の社長の清信一さんをお呼びしての会でした。清さんとは静岡県の酒造組合が主催するイベントなので時々お会いしてなかなかいいお酒を造っているなと思っていましたので、じっくりこの蔵のお酒を味わってみようと思ってきました。 

富士錦酒造はJRの富士駅から北の方に20㎞程上がった上柚町にあります。富士駅から山梨県の甲府駅を結ぶJR身延線の富士宮駅からも7-8kmも離れている富士山の西の麓に位置していて、標高が270mあるので、冬は結構寒いところのようです。酒造りとして適しているのは富士山の伏流水が豊富にあるからのようで、蔵の敷地内の30mの井戸からくみ上げた水を仕込み水として使っています。この水は富士山の溶岩層の第3層にある水で、富士山に降った雪や雨がしみ込んで80年近い時間をかけて湧き出てきた水で、硬度が32の軟水です。非常に柔らかくてとげをまったく感じない水で、これが富士錦のお酒の骨格になっているそうです。 

創業は元禄年間(1688~1704)年だそうで、300年以上の歴史のある蔵ですが、もともとこの地の地主で、ここで出来たお米を流通させる商売をしていたそうです。酒造りは余ったお米を使って、副業として始めたので、その生産量は200石足らずの小さな蔵だったようです。この蔵のお酒にははっきりした銘柄がなかったのですが、1914年(大正3年)に第14代目の当主の弟さん(清崟太郎)が衆議院議員を時の尾崎司法大臣を実家にお招きした時に、夕日を受けた富士山を見て感激して「富士に錦なり」と言われたことから、その言葉をいただいて「富士錦」と命名したそうです。

その後、戦後の農地改革や企業整備なので6年間休業していたこともありましたが、昭和26年に酒造りを再開しました。しばらくは他の蔵と同じような普通酒を造っていましたが、17代目の当主は昔の行われていた本物の酒造りを目指して開発を進めた結果、昭和46年に「富士天然醸造酒」を発売をしたのが大きな変革の始まりでした。そのお酒は「富士の湧き水と米だけで醸造した酒」というキャッチフレーズで出したお酒で、今でいう純米酒を全国に先駆けて出したのです。当時は純米酒という言葉すらない時代で、米のほかに調味料や醸造用アルコール入れることが普通に行われていましたので、価格が大幅に高くなる純米酒の醸造をやる人はほとんどいなかったようです。調べてみると全国で最初に純米酒を復活して出したのは京都の玉乃光酒造で、昭和39年のようですが、富士錦酒造のこの行為が業界に風穴を開ける大きなきっかけになったようですが、そのことはあまり知られていません。純米酒の普及と言えば純粋日本酒協会がありますが、この協会が発足したのは昭和48年です。でも、この協会には玉乃光は参加しているけど富士錦は参加していません。いろいろあるのでしょうね。 

富士錦が出した当初の純米酒は価格が高いうえに味は辛くて厚みのあるお酒でしたのであまり売れなかったようですが、その後研究を重ねて品質が上がりお酒も売れるようになり、現在は生産高も2000石になっています。 

そして今の富士錦の体制を築き上げたのは第18代目の蔵元の清信一さんです。信一さんは非常に変わった経緯で蔵元となっていますし、あの事件がなかったら今の僕はないと言っておられるほどですので、まず、それを紹介しましょう。 

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 信一さんは1993年横浜生まれの横浜育ちで、優しそうな顔立ちの現在54歳のダンディな方です。お父さんはシンガポールで金型を作る会社を経営していたので、将来はその会社を継ぐことを考えて、大学は中央大学の理工学部の管理工学科に進学されました。管理工学と言っても経営学とITを一緒にしていたような学問でしたので、卒業後は大和証券のシンクタンクの「大和総研」に就職して、生命保険会社などのシステム構築の仕事を担当して9年間務めたそうです。 

その間に東京で知り合った人と1993年に結婚することになったのですが、その年の12月に奥様のお兄さんが交通事故で急死されたのです。奥様は富士錦酒造の社長の娘さんでしたので、後継ぎが無くなり信一さんに後を継いでもらいたいとの声が強くなってきたので、どうするか悩んだそうです。でも、仕事が一段落した2年後の1996年に富士錦酒造に入社することを決め、家族で柚野に拠点を移し、養子縁組をすることになったそうです。父の会社の後は弟に譲って、自分は蔵に入ったのですが、お母様は泣いて悲しんだそうです。それはそうでしょうね。でもそれをお許しになったお父様は心の広い人ですね。 

全く酒造りを知らない人でしたから、急遽東京農大の醸造学科に通って、蔵の事情をお話しし、半年で2年分のカリキュラムを勉強したそうです。前半の授業では必死に聞き落さないよう勉強したのち、後半の2か月は東京で泊まり込みの醸造実習を行い、1996年の11月から蔵に入りました。最初は総務部長として製造から営業、製品造り、経理と色々なことにかかわり、2年ほど勉強した後、1998年に専務になり、2006年に社長に就任しています。 

信一さんは会社に入ってから数々の改革を進め確実に成果を上げてきています。蔵に入ってまずやったのはコンピューター導入による作業効率のアップです。まずは事務処理を手書き中心からコンピューター化し、、お客様管理をシステム化して提案型営業へのシフトへと転換し、、経験や勘に頼っていた造りの仕事の数値化により再現性追求するなどを行ってきたそうです。システム化については自分の得意な分野ですが、東京で学んだシステム化で大切なことは関わる人の連携が大切だということはわかっていましたので、よく話し合って進めたので、比較的スムーズに行ったそうです。 

しかし、造りの部分は色々な作業を数値化しても、肝心なところは造り手の感性が大切なことはよくわかったそうで、その部分は今でも大切にして伝統を守ることも留意しているそうです。もう一つの大きな改革は蔵開きを始めたことだそうです。 

蔵開きは年に1回3月の春分の日に蔵を開放してお酒の試飲と蔵の見学が基本ですが、地元のそば粉で打ったそばを出したり、地元で取れた鮎の塩焼きを出したり、最近は子供のための移動動物園を設けるなど、地元の村おこしの会の協賛を得て、子供も大人も家族も楽しめる完全に地元密着型のイベントになっているそうです。これを始めたのは信一さんが蔵に入った翌年からだそうで、自分から杜氏の社長にけしかけて実現したもののようです。

