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蔵元を囲む会

2017年10月16日 (月)

七賢のお酒は最近すごく酒質が上がっています

調布市の仙川にある日本酒バーあふぎ山梨県の七賢を醸している山梨銘醸の専務取締役北原対馬さんをお呼びしての会が開かれましたので、参加してきました。お店のママが静岡県藤枝育ちなので、いつもは静岡の蔵をお呼びすることが多いのですが、今回はゆえあって、ママが去年七賢の蔵を訪問する機会があって、今日の日を迎えることになったそうです。お店の詳細は下記のブログを見てください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-c472.html 

最初にお店の前でのママと対馬さんのツーショットをお見せします。 

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今回は早速蔵の紹介と北原対馬さんの紹介をいたします。蔵は山梨県の北杜市白州町のあります。この地はJR中央線の長浜駅から南西に2-3Km行った釜無川と尾白川の間に挟まれた場所にあり、甲斐駒ヶ岳からの伏流水が豊富に出る場所で、近くにはサントリーの白州蒸留所があります。ウイスキー蒸留所は近くに川があって冷気があふれていて豊富な水がある場所に作られますから、日本酒の醸造にも適したところだ思われます。 

山梨銘醸は元々長野県の信州・高遠で酒造業を営んでいた北原伊兵衛光義さんが分家をして白州の水のほれ込んで1750年にこの地で大中屋として創業したそうです。この大中屋の母屋を新築した際に、高遠城の城主よりお祝いに贈られた「竹林の七賢」の欄間にちなんで七賢という名がついたようです。その後10代目の北原庫三郎山梨銘醸に改組設立したのが大正14年ですが、蔵としては250年の歴史を持つ老舗の酒造会社と言えます。 

現在は12代目の北原兵庫さんが1977年に社長となって、長男の北原対馬さんが営業に、次男の北原亮庫さんが杜氏として、新し酒造りを営んでします。この地は昔は宿場町として栄え、ほとんど地元向けの普通酒や本醸造を主体とした酒造りをして、生産量も年間9000石を超えるほどだったそうです。兵庫さんの代に入り、特定名称酒への切り替えを始めるとともに、農業法人の「大中屋」の設立や直営レストランの開業などを取り組み、現在の礎を造っています。現在のの生産高は2500石です。 

でも、山梨銘醸が大きく変わったのは、北原兄弟が蔵に戻ってからと言われています。兄の対馬さんは青山学院大学の経営学部を卒業し、弟の亮庫さんは父と同じ東京農大の醸造学部を卒業し8年前の25才の時に蔵に戻って酒造りを始めたそうですが、蔵元が蔵人として酒造りを始めたのは今まで初めてのことだったそうです。そして、亮庫さんが杜氏になったのは今から6年まえの2011年だそうです。最初はあらゆることが問題だらけで、何から手を付けてよいか解らない状態でしたが、兄の対馬さんと話し合い、15年先までのビジョンを5年刻みで描いて、目指す酒質、体制、売り上げや利益まで考えたうえで、新しい設備投資をしたそうで、現在は大掛かりな改革が一段落したところだそうですが、まだまだやりたいことは色々あるそうです。 

それではお二人でどんな改革をしてきたのでしょうか。 

<目指す酒質の決定> 

  この蔵の仕込み水は硬度が20で、透明感があり、奇麗で潤いのある水ですが、ミネラルが少ないので、発酵力が弱く味の豊かなお酒にはなりにくいという欠点があります。でも逆にその特徴を生かした酒造りを目指すことにしたそうです。具体的には水の特徴である柔らかくてすっきりとしたお酒で、軽めのお料理に合わせられるお酒に絞り込み、吟醸系をベースとして不得意な生酛系の酒造りはやめることにしたそうです。 

そのために麹は固く締め、吟醸酵母を使って低温でじっくりと発酵させるだけでなく、アルコール耐性の弱い吟醸酵母が死滅して発生する雑味や香りを防ぐために、原酒でアルコール度数を16度以下に仕上げるようにしたそうです。さらに、上槽後は3-4日以内に火入れすることを励行し常にフレッシュな味が保てるっようにしたそうです。 

更に酵母の選択にも特徴がありました。協会酵母18号は通常最初に甘みが出て、カプロン酸エチルの香りが強く出るのが特徴ですが、この蔵の水では香りが弱く、味にくどさが出ないので、これを主体として使っていますが、後味の切れを出すために協会18号と協会9号酵母のブレンドを使っているそうです。9号酵母だけでもいいのではと思いましたが、9号酵母だけでは味が薄くて辛いお酒になるそうです。仕込み水によってこんなに違うのですね。、 

<蔵の主な設備改造> 

 最近の醸造設備の進歩は凄いものがありますが、非常にお金のかかることなので、小さい蔵ではなかなか難しいですが、この蔵では酒質向上のために少しずつ変えてきたそうです。蔵見学をしていませんので、詳しいことは分かりませんが、酒造萬流の記事から引用すると次のような設備改善が行われたようです。
 ・ 仕込み蔵の空調化と1.5トンの小仕込み化
 ・ 洗米と浸漬の自動化
 ・ 麹室の建て替え
 ・ 酒質測定機の導入による自動化
 ・ 貯蔵設備の充実化
 

<酒造体制の改革> 

 これまでは期間雇用の蔵人が24時間体制で行っていた酒造りをやめて、原則月曜日から金曜日までの8時間勤務を実施しました。このために作業の効率化と酒造計画の組み立て直しを行い土日の作業の撤廃をしたそうです。また、蔵人全員が無線通話機をもって各人の作業の共有化をしたそうで、これにより蔵人に心の余裕が出て酒質の向上が図れたそうです。たとえ生産量が減っても蔵人ののやる気の向上と酒質の向上が会社としての利益を生むのでしょう。 

それから今まで作ってきた品ぞろえを統廃合して、原料米の品種は山田錦、ひとごこち、夢山水、あさひの夢だけとし、精米歩合は70%、57%、47%、37%の4パターンに絞って作業性と品質向上を目指したそうです。 7の数字が多いのは七賢の名前とのこだわりのようです。

以上がこれまで行った蔵の改革で、これにはまだまだ終わりがないようですが、これらの改革で明らかに酒の資質は良くなってきていることは確かだと思いますが、それについてはこの会で飲んだお酒の紹介の中で、説明したいと思います。 

それでは飲んだお酒の紹介に入ります。 

1.スパークリング酒 星の輝 

Dsc_0208このお酒は瓶内2次発酵のスパークリング酒で、お米はひとごこち70%精米の純米酒です。まずタンク内でアルコール度数が10度くらいのもろみを造り、それを瓶に澱を絡ませて詰めてから、室温で瓶内発酵させると、9気圧くらいに圧力が上昇した時に瓶の口を冷凍して澱を凍らせてから、口を瞬間にあけて澱を抜いて再び栓をするそうです。その時120CCくらい抜けてしまいますが、それはお互いに補充をして商品にするそうです。その作業は手作業だそうですが、自動化することもできるけれども非常に高価だそうです。 

このお酒の開発は2015年から始めたそうで、開発にあたっては勝沼のスパークリングワイン工場や県の技術センターに行って勉強したそうです。ワイン.スパークリングと違うところは火入れをすることや、リキュールを入れられないことです。開発の当っては変動要因として一次発酵後の残存の糖の量、アルコール度数、澱の量、発酵温度があり、これを色々変えて決めたそうです。その結果、アルコール度数は11度になったようですが、今年発足したawa酒協会に発表に間に合わせています。 

シャンパングラスで飲んでみましたが、さわやかな香りと奇麗な泡が立ち上がり、軽やかでさらりとしたと甘みを持ったシャンパンと言いたいようなお酒でした。精米度が70%なのでややナッツのような香りがしますが、ほとんど気になりません。価格は720mlで税抜きで5000円です。 

対馬さんがこのお酒を注いでいる写真を見てください。落ち着いた雰囲気を持った方でした。対馬という名前は長男なので本家との関連でつけられたとのことでした。 

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このスパークリングを超える新しいスパークリングの「杜の奏(もりのかなで)」というお酒が10月1日に発売されました。サントリーの白州蒸留所とコラボレーションして出来たスパークリングで、1次発酵させた日本酒をウイスキー樽で熟成した後、瓶詰めして2次発酵させたスパークリング酒で、720mlで1万円もするそうですが、今までのスパークリングとは次元が違う味わいだそうです。飲んでみたいですね・・・・・

2.鑑評会用出品酒

Dsc_0210このお酒は山田錦37%精米の大吟醸で、アルコール度数17度の原酒です。酵母は協会18号酵母だけを使った鑑評会用の出品酒で、市販していないお酒です。 

飲んでみるとカプロン酸エチルの香りは立ちますがそれほど強くはありません。甘みと酸味がうまくバランスしたいかにも出品酒らしいお酒でした。 

鑑評会用のお酒は市販酒とは違って、車でいうとF-1に相当するもので、技術的なチャレンジはありますが、これに重きを置いているわけではなく、市販酒のコンテストであるIWCへの出品も大切にしているそうです。今年はアルコール添加の大吟醸で挑戦したけれども、来年以降は純米酒で挑戦するそうです。 

3.純米酒 風凛美山

115781_2このお酒は麹米がひとごこち57%精米で、掛米があさひの夢70%精米の純米酒です。風凛美山という名前は甲斐駒ヶ岳の凛とした美しさから名前を付けたそうです。酵母は協会18号と協会9号のブレンドだそうです。このお酒は写真を撮るのを忘れたので、インターネットからお借りしました。 

アルコール度数は16度の原酒ですが、飲んでみるとべったりとした甘さではなく優しい甘さを最初に感じながら、後味がすっきりと消えていくバランスのお酒でした。これは9号酵母からできる奇麗な酸が上手くバランスしているからだと思いました。 

温度が上がるとちょっとベタっとなるので冷で飲むの良いと思いました。 

70%精米の掛米を使っているとは思えないほど、奇麗に仕上がっていて、これで税抜きで1升2000円とは安すぎる感じですが、ちゃんと利益は出しているそうです。このコスパは驚きです。しかもIWCで連続して受賞をしているそうですからすごいですよね 

4.純米吟醸酒 天鵞絨 (びろーど)

Dsc_0215このお酒は夢山水57%精米の純米吟醸酒でアルコール度数は15度とやや低めですが、これも原酒だそうです。天鵞絨の味という名前がついているのはビロードのような舌触りのお酒という意味だそうです。

飲んでみると香りは穏やかなですが、飲んだ後の中頃からふわっとふくらんで、消えていくお酒で、今日飲んだお酒とは少しバランスが違っているようです。このお酒は温度が上がってもあまり変わりませんでした。 

淡い味のお料理に合わせられるお酒で、お料理の素材を引き立てるお酒を目指して作ったそうです。アルコール度数は低いけれどもお料理ののマッチングはとても良いと思いました。価格は税抜きで1升2700円ですからコスパは良いです。 

5.純米大吟醸 絹の味 

Dsc_0217このお酒は夢山水47%精米の純米大吟醸でアルコール度数は16度の原酒です。このお酒も1回火入れで、基本的には生酒はあまり出していないそうです。絹の味という名はなめらかなお酒をイメージしたそうです。酵母は18号酵母です。 

飲んでみるとカプロン酸エチルの香りが強くはないけど、しっかり感じられ、うま味と甘さが最初にポンと広がるお酒でした。お食事に合わせて飲むお酒というよりは、お酒だけで香りと味を楽しむお酒のように思われました。 

価格は税抜きで1升3000円ですから、このお酒のコスパもとても良いと思います。 

6.純米酒 ひやおろし 

Dsc_0219このお酒は6月に作った純米酒を1回火入れして瓶に詰めてから15度から20度くらいの室温で約3か月熟成をしたお酒です。 

お米はは3番のお酒と同じだと思いますので、ひとごこち57%精米で、掛米があさひの夢70%精米と思われます。(これについては説明はありませんでした)。 

ひやおろしの定義は難しいのですが、昔は冬に作ったお酒を火入れした後、常温のタンクで秋まで熟成して瓶詰めして出すお酒を言っていたと思います。最近は初めから瓶詰めして熟成させるところが多いようですが、熟成の温度は決まっていません。これを秋上がりと呼ぶ蔵も多いようですが、ひやおろしは秋に限らす半年くらい熟成して出すことを言うという説もあります。 

飲んだ感じでは甘みは少し減った分スウット口に入ってくれますが、ちょっと辛みを感じました。でも新酒の若々しさは残っているように思えました。 

7.燗熟純米 2年熟成 

Dsc_0222このお酒は2014年にお燗用のお酒として造った山廃純米酒で、今は製造していないお酒です、お店のママが去年蔵見学した時に蔵で売っているのを見つけて購入したものです。 

お米の名前は聞き忘れましたが、精米は70%の純米酒で酵母は7号酵母で、アルコール度数は17度です 

飲んでみると、香りはほとんどなく、奥に甘みを感じるけど適度な酸と辛みを感じるお酒でしたが、お燗をすると透明感とフラット感が出てすっと飲めるお酒へと劇的な変化をしました。 

こんなに良いお燗酒になるのなら、また作ってくださいとお願いしたけれども、山廃造りはやめたそうなので、もう2度と飲めない貴重なお酒となってしまいました。残念・・・・・・ 

このお酒を買ってきたママに乾杯! こういうタイプの燗酒もいいと思うけどね。

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以上で飲んだお酒の紹介は終わりますが、この蔵のお酒はどのレベルのお酒も酒質が高くきれいであるけれど、きちっと味を出していながら、嫌みのないお酒に仕上がっていますが、同じ味の酒はなく、一つ一つ目的を持った味わいに仕上げているのが良いなと思いました。確かに高級なお酒もありますが、どの酒もコストパフォーマンスはよく、特に純米酒の風凛美山は凄いです。対馬さんの説明ではお酒をあまり飲まない人でも、飲めるお酒を目指しているそうです。前段で説明したとおり、最近の蔵の大改革で、お酒の酒質が大幅に上がったことは間違いありません。

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2017年10月 9日 (月)

ジャズと日本酒蔵元のコラボの会はとても良かった

僕の日本酒友達の高橋さとみさんから日本酒でジャズを楽しむ会へのお誘いがありました。僕はジャスを好んで聞くことはしませんが、ニューヨークに行った時にブルーノートに顔を出したくなるくらいジャズの雰囲気が好きな人間でしたので、喜んで参加することにしました。 

開催された場所は目白駅から池袋の方に数分歩いたところにあるMAC’s CARRORT というお店でした。僕は初めて訪れたので、全くどんなお店か知らなかったのですが、下の写真のようにイタリアンレストランの雰囲気を持っ店構えでした。 

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中に入ると店の右側に大きなグランドピアノがあって、そのわきに洋酒用のカウンターがあり、40人くらい座れるテーブルがあるちょっとクラシックな大人の雰囲気のお店でした。 

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たまたま僕(黄色い帽子をかぶっているおじさん)が写っている写真がさとみさんのFACEBOOKに載っていましたので、使わせていただきました。お店の人に聞いたらここはイタリアンレストランで、夜にはジャスの生演奏をして、お客様に楽しんでもらっているそうです。ここは学習院の人が良く来るそうで、たまには皇族の方が来られるみたいです。 

食事をしないでジャズだけを聞きに来るのはだめだそうです。残念・・・・

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この会には正雪(神沢川酒造)の社長の望月正隆さんと麓井(麓井酒造)の専務取締役の佐藤市郎さんが、参加されて、蔵から持ってこられたお酒の紹介をされました。各蔵から、とっておきの日本酒が3種類ずつ計6本が提供されましたが、その紹介は後で行います。 

まずはジャズバンドの皆様を紹介します。僕は素人なので、インターネットで調べた情報です。 

・ ピアノ 福田重男 

福田さんは群馬県出身で、小さい時からクラシックピアノをやり、明治大学に入ってジャスに目覚め、辛島文雄に師事されて、1980年にプロデビューをしたからだそうです。現在60歳のベテランジャズピアニストです。 

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・ ギター 高内春彦 

高内さんは栃木県出身で東京造形大学の美術科に進みましたが、主にジャズ研で活躍し、1980年にニューヨークに渡りジャズギターリストとしてデビューをしたそうです。何といっても1990年に女優の松坂慶子さんと結婚され一躍有名になったことは良く知られている話で、現在63歳のベテランジャズキターリストです。 

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・ ボーカル Mamiko Bird 

まみこさんのプロフィルはよくわかりませんが、アメリカでジャズを勉強し、プロとなり、ジャズボーカルだけでなく作曲も行い、2014年には第7回澤村美司子音楽賞をとるなど活躍されていて、最近は福田さんとデユオを組んでいるようです。 

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 以上で3人の紹介を終わりますが、、せっかくですから会の最後のアンコールに応えたルート66の唄をお聞きください。僕のを声や手拍子が少しうるさいですが、雰囲気はわかると思います。下のファイルをクリックするとちょっと時間がかかりますが、始まります。

 「170909_003.mp3」をダウンロード 

ジャズの紹介はこのぐらいにして蔵とお酒の紹介をします。

1.神沢川酒造 

この蔵は静岡県の静岡市と富士市の間にある由比町にありますが、北は山が迫り南は府駿河湾に接する比較的狭い場所なので、昔から東海道の交通の要所の宿場町としてだけでなく、、桜エビとシラスで有名な港町として栄えた地です。この地に蔵を創業したのは望月金蔵さんで大正元年のことですから、比較的新しい蔵と言えます。 

この蔵を造るにあたって、水のいい場所を探して見つけたのが今の場所で、そばに川が流れていますが、それが神沢川(かんざわがわ)ということから神沢川酒造となずけたものと思われます。この水はミネラルをほとんど含まない軟水ですから、軽やかできれいなお酒造りにお適しているようです。 

代表銘柄の正雪の名を付けたのは2代目の望月由松さんで静岡が生んだ反骨精神の高い由比正雪にちなんでつけたそうです。蔵を支えてきたのは岩手県花巻出身の南部杜氏の山影純悦さんで、昭和57年からずっと杜氏をされています。静岡のお酒と言えば、沼津工業技術センターの河村傳兵衛さんの指導による吟醸造りが有名ですが、それは甘、辛、苦、渋、酸の5味のバランスと上品でさわやかな香りを調和させて、何杯飲んでも飽きないお酒といえますが、まさにそれを目指している蔵と言えます。 

河村傳兵衛さんや静岡酵母のことなら下記のブログを見てください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-27e3.html

今回は社長の望月正隆さんに来ていただきました。 

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望月さんはどんな方なのでしょうか。この蔵の長男として1962年にお生まれになりましたので、蔵の後を継ぐことは決まっていましたが、若い頃は蔵が苦手で、大学も玉川大学の文学部に行ったそうです。でも先代の社長が大きなけがをしたために、卒業と同時に蔵に戻ったのですが、はじめは酒造りはほとんどしなかったそうです。その時には山影杜氏はすでに蔵におられていました。 

でも、酒造りを勉強したい気持ちはあったそうで、醸造技術者養成の通信講座を受けて、念願かなって沼津工業技術センターの河村先生について研修生として1年間勉強をしたそうです。そんな時に蔵人の一人が怪我で欠けたので、生まれて初めて酒造りを経験したそうで、それで、だんだん酒造りがおもしろくなったそうです 

