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« 基峰鶴の蔵元との会は驚きの会でした | トップページ | 若の井酒造には驚きの復活ドラマがありました。 »

2018年6月20日 (水)

栃木県の有名どころのお酒の動向を調べてみました

栃木県酒造組合が主催する次世代栃木の酒の会は今年は大崎駅の近くにある大崎ブライトコアで行われました。酒販店・飲食店向けの第一部と一般のお客様向けの第2部とに分かれていましたが、日本酒ブロガーとして取材するには2部は人が多すぎて難しいと思い、栃木県の酒造組合に1部に参加してよいかを問いあわせたところ、参加しても良いとの許可を受けましたので、参加してきました。 

この会の第1回目は2003年のようですので、今回は16回目となります。僕が初めて参加したのは王子駅の北とぴで行われた2009年の時で、図々しく一部に参加してブログに書いた記憶があります。その後開催場所が北千住に移ってからは一般の部で参加しましたが、混雑していたため、とても取材にはなりませんでした。その後、北千住では1部の後半にネット関係発信者の時間を1時間も受けていただいたことを知り、2014年と2015年と連続してこの時間帯に参加し、ブログに書きました。その時のブログのURLを下記に書いておきます。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-71c9.html 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-7a5f.html 

2009年の時から取材した蔵は22蔵(十一正宗、惣誉、朝日栄、澤姫、姿、開華、松の寿、旭興、雄東正宗、池錦、若駒、北冠、とちあかね、門外不出、望、柏盛、大那、忠愛、日光誉、菊、鳳凰美田、四季桜)にもなりましたし、東力士と天鷹は蔵を訪問したことがあり、別途ブログに取り上げていますので、すでに栃木県の蔵は殆どの蔵を取り上げてきたことになります。 

今年は3年ぶりの参加で、何を取り上げようか迷いましたが、栃木の酒と言えば「下野杜氏」を外して語ることはできません。下野杜氏の制度が発足したのは2006年で、すでに12年がたって、今では下野杜氏は当たりまえの世界となり、すでに27人ほどの資格者がおられるようです。初めてこの会に参加した時は栃木の酒は華やかで何か垢抜けしたお酒を目指しているなという雰囲気を強く感じたことが思い出されます。今あらためて下野杜氏が醸し出す酒は今どこを目指しているのかを勉強してみようと思い、有名どころのお酒を飲んで、蔵元のご意見を聞くことができましたので、それをご紹介したいと思います。どの蔵を取り上げるかは、たまたま蔵元さんとお話ができた所の中から取り上げたものですので、偏ってしまったかもしれませんが、お許しください。 

1.澤姫 井上清吉商店 

この蔵は宇都宮の少し北にある白沢町にある蔵で、この町は水の町と言われたほど水路が町中にあるところで、ここに明治元年に創業したそうです。白沢の澤の字と地域に愛されたいという気持ちから姫という名を取って澤姫という銘柄にしたそうです。 

この蔵の生産量は約400石強とまだまだ小さな蔵ですが。この蔵を今の形にしたのは現社長の井上裕史さんです。裕史さんはこの蔵に生まれ、東京農大の醸造学部を卒業後蔵に戻って、蔵におられた杜氏の下で、酒造りを勉強しましたが、その方が急病のため引退したために25才で杜氏の代理を務めることになります。その後岩手県外出身者としては当時最年少の29歳の若さで南部杜氏資格試験に合格して、正式に澤姫の杜氏に就任しました。 

僕がお気に入りの大吟醸澤姫を持ってもらいましたが、僕が1升瓶を持つと4合瓶に見えますよと笑っていました。佐志賀にそんなことはないですね。 

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栃木県は従来から南部杜氏と越後杜氏の2つの流派の杜氏が酒造りをしていて、杜氏の後継者不足の問題が起こりはじめていたので、若手を中心に蔵の垣根を越えて技術交流ができる環境を造ろうという動きが立ち上がりましたが、その中心になった一人が裕史さんだったのです。この若手のグループを中心とした栃木県酒造組合が栃木県産業技術センターの協力もと栃木県独自の杜氏組合ができることになります。 