第1回目は雨のため800人ほどでしたが、年々参加者が増えて、今年の2017年は21回目で1万4000人が来場したそうです。僕がグーグルマップで確認したら、蔵の中にそんなに広い敷地はありません。蔵の周りの田圃にビニールシートを敷いて、富士山を見ながらお酒を飲んで過ごすようです。それにしても1万4000人とは凄すぎます。日本中の蔵の中でもこんなに人が集まる蔵開きはないと思います。インターネットで拾った蔵開きの風景を載せておきます。天気が良いと最高ですね。来年はぜひ行ってみたいですね。 

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最初は会社がある場所や蔵の存在を知らせる目的で始めたのですが、この町で作ったものを販売するなどしているうちに年々にぎわって地元の名も売れて、この町に移住する人が増えるなど地元に貢献できるイベントになった来たそうです。さらにお酒の知名度も上がり、お客様から酒屋さんに富士錦のお酒を指名してもらえるようになり酒の売り上げアップにもつながったそうです。 

最後にお酒造りについて触れてみたいと思います。信一さんが蔵に戻った時に一緒に富士錦酒造の杜氏になったのは南部杜氏の畑福 馨さんです。畑福杜氏と信一さんは入社同期の桜でお互いにとらわれるものがなく、真っ白な状態で出会ったので、二人で色々なお酒を試行錯誤しながら作り上げてきたそうです。これが信一さんにとって、大変良かったのではないでしょうか。畑福さんは平成22年の静岡県清酒鑑評会では純米の部で県知事賞を受賞するなど静岡を代表する名杜氏と称されていますが、平成23年に退職されることになりました。 

新しく来られた杜氏が小田島健次さんです。この方も畑福さんと同じ南部杜氏ですが、若くして杜氏になり静岡県の色々な蔵の杜氏を経験され、60才で定年になることを信一さんが聞きつけ、頼み込んで平成23年から富士錦酒造の杜氏となったのです。小田島さんは今年66才になられますが、常に少しでも上を目指す気持ちを持ち続けておられる方で、平成25年と28年で静岡県清酒鑑評会の純米吟醸の部で知事賞を取るほどの腕前を持った優秀な杜氏です。これからが楽しみですが、次の杜氏の育成も大切になりそうです。 

静岡県の蔵のお酒の話をするときにはどうしても静岡県沼津工業センターの研究員の河村傳兵衛さんとの関係に触れておく必要があります。河村さんは吟醸造りでは独自の理論を持ち情熱をもって静岡県の蔵の酒造りを指導してきた方で、今日の静岡流酒造りを築いた人です。静岡県の蔵の中には河村流に従わなかった蔵もあるようですが、富士錦は河村先生の指導を受けそれを活かして使っている蔵の一つですが、信一さんのお話では僕は悪い生徒で良く怒られていたので、一番の弟子にはならなかったと謙遜して言われていました。でも、富士錦のように非常に奇麗な水でお酒造りをするには河村流の造りが適していたのではと思われます。 

以上で蔵の紹介を終わりますが、河村先生のことや、静岡酵母をしれたい方は下記のブログをクリックして見てください。
 http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-27e3.html 

それでは早速飲んだお酒の紹介に入ることにします。今回は8種類のお酒を飲むことができました。飲んだお酒はお店のママの板倉さんの前にずらっと並んでいますが、よくわからないので、これから1本ずつ紹介していきます。 ママのことを知りたい人は下のブログをクリックしてください。

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/index.html



1.富士錦 大吟醸出品酒 山田錦 

Dsc_0357このお酒は平成29年3月に行われた静岡県清酒鑑評会で入賞したお酒ですが、去年知事賞を取っているお酒は純米大吟醸でしたからちょっと違うものです。どうして純米大吟醸を出さなかったのかは聞きませんでした。 

原料米は兵庫県産の山田錦40%精米で酵母は静岡酵母のHD-1です。アルコール度数は17度、日本酒度は+3、酸度1.4でした。 

飲んでみるとカプロン酸エチルの香りはするけどそれほど強くはなく、酢酸イソアミルのさわやかな香りもする独特の香りでした。蔵の5℃の冷蔵庫で半年以上熟成していたので、香りは減っているけど、奇麗な仕上がりでしたが、味乗りはしてきていました。 

今の段階の方が食事と合わせるのなら良いと思いました。 

2.富士錦 純米大吟醸 雄町 

Dsc_0358原料米は岡山県産の雄町45%精米で、酵母は協会18号と他の酵母とのブレンドだそうです。ブレンドと言っても2つの酵母を同時に入れるのではなく、別々のもろみを立てて最後の段階でもろみをブレンドしてから搾るそうです。2つの酵母を同時に投入すると強い酵母が勝ってしまうからだそうです。 

アルコール度数は15.5度、日本酒度+2、酸度1.3でしたが、飲んでみると含んだ時にもしっかり味わいを感じますが、飲んだ中盤から味がスウット伸びてくるバランスのお酒で、つい微笑みが出てしまうようなお酒でした。良いです。 

このお酒は今年の雄町サミットで入賞したお酒ですが、造った時はもっとクリアーなお酒だったそうですが、熟成することによってうまく味が乗ってきたそうです。雄町はどうもそういう特徴があるようです。雄町を扱いだしたのは去年からだそうで、来年も楽しみですね。 

3.富士錦 特別純米誉富士 

Dsc_0360このお酒は原料米に「誉富士」60%精米を使ってるのが特徴です。誉富士は静岡県が平成10年に開発したお米で、山田錦を放射線処理とその後の系統選抜によってできたお米で、山田錦より背丈が低く(1mくらい)根元がガッチリしていて倒れにくいのが特徴ですが、心白は山田錦より大きくあまり高精米には向かないけど、味は出しやすいお米のようです。このままでが吟醸用には使えないので、静岡県では現在改良中のようです。 

酵母は静岡酵母のNEW-5で、酒質はアルコール度数は16.5度、日本酒度+3、酸度1.2です。飲んでみると酢酸イソアミル系のさわやかは香りがしていますが、味がしっかりしていて飲み応えのあるお酒でした。常温でもぬる燗でもおいしく飲めるそうです。 