その後、2006年せいか5代目のに社長に就任し、弟さんの正明さんと力を合わせて順調に成長しており、現在の生産高は1300石位だと思います。 

飲んだ正雪のお酒の紹介をします 

・ 雪 純米大吟醸 山田錦斗瓶どり 

Dsc_0113_2このお酒は兵庫県の山田錦35%精米の純米大吟醸の斗瓶どりで、中取りの部分を生のまま瓶詰めして、瓶燗火入れをしたものを低温で熟成したものです。 

酵母は静岡酵母のHD-1で、酒質はアルコール度数は見落としましたが、日本酒度が+3、酸度は1.1といかにも静岡吟醸を代表するスペックでした。 

飲んでみると酢酸イソアミルと酢酸エチルのさわやかな香りがたち、ちょっとシャープで少し後口に辛みを感じるバランスです。最近の静岡の吟醸酒は香りの低いものが多くなってきている感じがしていますが、このお酒はいかにもHD-1の香りが良く出ていると思いました。これも杜氏さんの実力なのでしょう。 

・ 正雪 純米大吟醸 備前雄町 

11181229271x361このお酒は岡山県の備前雄町45%精米の純米大吟醸です。このお酒の写真を撮りそこないましたので、インターネットから探してきましたが、たぶん同じものと思います。 

酵母は雄町の味を引き出すために、M310を使いましたが、M310だけでは発酵力が弱いので、静岡県酵母のNO-1をブレンドして使ったそうです 

残念ながら酒質は分かりませんが、日本酒度は±0くらいだそうです。飲んでみると香りは抑え気味ですが、カプロン酸エチルの香も、酢酸イソアミルの香もするお酒でした。 

口に含むと雄町らしい柔らかい甘いが広がり、後味でゆっくりと消えていく雄町らしい余韻を感じました。一言でいえばどっしりとした雄町ではなく奇麗な雄町の部類に入ると思います。 僕はこのお酒はお気に入りです。

・ 正雪 純米吟醸山田錦 

Dsc_0130_2このお酒は山田穂50%精米の純米大吟醸です。山田穂は山田錦の母親にあたるお米で、全国で栽培しているところは少なく、兵庫県の山田錦を栽培している近くで取れるそうです。 

山田錦よりはやや小粒で心白発生率も低いが酒造特性は良いけど、やや溶けにくいので味を出すのが難しいそうです。 

飲んでみると山田錦に比べるとふくらみが少なく、少しシャープで辛みを感じました。 

この瓶はラベルをよく見ると縞が入って売る特殊なもので、山田穂と愛山があるそうです。色は山田穂の純米吟醸はみどり、純米大吟醸は青緑のようです。 

2.麓井酒造 

この蔵は山形県の酒田市から北東に10KMほど行った八幡地区にある蔵で、鳥海山の麓にあるので良質で豊富な湧水に恵まれていますので、庄内藩主の酒井家の人から酒つくりをやらない手はないと言われて始まったようです。創業は明治27年で、麓と酒井家の井を取って麓井酒造としたそうです。 

当主の佐藤家では長男の久吉が回船問屋をしているときに、酒井家から醸造技術を学んで、明治26年に酒田市の南に酒蔵を立ち上げたのが、現在の初孫を譲する東北銘醸株式会社です。麓井酒造は久吉の姉が養子を迎えてその1年後に創業したそうです。ですから麓井と東北銘譲は今でも兄弟会社で、社長の佐藤淳司さんはは両方の蔵の社長を兼務しています。 

東北銘譲の生産高は約7000石と言われるほど大きな蔵ですが、麓井酒造は約500石とこじんまりとした蔵です。

蔵から専務取締役の佐藤市郎さんに来ていただきました。

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佐藤さんは夏は営業、冬場は酒つくりを担当しています。麓井酒造には杜氏の高橋幸夫さんがおられるので、市郎さんは酒つくり全体を管理しておられるようです 

市郎さんは蔵に戻る前はアサヒビールに勤務していて東京に住んでおられたので、吉祥寺にあるライブバー・イタリアンレストランの吉祥寺ストリングスに行くことがよくあって、ジャズが好きになったとのことでした。こんなところでジャズとの接点があるのですね。 

・ フモト井 純米大吟醸 

Dsc_0120このお酒は山田錦40%精米の純米大吟醸で、酵母は山形酵母のKAだそうです。山形酵母KAは熊本酵母系の流れを持つ酵母で、香りは抑えめですが、味をしっかり出す酵母だそうです。 

酒質はよくわかりませんが、インターネットでの情報ではアルコール度17、日本酒度+1、酸度1.6でした。 

飲んでみると香りは軽いですが、さわやかな酢酸イソアミル系の香りを感じました。口に含むと奇麗な甘みが広がり、後味にも少し甘みが残る感じでした。佐藤さんは日本酒度は+4ですと言われたので、どうして甘く感じるのかと聞いたら、今回はグルコース濃度を増やすようにしているからではないかといわれました。だから軽くても甘く感じて、しかも後味にも甘さを感じたのかもしれません。 

酒造りは奥が深いですね。

・ フモト井 純米大吟醸雪女神 

Dsc_0128このお酒は山形県が最近開発した大吟醸酒向けの酒造好適米の雪女神を35%精米した純米大吟醸です。雪女神は山形県の工業技術センターが開発したもので、山形県の出羽の里と宮城県の蔵の華をかけ合わせた品種です。 

雑味につながる蛋白質が少ない特性があるので、透明感がありすっきりしたお酒になると言われています。 

雪女神という名がついたのは去年のことで、それまでは山形104号と言われてもので、酒造好適米に女性的な名前が付くのは珍しいそうです。今年から山形県の各蔵で雪女神の醸造が始まりました。 

この蔵でも初めての造りでしたが、米の溶けが悪く、造ったばかりの今年の冬では味が薄くどうしようかと思っていましたが、秋まで熟成をしてやっと飲めるようになったそうです 

実際に飲んでみると、香りは山田錦と同じぐらいですが、味は口の中で少し膨らむ程度で全体に奇麗な、いかにも女神といった感じのお酒でした。 

・ 麓井のまどか 

Dsc_0133このお酒は山形県の美山錦55%精米の生酛純米本辛口の圓(まどか)です。独自の生酛造りで醸造した定番のお酒で、燗に向いたお酒だそうです。 

酒質はアルコール分16度、日本酒ぞ+7~+10、酸度1.4~1.5で、酵母は山形酵母です。 

飲んでみるとソフトな飲み口で後味が生酛独特の酸が奇麗に切ってくれる、辛いというよりはドライな感じのお酒でした。 

以上で飲んだお酒と蔵の紹介は終わりますが、ジャズを楽しみながらお酒を飲むのも結構楽しいものでした。

お客様のほとんどが日本酒を楽しむというより、ジャスを楽しんでいるようでしたし、お客様の質が日本酒の好きな仲間とは少し違った雰囲気が感じられました。これも主催した高橋さとみさんの雰囲気が醸し出すものなのでしょうね。

僕のように日本酒が好きなものにとっては、蔵元と色々お話ができる時間が多く取れたというメリットもありました。 

このような会を計画した高橋さとみさんのご苦労は大変なものだったと思います。また今回を陰でサポートしている高橋さとみさんの旦那様にもお礼を言いたいと思います。 

今年の末にまた開催されるようなので、また参加したいと思います

最後にさとみさんと演奏仲間との写真を高橋さんのFACEBOOKからお借りして貼り付けてみました。少し明るくしておきました。

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高橋さんありがとうございました 

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2017年9月22日 (金)

梅乃宿のお酒には新しさと伝統を感じました

8月の末の平日の夕方に横浜の居酒屋で梅乃宿の蔵人をお呼びしての試飲会があることを日本酒カレンダーで見つけて、お電話したら10人強の小人数の会ですが、宜しかったら参加くださいと言われたので参加してきました。 

そのお店は横浜駅の東口から歩いて5分くらいの高島2丁目にある「いざか屋若蔵」でした。この辺の地理に疎い僕でしたので、行くのに迷ったのですが、横浜駅東口から万里橋を渡ってすぐの通りの左側にあるのですが、それらしいお店が見つかりません。でもビルの1階に梅乃宿の垂れ幕があったので、そのビルの裏側にまわってみたらありました。 

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とてもこじんまりとした素敵な雰囲気のお店で、ここに開店してまだ2年目だそうで、お店の店長の鈴木良太さんは元々横浜育ちで、京都のお店に修業してから横浜に9年前に帰って最初に井土ガ谷に店を出したそうで、この店が一番新しく3店目だそうです。 

お店はカウンターと10人くらいが座れるテーブルがあるだけのお店で、日本酒は色々置いてありましたが、梅乃宿のお酒は昔から入れているお酒だそうです。下の写真が店長でタンポポ自業株式会社の代表取締役の鈴木さんです。会社の事務所は隣のビルなので、このお店が本命かもしれませんね。なかなかかっこいい人ですね。 

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梅乃宿からが2人の営業マンがこられていて、お酒の説明をしていただきましたが、その説明は主に奈良からこられた横田和士さんです。 

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梅乃宿酒造はどんな蔵なのでしょうか。ちょっと調べてみましたので、まず蔵の紹介からいたします。 

蔵は奈良県葛城市東室にあり、近鉄御所線の近鉄新庄の近くにあります。創業は明治26年で創業者は吉田熊太郎さんです。その後蔵がどのように発展したかはよくわかりませんが、昭和25年に今の蔵の名前の梅乃宿酒造となります。この蔵には樹齢300年の大きな梅の木があって、春になると鶯が良く遊びに来たことから「梅乃宿」という名がついたそうです。 

昭和35年には清酒売上高が3500石にもなったようですが、たぶん大手の桶売りもだいぶあったようで、大手が桶買いをやめ始めて昭和54年には自社ブランド中心に移行し、本格的に吟醸酒の方向にシフトします。当時は吟醸酒がまだ出回っていない時でしたので、大変人気が出たようです。この時に社長になったのが、4代目社長の吉田暁さんです。それが昭和59年のことです。 

暁さんはそこから酒造りを大きく方向転換することになります。この時代はちょうど日本酒離れが多くなり、日本中の蔵がどうやって生きていくか大変苦労していた時代でした。暁さんはもちろん本物の日本酒造りに力を入れる気持ちはありましたが、このままではじり貧になるという思いから、大きな決断をします。自分の蔵が持っている強みは何かと考えて、思い立ったのが自社の得意技術の「伝統ある発酵技術」を活かして清酒以外の色々なものを造ろうということでした 

まず最初に行ったのが、瓶内発酵のの低アルコールの発泡性・純米酒「月うさぎ」の開発でした。この商品は夏場によく売れて、夏場でも製造できる環境になりました。夏場は杜氏がいない期間ですので、若い社員だけで行なわざるを得なくて、これで杜氏がいなくても酒造りをする環境が生まれたそうです。 

次の取り組んだのがリキュールの生産です。それは大量に生産した月うさぎの酒粕は酒粕としての人気がなく、産廃にせざるを得ない状況でしたので、その酒粕から焼酎を造ることを思いつき、平成13年にリキュールと焼酎の製造免許を取り、焼酎の生産を始めました。この焼酎は販売は考えておらず、アルコール添加用の醸造用アルコールとして使うつもりでしたが、南紅梅を焼酎に漬け込んだ梅酒を造ることにしました。それだけでは面白くないので、日本酒につけた梅酒も造りそれをブレンドした梅酒を「蛍梅・おうばい」として平成14年に販売を開始しました。このお酒が大ヒットしたのです。 

その後は、梅酒だけでなくリキュールの製造販売の方向に動き出しました。いちご、ゆず、もも、リンゴ、ミカン、マンゴーなど次々と新しいものを開発していきます。現在の販売量は清酒が1600石、梅酒が1000石、その他が1400石で合計4000石の生産となり、今ではリキュール生産蔵としての方が有名になっています。 

この間日本酒の製造に力を抜いていたわけではありません。吟醸酒にシフトしたことは上で説明しましたが、現在の清酒の平均精米率は55%ですから特に高級酒に力を入れているようです。このような発展をしてきた裏には暁社長の強い思いがあったのです。 

暁さんが社長になった時はこの困難な時代をどう乗り切るかと同時に5代目にどう繋いでいくかの思いがあり、その時に出会った言葉が「1年を計る人は花を育てる、10年を計る人は木を育てる、100年を計る人は人を育てる」という言葉だったそうです。それまでも人を育てることはやってきたつもりでいましたが、一人一人の能力を最大限引き出すまではやっていなかったことに気が付き、組織全体としての理念や文化、雰囲気、人が生き生きとする人事制度の強化などを行うと心に決めたそうです。そして、その土壌がほぼできた平成25年に娘の吉田佳代さんに社長を譲り、会長に退き現在に至っています。 

佳代さんに社長を引き継いだ年は創業120年になる年で、そこで新しい酒文化を造っていく理念を明らかにし、その象徴として新しいブランド山風香を立ち上げました。山風香は蔵が葛城山の麓にあることから、山から吹く新しい風の香りを表現したもので、山香と風香の2種類から成り立っています。山香はどっしりと構えた山のように梅乃宿の伝統を生かしたお酒、、風香は革新と新しい酒文化を表していて、搾りたてのようなフレッシュな味わいを楽しめるお酒です。瓶の色とラベルの色でお酒の酒質が一目で判るように、山香は茶色い瓶、風香は透明瓶、ラベルの文字は大吟醸は金色、純米吟醸は銀色、純米酒は黒色、生酛は緑、山廃は橙したのではないかと思います。これは蔵人から直接聞いたことではないので間違っているかもしれません。 

この会社のホームページみますと、他社にはない雰囲気があります。それは会社としての理念が明確に描かれていることと、従業員一人一人の声が描かれていることです。若い人が多く活気ある気持ちで、前に向いている様子が目に留まります。本当にこのまま素直に発展するのかどうかはわかりませんが、何が生まれるのだろうという期待感はありますね。とても楽しみです。 

以上で蔵の紹介は終わりますが、最後に新社長のプロフィルを紹介しておきます。 

 ・ 1979年生まれ現在38才
 ・ 平成14年 帝塚山大学経営情報学部卒
 ・ 株式会社モリタに入社
 ・ 平成16年 梅乃宿酒造株式会社入社
 ・ 平成25年 同社 代表取締役社長 就任
 ・ コンセプト 新しい酒文化を創造する蔵
          具体的には伝統ある技術を守り研鑽し続け、伝
          統技術をもとに価値ある商品や提案を時代に合
          わせて提供することだそうです。
 

それでは今回飲んだお酒の紹介をします。 

1.ARAGOSHI×MINOH 

Dsc_0054このお酒は日本酒ではありません。乾杯用に飲んだビールです。この蔵ではあらごし梅酒という銘柄の梅酒を造っていますが、これは南紅梅のうめをあらごしした果実をたっぷり使った梅酒で、この梅酒が発売されて10年目の今年に発売10周年記念に作ったビールで、今年限りだそうです。 

大阪のクラフトビールの名門の箕面ビールと梅乃宿酒造がコアラボレーションして作ったビールです。 

飲んでみると梅の酸っぱさはあまりなく、少し甘めのビールでした。麦芽の苦みとマッチした面白い味でした。アルコール度数は5.5%ですから普通のビールと同じです。 

2.UK-02 

Dsc_0057このお酒は梅錦蔵人の酒No.02という名前がついていて、その頭文字をとって、UK-02というラベルになっています。 

杜氏から託された蔵人がタンク1本を自由なコンセプトで造り上げる形で醸造したもので、2年前に初めて作ったお酒をUK-01としたので、今年はその第2弾としてUK-02となったわけです。 

UK-01は甘くて酸で締めるジューシーなお酒で評判が良かったそうで、UK-2は奇麗な酸を出すさわやかなお酒を目指して、リンゴ酸の出る協会77号と6号酵母のブレンドを試みたそうです。 

飲んでみると意外と酸が弱くおとなしめのお酒でした。もう少しリンゴ酸を出したほうがおもしろい気がしました。このバランスだと冷やして飲むほうが向いているようでした。 

3.風香純米吟醸袋搾り生原酒 

Dsc_0060_2このお酒は24BYから定番として造られていて、今年で4年目になるお酒です。岡山県雄高島地区で取れた備前雄町60%精米を使った純米吟醸で袋搾りのあらばしりと中取を詰めた生原酒です。酵母は9号酵母です。ラベルの文字は銀色で、瓶は透明でした。 

ここでは説明がありませんでしたが、ホームページで調べた酒質はALC17度、日本酒度、+2.4、酸度2.1でした。 

のんでみますと、香りは抑えめですが、カプロン酸エステルの香りと酢酸イソアミルの両方を感じるさわやかなもので、フレッシュな味わいとドライな口当たりで、最後に雄町らしい余韻を感じる味わいでした。澱の甘さと酸が打ち消しあっていてなかなかいいバランスをしていると思いました。 

4.風香純米無圧搾り生原酒 

Dsc_0064このお酒は山田錦65%精米の純米酒の生原酒です。酵母は6号酵母で、薮田の搾り機でプレスをかけないで、ポンプだけの力で最初に出てきたものを瓶詰めしたお酒です。ラベルの文字は黒で瓶は透明でした。 

このお酒の酒質もホームページで調べたものを紹介すると、ALC17度、日本酒度-4.6、酸度1.7でした。 

香はさわやかな香りですが、あまり強くなく、口に含んだ時に甘さを感じて味がしっかり出ているが、後味は切れを感じました。 

生原酒はすべて-7度の冷蔵庫で保管しているそうで、瓶詰め後の品質管理もしっかりしているようです。 

5.風香 純米吟醸 

Dsc_0066このお酒は岡山県産の備前雄町60%精米の純米酒で1回火入れのお酒です。文字の色は銀色でしたが、瓶の色は茶色でした。風香でも1回火入れのお酒の瓶の色は茶色のようです。一回火入れするとフレッシュ感がなくなるのでそうしたのかもしれません。だったら山香したほうがよかったのではと思いました。 

ホームページで調べた酒質はALC16度、日本酒度+1.7、酸度1.6でした。 

飲んでみると熟成の香りがしたので、聞いてみると火入れはパストライザーを使った瓶燗火入れなので、この香りは火入れによるのではなく酒販店で熟成したのではないかとの説明でした。このお酒は窓乃梅の自信作のお酒のようですが、雄町らしい余韻は消えてしまっていて、残念でした。お酒の管理は大切ですね。 

6.山香生酛純米吟醸 

Dsc_0070このお酒は岡山県産の備前雄町60%精米の生酛造りの1回火入れの純米吟醸原酒で、蔵で1年以上熟成させたお酒です。その中でも今回のお酒は2年熟成のお酒でした。 

瓶の色は茶い色で文字は緑でした。ホームページで調べた酒質はALC17度、日本酒度1.5、酸度1.5でした。 

飲んでみると軽い熟成の香りはしますが、角が取れてマイルドで嫌みのない大人のお酒になっていました。口に含んだ時にドンと旨みを感じるわけではないけど、バランスが良く後味に漂いう軽い余韻が素敵で、個人的には僕が最も気に入ったお酒でした。 

山廃も含めて生酛系は全生産の2割くらい作っているそうですが、山廃は主に本醸造の隠し味のブレンドとして使っているそうです。 なかなかのテクニックですね。

7.クールゆず 

Dsc_0078この蔵では、梅乃宿ゆずとクールゆずの2種類のゆず酒を造っていて、どちらもアルコール度数は8度と同じで、ゆずの果汁を日本酒とブレンドして作っています。 

最初に開発されたのが梅乃宿のゆずの方で、1升に対して18個のゆずの果汁を低温で調合して作ったものに対して、クールゆずはさらに果汁を増やして、20個分のゆずを、生酒と調合して造ったそうです 

飲んでみるとゆずの香りが口中の広がるフレッシュなお酒でなので、つい飲み過ぎてしまいそうになります。  

8.梅乃宿辛口純米吟醸酒 

Dsc_0068このお酒は限定のお店しか出していない特別の純米酒だそうです。お米は麹米が山田錦55%精米、掛米があけぼの55%精米の純米吟醸です 

ホームページで調べた酒質はALC16度、日本酒度+10.4、酸度1.4でした。 

飲んでみると甘みは抑えられていますが、それほど辛くは感じないで、トロットした感触で口の中に広がりました。なかなかうまく作られていると思いました。晩酌ように色々なお食事と合わせることのできるお酒だとおもいました。 