下野杜氏組合がすぐできたかどうかは不明ですが、2001年には下野杜氏の育成のために酒造技術者養成講座がスタートし、最初の下野杜氏が生まれたのが2006年のことです。その1期生には「澤姫」井上裕史さん、「松の寿」の松井宣貴さん、「とちあかね」の伊藤和義さんがおられます。現在では27人ほど資格を持った人がおられるようで、全国の杜氏組合として認知されているようです。 

下野杜氏はハイブリッドな杜氏なので、色々なタイプの酒造りをしているようです。その中で裕史さんは「真・地酒宣言」をして栃木県産のお米しか使わないことを進め、独自の道を切り開いておられます。特に生酛・山廃など昔からの伝統ある造りにはこだわりを持ち、伝統ある味の特性を生かしたお酒のみならず。新しいタイプのお酒にもチャレンジしています。現在は44才の蔵元社長ですが、平成25年に社長となった時に、蔵で育った南部杜氏兼下野杜氏の佐藤全さんに杜氏を譲っておられます。現在どのようなお酒を造っているか楽しみですね。 

ここで試飲したお酒の写真を見ていただきます。 

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僕が気に入ったのは澤姫の大吟醸と純米大吟醸でした。大吟醸はひとごこち40%精米で、純米大吟醸は五百万石40%精米で、酵母はどちらの栃木酵母TF(カプ系)と他のとちぎ系のブレンドだそうです。でもこの2本は造りがだいぶ違っていて、大吟醸は酸を抑え気味で日本酒度を+5ぐらいで、米の旨みを出しながら切れを求めたと酒に対して、純米大吟醸は日本酒度を±0と甘めにして酸をちょっと高めで切れを出していながらアルコール度を少し下げてさわやかさを出したお酒でした。きっとこちらの方が女性向なのではと思いました。僕は大吟醸の柔らかいふくらみが気に入りました。 

生酛は意外にやさしい味わいで、山廃は酸が少し強く出ていて香りもちょっと特徴があったので、僕は生酛の方が好みでした。井上さん自身がどんなお酒を目指しているのかをお聞きしたら、どのお酒も後味の切れを出すようにしていますが、特にプレミアムの純米吟醸を1年寝かしたお酒がお気にいりだそうです。今回は新酒しか持ってきていてなかったので飲めませんでしたが、日本酒度が+5くらいあって、ちょっと酸を出しているので、熟成に向いていると思われます。1年熟成させると驚くほど変わるそうで、これは是非飲んでみたいお酒だと思いました。 

僕の印象では下野杜氏らしい旨みと切れのバランスの良さと伝統あるお酒造りの良さを組み合わせを追及しているように思えました。

2.杉並木 飯沼銘醸 

この蔵は栃木市に1811年から創業した歴史ある蔵です。創業者は新潟県長岡市から出稼ぎにきた飯沼岩次郎さんが見込まれて当主となったようで、現在は飯沼徹典さんが8代目の当主をされています。 

当初の銘柄は「秋錦」だったようですが、良く売れたのでかなりの量をを造っていたようでしたが、6代目の時に新しく「富貴」というお酒をだし、7代目の時に「杉並木」という酒を造り始めました。杉並木は端麗辛口の酒で、地元には人気の酒として定着したようです。その後現在の8代目の徹典さんが2002年に首都圏向けの限定流通ブランドとして「姿」をだしました。このお酒は味わいのある濃醇なタープのお酒で、ほとんどが生酒として販売されているようです。現在の生産量は約500石で、杉並木が6割。姿が4割ぐらいだそうです。 

僕が姿を知ったのは約10年くらい前で、たつなみ酒店(現在のうえも酒店の前身)で知るようになり、味わいのしっかりした酒だった印象です。その後、2010年に池袋の酒菜屋で姿を囲む会があり、そこで初めて徹典さんにお会いしています。その時のことは下記のブログに書いていますので、興味があったらご覧ください。