このお米は自社田で作ったお米で、2014年にフルネットの純米酒大賞を取って、社員一同大いに盛り上がったそうです。 

4、富士錦 純米原酒 ひやおろし 

Dsc_0364_2このお酒は原料米を酒造好適米ではない食用米の愛知県産の「あいちのかおり」65%精米を使ったお酒を秋まで貯蔵したひやおろしです。 

「あいちのかおり」は愛知県の農業作物の研究所で、愛知の希少米「ハツシモ」と「コシヒカリ」の系統「ミネノアサヒ」を交配して誕生した愛知県を代表する飯米の品種です。 

酵母は静岡酵母のNEW-5で酒質はアルコール度数は17.5度、日本酒度+2、酸度1.4です。飲んでみると味は比較的軽めですが、口当たりがすごく柔らかいお酒でした。富士錦の水の良さが上手く引き出されているような気がします。 

お燗して飲みましたが、口当たりの柔らかさは変わりませんでしたが、後味に辛みを少し感じるようになっていましたが、バランスは崩れていませんでした。 

このお酒は名古屋国税局主催の平成29年清酒鑑評会の純米の部で優秀賞を取ったそうです。ここに出品するにあたっては5本あったタンクの酒を蔵人がテースティングしてもっともよかったものを出したそうです。同じように作ってもタンクによって違うのですね。 

5.富士錦 純米 青ラベル 

Dsc_0367このお酒は静岡県産の五百万石を使ったお酒で、このお米を使った理由は5年ほど前に花の舞酒造が地元の農家に五百万石を造ってもらった時に、造ったお米を全量使いきれなかったので、富士錦酒造が買い取ることになって、始まったお酒です。 

五百万石65%精米で酵母は静岡酵母NEW-5を使っていますが、今まで飲んだお酒とは味が違ったお酒になったそうです。五百万石は溶けにくいお米なので、どうしても味が軽くなる傾向があるそうです。 

酒質はアルコール度数15.5度、日本酒度+3、酸度1.3で、飲んでみるときりッとしたちょっとシャープなお酒でした。こういう味は外国人お好みになるのか、去年のモンドセレクションで賞を取ったそうです。 

6.富士錦 湧水仕込み 純米酒 

Dsc_0365_2このお酒はひやおろしと同じ「あいちのかおり」65%精米の純米酒で、酵母も同じですが、東京の酒屋さんお注文で、アルコール度数を変えて名前も少し変えて出したお酒です。 

酒質はアルコール度15.5度、日本酒度+4、酸度1.5でしたが、飲んでみると、口に含んだ時の味が弱くて、特徴が薄い感じがしました。これはアルコール度数が低いせいかもしれません。 

社長のお話ではこのお酒は作り立ての時は結構おいしかったそうですが、現時点ではちょっと味が変わってしまったようで、その原因はわからないそうです。 

お酒の味は難しいですね。 

7.富士錦 純米吟醸生酒 熟 

Dsc_0371このお酒はちょっと特殊なお酒です。原料米は長野県の美山錦55%精米の純米吟醸の生酒ですが、12月に絞った生酒を瓶に詰めて、4度の冷蔵庫に保管していた熟成酒です。 

酵母は静岡酵母のNEW-5で、酒質はアルコール度17.5度、日本酒度-1、酸度1.6でこの蔵のお酒としては少し甘口で酸味で切れを出してバランスさせたお酒です。 

飲んでみると甘みを含んだしっかりした味わいがドンと来るけど、後味がすっきりと消えていくお酒でしたので、アミノ酸は少ないのではないでしょうか。味の濃いお料理にもある酒好きの人に合うお酒だと思いました。 

どうしてこんなお酒を造ったのですかときたら、10年前くらいに冷蔵庫の中に新酒の生酒が残っているのに気が付いて、春の蔵開きに出したら、評判が良くて追加注文が来たので、それ以来、蔵の定番として造っているそうです。 

驚いたのはこれを燗をしたらまるで姿を変えて、柔らかくてフラットになってとても飲みやすいお酒に変身したことです。お燗温度はやや高めの45度くらいがよさそうです。 

8.富士錦 本醸造 寒造り 

Dsc_0375このお酒は原料米は「あいちのかおり」65%精米の本醸造ですが、酵母な静岡酵母のNO2を使っています。 

酒質はアルコール度15.5度、日本酒度+5、.酸度1.3で、少しアルコール度を低めにした辛口ですっきりした軽い味わいの冷にもお燗にも合うお酒を狙ったようです。 

飲んでみると他の純米酒より香りが高いのは酵母のせいだと思われます。飲んでみるとあまりアルコール感がしない本醸造らしくないお酒でした。 

お燗にしてみたら味が少し膨らんでくるので、お燗にあっていると思われますが、このお酒は2017年の燗酒コンクールの熱燗の部で金賞を取ったそうです。 

以上で飲んだお酒の紹介を終わります。 

最後にこの蔵のお酒を全体に見てみますと、熟を除くと日本酒度は+2~+5、酸度は1.2から1.5と比較的狭い範囲の酒質を示していました。社長はうちの蔵は酸が高いお酒は得意でないからと言われていましたが、これはやはり河村傳兵衛さんの影響が色濃く出ているのと、仕込み水の良さを引き出すために自然とここに収まったのではないかと思われます。 

最後に皆で集まった集合写真を載せておきます。最後の最後に、清社長の得意技をお聞きしましたので、ちょっとお教えします。清さんはカラオケがお得意で、特に矢沢永吉の唄が得意だそうです。今度一度カラオケで勝負することを約束してお別れしました。 

清社長長い時間色々説明していただき、ありがとうございました。 

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2017年12月 8日 (金)

東大蔵元会の惣誉と喜多屋の酒の秘密をご紹介します

毎年10月の第3土曜日は東京大学の本郷キャンパスでホームカミングデイが開かれます。ホームカミングデイというのはどの大学でも行われているようですが、年に一度卒業生の交流を深めるのを目的としたイベントを行う日を言うようです。東大では講演会やシンポジウムなどの真面目なものから、東大オーケストラOBやOGによる室内楽演奏会や親と子供が楽しめる広場や東大落語会など気軽に参加できるイベントもたくさん開催されています。 