以上で飲んだお酒の紹介を終わります。 

最後にこの蔵のお酒を飲んで感じたことを纏めてみます。 

5年前に女性社長に代わってから新しい山風香シリーズのお酒が出て、新しい風を出してきてはいますが、伝統ある造りの良さとの調和を図っている感じがして、そのバランスが良いなと思いました。今の若者が好きな流行りの味のお酒を追うだけでなく、さらに先を見た新しいもの目指している予感がしました。この蔵は当面目が離せないと思います。 

それからホームページもしっかりしていて販売しているお酒の酒質をきちっと書いてあるるのは大変珍しくて、それだけ酒造りに自信があるとだとおもいます。僕のようなお酒マニアにとっては大変うれしいことです。

京都の丹後にある木下酒造の杜氏をしているフィリップハーパーさんは1991年から10年間梅乃宿で修業をして、南部杜氏の資格を取ったことは酒通の人には有名な話ですが、ハーパーさんを育てた風土がこの蔵のベースになって息づいていると感じました。

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2017年9月13日 (水)

喜多方の若手の蔵は個性豊かで楽しみですよ

8月の20日に西日暮里の稲毛屋で喜多方の若手5蔵の造り手を囲む会が開かれましたので参加してきました。稲毛屋主催の通常の日本酒会でこのような会がおこなわれることはありませんが、今回は大塚の地酒屋「こだま」の児玉武也さんが企画したものです。 

地酒屋「こだま」は武也さんが、今の場所にあった酒屋の「つたや」を2010年に買い取って開いたお店で、もともと「つたや」は福島のお酒が強くて、武也さんはその流れを継いで福島を幅広く取り扱っています。でも武也さんは普通の酒屋さんとは違います。もともとお酒の趣味が高じて酒屋になった方ですので、お酒を売って儲けようという気持ちが少なく、たとえ完成度が低く、生産量の少ない蔵であっても、一生懸命に良いお酒を造ろうとしている蔵をお酒を売ることで応援しようという人です。ですから福島の蔵の場合も、武也さんは自分の目で蔵を見つめなおして、応援しようと決めた蔵だけを扱っているものと思います。取り扱う福島の蔵数が多いと言っても、現在その数は16蔵で、福島全体の1/4ほどにしかなりませんが、全蔵武也さんが足を運んで見定めた蔵ばかりです。 

武也さんの地道な応援の成果が出たのか、最近福島の若手の杜氏が造るお酒の質が上がり色々なところで表彰されるようになってきました。それを受けてか、2014年には福島の新試飲気鋭の6蔵をディープに感じる会を武也さんが開催いたしました。この会のことについては僕が参加をしてブログで紹介していますのでご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/6-656f.html 

喜多方には11の蔵がありますが、その中でこだまで扱っている蔵は7つあります。その中でも若手が杜氏として造りをしている5蔵を取り上げて、蔵元を囲む会が行われることになりました。その蔵をご紹介します。5人のうち3人が上述のディープな会に参加していますので、紹介内容に重なることがありますので、ご容赦ください。 

・ 峰の雪酒造場 大和屋善内 佐藤健信  

・ 笹政宗酒造 ささまさむね 岩田悠二郎  

・ 喜多の華酒造場 星自慢 星里英  

・ 合資会社会津錦 会津錦 斎藤孝典  

・ 大和川酒造 弥右衛門 佐藤哲 

各蔵の杜氏の紹介とお酒の紹介をいたしますが、お話の中お米、酵母、アカデミーの話が良く出ますので、この3つは事前に紹介した置きます。 

1.福島県清酒アカデミー 

この組織の正式な名前は福島県清酒アカデミー職業能力開発校で、福島県が認めた色々な職業の労働者の職業能力の開発・向上を目的とした職業訓練校の一つです。平成のはじめごろは新潟の端麗辛口の酒造りが持てはやされ、新潟県ではそれを支えるために技能者要請機関として「新潟清酒学校」を設置するなど先を見据えた活動をしていたようです。 

福島県酒造組合としては、新潟より10年も遅れを取ってると思い、平成4年に新潟の事例を参考にしながら清酒アカデミーの前身となる技術研修を開始し、翌5年に県から普通職業訓練短期課程の認識意を受け、現在の組織がスタートすることになったようです。最初から3年のカリキュラムだったとすると、最初の卒業生は平成7年になります 

現在の訓練内容は初級・中級・上級の3年課程に分かれていて、それぞれ約100時間強、3年で300時間強の講義と実習をするそうです。その訓練科目には醸造にかかわる様々な専門科目(醸造数学、微生物学等の基礎科目から醸造実務科目、各種関連法律、醸造の歴史など)を教わるようです。 

今年の4月で23期生が卒業し、毎年約10名強の人が卒業するので、卒業生は延べ256人だそうで、福島県の蔵は62蔵あるようですが、造り手のほとんどの人がこの卒業生になっているものと思われます。 

平成17年度に全国新酒鑑評会での金賞受賞数で全国1位になって以来、今年までほとんど1位か2位(平成20年度だけが3位)の成績を残しており、大きな飛躍をしています。その陰にはアカデミーの講師をしている福島県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターの醸造科長の鈴木賢二先生がおられます。鈴木先生は新しい情報を得たり、お互いが刺激しあうことで、それぞれの蔵の意欲も技術も高まるという思いで活動されていますが、自分の研究成果として、平成14年に吟醸酒製造マニュアルを作り、蔵元に配ったそうです。そこには搾りから火入れまでの最適な期間や酵母が順調に育っているかを確かめる計算式など先生独自の方法を書くと同時に、酵母は特定せず各蔵の工夫が生かせるような幅を持たせたものになっています。このマニュアルはわかり易いということで評判となり、瞬く間に各蔵に広がり、それが平成17年度の1位につながったわけです。いまでも鈴木先生はさらなる研究を続けており、先生の努力によって福島県の醸造レベルが向上したことは間違いのないと思います。インターネットからお写真をお借りしました。 

20141031001

 2.福島県産酒米 

福島県が開発した酒造好適米で今使われているのは「夢の香」しかありません。夢の香は八反錦と出羽燦燦の交配種で、耐冷性や耐倒伏性が弱い五百万石に代わる米を目指したもので、耐冷性は五百万石より強く、耐倒伏性もやや強いものができました。酒米としての特性も五百万石より心白の発現率が高く、粒形も大きく吸水性も優れていて、醪中で溶けやすい軟質性のある酒造好適米です。 

一般米としてはコシヒカリやチヨニシキやひとめぼれ、天のつぶやミルキークインが造られています。チヨニシキはこしひかりとトヨニシキを親に持つ飯米で、酒米としては掛米に使われています。天のつぶはコシヒカリに匹敵する味を持つお米として、福島県が15年かけて開発し、平成22年に県の奨励種となったお米ですが、酒米としてはあまり使われていません。  

3.福島県産酵母 

福島県で開発された酵母は非常のたくさんあるようですが、それを纏めて統一的に紹介した文献が見つからなかったので、今回紹介する酵母は蔵で使っているものに絞って紹介します。酵母の開発もハイテクプラザ会津若松技術支援センターが担当されており、最近の開発には鈴木先生が担当しているものと思われます。 

<うつくしま夢酵母(F7-01)> 

 この酵母はハイテクプラザ会津若松技術支援センターが昭和63年より開発を進めてきて、協会酵母701号から改良された酵母が様々な苦労をした後、平成3年に夢酵母として発表されました。この酵母は酢酸イソアミル系の酵母で、洋ナシやメロンのようなさわやかな香りがして、酸味が少なくソフトでマイルドな味わいがする酵母です。 

<うつくしま煌酵母C10(701-15),R50(901-A113)、G30(701-g31)> 

 夢酵母が開発された後、カプロン酸系の香りの酵母が求められ、協会7号系酵母と協会9号系酵母から改良されて開発された3種類の酵母が平成20年に煌酵母として発表されました。C10はカプロン酸エステルの華やかな香りが強く、R50はイソ系とカプ系の2種類の香りが楽しめ発酵力の強い辛口系に向いている。G3は香りのバランスが良く、高級酒向けの上品なお酒に向いていると言われています。  

<TM-1> 

福島県で開発された酵母で、全体的な酸味を抑えながらきれいな酸味だけをだけを出す特徴がある酵母のようです。 

<TUA> 

 これも福島県開発の酵母で、低温で発酵力が強い酵母らしいですが、使っている蔵は喜多の華酒造くらいしかないようです。 

以上で前知識の紹介を終わり、今回参加した蔵を紹介しますが、たまたま飲んだ蔵の順で紹介することにします。 

下の写真は武也さんが5人の蔵元に説教しているわけではありません。会の終了時に5人の人たちのすばらしさを会の参加者にPRしているときの写真です。お店の構造上こんな風にしかできなかったようです。蔵元さんもみんな一生懸命武也さんのお話を聞いている姿が印象的ですね。 

Dsc_0060

 <峰の雪酒造場 大和屋善内 > 

Dsc_0052この蔵は昭和17年に佐藤信八さんが創業した新しい蔵ですが、現在の会津ほまれの真向かいにあった大和錦の第2工場として東京向けのお酒(峰の雪)を造る目的でスタートしたそうです。その後昭和30年に本家から独立し峰の雪酒となったそうです。 

写真の方は4代目蔵元の佐藤健信さんです。健信さんは東京農大の醸造学科を卒業された後、新潟の麒麟山に6年務め、製造と販売の勉強をした後平成21年に蔵に戻ってきます。 

その後福島清酒アカデミーに3年勉強した後、平成23年の造りから製造部長(実質の杜氏)となり自ら求めるお酒を造り始めることになります。 

まず、今までは普通酒しか作っていなかったのを変えて、特定名称酒に力を入れると同時に自分の好きな味のお酒、あまいけど、重たくなく軽く飲めるお酒を造り始めることになります。 

自分が狙った甘くても飲み飽きしないお酒を造るのは結構難しく、アミノ酸を1.0以下になるようにするそうです。そのためには洗米から全ての工程を見直したが、あまいお酒を造るには強い麹菌を使って糖を増やせばいいけど、蛋白混濁という白く濁るお酒になる可能性があるので注意をしているそうです。飲んだお酒は以下の通りです。 

.大和屋善内 純米生詰め
2.大和屋善内 純米大吟醸
3.Yamatoya Zennai
 

Dsc_0023_5Dsc_0020_3Dsc_00181.大和屋善内 純米生詰め(1回火入れ) 

このお酒は喜多方産の五百万石60%精米の純米無濾過生原酒です。甘みがあっても飲みやすいお酒を目指していて、強い麹菌を使って糖分を多く出すとともに、醪の発酵を最後までは行わずに糖分があるうちに絞るそうです。でも若いうちに絞ってしまうとヨーグルトのようなつわり臭(ジアセチルの香)が出るので、もろみの中のピルビン酸がなくなったのを確認して絞るそうです。この香りは絞ってからしばらくしてから出てくるので、この蔵のように絞ってすぐ瓶詰めするところでは、出荷前に瓶詰めしたお酒を確認して、クレームが出ないよう気を付けているそうです。 

飲んでみるとさわやかなイソアミル系の香りと程よい甘みとさわやかな酸を感じるお酒でしたが、この酸は福島県のTM-1という酵母からくるもののようです。確かに飲み飽きないタイプのお酒と言えます。 

2.大和屋善内 純米大吟醸 

大和屋善内のお酒はすべて喜多方産の五百万石を使っていますが、このお酒は出品酒を狙った40%精米の大吟醸ですので、カプロン酸エチルの華やかな香りが出るM-310という酵母を使っています。出品酒は袋撮りをしますが市販品は薮田で絞っているそうです。薮田で絞った場合最後に絞る責めの部分はどうしてもアミノ酸が増えるので使用していないそうです。結構細かいとろろに気を使っているのですね。 

3.Yamatoya Zennai. 

 このお酒は蔵に戻って自分では締めて造ったお酒で、今までにないタイプのお酒なので、横文字の表示にしたそうです。五百万石60%精米の純米酒で、アルコール度数14度、日本酒度-3、酸度3.8のお酒です。かなり酸味が効いていますので、バーベキューや肉料理に合うそうです。この酸はもろみの中で乳酸を増やして出しているようです。 

飲んでみると酸味は感じますが、甘さとかき消されてそれほど強くは感じられませんが、白ワインの感覚で飲めそうです。 

(まとめ)  

佐藤さんもアカデミーの出身ですが、先生の物まねではなく独自のお酒を造ろうという姿が印象的でしたし、醸造の理論にも詳しい方のように思えました。 

<笹政宗酒造 ささまさむね> 

Dsc_0051この蔵は1818年に岩田善次郎が喜多方市で創業した蔵で、喜多方駅から北へ4㎞程行ったところにあります。僕は行ったことはないけど、写真を見ると昔ながらの趣のある建屋とお庭が素敵な蔵でした。 

写真の方が社長兼杜氏の8代目の岩田悠二郎さんで、まだ31才で、喜多方では最年少の社長だそうです。大学卒業後は普通のサラーリマンをして、酒造りは全くしていなかったそうですが、4年前に蔵に戻ってきて、このままでは蔵には未来はないと感じて、杜氏のもとで勉強をしつつ、清酒アカデミーで研修をして3年前から自分のお酒を造り始めました。 

当時は生産量も落ち込んでいたので、売れるお酒の造りをアカデミーの鈴木先生のアドバイスを受けて始めたそうで、その意味では広戸川の松崎さんと同じですね。 

そして、最初のお酒はどんな名前にするか悩んだそうですが、いい案が思いつかずにひらがなの「ささまさむね」としたそうですが、字体は書道家に書いてもらったそうです。字だけ見ると女性のように思えますが男性だそうです。 

1.ささまさむね 純米吟醸 生酒
2.ささまさむね 特別純米 無濾過生原酒
3.ささまさむね 特別純米 熟成
 

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1.ささまさむね 純米吟醸 生酒 

このお酒は喜多方産五百万石50%精米の純米吟醸生酒で、ガス感が残るように気を配ったお酒だそうです。酵母はF7-01(夢酵母)で、日本酒度は±0、酸度1.4の少し甘口のお酒、さわやかな酸とガス感で切れを出しているようです。 

飲んでみると、イソアミル系のさわやかの香りとともに、口に含んだ時の甘みのぐわいが素晴らしく、しっかりした味わいを感じました。アミノ酸度は0.9ですからアミノ酸の旨みよりはグルコースの甘さなのかもしれませんね。 

2.ささまさむね 特別純米 無濾過生原酒 

このお酒は同じ五百万石精米度55%を麹米に、華吹雪精米度55%を掛米に使った特別純米の1回火入れです。アルコール度数15度、日本酒度は+2くらいですが、酸度が1.6~1.7もあってすっきりした味わいです。最初は味が物足りないくらいでしたが、半年寝かすことによりだんだんまろやかさが出てきているので、晩酌用としておすすめだそうです。 

3.ささまさむね 特別純米 熟成 

このお酒は広島県産の千本錦50%精米の特別純米の1回火入れのお酒です。このお酒は2015年に作った最初のお酒で五万石が手に入らないので、広島県の千本錦にしたそうで、インタナショナル・ワイン・チャレンジに出したら純米酒の部門で入賞したそうです。そのお酒をこだま店で熟成したのもだそうです。 

酵母は他のお酒と同じ夢酵母ですが、飲んでみると熟成香したためかイソアミル系の香りも少なく、熟成香もない飲みやすいお酒になっていました。 

(まとめ)  

彼もアカデミー出身ですが、先生のいいとこどりをしてうまく自分お酒を造っているように思えました。この会の前日の福島の地酒の会で、純米大吟醸原酒の生一本を飲みましたが、甘口ですがとてもパワフルなのにバランスの良いお酒になっていました。たった3年でこんなお酒が造れるのはとてもいいセンスを持っていると感じました。 

<喜多の華酒造場 星自慢 > 

Dsc_0053この蔵は喜多方駅から歩いて数分の所にある駅に最も近い蔵です。創業は大正8年で、星金吾さんが味噌醤油を営んでいた本家より分家をして始めたそうです。最初の銘柄は「星正宗」でしたが、戦時中一時休業していた蔵を昭和31年に復活させた時「喜多の華}と改名したそうです。 

喜多方にある多くの蔵の中で最も新しい蔵だったので、喜多方の華になる思いでつけられたようです。この蔵を今の形にしたのは現社長の星啓志さんです。早くして父を亡くした啓志さんは、醸造研究所の先生に指導を仰ぐだけでなく、自ら色々な蔵に足を運んで勉強した結果、今のベースを作り上げたのですが、娘3人の家族なので、いずれ自分の代で蔵を閉じようと思っていたようです。 

写真の方が長女の星里英(りえ)さんで、若い頃は家を継ぐつもりはなく東京でOLをしていたそうですが、東京での試飲会で蔵のお酒の販売を手伝っているうちに、自ら勉強しなおして蔵を継ぐことを決めたそうで、東京農大短期大学に行くことを決め、卒業後蔵に戻ったのが4年前の2013年です。 

その後福島清酒アカデミーで研修を受けた(岩田悠二郎君の同期)後、今では杜氏としてつくりをまかされているそうです。お酒は蔵に戻ってからすぐにお酒を造り始めているそうで、今年で4年目になるお酒もあります。 

1.蔵太鼓 純米辛口 生酒
2.星自慢 特別純米 無濾過生原酒
3.喜多の華 純米吟醸
 

Dsc_0036_2Dsc_0034Dsc_0033_21.蔵太鼓 純米辛口 生酒 

このお酒はご飯を食べながらお酒を飲む人のために作ったお酒で、香りが少なめで辛口に仕上げたそうです。原料米は麹米がたかねみのり50%精米、掛米が一般米60%精米の純米酒で、日本酒度+10、アルコール度数15%としてアルコール度数を抑え、飲み飽きしないように作っています。酵母はTUAで7号系の福島酵母ですが、この酵母を使っているのは喜多の華酒造だけではないかと思います。 

このお酒は生原酒と生酒と火入れの3種類を造っているそうで、この蔵の定番となっているお酒です。 

2.星自慢 特別純米 無濾過生原酒 

このお酒はしっかりお酒を嗜む人のために作ったお酒で、社長の啓志さんが造った自信作で、星自慢という銘柄として平成元年から売り出しています。お米は麹米が五百万石50%精米、掛米がたかねみのり55%精米の純米酒で、酵母は9号系を使用していて、アルコール度数は18度、日本酒度-1、酸度1.7のお酒です。飲んでみるとしっかりとした味わいがあるけれども、飲んだ後の切れもありとても良いバランスになっています。お酒の好きな人にはぴったりのお酒と言えます。 

3.喜多の華 純米吟醸 

このお酒は理英さんが蔵に戻ってからすぐに作り始めたお酒で、今年4年目になるので星が4つついています。ですからこの星は毎年数が増えるそうです。このお酒は麹米が五百万石50%精米、掛米チヨニシキ55%精米を使った純米吟醸で、日本酒を飲まない人にも飲んでもらいたいような甘みがあって香りがあるお酒を目指したそうです。でもアルコール度数は17度もあり、飲みやすいけど、軽いお酒ではありません。それはこれをきっかけに普通のお酒も好きになってもらいたかったからだそうです。 

(まとめ)  