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-21fc.html 

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この方が飯沼徹典さんです。たぶん徹典さんがこの蔵の製造責任者兼社長だと思いますが、どこで修行されて今に至っているかどうかはわかりませんが、長年越後杜氏を招いて酒造りをしてきたので、ここで勉強し、技術を伝承してきたものと思われます。ですからいわゆる下野杜氏とは一線を画すのかもしれません 

この会ではすべて「姿」を出品していました。姿が使用している原料米は山田錦、雄町、北しずく、ひとごこち、吟風ですが、全て600kg仕込みの少量生産の造りで、基本は無濾過生原酒です。吟風だけが火入れのお酒でした。 

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全種類飲んでみましたが、全て共通の味わいのバランスを感じました。日本酒度が±0前後、酸度が1.6~1.8ぐらいで、生原酒の旨みを出しながら酸で後味を切っていく造りでしたが、お米によって旨みの出方がちがっているようです 

北海道のお米である北しずくと吟風を使っているお酒は2種類出ていましたが、それは飯沼社長が北海道の大学出身で、仲良くしている居酒屋のおやじさんから北海道のお米を使ってくれないかということで、北しずくを使うことにしたそうです。初めて使ったのが約6年前で、本州では一番早く使った蔵の一つですが、今では結や福祝でも使うようになっています。奇麗な味わいが出るお米ですが、姿に使うと結構味が出るので、とても相性が良いのかもしれません。 

酵母はほとんど協会酵母1801を使っているようですが、それほど香りは強く出していません。栃木酵母のT-ND(ニューデルタ)はイソアミル系の香の酵母ですが、今年からT-ND3となって酸の生産を少なくなったので、雄町と吟風に使ったようです。18系の雄町はドンと味が出るお酒だったのに対して、T-ND3を使った雄町はさわやかな香りと味わいにとなり雄町らしい余韻を感じるお酒になっていました。雄町はイソアミル系が似合っているかもしれませんね。 

吟風は姿では珍しい火入れのお酒でしたが、それは呑みやすい夏酒を目指したからのようです。酵母も1801とT-ND3のブレンドだそうで、結構いいバランスのお酒だと思いました。 

3.桜川 辻善兵衛商店 

この蔵は栃木県の南東部の真岡市にあり、近江商人である辻善兵衛さんがこの地に創業して、すでに260年の歴史があるそうです。その後の蔵の歩みのことはよくわかりませんが、大きく変わったのは現在の蔵元杜氏(16代目)である辻寛之さんが蔵に戻ってからのようです。下の写真が辻寛之さんです。 

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この蔵は元々南部杜氏がおられたようで、寛之さんは高校を卒業後、茨城県の「武勇」で2年間修業されて20年前の21歳の時に蔵に戻っています。その後、蔵の南部杜氏が体調を崩して、22才の時には製造責任者となっていますが、翌年の関東甲信越国税局酒類鑑評会で大吟醸桜川が金賞を受賞するほど、才能のある方なのでしょう。下野杜氏についても取得の努力をされて、2007年に第2期生として下野杜氏になられ、蔵を引っ張ってこられましたが、2年前に社長に就任しています。生産高は400石位だそうです。 

僕が初めて寛之さんとお会いしたのは、前述した姿を囲む会が開かれた時に、寛之さんが突然現れて(勿論計算済みの演出)お会いした2010年のことです。それから辻善兵衛をウオッチしてきましたが、2012年に開かれた第4回雄町サミットで優秀賞に選ばれて以来、ずっと連続して優秀賞を取ってきたのに、ここ2年は入賞できなくなってちょっと寂しい思いでした。ですからこの日が楽しみだったのです。 

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あれ、雄町がない!どうしたのかな。うっかりその理由を聞くのを忘れてしまいました。ちょっと順番に整理してみますと、下記のようになります。 