その中にお酒の好きな人には絶対見逃せない東大蔵元会という利き酒会のイベントがあります。これは東大出身または東大で教えている日本酒の蔵元の説明を聞きながら、その蔵のお酒を試飲できるイベントです。いつも安田講堂前の銀杏並木の所で開催されており、1杯100円から200円(30mlくらいかな)で自由に飲むことができます。この会には卒業生でなくてもだれでも参加できますが、卒業生が主体となっているためかあまり混んでいないので、酒好きの人には絶好の穴場のイベントです。 

今年はあいにく雨になってしまいましたので、屋外のイベントなので準備が大変そうでしたが、11時には予定通りオープンしていました。その時の写真を下に載せておきます。まだあまり人がいませんね。 

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今年の参加蔵は去年より1蔵増えて11蔵になっていました。会のメンバは下記の通りですが、今年は新政酒造、出羽桜酒造、金水晶酒造、大七酒造は他の仕事の関係で、本人が出席できずに代理人が来られていました。本人が参加していないとやっぱり寂しいですね。その代わり去年来られなかった喜多屋の社長の木下浩太郎さんと花の露の社長の冨安 拓良がお見えになっていました。 

1.わしの尾 代表取締役 工藤  (工学部2003年卒)  

2.新政酒造  代表取締役 佐藤 祐輔(文学部1999年卒)  

3.出羽桜酒造 代表取締役 仲野 益美(東大非常勤講師)  

4.金晶水酒造 常務取締役 斎藤 美幸(教養学部1988年卒)  

5.大七酒造   代表取締役 太田 英晴(法学部1982年卒)  

6.下越酒造   代表取締役 佐藤 俊一(農学部卒) 

7.惣誉酒造   代表取締役 河野 遵(経済学部1983年卒)             

8.武重本家酒造 代表取締役 武重 有正(工学部1981年卒) 

9.長龍酒造   代表取締役 飯田豊彦(経済学部卒1986年卒) 

10.喜多屋  代表取締役 木下浩太郎(農学部1987年卒) 

11.花の露  代表取締役 冨安 拓良 

東大蔵元会が発足したのは3年前でそんなに前のことではなく、僕はこの会に去年初めて参加したので、その時のことについては下記のブログにまとめましたので興味のある方はご覧ください。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-e423.html 

今年は僕の仕事の関係で1時間ほどしかいられなかったので、去年ほどの情報は得られませんでしたが、去年来られなかった蔵を中心に新しい情報だけを纏めてみることにしました。花の露とは初めてお会いしたのですが、時間をゆっくり取れなかったので、この蔵の紹介は来年にすることにします。 

1.惣誉酒造 

この蔵は栃木県の市貝町にありますが、市貝町はJR宇都宮駅から東へ10㎞程入ったところで、小貝川の最上流の人口12000人の小さな町です。創業は明治5年で、約150年弱の歴史を持つ蔵ですが、もともと江戸時代に滋賀県で酒造りをしていた蔵がここに出店として始まったそうです。どうしてこんな田舎町に滋賀からわざわざ出てきたのかはよくわかりませんが、鬼怒川の伏流水と冬場は厳しく冷え込むという土地が酒造りに向いていたからでしょうね。それ以降、地元に愛されるお酒造りを続けていて、今では3000石の生産量がありますが、そのほとんどを県内で消費してるそうです。それだけ地元の人に信頼される酒質を守っていたのでしょう。 

現在の社長は5代目の河野遵さんですが、1961年生まれで、1983年に東京大学経済学部を卒業された後、松下政経塾など色々なところを経験されたあと、1989年に蔵に戻って1995年に社長に就任しています。社長になってすぐやられたことは新しい杜氏の阿部孝男さんと協力して2001年に生酛造りを復活させたことです。生酛造りは酒母に乳酸を投入する速醸法が開発されるまでの酒母造りとしてに用いられた方法です。生酛造りは、蒸米と米麹を丁寧に櫂で磨り潰すことにより、自然の力で乳酸が程よくわいてくるのを待つ方法のために、速醸法に比べて酒母を造るのに手間と時間がかかるけれども、コクがあって、きりりとした酸と色々な旨みが出る味わい深いお酒になります。 

生酛造りは江戸時代に完成した伝統ある製法ですが、その技術に現代の技術をかみ合わせて開発したのが惣誉の生酛造りで、惣誉では生酛ルネッサンスと呼んで今ではその技術で多くの酒を造っています。そして今目指しているのは伝統と現代の技術を融合させた製法によりエレガントな味わいを出すお酒造りだそうです。 

こうして生まれたお酒の一つに東京大学コミュニケーっションセンター(UTCC)だけでしか販売していない「淡青 純米大吟醸」と「淡青特別純米」があります。淡青という色は今や東大のスクールカラーとなっていますが、それは第1回東大・京大対抗レガッタをやる際に抽選で東大のボートのオールの色がライトブルーに、京大のオールの色がダークブルーなったという経緯があります。そのスクールカラーの発祥の当事者となった東大ボート部のOBが懇親会で飲むお酒の「淡青」を造ろうということになり、惣誉の河野さんに依頼したというわけで、今年の9月15日に発売となりました。どんなお酒なのでしょうか。 

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この2本が僕が購入した「淡青」で左が純米大吟醸、右が特別純米です。ラベルがおもしろいでしょう。青い水の上にはボートを漕ぐ様子が書かれていますが、これは東大ボート部が勝利した時のシーンを版画家の原田維夫さんが描いたものだそうです。この酒は東大の卒業生や関係者が同窓会や宴席の場で利用していただくとともに、母校への愛好心を醸成し同窓会活動の活性化につなげてほしいという思いで商品化したものだそうです。 

主な製品の概要を下記に示します。 

・ 淡青 純米大吟醸 生酛造り 

   原料米: 兵庫県東条と吉川(特A地区)産山田錦
   精米度: 45%精米
   酵 母: 協会7号、協会9号、協会14号
   アルコール度数:15%
   価 格: 3585円
4合瓶

・ 淡青 特別純米 生酛造り 

   原料米: 兵庫県吉川(特A地区)産山田錦
   精米度: 60%精米
   酵 母: 協会7号、協会9号、協会14号
   アルコール度数:15%
   価 格: 1720円 4合瓶
 