里英さんは蔵に戻った時に東京で知り合った人と結婚して、2人で酒を造ろうとスタートしたのですが、事情があって離婚したそうです。でも里英さんはお父さん似でとても明るい方なので、すぐに良い方に巡り合うとおもいます。これからどんなお酒を造りたいですかとお聞きしたら、この蔵の基本となる3つのお酒をベースにしてさらにブラシュアップしていきたいと、笑って答えてくれました。どんなお酒に進化するか楽しみですね。 

<合資会社会津錦 会津錦 斎藤孝典> 

Dsc_0054この蔵は耶麻郡高畑村にある蔵で、喜多方駅から西に10㎞程行った山間にある蔵で、最近合併して喜多方市になったそうです。 

創業は江戸時代のようですが、大火によって記録がなく、形上創業は明治元年となっている古い蔵です。創業は戦時中は休業していましたが、昭和22年に斎藤酒造を設立し、現在の会津錦となったのは昭和42年だそうです。 

写真お方は6代目の専務取締役の斎藤孝典さんです。孝典さんは1976年生まれの現在41歳ですが、大学は東京農大の醸造学部に行き、卒業後家庭の事情ですぐに蔵に戻って後、清酒アカデミーにはいきましたが、現在のようなシステムはまだ出来上がっていなかったそうです。 

造りの勉強は主に蔵にいた越後杜氏から教わり、26才の時には杜氏になったそうです。蔵の生産高は300石にも満たない小さな蔵で、若い孝典さんと蔵人の小竹さんだけで酒造りを始めることになったそうですが、酒造りは基本を大切にした真正直な酒を目指しているそうです。 

他の人とは違うお酒をつくりたい常々思っていたので、地元のお米を積極的に使うことを考え、最初はチヨニシキを使っていました。6年前にミルキークインという米を使ったら、もち米のような粘りがあり酒米としては大変使いにくかったのですが、出来上がった酒は日本酒度が+9もあるのにお米の甘さを感じることに驚いたそうです。そこで、飯米の良さを生かすことを考え、色々試験をした結果、今ではほとんどのお酒を天のつぶという飯米を使っているそうです。 

1.純米大吟醸 袋吊り生原酒
2.純米 火入れ原酒
3.純米 すっべったこっぺった
 

Dsc_0040_3Dsc_0042_3Dsc_0045_31.KU 純米大吟醸 袋吊り生原酒 

このお酒は新しいブランをのQ(KU)シリーズの最初に作ったお酒で、天のつぶ50%精米で、M310を酵母に使った純米大吟醸です。どうしてQ(KU)というかというと、福島9号の天のつぶを使っていることと、人が本来喰う米で、人が喜ぶお酒を造りたいということからQと呼んだそうです。どんなお酒なのでしょうか。 

飲んでみると飯米とはおもえないような甘みと切れの良さを持つお酒で、このお酒を気に入ってくれた日本料理店の店主が黒龍の雫に負けないお酒ということで雫と同じ瓶に入れたとのことでした。 

確かにすごくうまいお酒でしたが、飯米の50%精米の大吟醸が4合瓶で5000円もするのは高すぎです  

2.KU 純米 火入れ原酒 

このお酒はQシリーズの第2弾として2年まえに作られた純米酒の火入れ原酒です。お米は当然天のつぶ70%精米で酵母はうつくしま夢酵母です。このお酒のラベルがユニークでQの文字の中に侍がいて、ご飯を食べている姿が描かれています。 

飲んでみると70%精米とは思えない奇麗さのあるお酒でした。確かにすごいお酒ですが、4合瓶1550円は仕方がないのかな。 

3.純米 すっべったこっぺった 

このお酒は「つべこべ言わないで」という意味の方言で、孝典さんが杜氏になってすぐ作ったお酒ですが、今はお米を昔はチヨニシキだったのをこれも天のつぶに変えています。精米度は同じ70%で優しい甘みと酸を感じるお酒でしたが、KUとは格が違う感じでした。 

KUの純米とどうしてこんなに味が違うかをお聞きしたら、KU純米は大吟醸と同じ麹を使っているのと酵母の違いから来ていると言われました。火入れの回数はどちらも2回火入れだそうです。同じお米で精米度が同じでも造りで随分違うのですね。 

(まとめ)  

孝典さんは41歳でこの5蔵の若者の中では一番年上ですが、そのせいかとても自信をもってお酒を造っているように感じました。確かに70%精米の飯米からあれだけの味を出せるのですから、清酒アカデミーの教えだけではできない技だと思いました。これからどんなお酒が飛び出すのか注目していく蔵だと負いました 

<大和川酒造 弥右衛門 佐藤哲野> 

Dsc_0050_2この蔵は喜多方駅から北に5分ほど歩いたところにある蔵ですが、創業はとても古く、江戸時代の中期の1790年だそうです。今まで紹介した4蔵の生産高は300石前後でしたが、この蔵は約1500石以ある立派な蔵で、平成2年には郊外に飯能蔵を新設して近代化を図っています。 

写真の方は杜氏の佐藤哲野さんです。哲野さんは大学を卒業後、酒造りをしたくて、すぐ蔵に入って蔵人として酒造りをする一方、清酒アカデミーで研修を受けたり、東京の醸造研究所で勉強したりして腕を磨いてきたそうです。 

哲野さんのお父さんの房伸さんが現在9代目の佐藤彌右衛門を名乗っていますが、東日本大震災で原子力の不評被害が出たことから、こちらの問題を解決すべく会長に退いたので、それまで杜氏をしていた父の弟の和典さんが社長になったそうです。哲野さんはそのタイミングで3年前に杜氏になったそうです。ちょっと棚ぼたですね・・・ 

お酒を紹介します。 

1.彌右衛門 純米辛口
2.彌右衛門 純米カスモチ
3.彌右衛門 別
 

Dsc_0046Dsc_0047_2Dsc_0048_21.彌右衛門 純米辛口 

このお酒は彌右衛門の柱となっているお酒で、お米は麹米が夢の香50%精米で、掛米がチヨニシキ60%の純米酒です。2年前から本醸造を含めてすべてのお酒の麹米は夢の香50%にしているそうで、、そうすることにより非常に安定してきたそうです。この考えは新政の佐藤祐輔さんの考えと同じですね。今後真似するところが増えそうな気がします。 

飲んでみると米の甘みを感じる優しい味わいでした。冷でもお燗でもあうお酒でした。 

2.彌右衛門 純米カスモチ原酒 

昔から同じ方法で造ている伝統的なお酒で、麹米は夢の香50あ5、掛米がチヨニシキ65%精米で、麹の量は通常20%ですか、カスモチでは倍の40%とし、醪の水の量も少なめにして濃度の濃い状態で発酵させ、原酒のまま搾ったお酒です。 

カスとは醪のことを言い、モチは4段仕込みに使うもち米のことで、日本酒度-25もあり非常に甘いけど切れもあるお酒になっていて、常温熟成に向いたお酒だそうです。 

3.彌右衛門 別品 

このお酒は哲野さんが杜氏になってから始めた生酛造りのお酒で、お米は夢の香55%精米で酵母は別品は天然の蔵付き酵母で、酵母添加の生酛はすっぴんと言うそうです。柔らかくてクリアな甘みと優しい酸味のバランスの良い生酛でした。

まとめ)  

哲野さんの蔵はある程度仕組みもガッチリきまっっている大きな蔵なので、杜氏と言えどもやりたいことが勝手にできるわけではないけど、やれる範囲の中で、新しいことにチャレンジしているのはわかります。とてもまじめに取り組む方のようですが、思い切って色々チャレンジしてもらいたい気がしました。 

以上で喜多方の5蔵の紹介を終わりますが、僕の感想としては、清酒アカデミーの鈴木先生の教えが行き届いていて、みんな同じような造りをしているのかと思っていたら、鈴木先生の教えは理解したうえで、皆が個性ある造りをしていたので驚かされました、喜多方の蔵の将来は楽しみですね・・・・

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2017年8月 6日 (日)

杉錦の生酛系のお酒は赤ワインをイメージしています

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先日調布市の仙川にある日本酒バー「あふぎ」で静岡県の杉井酒造の杉井社長をおよびして杉錦のお酒を楽しむ会がありましたので、参加してきました。「あふぎ」は十数人しか入れないとても小さなお店ですが、ママの板垣さんが、静岡県の藤枝市出身で静岡県のお酒が大好きで去年この地にお店を構えてから、静岡県のお蔵さんをお招きして、時々日本酒の会を開いていまして、今回は第3回目だそうです。 

前回の志田泉のお酒のことやお店のことならば下記のブログを見てください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-c472.html 

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今回は杉錦を醸している杉井酒造の社長兼杜氏の杉井均乃介さんをお呼びしての会です。僕は最近静岡のお酒には大変興味を持っていて、昔は毎年東京の如水会館で行われる静岡県の地酒祭りに行っていたのですが、それでは本当の静岡のお酒が判らないと、2017年には浜松市のオークラアクトシティホテル浜松で行われ地酒祭りに行って静岡のお酒を勉強してきたほどです。その時のことは下記のブログに書いてありますので、興味があればご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-7f5e.html 

そのブログで最初に取り上げたのは小夜衣を醸している森本酒造の森本社長で、次に紹介したのが杉錦の杉井社長です。この二つの蔵はとても小さな蔵で、静岡県のお酒造りを指導してきた河村伝兵衛さんが指導してき静岡県のお酒とはだいぶ違うお酒を造っていますが、お二人とも静岡県の蔵人では知らない人はいないほど有名な方です。その杉錦のお酒を、杉井さんの言葉で説明を受けながら飲める機会を逃してはなるまいと、勇んで参加しました。ところが当日は僕の勘違いで仙川駅を通り過ぎて調布駅まで行ってしまい、慌てて仙川駅まで戻るというチョンボをしてしまい、開宴に10分も送れることになりました。前にお邪魔したことがあるので安心していた油断ですね。 

静岡県の酵母や河村伝兵衛のことを知りたい方は下記のブログを読んでください。静岡県のお酒や酵母のことが良く判ると思います。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-27e3.html 

では早速、杉井酒造と杉井さんの紹介をしましょう。杉井酒造は静岡県藤枝市小石川町にある蔵で、藤枝駅から約1㎞程焼津の方の戻った瀬戸川の近くにあります。創業は天保13年ですから、江戸時代末期に杉井家本家から分離した杉井才助さんが今の地で商いを始めたのが最初で、酒造りを始めたのは明治に入ってからのようです。 

明治の中頃までは「亀川」、大正期は「杉政宗」という銘柄の酒を造っていて、「杉錦」を始めたのは昭和に入ってからのようです。そして現在の杉井均乃介さんは6代目に当たるそうです。 

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杉井さんは昭和32年(1957年)生まれで、今年60歳になられますが、静岡市の高校を卒業後、東京農業大学に入学され、卒業後24才で蔵に戻って酒造りを始めました。最初の2年は東京の醸造試験所で研修をされたのち、蔵におられた南部杜氏と一緒に酒造りをしながら勉強してきたそうです。それだけでなく静岡県の工業技術センターの主任研究員の河村伝兵衛さんから吟醸造りについて色々と指導を受けたそうで、それがとても役になっているそうです。 

1994年7月に杉井酒造の社長になられましたが、まだその時は杜氏にはなっておりません。その頃、理由はお聞きしませんでしたが、杉井酒造の杜氏が森本酒造の杜氏も兼務していたことがあり、森本さんからお前の蔵の杜氏の酒はよくないと言われて、森本さん自らが杜氏となって造りを始めたので、自分もそうしようと思い杜氏になったのが2000年だそうで、酒造りの面では森本さんと同じ年に始めたことになるそうです 

それで杉井さんはどんなお酒を醸し出しているのでしょか。杉井さんが杜氏になったすぐは、お酒の味が変わったと言われたそうですが、3年努力した結果全国新酒鑑評会で3年連続金賞を受賞することができ、お客様の信頼を回復したのですが、なにか納得がいかない気がしていたそうです。 

今は吟醸造りが良い酒を造る基本という風潮があるようですが、吟醸造りだけがすべてではない、自分らしい切り口を考えようと思ったそうです。その時出会ったのが東京大学の農学博士の「坂口謹一郎」さんの本の「日本の酒」で、日本の長い稲作と食文化の歴史と共に歩んできた清酒は「日本人が大昔から育て上げてきた一大芸術作品である」という言葉だったそうです。 

その本の中で、日本の酒造りはうまい酒を作りだすための先人の知恵と工夫が凝縮されていて米と水、麹菌、酵母、乳酸菌などの自然の働きによって醸し出されることが書かれてあり、昔の技術を使えば深い味わいの酒が造れる可能性があるに違いないと、昔の造りの勉強を始めたそうです。そうしてたどり着いたのが「生酛・山廃」と「熟成」だったそうです。現在の生産高は400石位しかありませんが、全体の85%を生酛・山廃つくりで熟成するようになっています。 

でも吟醸造りのお酒の研究をやめたわけはありません。その証拠に今年の(平成28年醸造度)の静岡県清酒鑑評会で、純米吟醸部門と、吟醸部門の両方でナンバーワンとなる知事賞を獲得したからでも判ります。本日はそのお酒が飲めることなので、とても楽しみです。このお酒は全国新酒鑑評会にも出したのですが、金賞ではなく、入賞だったそうですが、金賞を取るためには、カプロン酸エチルの香りが出る酵母をつかって、マニュアル通り造れば誰でも金賞が取れる時代になっているので、あまり価値がなくなっているかもしれないとのことでした。 

この蔵の水は発酵力の強い中硬水だそうですから。生酛・山廃の造りには向いていたのでしょうね。もちろん杉井さんは知っていたからおやりになったなだと思います。 

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ではこの会で飲んだお酒を順次説明していきましょう。

1.誉富士 生酛純米酒 しずおか地元研究会20週記念酒
 

Dsc_0870_2このお酒は鈴木真弓さんが主宰する「しずおか地酒研究会」の20周年記念として杉井さんが造った生酛純米酒です。一般的に静岡のお酒は酢酸イソアミル系のさわやかな香りがして、酸が少なく日本酒度が高くすっきりした味わいのお酒が多いのですが、静岡らしい味を保った生酛を造ってもらいたいと依頼されて作ったお酒だそうです。 

具体的には生酛は湧き遅れをしないように総破精で立ち上げて、醪の麹は突き破精にした吟醸造りをするそうです。

お米は静岡県産の誉富士で、麹米が70%精米、掛米60%精米で酵母はHD-1で1回火入れの純米酒酒質は、アルコール分15.4度、日本酒度+8.5、酸度1.6のお酒となりました。 

飲んでみると、酸味は穏やかで、べたついた甘みはなく口に含んだ時にうまみがポット広がり後味でキレを感じるとともに、ほのかな酢酸イソアミル系の香りがするお酒になっていて、生酛とはわからないお酒に仕上がっていました。でも生酛らしい深みを感じる静岡流生酛酒と言えるかもしれませんね。 

2.杉錦 純米大吟醸 知事賞受賞記念酒 

Dsc_0872このお酒は出品酒として造ったお酒で、お米は兵庫県産の山田錦40%精米、酵母はHD-1を使用した純米大吟醸酒です。このお酒は出品酒原酒を少し加水して作った出品記念酒です。 

酒質はアルコール分15.5度、日本酒度+0、酸度1.5です。原酒の酸度は1.7もあったので、賞は取れないと思ってだしたら、全国新酒鑑評会では入賞、静岡県清酒鑑評会では純米吟醸部と吟醸部の2つの部門とも1位の知事賞を取ることになったそうです(出品酒は原酒で出しています) 

吟醸酒は純米大吟醸酒にわずかアルコールを添加しただけなのでほとんど同じものだそうです。 

賞に至った裏話を聞きました。静岡の審査では出品されたお酒を4回きき酒をして決めるそうで、4回目の最後に残った2つお酒(杉錦と磯自慢)を投票で決まったそうです。おめでとうございます。 

飲んだ印象は香りは意外に高くなく、甘みと酸味のバランスが良くてきれいの飲めるお酒で、生酛の味を知っている僕にとっては少し物足りない感じでした。 原酒のお酒を飲みたかったな。

3.杉錦 生酛純米吟醸 

Dsc_0876このお酒は兵庫県の山田錦60%精米で、掛米を48%精米を使った純米吟醸で、酵母はHD-1ですが、去年までは山田錦50%精米でやって純米大吟醸としていたものを今年は変えたので、純米吟醸としたそうです。それは生酛の酒母造りは精米度が悪いほうがやりやすいので、60%にしたそうです。 

酒質はアルコール分15~16度、日本酒度+5、酸度1.4でしたが、飲んでみると生酛らしいしっかりした味わいで、甘みもそこそこ感じられるお酒でした。それは酸度が1.5と比較的少なかったからだと思います。どうしてこんなバランスのお酒にしたのかはお聞きしませんでした。山田錦の品の良さを生かすためだったのでしょうか? 

一般的に生酛系のお酒は速醸より酸が高いのは、酒母の段階では速醸の場合は酸度が7で、生酛系では酸度が10位を狙って作るので、醪の段階で速醸は酸度が1.2~1.4で、生酛系では酸度は1.7~2.0になるそうです。乳酸を添加しない生酛系の酒母では乳酸がしっかり出ているのを確認する必要があるので、酸がどうしても高めにせざるを得ないようです。 

4.杉錦 玉栄山廃純米酒 

Dsc_0879このお酒は滋賀県産の玉栄を使ったお酒で、玉栄は心白の発生率が低く、硬いお米なので、味が濃く雑味を出やすいので、吟醸系には向いておらず、熟成には向いているので、味をしっかり出せる生酛系のお酒に適しているそうです 

この蔵では2004年から生酛系の造りを初めて行ったのですが、最初のトライが玉栄を使った山廃で、その時のお酒がダンチュウで普段のみの純米酒のベスト1として評価されてあっという間に売り切れたそうです。ですから、その後はずっと玉栄のお酒は山廃つくりをしていて、今後変更するつもりはないそうです。 

生酛系には山廃と生酛の2種類がありますが、生酛は小さなたらいに酛を入れて櫂で擦る酛擦り作業をするのに対して、山廃は酛を酒母タンクに一緒にいれて、電動ドリルでかき混ぜてとかす方法を取っているそうですが、味わいは基本的には同じだそうです。どちらが良い味を出せるかは出来次第ですが、生酛の方が早湧きが起きにくいので、失敗が少ないそうです。でもうまくいった場合は生酛の方が時間がかかっているだけ、良くなるかなという思い入れがあるそうです。 

玉栄の精米度は65%で、酵母は泡なし7号酵母だそうで、酒質はアルコール度は15~16度、日本酒度+10、酸度1.6で、飲んでみると日本酒度の割には辛く感じないで、軽い酸味を感じる飲み飽きしないお酒になっていました。不思議なことにお燗をしたら甘みがぐっと出てきたのには驚かされました。 

杉井さんのお話では今回のお酒は1年熟成しているけど、貯蔵温度が低かったので、もう少し熟成した方が良いと思うとのコメントをいただきました。 

5.杉錦 菩提酛 

Dsc_0881江戸時代に安定した酒母を作る方法として生酛が開発されましたが、その前は菩提酛と言われる方法が使われていました。提酛は平安時代後期に奈良県の菩提山正暦寺で開発された方法です。 

その方法は変わったやり方で、新酒を作るのに残暑の暑い日を選び、いかきという籠の中に生米9割、蒸米1割の比率で入れて水の中に3日間浸しておくと酸性で泡立った「そやし水」ができます。この水を仕込水として使って麹や蒸米を投入してお酒を造るやり方です。このそやし水は乳酸菌が造った乳酸が多く含まれた水で、気温の高い時期の方が乳酸菌が良く増殖して素早く乳酸ができるからいいそうです。  

この方法は江戸時代になって水酛と呼ばれて広く使われるようになったようですが、安定性が悪く、混入する微生物の種類によって酒質が大きく変わる欠点がありましたので、生酛ができてから次第に衰退したようです。  