1.櫻川 大吟醸斗瓶囲い 山田錦40%精米 酵母M310

2.辻善兵衛 純米大吟醸 山田錦50%精米 酵母熊本9号+1801 

3.辻善兵衛 純米大吟醸 愛山50%精米 酵母熊本9号+1801 

4.辻善兵衛 純米吟醸 五百万石53%精米 酵母協会1401+栃木T-1 

5.辻善兵衛 純米吟醸辻風 夢錦50%精米 協会酵母1401+栃木T-1 

6.辻善善兵衛 生酛純米 夢錦58%精米 酵母熊本9号酵母 

写真にはないけどこのほかにプレミアム普通酒 PREMIUM S がありました。プレミアム普通酒は普通酒の概念を変える吟醸造りのような丁寧な造りをした普通酒のようで、日本酒の本当の良さを気楽に楽しんでもらうためのお酒だそうです。2015年の夏に初めて出したそうですが、これはおいしいと評判なったそうです。その後も少しずつ改良を重ねているそうですので、飲んだことのない人は是非呑んでみてください。酵母は7号酵母、原料米は朝日の夢でした。 

今年の大吟醸はM310らしい香りのある奇麗なお酒でしたが、日本酒度を+5と辛めに仕上げていて、酸も抑え気味で気味でしたのでまだ若い感じがしました。ちょっと寝かせて熟成させてから飲みたかったです。純米大吟醸は愛山も山田錦も1801酵母に熊本酵母をブレンドして香りと甘さを抑え気味にして、生酒でちょうど良いバランスにさせたようです。 

純米吟醸は五百万石も夢錦も14号酵母と栃木酵母T-1で、五百万石は大人の落ち着きがあり、夢錦の辻風は香りもさわやかで、すっきり仕上がっていたので夏酒として良いように思えました。夢錦は兵庫県が開発した酒造好適米で、母方に山田錦の流れをくんだお米、父方に兵系23号を使って交配して造ったぽ米で、兵庫の酒米3錦の一つに上げられているお米で、溶けやすく使いやすいお米だそうです。

全体的には昔のパワフルさを抑えた少し大人のお酒に変化しつつある感じがしましたが、雄町はどうなっているのでしょうか?。どうして持ってこなかったのかな。また姿らしい雄町の酒を造っていただきたいな。 

4.惣誉 惣誉酒造 

この蔵は栃木県の市貝町にありますが、創業は明治5年ですからそれほど古い蔵ではありませんが、もともと滋賀県で酒造りをしていた蔵が栃木県に出てきたのが始まりのようです。現在は5代目の河野遵さんが社長をされています。 

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河野遵さんは1961年生まれで、東京大学経済学部を卒業された後、松下政経塾の第6期生など色々を経験を積んだ後、1989年に28才で蔵に戻ります。酒造りの経験はなかったはずですから、岩手県から来ていた南部杜氏に指導を受けて、経験を積んでこられ、1995年に44才で代表取締役社長になられました。 

社長になってすぐやられたのは生酛造りの復活でした。生酛造りは江戸時代に酒母を造る方法として確立された技法ですが、明治時代に開発された速醸法に比較して手間と時間がかかるので、次第にすたれてきていましたが、うまく作ると速醸法よりコクがあって、きりりとした酸が上手くバランスしてくれる味わいのあるお酒になるということで、最近かなり見直されてきている技法です。この技法をいち早く取り入れたのは目の付け所が良い方だと思います。 

東大蔵元会がどのようにして生まれたかはよくわかりませんが、東大卒業生の酒造経営者が中心に集まる会で、2013年に発足したようで、河野さんはその一人です。そして秋のホームカミングデイで東大正門前の銀杏並木にテントを出して、東大蔵元会の醸する日本酒を試飲する会が2016年から開催されるようになりました。その時の様子は僕がブログに書きましたのでご覧ください。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-e423.html 

更にそれを切っ掛けに東大ボート部のOBが東大応援旗の淡青をイメージしたお酒を造ろうと惣誉酒造に製造の依頼があり、去年それが完成しホームカミングデイで公開されました。それについても僕が書いたブログがありますので、見てください。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-6890.html 