ここに示した数値ではどんなお酒はわからないと思いますので、このお酒のコンセプトを社長にお聞きしましたので、ご紹介します。今流行りのお酒はカプロン酸エチルの香りが強く、甘目でフレッシュなお酒が多いですが、このお酒は冷蔵保管しないと品質が維持できない欠点があるので、冷蔵庫に保管しなくても味がへこたれないこと、海外でもおいしく飲めるように熟成によってますます味が乗ってくること、味が複雑で深みがあって品の良い香りのある酒を目指したそうです。 

そのために凄いことをしています。それは3種類の酵母を使った別々の醪を造り、それに製造年度の違う2種類のお酒も含めて瓶に詰めるときにブレンドして、2回火入れをして作っているそうです。そこまで気合を入れているお酒とは思いませんでした。 

特別純米を飲んでみると、強くはないけど品のある香りとともに口に含むとしっかりした味わいがあるけれども後味は少し辛みを感じながら切れていくお酒でした。日本酒度は4で。グルコース濃度を1.1~1.2に抑えて酸度1.8にして切れの良さを出しているようですが、それほど強く酸は感じませんでした。これは生酛造りの味わいのある酸のせいではないかなと思いました。 

純米大吟醸の方は香りは全く同じですが、口に含んだ時の甘みが違いました。グルコース濃度を1.8まで上げてうまみを出していますが、精米度を上げることによる奇麗さがあるので、後味の切れと余韻に差が出るようです。やはり僕がこっちのほうが好きだな。 

こんなに気合を入れたお酒ですから、ぜひ皆さん呑んでください。飲む価値のあるお酒です。最後に社長にこのお酒を持ってもらいました。見てください。お酒が違いますね。それは淡青は東大のUTCCでしか販売できないお酒なので、この蔵元会には持ってこれないので、中身は同じですが、ラベルに惣誉と書いてあるお酒を持ってきたそうです。 

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2.喜多屋 

この蔵は九州一の穀倉地帯の南にある八女市にあります。八女市と言ってよくわかりませんが、久留米市から南に十数km南に下がったところのようです。江戸時代末期の文政年間に米屋をしていた木下家の長男の斉吉が喜多屋という酒屋を始めたようです。喜多屋という名は酒を通して多くの人に喜びを与えたいという気持ちから付けられたようです。その斉吉さんは酒造りに情熱を燃やし、自ら蔵に入ってさけつくりをしたので、「主人自ら酒造りをすべし」が家憲となっているそうですからすごいですね。 

現在は7代目の木下宏太郎さんが社長として蔵を引っ張ていますが、宏太郎さんの時代になっても家憲は守り継いでおり、造りたいお酒のコンセプトを自分で考えるだけでなく、その作り方のレシピも考え、蔵人に指導をするなど、酒造りのすべてをコントロールしているそうです。この会社は全員社員なので、昔の杜氏制度はやめていますが、製造責任者は当然いますが、その人を含めて蔵人全員で技術を共有してお互いの役割をはっきり認識したたうえで酒造りをするように努力しているそうです。 

常に今までの常識を打ち破って新しい酒造りにチャレンジして、今までになかった理想のお酒を目指しているそうですが。それはどんなお酒なのでしょうか。それは芳醇でかつ透明感のあるお酒、つまり芳醇さと透明感を両立させたお酒を追及しているそうです。それは別の言葉でいえば、優しく、丸く膨らんで、余韻が奇麗に消えていく酒だそうです。その追及には終わりはないですが、2013年にその成果が実を結んだようです。それは2013年のIWCの酒部門に出品した「大吟醸 極上 喜多屋」が日本酒5部門の中で最優秀賞を獲得したからです。つまり世界一と評価されたのです。社長のお話では世界一になったことが重要ではなく、賞をいただいた時の表彰のコメントが「Intensity and Purity]ということで、目指した味わいが評価されたことが非常にうれしかったそうです。 

宏太郎さんはどんな人なのでしょうか。1962年に八女市に生まれ、久留米大学付属高等学校を卒業した後、東京大学農芸化学科に入学されています。一浪して1回留年したので卒業は1987年だそうです。その後5年間宝酒造で修業したあと、1992年に蔵にもどっています。そのあと、東京の醸造研究所に2年3か月勉強したそうですが、その時学んだことがその後一番役に立っているそうです。特にその時の先生であった岩野君夫さんを師と仰ぎ、一番の弟子と自称するほど、先生の理論や考え方を身に着け酒造りに生かしているそうです。先生はその後秋田県立大学の教授として赴任しましたが、そちらにもよく出かけて教わったそうです。その先生が言われた言葉に、「いいお酒は「残らず寂しからず」と言われており、それを自分流に解釈して現在の理想の酒の姿としているそうです。 

お話を聞くととても考え方がはっきりして、明快にお話しされる方で、しかも自信たっぷりのお話されるので、ついつい引き込まれてしまいますね。 

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社長になったのは1999年ですが、自ら蔵に入って色々な改革をしています。現在の蔵の生産高は4700石で、そのうちの特定名称酒は3000石でその平均精米度は54%ですから非常に質の高いお酒を中心においていることが判ります。これだけの生産をするには、ある程度の機械化を進める必要がありますが、伝統的な作りの良いところはきちっと抑えたうえで機械化しているようで、蓋麹法の良さをきちっと踏まえた独自の自動製麹装置を開発しても、蔵人全員に、蓋麹法をマスターするように指導しているそうです。 

こうやって平成9年には最新鋭の設備を備えた新工場を建設し、さらなる品質向上に努め最近は海外への輸出にも力を入れすでに販売している国は17か国にもなっているそうです。その喜多屋が蔵元会にはどんなお酒を持ってきていただけたのでしょうか。 

持ってきていただいたのは下の写真の3本です。この写真ではよくわからないので、お酒の紹介の時には特別純米 蒼田はインターネットから借用し、他の二本は購入したものを家で撮ったものを載せました。 

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それからお酒の特徴は社長が語ってくれましたが、酒質については説明がなかったので日本酒サービス研究会からインターネットで載せていたものを書き写して載せました。これからどうして社長が説明したお酒になったかも考えてみました。 

<特別純米酒 蒼田 山廃仕込み 

Skitaya05_2原料米:福岡県産山田錦60%精米
ALC度数:15~16
日本酒度:-3~ー1
酸   度:1.9~2.1
アミノ酸度:1.8
 

このお酒は山廃仕込みが出す酸味を活かした肉料理に合わせたフルーティな日本酒を目指したお酒です。酵母は18号と9号を使っているそうです。18号の華やかなかおりと9号の発酵力の強さを活かすためですが、同時使用のブレンドではなく、18号と9号を時間差でいれるそうです 