菩提酛はは昭和の時代になって日本酒の醸造教科書からなくなり、今まで詳しいことがわかなかったようですが、1996年に奈良県工業技術センターと奈良県内の醸造元が菩提酛研究センターを立ち上げて、研究を重ね1999年に菩提酛を使った醸造に成功したのです。 

杉井さんは勉強家で好奇心旺盛の方ですから、この菩提酛を使ってお酒を造ってみようと思い立ち、菊姫が復活出版をした酒造教科書の一つの「杜氏醸造要訣」に詳しい記述があったので、それを基に試験をして見事に成功させました。その方法はホームページに書いてありましたのでそれを載せておきます。杉井さんのお話では蔵内で菩提酛を立てて、これを使った醪から醸造しているのは千葉県の五人娘と杉錦だけではないかとのことでした。 

その造り方ですが一合ほどの炊いた飯と一掴みの麹を布の袋に入れて一斗ほどの水に漬けます。この時、酛の掛米にする白米を生のまま一緒に水に入れます。7日くらい放置しておくと軟らかな飯は自然に溶け出して乳酸菌が繁殖して水はすっぱくなり、自然に酵母菌も生えてきます。そこで漬けておいた白米を取り出して蒸し、麹とこのすっぱい水を加えて酛を仕込みます。乳酸により雑菌の繁殖は抑えられ自然に繁殖した酵母はすぐに醗酵し始めます。酸とアルコールが蓄積されて仕込み後10日ほどで酛ができあがります。この酛を使って通常の3段仕込みを行います。 

他の蔵の菩提酛は少し甘めに作るのですが、杉井さんは糖分を抑えた辛口に仕上げたのはワインのように酸味があって糖分が少なくアルコール度数を下げたお酒を狙ったようです。原酒はアルコール度数が19%、酸度が3.0もあったそうですが、割り水をして、アルコール度数13~14度、日本酒度+10、酸度19というお酒にしています。お米は誉富士70%精米、酵母は無添加です。 

今回飲んだお酒は2015BYで1年半熟成したもので、飲んでみるとあたりが柔らかく、そんなに辛く感じない飲みやすいお酒でした。お食事と一緒に飲むにはスイット呑めてしまいますね。 

6.杉錦 生酛純米酒 八十八(やそはち) 

Dsc_0883このお酒は明治時代の酒をイメージして作ったお酒で、精米度を約88%にして生酛作りしたお酒です。 

明治時代は精米技術がなく、生酛造りで温度の高い状態で醸造していたので、日本酒度は+17、酸度は4~5くらいだったと思われます。昔の酒には現代のお酒とは異なる味わいの良さや深さがあったのではないかと思ったのが、このお酒を造った理由だそうです。 坂口先生の本には明治時代の金賞受賞酒の日本酒度は+10で酸度は2.7であったことが書いてあります。

お米は麹米は静岡県産誉富士70%精米、掛米は静岡県産ひとめぼれ90%精米なので、八十八と名前を付けたのでしょう。酵母は協会701号の純米酒です。昔は清酒はすべて純米酒だたtのですよね。 

出来上がった酒質はアルコール分13~14度、日本酒度+17、酸度2.0でした。この原酒はアルコール分は19度、酸度は3.0で割り水してこの値になっています。このままではすごく辛くてのめないのですが、室温で1年以上熟成させると甘みが出て、丸みも感じるようになるそうです。このお酒は2014BYのお酒なので、2年以上の熟成をしています。 

実際に飲んでみると穀物的な香りがするけれども、普通のお酒のような甘さはなく、アルコール分が低いので酔ってからも飲める飲み飽きしないおになっていました。昔の人も割り水をして飲んでいたのかな? 

7.杉錦 山廃純米 天保13年 

Dsc_0888_2このお酒は蔵の創業年の天保13年という名前を付けたお酒で、安価な一般米を使った純米酒だけど昔ながらのお酒の良さを持っているお酒を狙ったものです。 

具体的にはお米は麹米は静岡県産ひとめぼれ70%精米、掛米は静岡県産あいちのかおり78%、酵母は協会7号を使った純米酒です。一言でいえば、アルコール度数を上げた辛口で、酸度の高いお酒ですが、 醸造年度で日本酒度は違っているようです。年々色々と試されているんではないかと思います。

出来上がったお酒の酒質は2015年度醸造のもので、アルコール分15~16度、日本酒度+9、酸度2.6でした。 

冷えたまま飲んでみると軽い熟成の香りがして、ちょっと酸っぱいドライなお酒ですが、温度が上がってくると甘みを感じだし、良いバランスとなってきます。酸味が強いので焼肉に合わせると良いと思います。お燗をするとしっかりした味を感じながらソフトな柔らかさを感じるお酒になります。これは冷やして飲むお酒ではありませんね。 冷えているとただ酸っぱいお酒です。

この蔵の熟成はすべて1回火入れの瓶貯蔵で行っています。一般的には吟醸酒で香りを大事にするお酒は1回火入れで貯蔵しますが、一般酒は1回火入れしたお酒をタンク貯蔵して、瓶詰めする前にもう1回火入れするようです。 

8.純米 本みりん 飛鳥山 

Dsc_0906このみりんは静岡県で生産されている唯一の本みりんで、江戸時代に確立されたみりん本来の製法に従って復刻製造した本みりんです。原料にはもち米と米麹と米から作った焼酎を使うので、普通のみりんのように水飴や醸造用糖分や醸造用アルコールは使いません。従って普通のみりんの倍の価格がします。 

その製法は日本酒とはだいぶ違っていて、蒸したもち米に米麹をまぶし、冷やしてから米焼酎と一緒にタンクに入れて約2か月間発酵させます。こうしてできた熟成液を袋に入れて槽搾りで絞れば完成です。ろ過や火入れはしません。 

飲んでみると、濃厚だけれども自然で深い甘みをもち、フルーティで後味がすっきりする味わいでした。でもアルコール度数は日本酒と同じ14~15度もあるので、要注意です。 

以上でこの会で飲んだお酒の紹介を終わります。 

最後に杉井さんの酒について、全体を通じて感じたことを述べてみます。杉井さんはお酒造りに研究熱心でかつ好奇心が旺盛なので、自分で思いついたことをどんどん実行してしまう方だと思いますが、単なる思い付きではなく、裏打ちされたしっかりしたお考えを持っているように思えます。 

吟醸造りに関しては静岡県の先生であった河村傳兵衛さんの教えをきちっと学び、それを身に着けるだけでなく自分なりのお酒に仕上げていく技術と姿勢を感じました。また、今流行りの吟醸酒を造るだけでは満足せず、日本が昔から育ててきた日本酒古来の酒造りの手法を使うことを積極的にチャレンジし、菩提酛、生酛、山廃のお酒を造ってきましたが、凄いのはこの技術で今風の味のお酒を造るのではなく、昔のお酒の味を再現することにチャレンジされたのには驚かされました。失敗したら売れないお酒ができてしまう可能性があると思いますが、熟成の技術と組み合わせることにより、なんとなるとの自信があったものと思います。 

この杉井さんの考えのにはもっと先を見たお考えがあるように思えました。それは赤ワインの世界を日本酒で実現しようと考えておられるのだと思います。高級な赤ワインは味わいが奥深くて、良いものを飲むと何とも言えないほどの幸せ感を与えるお酒になると思っている人は多いと思います。その赤ワインは酸味が強く糖分がほとんどないお酒ですが、ブドウの持つ独特の成分と熟成の技術により醸し出されるものであることを杉井さんは良く知っておられるので、日本酒の場合も酸が多くて糖分の少ないお酒を熟成させることにより赤ワインに近いお酒を実現しようとしているように感じました。 

鯵の深みという点では、まだまだ道半ばと言えますが、きっと杉井さんならいずれか達成できる日が来るのではないかという期待があります。 

大変難しい課題かも知れませんが、ぜひ実現させてもらいたいものですね 

最後に「あふぎ」のママと杉井さんの2ショットをお見せします。いい雰囲気でしょう。 

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いつもお料理の最後に作っていただく静岡おでんをお見せします。
とてもおいしいですよ。

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杉錦の生酛系のお酒は赤ワインをイメージしています

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先日調布市の仙川にある日本酒バー「あふぎ」で静岡県の杉井酒造の杉井社長をおよびして杉錦のお酒を楽しむ会がありましたので、参加してきました。「あふぎ」は十数人しか入れないとても小さなお店ですが、ママの板垣さんが、静岡県の藤枝市出身で静岡県のお酒が大好きで去年この地にお店を構えてから、静岡県のお蔵さんをお招きして、時々日本酒の会を開いていまして、今回は第3回目だそうです。 

前回の志田泉のお酒のことやお店のことならば下記のブログを見てください。
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今回は杉錦を醸している杉井酒造の社長兼杜氏の杉井均乃介さんをお呼びしての会です。僕は最近静岡のお酒には大変興味を持っていて、昔は毎年東京の如水会館で行われる静岡県の地酒祭りに行っていたのですが、それでは本当の静岡のお酒が判らないと、2017年には浜松市のオークラアクトシティホテル浜松で行われ地酒祭りに行って静岡のお酒を勉強してきたほどです。その時のことは下記のブログに書いてありますので、興味があればご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-7f5e.html 

そのブログで最初に取り上げたのは小夜衣を醸している森本酒造の森本社長で、次に紹介したのが杉錦の杉井社長です。この二つの蔵はとても小さな蔵で、静岡県のお酒造りを指導してきた河村伝兵衛さんが指導してき静岡県のお酒とはだいぶ違うお酒を造っていますが、お二人とも静岡県の蔵人では知らない人はいないほど有名な方です。その杉錦のお酒を、杉井さんの言葉で説明を受けながら飲める機会を逃してはなるまいと、勇んで参加しました。ところが当日は僕の勘違いで仙川駅を通り過ぎて調布駅まで行ってしまい、慌てて仙川駅まで戻るというチョンボをしてしまい、開宴に10分も送れることになりました。前にお邪魔したことがあるので安心していた油断ですね。 

静岡県の酵母や河村伝兵衛のことを知りたい方は下記のブログを読んでください。静岡県のお酒や酵母のことが良く判ると思います。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-27e3.html 

では早速、杉井酒造と杉井さんの紹介をしましょう。杉井酒造は静岡県藤枝市小石川町にある蔵で、藤枝駅から約1㎞程焼津の方の戻った瀬戸川の近くにあります。創業は天保13年ですから、江戸時代末期に杉井家本家から分離した杉井才助さんが今の地で商いを始めたのが最初で、酒造りを始めたのは明治に入ってからのようです。 

明治の中頃までは「亀川」、大正期は「杉政宗」という銘柄の酒を造っていて、「杉錦」を始めたのは昭和に入ってからのようです。そして現在の杉井均乃介さんは6代目に当たるそうです。 

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杉井さんは昭和32年(1957年)生まれで、今年60歳になられますが、静岡市の高校を卒業後、東京農業大学に入学され、卒業後24才で蔵に戻って酒造りを始めました。最初の2年は東京の醸造試験所で研修をされたのち、蔵におられた南部杜氏と一緒に酒造りをしながら勉強してきたそうです。それだけでなく静岡県の工業技術センターの主任研究員の河村伝兵衛さんから吟醸造りについて色々と指導を受けたそうで、それがとても役になっているそうです。 

1994年7月に杉井酒造の社長になられましたが、まだその時は杜氏にはなっておりません。その頃、理由はお聞きしませんでしたが、杉井酒造の杜氏が森本酒造の杜氏も兼務していたことがあり、森本さんからお前の蔵の杜氏の酒はよくないと言われて、森本さん自らが杜氏となって造りを始めたので、自分もそうしようと思い杜氏になったのが2000年だそうで、酒造りの面では森本さんと同じ年に始めたことになるそうです 

それで杉井さんはどんなお酒を醸し出しているのでしょか。杉井さんが杜氏になったすぐは、お酒の味が変わったと言われたそうですが、3年努力した結果全国新酒鑑評会で3年連続金賞を受賞することができ、お客様の信頼を回復したのですが、なにか納得がいかない気がしていたそうです。 

今は吟醸造りが良い酒を造る基本という風潮があるようですが、吟醸造りだけがすべてではない、自分らしい切り口を考えようと思ったそうです。その時出会ったのが東京大学の農学博士の「坂口謹一郎」さんの本の「日本の酒」で、日本の長い稲作と食文化の歴史と共に歩んできた清酒は「日本人が大昔から育て上げてきた一大芸術作品である」という言葉だったそうです。 

その本の中で、日本の酒造りはうまい酒を作りだすための先人の知恵と工夫が凝縮されていて米と水、麹菌、酵母、乳酸菌などの自然の働きによって醸し出されることが書かれてあり、昔の技術を使えば深い味わいの酒が造れる可能性があるに違いないと、昔の造りの勉強を始めたそうです。そうしてたどり着いたのが「生酛・山廃」と「熟成」だったそうです。現在の生産高は400石位しかありませんが、全体の85%を生酛・山廃つくりで熟成するようになっています。 

でも吟醸造りのお酒の研究をやめたわけはありません。その証拠に今年の(平成28年醸造度)の静岡県清酒鑑評会で、純米吟醸部門と、吟醸部門の両方でナンバーワンとなる知事賞を獲得したからでも判ります。本日はそのお酒が飲めることなので、とても楽しみです。このお酒は全国新酒鑑評会にも出したのですが、金賞ではなく、入賞だったそうですが、金賞を取るためには、カプロン酸エチルの香りが出る酵母をつかって、マニュアル通り造れば誰でも金賞が取れる時代になっているので、あまり価値がなくなっているかもしれないとのことでした。 

この蔵の水は発酵力の強い中硬水だそうですから。生酛・山廃の造りには向いていたのでしょうね。もちろん杉井さんは知っていたからおやりになったなだと思います。 

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ではこの会で飲んだお酒を順次説明していきましょう。

1.誉富士 生酛純米酒 しずおか地元研究会20週記念酒
 

Dsc_0870_2このお酒は鈴木真弓さんが主宰する「しずおか地酒研究会」の20周年記念として杉井さんが造った生酛純米酒です。一般的に静岡のお酒は酢酸イソアミル系のさわやかな香りがして、酸が少なく日本酒度が高くすっきりした味わいのお酒が多いのですが、静岡らしい味を保った生酛を造ってもらいたいと依頼されて作ったお酒だそうです。 

具体的には生酛は湧き遅れをしないように総破精で立ち上げて、醪の麹は突き破精にした吟醸造りをするそうです。

お米は静岡県産の誉富士で、麹米が70%精米、掛米60%精米で酵母はHD-1で1回火入れの純米酒酒質は、アルコール分15.4度、日本酒度+8.5、酸度1.6のお酒となりました。 

飲んでみると、酸味は穏やかで、べたついた甘みはなく口に含んだ時にうまみがポット広がり後味でキレを感じるとともに、ほのかな酢酸イソアミル系の香りがするお酒になっていて、生酛とはわからないお酒に仕上がっていました。でも生酛らしい深みを感じる静岡流生酛酒と言えるかもしれませんね。 

2.杉錦 純米大吟醸 知事賞受賞記念酒 

Dsc_0872このお酒は出品酒として造ったお酒で、お米は兵庫県産の山田錦40%精米、酵母はHD-1を使用した純米大吟醸酒です。このお酒は出品酒原酒を少し加水して作った出品記念酒です。 

酒質はアルコール分15.5度、日本酒度+0、酸度1.5です。原酒の酸度は1.7もあったので、賞は取れないと思ってだしたら、全国新酒鑑評会では入賞、静岡県清酒鑑評会では純米吟醸部と吟醸部の2つの部門とも1位の知事賞を取ることになったそうです(出品酒は原酒で出しています) 

吟醸酒は純米大吟醸酒にわずかアルコールを添加しただけなのでほとんど同じものだそうです。 

賞に至った裏話を聞きました。静岡の審査では出品されたお酒を4回きき酒をして決めるそうで、4回目の最後に残った2つお酒(杉錦と磯自慢)を投票で決まったそうです。おめでとうございます。 

飲んだ印象は香りは意外に高くなく、甘みと酸味のバランスが良くてきれいの飲めるお酒で、生酛の味を知っている僕にとっては少し物足りない感じでした。 原酒のお酒を飲みたかったな。

3.杉錦 生酛純米吟醸 

Dsc_0876このお酒は兵庫県の山田錦60%精米で、掛米を48%精米を使った純米吟醸で、酵母はHD-1ですが、去年までは山田錦50%精米でやって純米大吟醸としていたものを今年は変えたので、純米吟醸としたそうです。それは生酛の酒母造りは精米度が悪いほうがやりやすいので、60%にしたそうです。 

酒質はアルコール分15~16度、日本酒度+5、酸度1.4でしたが、飲んでみると生酛らしいしっかりした味わいで、甘みもそこそこ感じられるお酒でした。それは酸度が1.5と比較的少なかったからだと思います。どうしてこんなバランスのお酒にしたのかはお聞きしませんでした。山田錦の品の良さを生かすためだったのでしょうか? 