このように最近になっていろいろなことを発信されていますが、2011年の東日本大震災で蔵の建物が被害を受けたのをきっかけに、事務所とゲストハウスの改築を奥様の出身である東大建築学科の大野名誉教授にお願いして造ったそうで、写真を見るととても素敵な建物のようなので覗いてみたくなりました。その写真をホームページからお借りしました。随分幻想的なお部屋ですね。 

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次に今回飲んだお酒をご紹介しましょう。東大の淡青は生酛仕込みの特別純米と純米大吟醸でしたが、どちらも3種類の酵母の醪から搾ったお酒の粘度の違うものをブレンドして造ったお酒ですが、このお酒と同じコンセプトでですが、生酛仕込みではなく速醸仕込みのお酒を今回飲むことができました。 

Dsc00522この写真のお酒は辛口特別純米です。兵庫県の特A地区の山田錦60%精米の速醸法で作った特別純米で、ラベルにはアルコール度数15%としか書いてありませんが、実はこのお酒は協会7号酵母、協会9号酵母、協会14号酵母のお酒をブレンドした火入れのお酒だそうです。 

ブレンドは杜氏がやるのですかとお聞きしたら、ブレンドは結局は好みのの問題となるので、経営者自らの責任でやるのが良いので、自分でやりましたとのお答えでした。 

飲んでみると当たりが柔らかくとげがなくすうと飲める、しみじみおいしいお酒に仕上がっていました。今流行りのお酒とはちょっと違うタイプのお酒でした。 

他にも試飲させていただきましたが、その詳細は省略させていただきますが、この蔵は今まで紹介したお蔵とは方向性の番う少し大人のお酒を目指しているように思えて、そのためには手のかかることでもやってしまうという執念を感じました。 

結局生酛仕込みでも、速醸仕込みでも3種類ブレンドのお酒を出しているようですが、ラベルには表示されていませんので、そのことはわかりませんんね。でも生酛仕込みかどうかは惣誉の文字でわかりますので、参考にしてください。また、熟成したお酒をブレンドするということは、熟成の期間ががいること、ブレンドすると必ず余るお酒がでるはずですから、蔵に余裕がなければできない技だと思います。 

生酛仕込み           速醸仕込み 

Psouhomarekimototokujyun1_8Psouhomaretokujyun1_85.松の寿 松井酒造店 

この蔵は塩谷町にあちますが、この地は日光北街道に面しているところで良質な湧水が出るので、創始者の松井九郎治さんが新潟県から移り住んで1865年に酒造りを始めたそうです。蔵の裏手には松林があったことから縁起の良い寿という字を添えて松の寿という酒名を付けたそうです。でもこの地は人口が少なく酒の売り先には恵まれないことから大手の桶売りもしていたことがあったようです。創業時は松井九郎治商店と呼んでいましたが、昭和28年に現在の松井酒造店と変更しています。 

この蔵を変えたのが5代目の当主の松井宣貴さんです。宣貴さんは長男として生まれ、後を継ぐために東京農大の醸造学部に進学後、卒業後は群馬県の酒造会社で4年半修行をしてから1994年、26才で蔵に戻ってきます。蔵に戻った時は越後杜氏がおられましたが、1997年に急遽やめてしまったので、宣貴さんが1998年から実質杜氏の仕事をすることになります。 

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その後残っていた職人と一緒に試行錯誤をしながら酒を造り始めましたが、2001年には全国新酒鑑評会で初めて金賞を取ることができ、その後も定期的に金賞を取るまでに至っています。そして下野杜氏の発足にはいろいろと貢献し、見事2006年に下野杜氏1期生として認定されています。その後は全国新酒鑑評会では金賞にはあまり恵まれなかったけれども、IWCでゴールドメダルを取るなどの実績を残しています。 

次に飲んだお酒の紹介をいたしますが、どういうわけか写真を撮るのを忘れていますので、文字だけの紹介となります。今回展示されたお酒は純米吟醸(山田錦、雄町、ひとごこち)と純米酒(美山錦、ひとごこち、とちぎ酒14)と山廃純米(五百万石)でした。 