飲んでみるとフルーティだけど旨みも酸味もあり、あまり飲んだことのないバランスのお酒でした。これは酒質の数字を見ても良くわかりますね。食中酒としての甘みを最初に感じさせながら、中盤で旨みと酸をバランスさせて切れを出しながら、味も濃い料理にも合わせられるお酒になっているようです。 

純米大吟醸 喜多屋 50%磨き> 

Dsc_0466原料米:山田錦と雄町50%精米
ALC度数:15~16
日本酒度:+2~+4
酸   度:1.2~1.4
アミノ酸度:1.5
 

このお酒は山田錦の柔らかい味の良さと雄町の押しの強さをうまく引き出したお酒を目指したものです。山田錦と雄町の使用量の日は6:4だそうです。麹米と掛米を別のお米を使うことはよくありますが、2つの原料の良さを引き出すためには、そのやり方ではできないそうです。具体的には酒母、初添、仲添、留添で原料米の味が引き出せるように原料米の比率を変えるそうです。難しそうですね。 

酵母は自社酵母ですが、M310酵母をベースとしとしていて、大吟醸系は皆この酵母を使っているそうです。 

飲んでみるとフルーティな上品な香りの中に、複雑な味わいを感じさせるお酒になっていました。あまり酸味を上げない代わりに、甘みを少し抑えてる割にはアミノ酸を少し高めに持ってきているのは適度な旨みを持たせて、食事に合うお酒を狙ったのではないでしょうか。 

<大吟醸 極醸 喜多屋 

Dsc_0469原料米:福岡県産山田錦35%精米
ALC度数:16~17
日本酒度:+3~+5
酸   度:1.0~1.2
アミノ酸度:0.9
 

このお酒はIWC2013で最優秀賞を取ったお酒で、芳醇でありながら透明感を持たせたお酒を狙ったものです。 

飲んでみると上品な香りと共に柔らかく甘みが広がって口の中にすっと入っていき、その後ぱっと膨らんで消えていくお酒でした。確かに芳醇な味を色々感じるけど、最後にそれが一つになって消えていくのが透明感につながるのでしょう 

酒質から見るとちょっと辛口で酸味が少なく、アミノ酸を抑えて奇麗さを出す大吟醸の標準的な数字ですが、数字には見えない秘密があるのでしょう。これについての蔵しい説明はありませんでしたが、今までの経験の中で天から降りてきたような手法を思いつき出来たものだそうです。その手法はよくわからないけど、確かに一度飲む価値は絶対にあるお酒であることは間違いないです。

これで今回の東大蔵元会のお酒の紹介は終わりまが、両方の蔵とも今までにないお酒を造ろうという気概を感じました。これが現状に満足しない東大蔵の魂かな?

最後に新しく参加された花の露 社長の冨安 拓良のお写真を載せて終わりにします。来年に詳しく紹介しますので必ず来てください。待っています。

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2017年11月20日 (月)

蒼天伝はさわやかでも味のあるお酒でした。

10月1日の日本酒の日に南澤正昭さんが企画している今年15回目の「蔵と語る会」として、品川区旗の台にある小さな呑み屋・ぶちで蒼天伝(男山本店)の柏杜氏を囲むが開催されましたので、参加してきました。蒼天伝は宮城県のお酒だということは知っていましたが、今まであまり飲んだことがないけど、最近IWC酒部門で2年連続GOLDメダルを受賞したり、ワイングラスでおいしい日本酒アワード2016で最高金賞を取ったり、2016年にはANAの国際線のファーストクラスのお酒選ばれるなど、輝かしい結果を出している蔵だと知り、その秘密を少しでも知りたいと思い参加しました

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呑み屋・ぶちさんは去年オープンしたばかりの新しいお店ですが、店長の岩渕英和(いわぶちひでかす)さんは石巻市出身で、東京でお酒を勉強しているときに蒼天伝を知り気に入って、お店では蒼天伝をメインに扱っているそうで、蒼天伝なしではお店が成り立たないほど重要なお酒だそうです。 

カウンターの後ろから覗いている方が岩渕さんで、手前の方が杜氏の柏大輔さんです。

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このお酒を提供している酒屋さんは南小岩にある「なだや酒店」で、その3代目として活躍している渡部知佳さんがこられていて、この日もこのお店で囲っていたお酒を含めて色々提供していただきました。とても元気で明るい酒屋さんです。 

右から柏大輔さん、南澤正昭さん、渡部知佳さんです。 

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では早速まず蔵の紹介をいたします。 

この蔵は宮城県の気仙沼にありますが、創業は大正元年ですから比較的新しい蔵です。気仙沼は東北屈指の漁港で、明治時代から港に出入りする漁船が増えて酒の需要も上がってきたのを機会に、創業者・菅原昭治が酒造免許を取り、京都伏見の岩清水八幡宮(別名・男山八幡宮)に大願成就の御礼祈願に行った時に、八幡宮宮司より拝受した名前が伏見男山です。ですから、気仙沼にありながら伏見男山が代表銘柄となっております。 

その後、気仙沼のカツオやサンマを食べながら飲むお酒として地元中心にお酒を造り続けてきましたが、伏見男山が京都のお酒と間違われたり、男山と名がつくお酒が全国に10件くらいあり、他のお酒と混同してしまうということがあったので、現在の4代目の社長の菅原明彦さんが、約15年前に気仙沼を表現する名前にかえることを思いつきました。 

名前だけでなく、気仙沼のお酒らしい味に変えることも行いましたが、まず行ったのが「蒼天伝」という名前つけでした。気仙沼の自然の素晴らしさをお酒にこめて表現しようと、気仙沼の青い空、青い海を表す「蒼天伝」としたそうです。 

「蒼天伝」とするからにはさわやかさがあり、香り控えめだけど味わいのあるお酒造りを目指しましたが、開発を初めて最初の5年はなかなか思うような味を造ることができなかったそうです。杜氏が南部杜氏の鎌田勝平さんに代わってやっと狙い通りのお酒になり始めたのが2007年だったそうです。それを切っ掛けに「蒼天伝」のPRをするために、カツオが水揚げされる父の日に「蒼天伝おいしんぼの会」を開催して、やっと名前が知られるようになった時に起きたのが東日本大震災でした。 