一般的に生酛系のお酒は速醸より酸が高いのは、酒母の段階では速醸の場合は酸度が7で、生酛系では酸度が10位を狙って作るので、醪の段階で速醸は酸度が1.2~1.4で、生酛系では酸度は1.7~2.0になるそうです。乳酸を添加しない生酛系の酒母では乳酸がしっかり出ているのを確認する必要があるので、酸がどうしても高めにせざるを得ないようです。 

4.杉錦 玉栄山廃純米酒 

Dsc_0879このお酒は滋賀県産の玉栄を使ったお酒で、玉栄は心白の発生率が低く、硬いお米なので、味が濃く雑味を出やすいので、吟醸系には向いておらず、熟成には向いているので、味をしっかり出せる生酛系のお酒に適しているそうです 

この蔵では2004年から生酛系の造りを初めて行ったのですが、最初のトライが玉栄を使った山廃で、その時のお酒がダンチュウで普段のみの純米酒のベスト1として評価されてあっという間に売り切れたそうです。ですから、その後はずっと玉栄のお酒は山廃つくりをしていて、今後変更するつもりはないそうです。 

生酛系には山廃と生酛の2種類がありますが、生酛は小さなたらいに酛を入れて櫂で擦る酛擦り作業をするのに対して、山廃は酛を酒母タンクに一緒にいれて、電動ドリルでかき混ぜてとかす方法を取っているそうですが、味わいは基本的には同じだそうです。どちらが良い味を出せるかは出来次第ですが、生酛の方が早湧きが起きにくいので、失敗が少ないそうです。でもうまくいった場合は生酛の方が時間がかかっているだけ、良くなるかなという思い入れがあるそうです。 

玉栄の精米度は65%で、酵母は泡なし7号酵母だそうで、酒質はアルコール度は15~16度、日本酒度+10、酸度1.6で、飲んでみると日本酒度の割には辛く感じないで、軽い酸味を感じる飲み飽きしないお酒になっていました。不思議なことにお燗をしたら甘みがぐっと出てきたのには驚かされました。 

杉井さんのお話では今回のお酒は1年熟成しているけど、貯蔵温度が低かったので、もう少し熟成した方が良いと思うとのコメントをいただきました。 

5.杉錦 菩提酛 

Dsc_0881江戸時代に安定した酒母を作る方法として生酛が開発されましたが、その前は菩提酛と言われる方法が使われていました。提酛は平安時代後期に奈良県の菩提山正暦寺で開発された方法です。 

その方法は変わったやり方で、新酒を作るのに残暑の暑い日を選び、いかきという籠の中に生米9割、蒸米1割の比率で入れて水の中に3日間浸しておくと酸性で泡立った「そやし水」ができます。この水を仕込水として使って麹や蒸米を投入してお酒を造るやり方です。このそやし水は乳酸菌が造った乳酸が多く含まれた水で、気温の高い時期の方が乳酸菌が良く増殖して素早く乳酸ができるからいいそうです。  

この方法は江戸時代になって水酛と呼ばれて広く使われるようになったようですが、安定性が悪く、混入する微生物の種類によって酒質が大きく変わる欠点がありましたので、生酛ができてから次第に衰退したようです。  

菩提酛はは昭和の時代になって日本酒の醸造教科書からなくなり、今まで詳しいことがわかなかったようですが、1996年に奈良県工業技術センターと奈良県内の醸造元が菩提酛研究センターを立ち上げて、研究を重ね1999年に菩提酛を使った醸造に成功したのです。 

杉井さんは勉強家で好奇心旺盛の方ですから、この菩提酛を使ってお酒を造ってみようと思い立ち、菊姫が復活出版をした酒造教科書の一つの「杜氏醸造要訣」に詳しい記述があったので、それを基に試験をして見事に成功させました。その方法はホームページに書いてありましたのでそれを載せておきます。杉井さんのお話では蔵内で菩提酛を立てて、これを使った醪から醸造しているのは千葉県の五人娘と杉錦だけではないかとのことでした。 

その造り方ですが一合ほどの炊いた飯と一掴みの麹を布の袋に入れて一斗ほどの水に漬けます。この時、酛の掛米にする白米を生のまま一緒に水に入れます。7日くらい放置しておくと軟らかな飯は自然に溶け出して乳酸菌が繁殖して水はすっぱくなり、自然に酵母菌も生えてきます。そこで漬けておいた白米を取り出して蒸し、麹とこのすっぱい水を加えて酛を仕込みます。乳酸により雑菌の繁殖は抑えられ自然に繁殖した酵母はすぐに醗酵し始めます。酸とアルコールが蓄積されて仕込み後10日ほどで酛ができあがります。この酛を使って通常の3段仕込みを行います。 

他の蔵の菩提酛は少し甘めに作るのですが、杉井さんは糖分を抑えた辛口に仕上げたのはワインのように酸味があって糖分が少なくアルコール度数を下げたお酒を狙ったようです。原酒はアルコール度数が19%、酸度が3.0もあったそうですが、割り水をして、アルコール度数13~14度、日本酒度+10、酸度19というお酒にしています。お米は誉富士70%精米、酵母は無添加です。 

今回飲んだお酒は2015BYで1年半熟成したもので、飲んでみるとあたりが柔らかく、そんなに辛く感じない飲みやすいお酒でした。お食事と一緒に飲むにはスイット呑めてしまいますね。 

6.杉錦 生酛純米酒 八十八(やそはち) 

Dsc_0883このお酒は明治時代の酒をイメージして作ったお酒で、精米度を約88%にして生酛作りしたお酒です。 

明治時代は精米技術がなく、生酛造りで温度の高い状態で醸造していたので、日本酒度は+17、酸度は4~5くらいだったと思われます。昔の酒には現代のお酒とは異なる味わいの良さや深さがあったのではないかと思ったのが、このお酒を造った理由だそうです。 坂口先生の本には明治時代の金賞受賞酒の日本酒度は+10で酸度は2.7であったことが書いてあります。

お米は麹米は静岡県産誉富士70%精米、掛米は静岡県産ひとめぼれ90%精米なので、八十八と名前を付けたのでしょう。酵母は協会701号の純米酒です。昔は清酒はすべて純米酒だたtのですよね。 

出来上がった酒質はアルコール分13~14度、日本酒度+17、酸度2.0でした。この原酒はアルコール分は19度、酸度は3.0で割り水してこの値になっています。このままではすごく辛くてのめないのですが、室温で1年以上熟成させると甘みが出て、丸みも感じるようになるそうです。このお酒は2014BYのお酒なので、2年以上の熟成をしています。 

実際に飲んでみると穀物的な香りがするけれども、普通のお酒のような甘さはなく、アルコール分が低いので酔ってからも飲める飲み飽きしないおになっていました。昔の人も割り水をして飲んでいたのかな? 

7.杉錦 山廃純米 天保13年 

Dsc_0888_2このお酒は蔵の創業年の天保13年という名前を付けたお酒で、安価な一般米を使った純米酒だけど昔ながらのお酒の良さを持っているお酒を狙ったものです。 

具体的にはお米は麹米は静岡県産ひとめぼれ70%精米、掛米は静岡県産あいちのかおり78%、酵母は協会7号を使った純米酒です。一言でいえば、アルコール度数を上げた辛口で、酸度の高いお酒ですが、 醸造年度で日本酒度は違っているようです。年々色々と試されているんではないかと思います。

出来上がったお酒の酒質は2015年度醸造のもので、アルコール分15~16度、日本酒度+9、酸度2.6でした。 

冷えたまま飲んでみると軽い熟成の香りがして、ちょっと酸っぱいドライなお酒ですが、温度が上がってくると甘みを感じだし、良いバランスとなってきます。酸味が強いので焼肉に合わせると良いと思います。お燗をするとしっかりした味を感じながらソフトな柔らかさを感じるお酒になります。これは冷やして飲むお酒ではありませんね。 冷えているとただ酸っぱいお酒です。

この蔵の熟成はすべて1回火入れの瓶貯蔵で行っています。一般的には吟醸酒で香りを大事にするお酒は1回火入れで貯蔵しますが、一般酒は1回火入れしたお酒をタンク貯蔵して、瓶詰めする前にもう1回火入れするようです。 

8.純米 本みりん 飛鳥山 

Dsc_0906このみりんは静岡県で生産されている唯一の本みりんで、江戸時代に確立されたみりん本来の製法に従って復刻製造した本みりんです。原料にはもち米と米麹と米から作った焼酎を使うので、普通のみりんのように水飴や醸造用糖分や醸造用アルコールは使いません。従って普通のみりんの倍の価格がします。 

その製法は日本酒とはだいぶ違っていて、蒸したもち米に米麹をまぶし、冷やしてから米焼酎と一緒にタンクに入れて約2か月間発酵させます。こうしてできた熟成液を袋に入れて槽搾りで絞れば完成です。ろ過や火入れはしません。 

飲んでみると、濃厚だけれども自然で深い甘みをもち、フルーティで後味がすっきりする味わいでした。でもアルコール度数は日本酒と同じ14~15度もあるので、要注意です。 

以上でこの会で飲んだお酒の紹介を終わります。 

最後に杉井さんの酒について、全体を通じて感じたことを述べてみます。杉井さんはお酒造りに研究熱心でかつ好奇心が旺盛なので、自分で思いついたことをどんどん実行してしまう方だと思いますが、単なる思い付きではなく、裏打ちされたしっかりしたお考えを持っているように思えます。 

吟醸造りに関しては静岡県の先生であった河村傳兵衛さんの教えをきちっと学び、それを身に着けるだけでなく自分なりのお酒に仕上げていく技術と姿勢を感じました。また、今流行りの吟醸酒を造るだけでは満足せず、日本が昔から育ててきた日本酒古来の酒造りの手法を使うことを積極的にチャレンジし、菩提酛、生酛、山廃のお酒を造ってきましたが、凄いのはこの技術で今風の味のお酒を造るのではなく、昔のお酒の味を再現することにチャレンジされたのには驚かされました。失敗したら売れないお酒ができてしまう可能性があると思いますが、熟成の技術と組み合わせることにより、なんとなるとの自信があったものと思います。 

この杉井さんの考えのにはもっと先を見たお考えがあるように思えました。それは赤ワインの世界を日本酒で実現しようと考えておられるのだと思います。高級な赤ワインは味わいが奥深くて、良いものを飲むと何とも言えないほどの幸せ感を与えるお酒になると思っている人は多いと思います。その赤ワインは酸味が強く糖分がほとんどないお酒ですが、ブドウの持つ独特の成分と熟成の技術により醸し出されるものであることを杉井さんは良く知っておられるので、日本酒の場合も酸が多くて糖分の少ないお酒を熟成させることにより赤ワインに近いお酒を実現しようとしているように感じました。 

鯵の深みという点では、まだまだ道半ばと言えますが、きっと杉井さんならいずれか達成できる日が来るのではないかという期待があります。 

大変難しい課題かも知れませんが、ぜひ実現させてもらいたいものですね 

最後に「あふぎ」のママと杉井さんの2ショットをお見せします。いい雰囲気でしょう。 

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いつもお料理の最後に作っていただく静岡おでんをお見せします。
とてもおいしいですよ。

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杉錦の生酛系のお酒は赤ワインをイメージしています

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先日調布市の仙川にある日本酒バー「あふぎ」で静岡県の杉井酒造の杉井社長をおよびして杉錦のお酒を楽しむ会がありましたので、参加してきました。「あふぎ」は十数人しか入れないとても小さなお店ですが、ママの板垣さんが、静岡県の藤枝市出身で静岡県のお酒が大好きで去年この地にお店を構えてから、静岡県のお蔵さんをお招きして、時々日本酒の会を開いていまして、今回は第3回目だそうです。 

前回の志田泉のお酒のことやお店のことならば下記のブログを見てください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-c472.html 

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今回は杉錦を醸している杉井酒造の社長兼杜氏の杉井均乃介さんをお呼びしての会です。僕は最近静岡のお酒には大変興味を持っていて、昔は毎年東京の如水会館で行われる静岡県の地酒祭りに行っていたのですが、それでは本当の静岡のお酒が判らないと、2017年には浜松市のオークラアクトシティホテル浜松で行われ地酒祭りに行って静岡のお酒を勉強してきたほどです。その時のことは下記のブログに書いてありますので、興味があればご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-7f5e.html 

そのブログで最初に取り上げたのは小夜衣を醸している森本酒造の森本社長で、次に紹介したのが杉錦の杉井社長です。この二つの蔵はとても小さな蔵で、静岡県のお酒造りを指導してきた河村伝兵衛さんが指導してき静岡県のお酒とはだいぶ違うお酒を造っていますが、お二人とも静岡県の蔵人では知らない人はいないほど有名な方です。その杉錦のお酒を、杉井さんの言葉で説明を受けながら飲める機会を逃してはなるまいと、勇んで参加しました。ところが当日は僕の勘違いで仙川駅を通り過ぎて調布駅まで行ってしまい、慌てて仙川駅まで戻るというチョンボをしてしまい、開宴に10分も送れることになりました。前にお邪魔したことがあるので安心していた油断ですね。 

静岡県の酵母や河村伝兵衛のことを知りたい方は下記のブログを読んでください。静岡県のお酒や酵母のことが良く判ると思います。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-27e3.html 

では早速、杉井酒造と杉井さんの紹介をしましょう。杉井酒造は静岡県藤枝市小石川町にある蔵で、藤枝駅から約1㎞程焼津の方の戻った瀬戸川の近くにあります。創業は天保13年ですから、江戸時代末期に杉井家本家から分離した杉井才助さんが今の地で商いを始めたのが最初で、酒造りを始めたのは明治に入ってからのようです。 

明治の中頃までは「亀川」、大正期は「杉政宗」という銘柄の酒を造っていて、「杉錦」を始めたのは昭和に入ってからのようです。そして現在の杉井均乃介さんは6代目に当たるそうです。 

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杉井さんは昭和32年(1957年)生まれで、今年60歳になられますが、静岡市の高校を卒業後、東京農業大学に入学され、卒業後24才で蔵に戻って酒造りを始めました。最初の2年は東京の醸造試験所で研修をされたのち、蔵におられた南部杜氏と一緒に酒造りをしながら勉強してきたそうです。それだけでなく静岡県の工業技術センターの主任研究員の河村伝兵衛さんから吟醸造りについて色々と指導を受けたそうで、それがとても役になっているそうです。 

1994年7月に杉井酒造の社長になられましたが、まだその時は杜氏にはなっておりません。その頃、理由はお聞きしませんでしたが、杉井酒造の杜氏が森本酒造の杜氏も兼務していたことがあり、森本さんからお前の蔵の杜氏の酒はよくないと言われて、森本さん自らが杜氏となって造りを始めたので、自分もそうしようと思い杜氏になったのが2000年だそうで、酒造りの面では森本さんと同じ年に始めたことになるそうです 

それで杉井さんはどんなお酒を醸し出しているのでしょか。杉井さんが杜氏になったすぐは、お酒の味が変わったと言われたそうですが、3年努力した結果全国新酒鑑評会で3年連続金賞を受賞することができ、お客様の信頼を回復したのですが、なにか納得がいかない気がしていたそうです。 

今は吟醸造りが良い酒を造る基本という風潮があるようですが、吟醸造りだけがすべてではない、自分らしい切り口を考えようと思ったそうです。その時出会ったのが東京大学の農学博士の「坂口謹一郎」さんの本の「日本の酒」で、日本の長い稲作と食文化の歴史と共に歩んできた清酒は「日本人が大昔から育て上げてきた一大芸術作品である」という言葉だったそうです。 

その本の中で、日本の酒造りはうまい酒を作りだすための先人の知恵と工夫が凝縮されていて米と水、麹菌、酵母、乳酸菌などの自然の働きによって醸し出されることが書かれてあり、昔の技術を使えば深い味わいの酒が造れる可能性があるに違いないと、昔の造りの勉強を始めたそうです。そうしてたどり着いたのが「生酛・山廃」と「熟成」だったそうです。現在の生産高は400石位しかありませんが、全体の85%を生酛・山廃つくりで熟成するようになっています。 

でも吟醸造りのお酒の研究をやめたわけはありません。その証拠に今年の(平成28年醸造度)の静岡県清酒鑑評会で、純米吟醸部門と、吟醸部門の両方でナンバーワンとなる知事賞を獲得したからでも判ります。本日はそのお酒が飲めることなので、とても楽しみです。このお酒は全国新酒鑑評会にも出したのですが、金賞ではなく、入賞だったそうですが、金賞を取るためには、カプロン酸エチルの香りが出る酵母をつかって、マニュアル通り造れば誰でも金賞が取れる時代になっているので、あまり価値がなくなっているかもしれないとのことでした。 

この蔵の水は発酵力の強い中硬水だそうですから。生酛・山廃の造りには向いていたのでしょうね。もちろん杉井さんは知っていたからおやりになったなだと思います。 

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ではこの会で飲んだお酒を順次説明していきましょう。

1.誉富士 生酛純米酒 しずおか地元研究会20週記念酒
 

Dsc_0870_2このお酒は鈴木真弓さんが主宰する「しずおか地酒研究会」の20周年記念として杉井さんが造った生酛純米酒です。一般的に静岡のお酒は酢酸イソアミル系のさわやかな香りがして、酸が少なく日本酒度が高くすっきりした味わいのお酒が多いのですが、静岡らしい味を保った生酛を造ってもらいたいと依頼されて作ったお酒だそうです。 

具体的には生酛は湧き遅れをしないように総破精で立ち上げて、醪の麹は突き破精にした吟醸造りをするそうです。

お米は静岡県産の誉富士で、麹米が70%精米、掛米60%精米で酵母はHD-1で1回火入れの純米酒酒質は、アルコール分15.4度、日本酒度+8.5、酸度1.6のお酒となりました。 

飲んでみると、酸味は穏やかで、べたついた甘みはなく口に含んだ時にうまみがポット広がり後味でキレを感じるとともに、ほのかな酢酸イソアミル系の香りがするお酒になっていて、生酛とはわからないお酒に仕上がっていました。でも生酛らしい深みを感じる静岡流生酛酒と言えるかもしれませんね。 

2.杉錦 純米大吟醸 知事賞受賞記念酒 

Dsc_0872このお酒は出品酒として造ったお酒で、お米は兵庫県産の山田錦40%精米、酵母はHD-1を使用した純米大吟醸酒です。このお酒は出品酒原酒を少し加水して作った出品記念酒です。 

酒質はアルコール分15.5度、日本酒度+0、酸度1.5です。原酒の酸度は1.7もあったので、賞は取れないと思ってだしたら、全国新酒鑑評会では入賞、静岡県清酒鑑評会では純米吟醸部と吟醸部の2つの部門とも1位の知事賞を取ることになったそうです(出品酒は原酒で出しています) 

吟醸酒は純米大吟醸酒にわずかアルコールを添加しただけなのでほとんど同じものだそうです。 

賞に至った裏話を聞きました。静岡の審査では出品されたお酒を4回きき酒をして決めるそうで、4回目の最後に残った2つお酒(杉錦と磯自慢)を投票で決まったそうです。おめでとうございます。 

飲んだ印象は香りは意外に高くなく、甘みと酸味のバランスが良くてきれいの飲めるお酒で、生酛の味を知っている僕にとっては少し物足りない感じでした。 原酒のお酒を飲みたかったな。

3.杉錦 生酛純米吟醸 

Dsc_0876このお酒は兵庫県の山田錦60%精米で、掛米を48%精米を使った純米吟醸で、酵母はHD-1ですが、去年までは山田錦50%精米でやって純米大吟醸としていたものを今年は変えたので、純米吟醸としたそうです。それは生酛の酒母造りは精米度が悪いほうがやりやすいので、60%にしたそうです。 

酒質はアルコール分15~16度、日本酒度+5、酸度1.4でしたが、飲んでみると生酛らしいしっかりした味わいで、甘みもそこそこ感じられるお酒でした。それは酸度が1.5と比較的少なかったからだと思います。どうしてこんなバランスのお酒にしたのかはお聞きしませんでした。山田錦の品の良さを生かすためだったのでしょうか? 