一通り飲んで感じたことは初めて松の寿のお酒を飲んだ時は香りが立って、ちょっと甘いけど奇麗な酸で切ってくれるようなお酒だと思っていましたが、今回は基本は同じなんですが香りは抑え気味にしてきている分だけ、ちょっと特徴が薄くなっている気がしました。 

そこで松井さんにこれからどんなお酒を造ろうとしているのかをお聞きしたら、今までは18系や9号系のブレンドが中心にしてきたけど、この蔵の仕込み水の良さを出したお酒にするために香りをカプ系からイソ系に変える努力をして、6号系も14号系も使ってきましたが、まだ自分が狙っている酒にはなっていないそうです。例えば特別純米美山錦生酒は28BYは自社の9号酵母をつかっていましたが、29BYが6号酵母と9号酵母のブレンドで造ったそうです。来年以降は14号系は酸が出やすいので金沢酵母を使ってみたいとおっしゃっていました。 

松井さんは18号系である完成度の高いお酒を造ることには成功したのでしょうが、現在は酵母を変えながら蔵の仕込み水に適した酒を模索していることがよくわかりいました。来年以降の新しい試みに大いに期待したいと思っています。松井さんの凄いのは毎年使用している酵母はラベルには書いてありませんが、販売店には明示していることですね。これはぜひ続けてもらいたいですね。 

6.仙禽 せんきん 

せんきん㈱は東北本線の氏家駅の近くのさくら市にありますが、創業は1806年だそうですから212年もたっている老舗の蔵です。創業時の蔵の名前は仙禽酒造で、仙禽とは仙人に使える鶴のイメージを表すそうです。素敵な名前ですね。先代の社長の薄井篤さんはアイデアマンで、大谷石の地下貯蔵を仕込み蔵や貯蔵蔵にしたり、いち早く杜氏制度をやめるなど画期的なことを行い、普通酒の仙禽を中心に販売を広げ、一時は3000石位になったそうですが、バブルがはじけて急激に経営が苦しくなったそうです。 

息子の薄井一樹さんは11代目に当たりますが、蔵の経営にはあまり関心がなく、大学の経済学部に進むものの本気になれず大学を中退し、当時注目を浴びていたワインソムリエの田崎信也が主宰する日本ソムリエスクールに入学して、ソムリエの資格を取ります。その後同校の講師として勤めることになるのですが、22才の時に実家のお酒の仙禽を先輩と飲んだ時にその酒の評判が悪く、福島の「飛露喜」を飲まされてそのお酒との違いを痛感することになります。このことをきっかけに実家に戻って後を継ぐことを決意するのです。 

一樹さんとはこの会でお会いできなかったので、6年前に神田の醇でお会いした時の写真を使いました。 

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2004年経営再建のために24歳で実家に戻って帳簿を調べてみると、素人の自分が見ても危ないのがわかる状態だったようです。とにかく今までの仙禽の悪いイメージを払拭する必要があり、そのためには、ただ美味しくするだけではなく、飲み手をあっと驚かせるようなインパクトのある味にしようと思ったようです。彼の結論は甘酸っぱいお酒を目指します。その頃は端麗辛口の時代でしたので、甘いお酒は売れないと言われていましたが、ソムリエの彼はワインの経験から色々なお料理に合わせるには甘酸っぱいお酒がベストだと確信していたようです 

一樹さんがこんな酒にしたいという設計図を書いて、昔から蔵人として頑張っていた小林さんや2006年に蔵に戻ってきた弟の真人さんと協力して新しお酒を完成させたのが2007年のことです。凄いのは再建の方法でした。2008年にこのお酒を売る新会社の「せんきん」を立ち上げて、営業権と醸造設備を新会社に売却して古い会社を畳んでしまいます。ですから10代目の父は経営からはずれ、新しい人が社長となり、一樹さんは専務取締役となり、正人さんは常務取締役になります。 

生産量は最盛期の10分の1(300石)からスタートすることになりますが、こんなお酒は売れるはずはないとと思っている人も多かったと思いますが、いざ市場に出してみたところ若い女性に大ヒットし一気に人気ブランドに駆け上がることになります。 