それは2011年の3月11日のことです。海沿いにあった国の登録有形文化財にもなっていた木造3階建ての本社は地震では壊れなかったのですが、後から来た津波で1、2階部分全壊流失する被害を受けたそうです。下の写真が被害前の本社の建物と震災後の建物です。 

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木造には思えない風格のある建物ですが、一階が構造的に弱そうなので、つぶれてしまったのでしょうね。 

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本社近くにあった資材置き場や瓶詰めラインが全部浸水したそうですが、幸い酒蔵の方は30mくらい離れたところにあったので、津波は門から数mまで迫ったけれど、直接的な被害は受けなかったそうです。蔵には出荷前のお酒が2タンク残っていたので、翌日から作業を開催しましたが、停電のため計測装置が動かない中、タンクの温度管理だけはしたそうです。 

その時のことを柏杜氏はよく覚えていて、社員の中には家族を亡くした人も大勢いるし、町はほとんど全壊状態で多くのお客さんを失っているので、これで酒造りは終わったなと感じたそうです。その中で社長が何としてでも残った酒をすぐにでも世に出したいと言われた時は、なんでこんな時に酒を出しても仕方がないと反発をしながら、しぶしぶ従ったそうです。でも、町が落ち着いてくると周りから酒を出してくれとの要望も出てきたので、周り町がまだ停電の中、瓶詰めするために発電機で電気を起こして使ったけれども、周りの人から何も文句を言われないので、ますますやらざるを得ない状況になったそうです。 

2つのタンクのお酒も夏にはすべて売り切ったものですから、お酒が無くなったたので初めて夏場の仕込みにチャレンジしたそうです。その時柏さんが副杜氏で鎌田さんが杜氏でしたが、二人とも全く経験のない夏仕込みを、いろいろ知恵を絞って(たとえは瓶貯蔵の冷蔵庫で酒米を冷却するなど)冬仕込みに近い環境で行い、思いのほかうまく成功したそうで、この経験がその後の酒造りの勉強になったそうです。 

鎌田杜氏は岩手県からくる季節対応の南部杜氏でしたが、2012年の冬の仕込みをした後で退社することになり、2013年からは副杜氏の柏さんが杜氏となり、酒造りの全責任を負うことになったそうです。柏さんのお父さんは気仙沼の遠洋漁業をするひとでしたが、蔵と密接な方だったようで、息子の大輔さんは大学を出られた後すぐに蔵で酒造りに従事したようです。特に蒼天伝の開発はすべてを任されたので、その思い入れは強く、蒼天伝の名前もラベルの文字もすべて柏さんの発案で、たまたま父が書道を勉強していたので、外部に頼むお金もなかったことから、父にラベルの字を書いてもらったとのことでした。 

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柏さんとは初めてお会いしたのですが、名杜氏のような威厳のある雰囲気の方ではなく、とても謙虚で自分は何も知らない素人の杜氏ですと言いながら、好奇心旺盛で他の人の良いところは何でもすぐ取り入れる柔軟性のある方のように思えました。酒造りそのものは鎌田杜氏の技術をしっかり受け継いでいるだけでなく、酒造りのセンスがある方で、独自で常に改善させる努力をしているように思いました。 

その証拠に杜氏になった翌年の2014年には数々の賞をいただき、さらに前述した輝かしい賞を取るまでに至っているのは、単なる偶然ではないと思います。会の終わりに柏さんの今後の夢は何ですかとお聞きしたら、早く杜氏をやめることだと言われたのには驚きました。それはほとんど冗談だとは思いますが、杜氏への責任の重さをひしひしと感じてるからだと思います。柏さんのブログを見ますと自転車のロードレースがお好きなようで、趣味が色々あってそちらに時間を割きたいのかもしれませんね。そのためには後継者の育成が最大の課題ではないでしょうか。当分は頑張って良いお酒を造くるしかないですね。 

今は震災からもう6年が経過しましたが、蔵の生産量は以前と同じ600石位だそうです。良い話としては、全壊した本社が近いうちに震災前と同じ形で復興すると聞きました。いつできるのでしょうね。楽しみです。 

この会は下のような雰囲気で開催されました。こじんまりとしているけどいい雰囲気ですよね。 

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では早速柏さんが造ったお酒を紹介しましょう。この会はお話を聞きやすいというメリットはあるのですが、僕のような飲んだお酒を1本1本写真に撮りたいと思う者にとってはなかなかそのチャンスがなかったので、一本一本の写真は「はせがわ酒店」のホームページからコピーさせていただきました。まず最後に取った全体写真をお見せします。 

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右から下の順番に並んでいて、この順番で飲んでいきました。 

・ 純米大吟醸 蔵の華45%精米
・ 特別純米 蔵の華55%精米
・ 美禄 春 山田錦
・ 美禄 夏 山田錦
・ 美禄 秋 雄町50%精米
・ 純米吟醸 蔵の華50%精米
・ 特別純米 生 蔵の華55%精米
・ 美禄 冬 26BY 美山錦
 

1. 純米大吟醸 蔵の華45%精米 

Dsc_0242このお酒は宮城県産の蔵の華45%精米の純米大吟醸で、酵母は宮城県のB酵母だそうです。このお酒はこの蔵で最も高級なお酒で桐箱入りで1升税込みで5400円です。桐箱なしでも4500円もします。 

1月にタンク2本作って、2月に絞って瓶燗火入れを1回行たお酒です。 

飲んでみると香りは華やかですが、それほど強くはなく、柔らかで繊細な味わいが素敵なお酒でした。1回火入れのお酒でしたが、フレッシュ感があり、まるで生酒のようでした。どんな火入れをしているかは聞きませんでしたが、火入れの腕もしっかりしていると思われました。 