一般的に生酛系のお酒は速醸より酸が高いのは、酒母の段階では速醸の場合は酸度が7で、生酛系では酸度が10位を狙って作るので、醪の段階で速醸は酸度が1.2~1.4で、生酛系では酸度は1.7~2.0になるそうです。乳酸を添加しない生酛系の酒母では乳酸がしっかり出ているのを確認する必要があるので、酸がどうしても高めにせざるを得ないようです。 

4.杉錦 玉栄山廃純米酒 

Dsc_0879このお酒は滋賀県産の玉栄を使ったお酒で、玉栄は心白の発生率が低く、硬いお米なので、味が濃く雑味を出やすいので、吟醸系には向いておらず、熟成には向いているので、味をしっかり出せる生酛系のお酒に適しているそうです 

この蔵では2004年から生酛系の造りを初めて行ったのですが、最初のトライが玉栄を使った山廃で、その時のお酒がダンチュウで普段のみの純米酒のベスト1として評価されてあっという間に売り切れたそうです。ですから、その後はずっと玉栄のお酒は山廃つくりをしていて、今後変更するつもりはないそうです。 

生酛系には山廃と生酛の2種類がありますが、生酛は小さなたらいに酛を入れて櫂で擦る酛擦り作業をするのに対して、山廃は酛を酒母タンクに一緒にいれて、電動ドリルでかき混ぜてとかす方法を取っているそうですが、味わいは基本的には同じだそうです。どちらが良い味を出せるかは出来次第ですが、生酛の方が早湧きが起きにくいので、失敗が少ないそうです。でもうまくいった場合は生酛の方が時間がかかっているだけ、良くなるかなという思い入れがあるそうです。 

玉栄の精米度は65%で、酵母は泡なし7号酵母だそうで、酒質はアルコール度は15~16度、日本酒度+10、酸度1.6で、飲んでみると日本酒度の割には辛く感じないで、軽い酸味を感じる飲み飽きしないお酒になっていました。不思議なことにお燗をしたら甘みがぐっと出てきたのには驚かされました。 

杉井さんのお話では今回のお酒は1年熟成しているけど、貯蔵温度が低かったので、もう少し熟成した方が良いと思うとのコメントをいただきました。 

5.杉錦 菩提酛 

Dsc_0881江戸時代に安定した酒母を作る方法として生酛が開発されましたが、その前は菩提酛と言われる方法が使われていました。提酛は平安時代後期に奈良県の菩提山正暦寺で開発された方法です。 

その方法は変わったやり方で、新酒を作るのに残暑の暑い日を選び、いかきという籠の中に生米9割、蒸米1割の比率で入れて水の中に3日間浸しておくと酸性で泡立った「そやし水」ができます。この水を仕込水として使って麹や蒸米を投入してお酒を造るやり方です。このそやし水は乳酸菌が造った乳酸が多く含まれた水で、気温の高い時期の方が乳酸菌が良く増殖して素早く乳酸ができるからいいそうです。  

この方法は江戸時代になって水酛と呼ばれて広く使われるようになったようですが、安定性が悪く、混入する微生物の種類によって酒質が大きく変わる欠点がありましたので、生酛ができてから次第に衰退したようです。  

菩提酛はは昭和の時代になって日本酒の醸造教科書からなくなり、今まで詳しいことがわかなかったようですが、1996年に奈良県工業技術センターと奈良県内の醸造元が菩提酛研究センターを立ち上げて、研究を重ね1999年に菩提酛を使った醸造に成功したのです。 

杉井さんは勉強家で好奇心旺盛の方ですから、この菩提酛を使ってお酒を造ってみようと思い立ち、菊姫が復活出版をした酒造教科書の一つの「杜氏醸造要訣」に詳しい記述があったので、それを基に試験をして見事に成功させました。その方法はホームページに書いてありましたのでそれを載せておきます。杉井さんのお話では蔵内で菩提酛を立てて、これを使った醪から醸造しているのは千葉県の五人娘と杉錦だけではないかとのことでした。 

その造り方ですが一合ほどの炊いた飯と一掴みの麹を布の袋に入れて一斗ほどの水に漬けます。この時、酛の掛米にする白米を生のまま一緒に水に入れます。7日くらい放置しておくと軟らかな飯は自然に溶け出して乳酸菌が繁殖して水はすっぱくなり、自然に酵母菌も生えてきます。そこで漬けておいた白米を取り出して蒸し、麹とこのすっぱい水を加えて酛を仕込みます。乳酸により雑菌の繁殖は抑えられ自然に繁殖した酵母はすぐに醗酵し始めます。酸とアルコールが蓄積されて仕込み後10日ほどで酛ができあがります。この酛を使って通常の3段仕込みを行います。 

他の蔵の菩提酛は少し甘めに作るのですが、杉井さんは糖分を抑えた辛口に仕上げたのはワインのように酸味があって糖分が少なくアルコール度数を下げたお酒を狙ったようです。原酒はアルコール度数が19%、酸度が3.0もあったそうですが、割り水をして、アルコール度数13~14度、日本酒度+10、酸度19というお酒にしています。お米は誉富士70%精米、酵母は無添加です。 

今回飲んだお酒は2015BYで1年半熟成したもので、飲んでみるとあたりが柔らかく、そんなに辛く感じない飲みやすいお酒でした。お食事と一緒に飲むにはスイット呑めてしまいますね。 

6.杉錦 生酛純米酒 八十八(やそはち) 

Dsc_0883このお酒は明治時代の酒をイメージして作ったお酒で、精米度を約88%にして生酛作りしたお酒です。 

明治時代は精米技術がなく、生酛造りで温度の高い状態で醸造していたので、日本酒度は+17、酸度は4~5くらいだったと思われます。昔の酒には現代のお酒とは異なる味わいの良さや深さがあったのではないかと思ったのが、このお酒を造った理由だそうです。 坂口先生の本には明治時代の金賞受賞酒の日本酒度は+10で酸度は2.7であったことが書いてあります。

お米は麹米は静岡県産誉富士70%精米、掛米は静岡県産ひとめぼれ90%精米なので、八十八と名前を付けたのでしょう。酵母は協会701号の純米酒です。昔は清酒はすべて純米酒だたtのですよね。 

出来上がった酒質はアルコール分13~14度、日本酒度+17、酸度2.0でした。この原酒はアルコール分は19度、酸度は3.0で割り水してこの値になっています。このままではすごく辛くてのめないのですが、室温で1年以上熟成させると甘みが出て、丸みも感じるようになるそうです。このお酒は2014BYのお酒なので、2年以上の熟成をしています。 

実際に飲んでみると穀物的な香りがするけれども、普通のお酒のような甘さはなく、アルコール分が低いので酔ってからも飲める飲み飽きしないおになっていました。昔の人も割り水をして飲んでいたのかな? 

7.杉錦 山廃純米 天保13年 

Dsc_0888_2このお酒は蔵の創業年の天保13年という名前を付けたお酒で、安価な一般米を使った純米酒だけど昔ながらのお酒の良さを持っているお酒を狙ったものです。 

具体的にはお米は麹米は静岡県産ひとめぼれ70%精米、掛米は静岡県産あいちのかおり78%、酵母は協会7号を使った純米酒です。一言でいえば、アルコール度数を上げた辛口で、酸度の高いお酒ですが、 醸造年度で日本酒度は違っているようです。年々色々と試されているんではないかと思います。

出来上がったお酒の酒質は2015年度醸造のもので、アルコール分15~16度、日本酒度+9、酸度2.6でした。 

冷えたまま飲んでみると軽い熟成の香りがして、ちょっと酸っぱいドライなお酒ですが、温度が上がってくると甘みを感じだし、良いバランスとなってきます。酸味が強いので焼肉に合わせると良いと思います。お燗をするとしっかりした味を感じながらソフトな柔らかさを感じるお酒になります。これは冷やして飲むお酒ではありませんね。 冷えているとただ酸っぱいお酒です。

この蔵の熟成はすべて1回火入れの瓶貯蔵で行っています。一般的には吟醸酒で香りを大事にするお酒は1回火入れで貯蔵しますが、一般酒は1回火入れしたお酒をタンク貯蔵して、瓶詰めする前にもう1回火入れするようです。 

8.純米 本みりん 飛鳥山 

Dsc_0906このみりんは静岡県で生産されている唯一の本みりんで、江戸時代に確立されたみりん本来の製法に従って復刻製造した本みりんです。原料にはもち米と米麹と米から作った焼酎を使うので、普通のみりんのように水飴や醸造用糖分や醸造用アルコールは使いません。従って普通のみりんの倍の価格がします。 

その製法は日本酒とはだいぶ違っていて、蒸したもち米に米麹をまぶし、冷やしてから米焼酎と一緒にタンクに入れて約2か月間発酵させます。こうしてできた熟成液を袋に入れて槽搾りで絞れば完成です。ろ過や火入れはしません。 

飲んでみると、濃厚だけれども自然で深い甘みをもち、フルーティで後味がすっきりする味わいでした。でもアルコール度数は日本酒と同じ14~15度もあるので、要注意です。 

以上でこの会で飲んだお酒の紹介を終わります。 

最後に杉井さんの酒について、全体を通じて感じたことを述べてみます。杉井さんはお酒造りに研究熱心でかつ好奇心が旺盛なので、自分で思いついたことをどんどん実行してしまう方だと思いますが、単なる思い付きではなく、裏打ちされたしっかりしたお考えを持っているように思えます。 

吟醸造りに関しては静岡県の先生であった河村傳兵衛さんの教えをきちっと学び、それを身に着けるだけでなく自分なりのお酒に仕上げていく技術と姿勢を感じました。また、今流行りの吟醸酒を造るだけでは満足せず、日本が昔から育ててきた日本酒古来の酒造りの手法を使うことを積極的にチャレンジし、菩提酛、生酛、山廃のお酒を造ってきましたが、凄いのはこの技術で今風の味のお酒を造るのではなく、昔のお酒の味を再現することにチャレンジされたのには驚かされました。失敗したら売れないお酒ができてしまう可能性があると思いますが、熟成の技術と組み合わせることにより、なんとなるとの自信があったものと思います。 

この杉井さんの考えのにはもっと先を見たお考えがあるように思えました。それは赤ワインの世界を日本酒で実現しようと考えておられるのだと思います。高級な赤ワインは味わいが奥深くて、良いものを飲むと何とも言えないほどの幸せ感を与えるお酒になると思っている人は多いと思います。その赤ワインは酸味が強く糖分がほとんどないお酒ですが、ブドウの持つ独特の成分と熟成の技術により醸し出されるものであることを杉井さんは良く知っておられるので、日本酒の場合も酸が多くて糖分の少ないお酒を熟成させることにより赤ワインに近いお酒を実現しようとしているように感じました。 

鯵の深みという点では、まだまだ道半ばと言えますが、きっと杉井さんならいずれか達成できる日が来るのではないかという期待があります。 

大変難しい課題かも知れませんが、ぜひ実現させてもらいたいものですね 

最後に「あふぎ」のママと杉井さんの2ショットをお見せします。いい雰囲気でしょう。 

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いつもお料理の最後に作っていただく静岡おでんをお見せします。
とてもおいしいですよ。

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2017年7月20日 (木)

長陽福娘のお酒は気取るところのない酒でした。

八方園の槐樹で行われる蔵元さんと日本酒を飲む会は今回で19回目になりますが、参加してきました。今回は山口県の萩市にある岩崎酒造の社長の岩崎喜一郎さんをお迎えしての会でした。岩崎酒造は生産高が300石と非常に小さな蔵なので、東京で飲む機会はあまりありませんでしたが、山口県の酒造組合が主催するやまぐち地酒維新の会では何回か呑んだことがあり、とても良いお酒を造る蔵だなと思っていましたので、今回はそのお酒をじっくり堪能しようと思って参加したものです。
 
まずは蔵の紹介をしたいと思います。この蔵は中国山地より流れ出た阿武川が萩市の海に注ぐ前で阿武川と橋本川に分かれることによって作られた三角州の中央部にあります。明治34年に初代当主の岩崎小左衛門が現在の場所とは違うところで酒造りを始めたそうですが、その後、近くで酒を造っていた酒蔵を引きついて現在の場所に移ったようです。
 
蔵は萩市のど真ん中にあるという話なので、グーグルマップで調べたら、町の中央の田町商店街のアーケードの中にありました。日本中の蔵の中でもアーケードの中に蔵があるのは珍しいと思いグーグルから写真をお借りしましてので、ご覧ください。
 
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写真を見ていただくと確かにアーケードの中にありますが、店構えをよく見ると蔵の面影があります。この店口の奥が造りをしている蔵なのでしょうね。 

お酒造りにはきれいな水が欠かせないと言いますが、社長にお聞きしたらここは阿武川の伏流水が出るそうで、硬度60くらいの軟水で酒造りには向いているそうです。この地は海と山に囲まれた古くから漁業の盛んな土地であったことから、その土地の食べ物に寄り添うような酒造りには適しているそうです。
 
造っているお酒の銘柄は長陽福娘、萩毛利、はぎなどですが、メインの銘柄は長陽福娘です。その名前の由来は創業当時の蔵元の家に女子が続けて誕生したことから「福々しい良い子の育つように」との思いで福娘を、そして山口県の名を表す長陽地区と、お酒がおいしくなる重陽の節という意味をかけ合わせて長陽福娘と命名したそうです。
 
蔵元は岩崎家で引き継がれて、現在は5代目で岩崎喜一郎さんが2010年に社長になられています。
 
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喜一郎さんは1964年7月に萩市に生まれていますから、現在53才です。県立萩高校を卒業され、東京の芝浦工業大学の機械工学科に進学されました。大学卒業後は滝野川の醸造試験所で勉強された後、お酒の卸売り店の太田商店に勤務され、26才の時に蔵に戻っています。 

蔵には熊毛杜氏がおられて酒造りを教わってきたそうですが、その杜氏も高齢になになったので、2012年から自らが杜氏となって現在に至っています。ですから喜一郎さんは社長兼杜氏の蔵元です。
 
どんなお酒造りを目指しておられるのかをお聞きしたら、「優しいお酒」で飲んでこれは凄いというようなお酒ではなく、飲んでいいる人の気持ちに寄り添うような食中酒を目指しているそうです。
 
取り扱っているお米は昔は五百万石が多かったそうですが、今では山口県産や萩産の山田錦、西都の雫、岡山県産の雄町、広島県産の八反錦に絞っているそうです。その中でも山田錦と西都の雫に力を入れているようです。
 
それでは早速飲んだお酒の紹介をしましょう。今回は5種類のお酒を堪能しました。いつもよりは数が少ないけれども、岩崎さんが選りすぐったものです。
 
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側のお酒から 

1.長陽福娘 山田錦 斗瓶囲い 大吟醸
 
このお酒は山田錦35%精米の袋吊り斗瓶囲いの大吟醸で、いわゆる出品酒用に作ったお酒で、市販されていないお酒です。アルコール度数は17~18度、日本酒度は+2.5、酸度は1.5のお酒で、口に含むと軽いカプロン酸エチルの香りが漂ったお酒でしたので、酵母をお聞きすると協会18号と熊本酵母(9号系)のブレンドだそうです。
 
飲んでみると口に含んだ時のふくらみが少し足りないけど、後味で少し辛みを感じながら消えていくお酒でしたが、出品酒にしてはちょっと物足りない感じがしました。でも温度が上がってくるとしっかりふくらみが出てきましたので、冷やし過ぎるとその良さが出ないような気がしました。去年の山田錦は溶けが悪かったので、どの蔵も味乗りが悪く少し軽めの味わいになったようです。
 
2.西都の雫 純米吟醸
 
このお酒は山口県産の西都の雫40%精米の純米酒で、アルコール度数は15~17度、日本酒度+3.5、酸度1.5のお酒です。この精米度ならば純米大吟醸と言っていいはずなのに、どうしてそうしなかったのかは説明はありませんでした。酵母は1番のお酒と同じ協会18号と熊本酵母のブレンドです。 
 
飲んでみると1番のお酒と全く同じ香りがするし、味わいも大変似ていました。でも温度が上がってくると、山田錦の方が膨らんできて、西都の雫の方が軽い感じがしました。杜氏のお話では西都の雫の方が硬いお米なので味がストレートな甘みになってしまうそうです。
 
このお酒はインターネットで調べてもみつかりませんでした。きっと特別に山田錦に変えて西都の雫を使ったらどうなるかを試験するためのお酒だったのではないでしょうか。
 
西都の雫は山口県が開発した酒造好適米で、山口県の穀良都というお米と山田錦の流れをくむ西海222号をかけ合わせてできたお米です。山口市が西の京都と言われることにちなんだ西都に淡麗で切れの良いお酒をイメージして西都の雫と命名されたそうです。
 
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3.長陽福娘 山田錦 直汲み 純米吟醸
 
このお酒は萩市で取れた山田錦を使った純米吟醸酒で、精米度は50%、酵母は山口9Eです。山口9Eは9号系の酵母をベースに純米酒用として山口県が開発した酵母で、西都の雫との相性がとてもいいそうです。
 
酒質は日本酒度が5.5、酸度1.8、アルコール度数16~17のお酒で、搾ったお酒をそのまま瓶に詰めた直汲み生酒です。飲んでみると9号系でありながら、さわやかなイソアミル系の香りがするお酒で、自然な甘みが程よい酸味とまじりあって、ぴちぴちしているけどすっきりした味わいのお酒でした。個人的には少し寝かせてから飲んでみたい気もしました。
 
4.西都の雫 夏純米 薄にごり
 
このお酒は西都の雫のお酒が後味に少し苦みが出ることを逆手に取り、夏酒用として作ったお酒で、西都の雫60%精米、酵母は山口9Eで、日本酒を7.5、酸は少し抑え気味の1.35の薄にごりの純米生酒です。 
 
普通夏酒はアルコール度数を下げて飲みやすくしたお酒が多いのですが、このお酒は逆にアルコール度数を上げ、澱を少し含ませることにより甘みを出しながら、日本酒度は辛口にしてすっきり感を出す狙いのようです。
 
飲んでみるとすっきりしていながら、適度な旨みを感じるバランスがとても良いお酒でした。色々なものと合わせられるお酒でした。1升瓶で2700円(税抜き)ですので、お買い得だとおもいました。

5.重陽福娘 辛口純米酒 無濾過生
 
Dsc_0219このお酒はお燗酒として出されたお酒で、お米は萩市の山田錦で、精米度は60%アルコール度数が18~19度の生原酒です。酵母は9号の泡あり酵母を使っていて、日本酒度は+8、酸度は1.65のお酒はした。

飲んでみると香りはそれほどないけど、口当たりが柔らかくトロットした味わいのあるおさけで、日本酒度が+8とは思えないお酒でした。辛口の酒としてはうまく作っていると思いました。

以上で飲んだお酒の紹介を終わりますが、この蔵のお酒の印象はどのお酒を飲んでもすごくうまいお酒という感じはしないけど、きちっと設計された外れのないお酒造りをしているように思えました。

ひとつ前のブログで紹介しましたが、お酒の味は造り手の性格を表すものであると新政の佐藤祐輔さんが言われたことを思い出しました。この蔵のお酒は岩崎喜一郎さんの真面目な性格がよく出たお酒だと強く感じました。

会の中で喜一郎さんに大学で機械科を卒業して何か造りに役に立ったことがありましたかとお聞きしたら、発酵の過程を分析する時に有限要素法(昔習ったけど忘れました)を使って解析したことが発酵を理解するうえで勉強になったと言われたのが印象に残りました。

喜一郎さんは酒造りに真面目に向き合ってきちっと対応する方なのだと思います。まだ杜氏になって6年目ですから、これからもっとい新しいことを切り開かれると思いますので、今後を期待していきたいと思います。

槐樹の日本酒の会はお酒だけでなく、お料理が売りで、会のお酒を事前に取り寄せ、お酒に合わせた特別な料理を作って出すことに特徴があります。

今回のメニューは以下のの通りです

1.乾杯の肴 あざく (うざくをもじってアナゴのあざく)

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2.酒有八景 

水蛸の昆布締め、枝豆ととうもろこしのゼリー寄せ

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山口産の車エビのシュウマイ

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中身の一つ一つはわかりませんでした

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3.創作寿司 鯵の棒寿司 夏ミカンの香り

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4.温物 鱧の湯引き、鱧の頭酒

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5.締め 胡麻だれつけ麵

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6.甘み みほとユイの秘密(中身は不明)

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2017年5月24日 (水)

久保田は山田錦を使っていないこと知っていましたか

白金の日本料理店の槐樹で定期的に行われている「蔵元さんと一緒に日本酒を楽しむ」に参加してきました。今回は第18回目で、新潟の銘酒の久保田を醸造している朝日酒造の営業課長の林正 之さんをお呼びしての会でした。朝日酒造は生産量3万石を越える新潟県でも有名な蔵で久保田、越州、得月、朝日山などを醸しています。特に久保田はその中でも上級のブランドですが、生産量が多いので色々な居酒屋で飲むことができるお酒です。でも一般的に呼ばれる純米大吟醸とか吟醸酒という区別よりは銘柄の万寿、千寿、百寿といった名前で区別して飲んできていましたが、その酒質を考えて飲むことはあまりなかったような気がします。 

今回は久保田だけのお酒を6種類飲むことができるので、久保田がどのような酒質のお酒なのかを勉強しようと参加したものです。あとで説明しますが、久保田には他の蔵の考え方とは一味違う造りをしていることが判りましたので、それを説明したいと思っています。お酒の説明をする前に簡単に蔵のご紹介をしておきます。 

朝日山酒造は2015年の3月に蔵見学をしたことがあり、その時の様子をブログにまとめてありますので、まずはその記事を読んでください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-ef13.html 