僕が初めて一樹さんにお会いしたのは2012年ですが、すでに生産高は500石となっていました。その頃は現在せんきんが主張しているドヌーブという概念がまだ公にはなっていませんでしたが、その形が見え始めていた気がします。ドヌーブとはワイン業界でブドウ栽培から醸造までを通して行う生産者のことを言うそうですが、せんきんは蔵で扱う原料米を全て仕込み水の地下水と同じ水脈の田圃で栽培することを2014年に宣言しています。扱っているお米は山田錦、雄町、ひとごこち、亀の尾の4種類ですが、それにより愛山や特Aの山田錦はは使わないことになるので、お酒造りにどのような強みになっているのか僕にはわかりませんが、蔵のイメージアップには役立っているのは確かです。 

一樹さんは他にも次々と新しい企画を打ち出しています。せんきんのお酒のシリーズを、モダン、クラシック、ナチュール、ドルチェ、季節限定の5種類としてわかり易くしています。 

下の写真はせんきんの常務取締役で製造責任者の薄井正人さんです。甘酸っぱいお酒のキーは何といっても酸だと思います。この奇麗な酸を出すにはいろいろ大変で苦労して出したそうです。 

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更に昨年からせんきんとは違うシリーズのお酒「羽水(うすい)」を出しています。最近のせんきんは一部の流通でしか買えないお酒となっており、従来の仙禽を扱っていた日本名門酒会の加盟店ではせんきんではなく霧降という銘柄を扱っていました。これをやめて、またせんきんの制約となっている米の調達も一切こだわらないお酒を出すことになり、このお酒のコンセプトは製造責任者の正人さんにすべて任されたようです。羽水がこれからどのように変化していくかは楽しみです。特に今年の夏に出す羽水はお幅に造りを変えたとのことでしたので、期待して飲んでみてください。 

正人さんのお話では今年の生産高は2000石くらい行くかもしれないというほど、生産量が拡大していますが、味がどうなのかこの会で試飲してみました。 

出品されていたお酒は仙禽一聲、モダン無垢、クラシック雄町、仙禽ナチュールの4種類でした。 

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僕が気にったのは仙禽一聲と雄町でした。一聲は山田錦35%精米のプレミアムモデルで鶴の一声という意味だそうです。うまみと酸とのバランスが良くきれいでいてしっかり味が楽しめるお酒に仕上がっていました。酵母はカプ系ではない栃木酵母だそうです。 

雄町はさわやかなイソアミル系の香で雄町らしい余韻が楽しめるお酒でした。正人さんの話では雄町は溶けやすいお米なので、うまく作ると奇麗なな余韻を楽しめるお酒になるそうです。 

モダン無垢は仙禽らしい甘酸っぱいお酒で、ナチュールは亀の尾90%精米の生酛ですが、とても90%とは思えない奇麗さと味が出ていましたので、お聞きしたら1年j熟成させているそうです。 

今回飲んで感じたことは全体に奇麗さが出ており、生産高の増量にもかかわらず味の低下は見られませんでした。そのことをお聞きしたら、蔵の清潔さには十分心がけているのと1タンクの造りを600kg~1500kgに抑えているからではないかとおっしゃっていました。ますます、これからが楽しみですね。誰もが90点が取れるようなレシピで酒を造っているといずれお客に飽きられてしまうので、一味違うお酒造りをしようという姿を強く感じました。 

7.東力士 島崎酒造 

この蔵は現在は那須烏山にありますが、創業は1849年で今の地より少し南の茂木町で島崎彦兵衛さんが酒造業を始めます。その後2代目の熊吉が烏山にある老舗の蔵を譲り受けでここに居を構えます。この熊吉さんが無類の相撲好きだったことから酒名を「東力士」と名づけたようです。 