この蔵の仕込み水は超軟水で発酵力は弱いけれど、うまく作ると繊細な良いお酒になるそうです。確かにその通りのお酒でした。 

2. 特別純米 蔵の華55%精米 

32223115このお酒は蔵の華55%精米の特別純米で酵母は宮城マイ酵母です。 

この特別純米は15年まえに蒼天伝として初めて作った蔵の定番のお酒ですが、毎年少しずつ進化しているようです。 

飲んでみると香りは華やかではないけど落ち着いたさわやかな香りで、酸味があって甘みと酸味のバランスがいい食中酒と言ったお酒でした。 

酸度は2.0くらいで日本酒度は±0くらいにしているそうです。なかなかいいお酒です。価格は1升税込みで2808円ですから高くも安くもない手ごろな価格ですね。 

<美禄シリーズ> 

美禄シリーズは県外のお米を使ったお酒のシリーズで、「酒は天の美禄」ということわざがあるように、美禄には「すばらしい贈り物」という意味があるそうです。蒼天伝の美禄は春・夏・秋・冬の四季に合わせて4回だけ出荷するもので、季節ごとに味わいを変えて出す旬なお酒なので、まさに日本の風土からの「すばらしい贈り物」と感じてほしいそうです。美禄の具体例を下記にしまします。美禄を都内で取り扱っているのは「なだや」と「長谷川酒店」だけだそうです。 

・ 蒼天伝 美禄 春 山田錦 搾ってそのまま瓶詰めした生原酒 

・ 蒼天伝 美禄 夏 山田錦 夏まで熟成させた1回火入れの酒 

・ 蒼天伝 美禄 秋 雄町らしさを出すため秋まで熟成した酒 

・ 蒼天伝 美禄 冬 美山錦  冬の生貯蔵酒

3.蒼天伝 美禄 春 山田錦55%精米

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山田錦55%精米、酵母は宮城マイ酵母を使った特別純米酒で、澱がらみのしぼりたての生原酒で価格は1升3132円だそうです。 

蔵の華の特別純米とと同じ酵母のお酒ですが、飲んでみると酸味は同じくらいですが少し甘みを出している感じでした。でも熟成したせいか、少し丸みを感じました。このお酒は半年以上熟成しているので、半年たった効果がどのくらいあるかは比較しないとわからないですね。 

美禄シリーズはラベルに色のついた十字線があります。春はその機構を表すのかピンク色ですね。 

4.蒼天伝 美禄 夏 山田錦55%精米

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このお酒は美禄の春と同じ時期に別のタンクで作った特別純米で、お米の精米度も酵母も同じですが、1回火入れをして、瓶詰めの状態で-2℃の冷蔵庫で熟成したお酒です 

春のようなフレッシュさはなくなっているけれども、熟成の良さが出ていて、口に含んだ時にぱっと横に膨らむような味わいと切れの良さがあって、とても良いバランスの酒になっていました。これはなかなかいいです。価格は春の同じ1升3132円です。 

ラベルは夏らしく白色をバックに青い色の十字線が入っています。

 

5.蒼天伝 美禄 秋 雄町50%精米 

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このお酒は岡山県産の雄町50%精米の純米吟醸で酵母は9号酵母を使っているそうで、美禄シリーズではもっとの新しいお酒です。価格は1升3600円です。お米の値段が高いので割高になっています。 

飲んでみたら香りはそれほど華やかではないし、雄町にしてはふくらみが少ないし、切れがシャープで少し雄町らしくがないと感じました。ぜひこの蔵らしい奇麗さがあって、余韻が楽しめるようなお酒を造ってもらいたい気がしました。 

ラベルは秋らしく紅葉色の十字線が入っていました。 

6. 純米吟醸 蔵の華50%精米 

32222961_3このお酒は蔵の華50%精米の純米吟醸で、酵母は純米大吟醸と同じ宮城B酵母を使っています。造りは純米大吟醸とほぼ同じですが、純米大吟醸は600kg仕込みで、純米吟醸は900㎏仕込みです。でも当然造りの細かいところは違うそうです。 

でも価格は大幅に違っていて、純米大吟醸は木箱なしでも1升4500円しますが、この純米吟醸は1升3085円ととても割安です。 

飲んでみると香りは純米大吟醸と同じさわやかな香りがして、味は甘みと酸味のバランスが良くとても良いお酒でした。これほど価格が違うのなら純米吟醸でいい気がしました。 

特別純米と同じ色の文字ですが、瓶が緑から茶になっていました。 

7. 特別純米 生酒 

このお酒はNO.2の特別純米の生酒で「なだや酒店」オリジナルの限定200本のお酒です。お店で残っていた最後の1本です。ですから写真はありません。全体写真から見てください。 

飲んでみると火入れに比べると口に含んだ時の甘みが強く感じます。香りにフレッシュ感があるけれども、後味の感じは同じでした。火入れは全体に柔らかいけど、生酒は尖った感じがします。どちらが好き化は好みの問題ですね。 

8. 美禄 冬 26BY 美山錦55%精米 

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このお酒は美禄に冬バージョンですから美山錦55%精米の特別純米のはずですが未確認です。26BYの酒でなだや酒店の2℃の冷蔵庫で年、その後5℃の冷蔵庫で1年熟成したもので、たまたま冷蔵庫の中で見つけた最後の1本だそうです。 

美禄の冬を飲んだことがないので、新酒との比較はできませんが、このお酒は凄いお酒でした。飲んでみると当たりがすごく柔らかくて含んだ時の味わいがフラットで天鵞絨のようにスルーっと入ってきます。こんなにうまく熟成しているのは、酒質が良いからだと思います。こんなお酒がいつも飲めたらうれしいですね。 

この酒のラベルは文字が鼠色で、十字の線薄い青色でした。 

以上で飲んだお酒の紹介を終わります。

<まとめ> 

今回初めて蒼天伝シリーズをいろいろ飲みましたが、この蔵のお酒の味は非常に安定していて、あたりが柔らかくて軽い感じですが、しっかりと味を乗せてくる飲みやすいお酒でした。 

造りの特徴はどこにあるのですかと柏杜氏にお聞きしたら、一番大切なのは原料処理で米の特徴に合わせて丁寧に吸水量を管理することで、やればやっただけの結果がついてくるとのことでした。

柏杜氏は謙遜していますが、とても前向きにチャレンジされているのでこれからが楽しみな蔵ですね。
 

最後にこの会の関係者がわっと騒いでいるお姿をも見せしましょう。なだやの渡部さんが一番乗っているみたいですね。

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南澤さんありがとうございました。また面白い企画がありましたら、教えてください。

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