この記事には蔵の歴史にはほとんど触れていませんでしたので、まずはそれを紹介しましょう。ホームページを見ても昔のことはあまり紹介されていませんが、1830年に長岡市の今の地に創業したのはスタートのようで、その時の屋号が久保田屋でした。その後現在の朝日酒造になったのが大正9年の1920年だそうです。久保田の銘柄のお酒を出したのは昭和60年の1985年ですから比較的最近のことです。この時から品質管理、冷蔵管理のできる酒販店を特約店として流通網(久保田会)を築いて広く扱われるようになったようです。 

この後、新しい蔵の増築を行い、現在は下記の示すようなレイアウトの新工場が完成しています。 

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1996年に精米棟、1992に調合棟、1995年に朝日蔵、2011年に最新の松籟蔵、2012年に貯蔵棟ができたようです。久保田の千寿や百寿は松籟蔵で生産され、万寿は朝日蔵で生産されていますが、一般見学は松籟蔵しかできず、朝日蔵の見学はできないようです。(昔は朝日蔵の見学も可能だった時代もあったようです) 

今回試飲したのは次の6種類のお酒です。値段の安いほうから並べれば、千寿、生原酒、紅寿、碧寿、万寿、洗心となります。 

全部1升瓶で提供されて、試飲お前には下記のような木桶に氷を入れて用意されていました。その写真を示します。

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これらのお酒の紹介は営業課長の林正 之さんにやっていただきました。 下の写真お方が林さんです。

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早速紹介するお酒の順番に価格と酒質を紹介いたします。酵母の説明はありませんでしたが、9号系の酵母と思われます。 

1.千寿 吟醸酒 価格2430円/1升 

  麹米:五百万石50%精米、掛米:五百万石55%精米
  アルコール15%、日本酒度+5、酸度1.1
 

2.生原酒 吟醸生原酒 価格3120円/1升 

  麹米:五百万石50%精米、掛米:五百万石55%精米
  アルコール19%、日本酒度+2、酸度1.4
 

3.紅寿 純米吟醸 価格3310円/1升 

  麹米:五百万石55%精米、掛米:県産米55%精米
  アルコール15%、日本酒度+2、酸度1.2
 

4.碧寿 山廃純米大吟醸 価格5030円/1升 

  麹米:五百万石50%精米、掛米:五百万石50%精米
  アルコール15%、日本酒度+5、酸度1.2
 

5.万寿 純米大吟醸 価格8110円/1升 

  麹米:五百万石50%精米、掛米:県産米33%精米
  アルコール15%、日本酒度+2、酸度1.2
 

6.洗心 純米大吟醸 価格11000円/1升 

  麹米:たかね錦28%精米、掛米たかね錦28%精米
  アルコール15%、日本酒度+2、酸度1.2

これを見ておやっと思う人もいるでしょう。高級酒である万寿、洗心でさえ山田錦を使っていないのです。もしかしたら他の銘柄に使っているのか調べてみたら、越州は千秋楽、得月は雪の精、朝日山は新潟県の県産米で、山田錦を使っていません。これは新潟県のお米にこだわっているのか、コストを気にしているのか、造りに自信があるのかどうなんでしょうね。それではこの順番に飲んだ印象を述べていきます
 

1.千寿 

飲んでみましたが、軽い吟醸香で全体に穏やかで飲みやすい印象ですが、日本酒度が+5なので後口に辛さが残ります。全体としては新潟県お端麗辛口のバランスだと思いました。僕個人としてはアルコール度数を1度上げても最初にうまみと甘みを感じるほうが好きですね。 

2.生原酒 

このお酒は千寿の原酒でこれを加水したものが千寿だと思われます。香りは千寿より立っているので、カプロン酸エチル系の吟醸香だとわかります。飲んでみると口に含んだとたんに厚みのある味わいが広がり、とろみ感も感じます。でも生らしい若わかさも感じるけど全体的には強すぎる感じがするので、ロックにするかちょっと加水して飲むと良いかもしれません。僕は少し加水して17度くらいで飲みたい気がしました。僕の友人のUさんは1年熟成させて、ちょっと加水して飲んでいるそうです。 

林さんがちょっと面白いことを教えていただきました。生原酒は1830ml入っていて千寿より30ml多いそうです。千寿でも火入れ前は1830ml入れるそうですが、火入れして常温にすると1800mlになるとのことでした。また、僕は面白いことに気が付きました。生原酒は3120円ですが19度あるので水原料代がただとして計算すると2460円となりほぼ千寿の価格になりま。だったら生原酒を買って色々楽しんで飲むほうがおもしろいと思いました。 

3.紅寿 

千寿とアルコール度数は同じですが、日本酒度は1.2とやや甘口です。飲んでみるとこちらのほうがはっきりとした旨みを感じ全体のバランスがいいです。でも温度が上がるとざらつきを感じるので、冷やして飲むほうがいいように思えました。千寿よりはかなり価格(900円くらい)のはどうしてなのでしょうか。麹米の精米度は55%と悪く、掛米は安価な県産米を使っているのならもっと安く提供できるような気がします。この価格なら千寿のお米で純米吟醸でなくては納得できないな。味のバランスは良いのでこのお酒なら3000円を少し悪いくらいの価格にしてもらいたいです。 お店であまり知られていないのは価格の割高感ではないでしょうか。

4.碧寿 

このお酒は千寿と同じ麹米で、掛米だけを50%精米にした山廃つくりの純米大吟醸です。口に含んだ香りは千寿とは違う香りですが、よくある山廃系の香りはしません。口当たりが柔らかくいけど含んだ時には味の広がりがないけど、中盤からじわっと膨らんできますが、山廃独特の酸は感じませんでした。この口当りの柔らかさは山廃仕込みならではの乳酸の柔らかさではないかなと思いました。これをお燗にしてもらったら、あっと驚くほどふくらみが出ておいしいお酒の変身しました。碧寿を飲むならお燗がベストです。でもこれが5000円というのは高すぎますね。4000円~4500円が相場ではないかな。 

5.万寿 

久保田シリーズの最高峰の純米大吟醸ですが、このお米を見て驚きました。麹米が50%の五百万石、掛米が県産米33%だそうです。県産米は何でしょうか。なんだかわかりませんが33%まで磨ける県産米があるのでしょうか、もしかしたらたかね錦かな。でもこのお米の大吟醸で8110円とはちょっと高すぎるけど飲んでみました。 

飲んでみると確かに奇麗な味わいだけど、味わいがあって大人の落ち着きを感じました。昔はもっときれいなすっきり消えるお酒のような気がしましたが、最近変わったのかな。この味わいの秘密を聞いてみると、山廃を一部ブレンドしているとのことでしただから味わい深いのですね。今日飲んだお酒の中では一番のお気に入りですが、お米の精米度から考えると高すぎですね。僕には6500円~7000円ぐらいが適当だと思いますが、手に入りにくいことを考えると1本は買っておきたいお酒です 

6.洗心 

1升1万円以上するお酒ですが、たかね錦28%とは驚きです。蔵の2-5℃のタンクで2年間熟成をしたお酒だそうです。飲んでみると軽い熟成の香りがするまろやかなお酒でしたが、僕には高すぎるな。 

以上で久保田のお酒の紹介は終わりますが、千寿と生原酒の価格はリーズナブルですが、それ以上の高級なお酒は使っているお米の精米度から考えると、少し割高だと思います。でも山田錦を使わないでここまで味を出せるのは、さすが技術力があることを感じましたが、山田錦を使うともっとすごい酒が造れるのではと思いました。 

僕が興味を感じたお酒は生原酒、碧寿、万寿です。五百万石50%の純米吟醸を4000円くらいの価格で作ってもらいたい気がしました。 

最後の写真はこの会を企画した窪田さん、料理長、林課長さんのご挨拶です。 

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次にお料理の紹介について ご紹介します。

鯛の白子豆腐         酒肴6景   

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南蛮海老のオイスターグラタン    茄子の甘辛麹醤油焼き

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とろたくとサバの押し寿司     酒のアイス・抹茶の焼菓子 

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2017年5月17日 (水)

東薫酒造は伝統の味を守り継いでいる蔵です

一般社団法人酒類ビジネス推進協会が企画主催する会で、「第3回応援しよう頑張る蔵のおいしいお酒の会」に参加してきました。酒類ビジネス推進協会とは随分仰々しい名前のようですが、簡単に言えば中小の酒類製造業者や酒類小売業者のビジネスを支援して活性化し、消費者にもそれを伝えることにより、豊かな生活や文化を広げていこうというもののようです。このコンセプトは大変すばらしいとは思いますが、そう簡単なことでないと思います。でも若い人たちが中心になっててやっているので、大いに期待したいものです。 

日本酒の蔵元をお呼びする会として、第1回目は去年の5月に千葉県の小泉酒造の蔵元をお呼びして、「知られていない蔵のおいしいお酒の会」という名で開催されました。そのとき初めて参加したのですが、その題名にぴったりとした蔵を選んだねと感心し、その時の様子は下記のブログにまとめています。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-e160.html 

蔵元をお呼びする会は最近は頻繁に行われているようですが、この会はちょっと他の会とは違いがあります。会を開く前に必ず蔵を訪問し、きちっと勉強したのちに蔵の紹介の冊子を自分で作成して参加者に配布していること、蔵元さんにきちっとお話をしていただいて勉強しよういう姿があるのがいいなと思ったので、次からも参加しようと思ったのですが、第2回目の田村酒造の会は他のイベントと重なったので、参加できませんでした。でも東京のお金持ちの蔵の田村酒造を選んだにはちょっと疑問でしたね。でも田村酒造のすごいところが紹介できればそれはいいことだと思います。 

今回は千葉県の東薫酒造でしたが、題名が最初とはちょっと変わって「頑張る蔵の美味しい酒の会」となっていました。確かに東薫酒造は昔から有名な南部杜氏がお酒を造っていて、その代表銘柄の叶はおいしいお酒として有名になった蔵ですが、知られていない蔵とは言えないので、題名を変えたのでしょう。僕としては最近あまり東薫酒造のお酒を飲むチャンスがなかったので、ぜひ飲んでみてみたいと思ったので、すぐに申し込みました。驚いたのは杜氏の及川恒夫さんだけでなく、社長の徳永伸一郎とのそろい踏みの参加だったことです。これは代表理事の宮坂さんの熱意の賜物でしょうね。 

下の写真尾左の方が及川杜氏で、右の方が徳永社長です。 

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今回は西新橋の日本酒原価蔵の極で3月末に行われました。この会場は初めてでしたが、講演付きの立食パーティルームとしては参加人数の割には少し狭い夜泣きがしました。下の写真がその時のものです。 すごい混雑ですね。

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参加費が4000円はこのような会としては安いほうですが、とても心のこもった企画だと思うので、会費を6000円くらいに上げても、もう少しゆったりした場所を選んだほうが良いと思います。それにマイクがほしいですね。持ち運びの簡単なマイクスピーカセットくらいは協会で持っていてもいいように思います。音質が良くて小型で安いものがありますよ。会場選びは大変だとは思いますが、良い場所を見つけることも重要なことだと思います。 

このような会がもっと育ってもらいたい気持ちが強いので、敢えて苦言を申し上げてしまいましたが、参考にいていただければありがたいと思っております。それでは早速蔵の紹介をしたいと思います。 

<蔵の紹介> 

この蔵は千葉県香取市佐原にありますが、江戸への物資運搬の拠点として栄えた場所です。それは江戸時代の利根川の東遷事業によって、東北の物資が利根川を遡ってから江戸川を下って江戸に運ばれることになったからです。そして近くに香取神社もあり人が多く集まる場所であったことやお酒に適した良い水があったことからから、江戸に供給する酒の製造が盛んだったようで、千石を越る生産量を誇る蔵が2件あったそうで、その一つが江戸時代に日本地図を完成させた伊能忠敬の実家の伊能家だったそうです。 

東薫酒酒造を創業したのは石毛卯兵衛氏ですが、伊能家の蔵で酒造りを学び酒造りの権利を得て1825年に創業したそうです。ですから現在まで約200年弱の歴史のある蔵ですが、残念ながら昔は35蔵もあった酒蔵は現在では東薫酒造と馬場本店酒造の2つになっているそうです。現在の生産量は1000石に満たない量だそうですが、経営は結構苦しかったのではないかと思われます。というのは現在の社長は徳永伸一郎さんですが、ちょっと前までは太田健治郎さんが社長をされていました。お二人とも他社の社長をやられている方のようで、詳しいことはわかりませんが、経営者が変わって、経営の立て直しが行われているように感じました。 

でも東薫と言えば及川杜氏の名前が有名で、この蔵のお酒造りを長年やってきた方です。及川杜氏は茨木県出身ですが、20歳の時に杜氏を目指し。宮城県の石巻にある蔵で13年間修業をし、その時浦霞の平の杜氏に薫陶を受け実力を付けた後、富山県の蔵で6年を過ごされ、その間に南部杜氏の資格を取られたようです。その後、39歳の時に東薫酒造に杜氏として迎えられたそうです。それからずっと東薫酒造で酒造りをしていますが、及川さんのお話では現在84歳で杜氏として45年間勤められており、現在でも現役の杜氏だそうです。でも84歳で現役の杜氏は日本広しと言えども、ほとんどおられないと思います。それだけ、色々な事情があるのでしょうね。頑張って続けていってほしいですね。 

及川杜氏は数々の輝かしい受賞歴を持ち、数え上げれば切りがないですが、全国新酒鑑評会で金賞16回、東京国税局管内新酒鑑評会で優秀賞39回、南部杜氏自醸酒鑑評会で金賞連続40回もありますし、南部杜氏協会の会長を務められたほどの人です。今でも岩手県から冬場だけ部下を連れて東薫酒造に来ているそうです。どうして千葉まで来るのですかとお聞きしたところ、冬の厳冬の岩手より、千葉の方が天気が良くて気持ちが明るくなるからだそうです。現在は岩手の人3人と東薫の社員3人で酒造りをしているそうです。そんな気持ちはわからないわけではないですね・・・・ 

<及川杜氏の講演> 

会のはじめに及川杜氏による日本酒に関する講演をいただきました。講演の内容は日本酒の酒類、主な製造工程と初心者向けのお話なので、ここでは省略いたしますが、このために「日本酒とは」という冊子を用意されたいたことには驚かされました。 

そのお話の中で杜氏の仕事は酒造りの方針を決めて、設計図(仕込み配合)を決定しそれに合わせた酒造りをすることで、酒造りの全責任を負うことだそうです。ですから杜氏の言うことは絶対で杜氏が白いものを黒と言ったら黒として皆が力を合わせるそうです。でも酒造りは一人ではできません。蔵人のチームワークが大切で、寝食を共にして心を合わせることが大切だというお話を聞きました。 

今ではこの杜氏制度も後継者が少なくなって、だんだん減少してると聞いています。これも時代の流れでしょうね.。徳永社長はこの伝統を守っていきたいとおっしゃられました。

 

<試飲したお酒の紹介> 

1.大吟醸 叶 

Dsc_0698東薫と言えば叶と言われるほど、数々の鑑評会で受賞をしている銘酒です。 

山田錦35%精米、日本酒度+6、酸度1.2、アルコール度数17度の原酒ですが、口当たりが柔らかく、香りはカプロン酸の香りですが穏やかで、奇麗な余韻と切れの良さを持っているけど今どきの香り高いお酒ではなく、じっくりと味わえる昔ながらの大人のバランスのお酒だと思いました。 

酵母は公表されていませんが、杜氏のお話では18号系の酵母だそうです。さすが東薫の最高峰のお酒というだけのことはあります。 

 

2.搾りだて 本醸造 生酒 

Dsc_0703このお酒は千葉県産のふさこがね65%精米の本醸造の原酒の生酒の新酒です。本醸造ですから10%弱のアルコール添加しているお酒ですが、それを生の新酒を出すのは酒造りに自信がないと出せないお酒です。 

アルコール度数が19度もあるけど、アルコール感が少なく、あたりもさわやかで、しっかりした味わいの中にも、アルコール添加によるシャープさを維持したうまみたっぷりのお酒でした。 

これを会の2番目に飲むお酒として出してきたのは杜氏の自信の表れだと思いました。4合瓶で1518円と少し高めですが飲んでみる価値はあります。 

3.純米大吟醸 及川 生酒 

Dsc_0699このお酒は岩手県の吟ぎんがを使った精米度50%の純米大吟醸でアルコール度数は17度のお酒ですが、及川杜氏の名前がついたお酒です。インターネットで調べてもほとんど出てきません。 

このお酒を造ったいきさつは聞いていませんけど、飲んでみると叶のようなカプロン酸の香りは抑えられて、ややイソアミル系の香りがしました。口あたりが柔らかく、テクスチャーが良いお酒でしたので、杜氏に酵母を聞いてみましたら、M310だそうです。 

杜氏が新しい酒を狙った野心的なお酒ではないかなと思いました。 

この後お酒を2本ごとに写真を撮ってしまいましたので、ちょっと読みにくくなりますがご容赦ください

4.二人静 吟醸  5.原酒 

Dsc_0701_3二人静」とはすごい名前のお酒ですね。ラベルも静御前のような昔の女性姿でした。蔵元の奥様と前の社長の奥様が同じ名前の静子さんだったのでその名前を付けたそうです。名前よりお酒のイメージの方が先だったそうです。 

このお酒は新潟県産の5百万石55%精米の吟醸酒ですが、アルコール度数15-16度、日本酒度+2、酸度1.1という飲みやすさを目指したお酒だと思います。飲んでみると口あたりは優しく、すっと飲めるお酒なので、女性でも楽しめる淡麗なお酒でした。酵母はM310だそうです。 

原酒」は千葉県産のふさこがね70%精米のお酒ですが、どんな造りをしているお酒なのかは説明がなかったのでわかりません。何しろどっしりしたうまみのあるお酒で、ちょっと荒々しいので、熟成してから飲みたかった気がしました。 

6.卯兵衛 純米吟醸  7.辛口本醸造 

Dsc_0702卯兵衛」はこの蔵の創始者の名前で、地元の農家に契約栽培したもらった総の舞という米を使った純米吟醸です。純米らしい昔からのお酒の味を狙ったお酒のようですが、飲んでみるとちょっと酸味を感じるので、味はあるけどちょっとシャープなイメージを出していました。

辛口本醸造」はふさこがね精米655の本醸造ですが、2回火入れのお酒です。飲んでみると2回火入れで出てくるちょっと熟成したような香りがするので、好みのお酒ではありませんでした。しいて言えばお燗で飲みたいお酒です

 

8.夢と幻の物語 9.樽酒

Dsc_0700_4「夢と幻の物語」は関東地方の山田錦50%精米の大吟醸ですが、何となくわかるようで、わからないお酒にしたそうです。 

ラベルは映画監督の黒沢明がデザインしたもので、映画「乱」の絵コンテだそうです。

飲んでみるとサラリしているけど口に含んだとたんに辛みを感じてしまうお酒でした。どうしてこのようなお酒を造ったのかをもう少し聞いてみたかったです。

「樽酒」は飲み忘れましたので、省略します。
 

最後にこの蔵のお酒の印象を述べてみますと、この蔵は昔からの技法を守りながら、色々なお酒を造っていますが、良いお酒は口当たりがよく、単に甘いだけでなく適度な辛みを入れた造りが多いような気がしました。今のはやりのお酒に迎合しないで、素直にそのままの造りをしているのが良いと思いました。でも、及川さんは高齢なので、近いうちに新しい杜氏に代わる可能性も高いのではと思いますが、新しい杜氏による新しいセンスと過去の伝技術と融合した新たなお酒を期待して行きたいと思っていますす。 

最後にこの会を企画していただいた宮坂さんにお礼を申し上げたいと思いますが、せっかくここまで企画したのですから、会の中でお酒1本1本丁寧に杜氏に説明してもらってからお酒を出すようにしてもらえるといいなと思っています

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