そして4代目の1971年(昭和46年)の時に社名を株式会社島崎酒造に改名し、現在に至っています。島崎酒造は熟成酒、特に大吟醸のビンテージの蔵として有名ですが、この長期熟成酒製造を始めたのは1970年ですから今から48年も前のことだったのです。まさに時代に先駆けてのチャレンジだと思いますが、これを引っ張たのは5代目の当主の島崎利雄さんだったようです。当初は地下貯蔵庫で5℃の低温で熟成をすることをしていたのですが、国が戦車を造る工場として昭和20年に造ったものの利用されずに終わった洞窟を1999年に買い取って、低温長期熟成の道を本格的に走ることになります。 

この洞窟貯蔵庫は年間平均温度が10℃ですが、夏場冬場で±5℃くらい変化するので、熟成には向いた貯蔵庫のようです。広さも総延長600mもあるので最大で1升瓶を20万本も貯蔵できる能力を持っているそうです。この熟成酒のお酒のスペックについては昔から疑問を持っていたことがありましたので、現社長の島崎建一さんに聞いてみました。また、最近造られているのお酒についてもコメントしたいと思います。 

下の写真お方が島崎健一さんです。建一さんは1969年生まれで、東京農大醸造学部を卒業された後、新潟の蔵で修業された後現在に至っていますが、一番力を入れたのが杜氏の育成です。この蔵は長きにわたり新潟県の越後杜氏に造りをお願いしてきましたが、30年以上前から地元の人材育成に努め、10年ほど前から完全に地元社員だけで作ろができるようになっているそうです。建一さんは2012年に代表取締役となり、蔵の生産高は現在約1500石だそうです。 

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成酒について酒質と熟成度についてお聞きしましたら、お酒の中の糖度とアミノ酸が多いと熟成スピードが上がると教えていただきました。酸度についてはどうですかとお聞きしたら明確な関係はわからないそうです。確かにそれは間違いないことだと思います。理論的にはアルコール自身は変化をしにくい成分なので、そこに入っている成分の多いものと言えば糖とアミノ酸ですから理屈に合います。それをどのように変化させるかは、まさに管理方法にかかわるわけですが、この世界は日本では歴史の浅いので、ワイン用には実績がないので、まだまだ分からないことが多い世界と言いったほうが良いと思います。

東力士の酒と言えば、昔は甘口の酒だと思っていましたが、10年ほど前から違ったお酒も出すようなったようです。それを今年から社長のアイデアでで新しいお酒へとリニューアルしたそうです。見てみましょう 

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その代表的なお酒がこの3本です。左から紹介しましょう。 

1.東力士 純吟 直汲み 無濾過生原酒 愛山55%  

2.東力士 純吟生原酒 極雫 うららか 五百万石、とちぎ酒14号60% 

3.東力士 純吟生原酒 極雫 澄艶 山田錦55% 

この3種類のお酒は極雫シリーズで、10年ほど前から販売を開始し、少しずつ種類を増やしてきているそうですが、昨年までは「杜氏入魂袋吊り、極一滴雫酒」でしたが、名前が長すぎるという理由で「極雫」となり、デザインもこの写真のように一新したそうです。 

愛山ととちぎ14号は酵母がM310と小川酵母のブレンドで、山田錦は小川酵母でした。ですから山田錦の方はイソアミル系の爽やかな香りに対して、他はカプロン酸の香りを強く感じました。でもどのお酒もフレッシュ感があり、優しいうまみを感じるお酒で、今までの東力士とは世界が違うお酒でした。社長にはお聞きしませんでしたら、これからどのお酒をメメインとしていくのでしょうか、見守っていきたいと思いました。 

以上で栃木県のお酒を一通りチェックしてみましたが、一時の下野杜氏のブームは落ち着いてきており、各蔵とも独自のお酒造りを追及しようとしていることが判りました。今や全国の若手の蔵元がいろいろ立ち上がってきている時代になっている中、その中で早くから変革をしてきた栃木の酒がこれからも引っ張て行くようになってもらいたいと思っております。そのためには、また新しい企画が必要なのかもしれません江。

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栃木市エージェント:貴殿の記事ダイジェストをGoogle Earth(TM)とGoogle Map(TM)のエージェントに掲載いたしました。訪問をお待ちしています。 [続きを読む]

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