鏡山酒造は新しさを求めて頑張っています
古いことで申し訳ありませんが3月の中旬に八芳園内にある日本料理の槐樹で第22回の蔵元さんと一緒に日本酒を楽しむ会が開かれましたので参加してきました。今回は川越市にある小江戸鏡山酒造の営業部長の五十嵐昭洋さんをお招きしての会でした。昭洋さんは営業部長で、現社長は五十嵐さんのお兄さんの五十嵐智勇さんのようですが、智勇さんは天覧山を醸している五十嵐酒造の蔵元社長ですから、昭洋さんは実質小江戸鏡山酒造の社長と言える方だと思います。
僕が鏡山酒造を知ったのは2013年の神田の醇の日本酒の会で初めてお会いしたので、その時のことは下記のブログに書いてありますのでご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-6adf.html
<小江戸鏡山の創立の経緯>
このブログを読めばこの蔵ができたいきさつなどは大体わかりますが、改めて整理してみます。川越には昔から鏡山酒造という蔵がありましたが、2000年に急所廃業することになりました。川越は昔から小江戸と言われたほど、伝統ある町で蔵造りの街並みや菓子屋横丁など和の文化を持った町でここに酒蔵がないのは寂しいと立ち上がったのが五十嵐昭洋さんだったのです。
昭洋さんは五十嵐酒造の次男として育ちましたが、兄がいたので蔵を継ぐつもりもなく、酒造りをするつもりはなかったそうで、大学を卒業してからヤナセ自動車の販売をしていたそうです。もちろん蔵の再建には川越に住む多くの人の支援と協力があった出来たのですが、もともとの鏡山酒造があった場所は別の事業の場所に充てられていて利用することができなかったので、場所選びが大変だったそうです。そんな時に川越にある老舗の醤油蔵の一角を酒蔵として借りくことが決まったそうで、この地に2007年小江戸鏡山が誕生することになります。
酒蔵造りにはまずは仕込み水が大切なのですが、醤油蔵にはきれいな湧水があったのは幸いしたのですが、そこに酒蔵を立てるには大きな問題がありました。それは醤油蔵が使っている麹菌も酵母菌も酒蔵が使う菌とは相いれないものでしたので、その影響を断ち切ることが大変だったそうです。醤油の生産初期には大量菌が空中に放散されるので、酒蔵が醤油蔵のそばに建設することはあり得ないことだそうです。
ここまでは槐樹の会で昭洋さんから聞いた話ですが、実際にどんな蔵になっているのかとても興味深かったので、後日5月の連休明けに蔵を見学させていただきましたので、まずそれを紹介します。
<小江戸鏡山の蔵見学>
蔵は西武新宿線の終点の本川越駅から蔵の並木通りを北に向けで1㎞程北に行った仲町の交差点を左に曲がったところにある松本醤油商店の右側の建物です。下の写真は販売店ですが、お酒と醤油の両方を売っているお店になっています。右側の建屋に小江戸川越自家製面と書いてありますが、人気のラーメン屋さんだそうです。
鏡山の蔵はこの鉄筋コンクリート造りの奥にあり、テニスコート1面くらいの広さだそうです。下の写真は松本醤油の入り口から見た鏡山酒造の建屋です。窓のない鉄筋コンクリート造りなのはわかりますが、全容はわかりません。
この建屋の裏側にまわると蔵の全容が見えてきます。ここの写真を撮り忘れましたので、グーグルマップのストリートビューからお借りしました。この建屋が蔵の裏側で、こちらには小さな窓がついていますが、とても密閉性の良い鉄筋コンクリート造りなのが良くわかります。
それでは中に入ってみましょう。訪問した時はたまたま新酒の生酒の出荷にぶつかったので蔵の中に販売前のお酒が山積になっていたので、ちょっと普段より雑然としているのは仕方がないですね。
では蔵のの中に入ってみます。下の写真は洗い場で、洗米機が奥に見えます。袋などの選択等の大潟洗濯機がドンと置いてありました。奥に見える窓は一般見学者のためのものです。
麹室の中も見せていただきました。壁は奇麗な杉製の板張りで、とてもきれいな室でした。麹造りの効率を考えると2室欲しいですね。
ここが仕込み室で2200Lのサーマルタンクが6基ありましたが、一つは仕込み水用で、もう一つは出荷のための貯蔵用のようでした。通常は1週間で1タンクの仕込みで、総米600kgで、1200Ⅼ(1升瓶660本)のお酒ができるようです。確かに4つのタンクがあれば、まわせますが、3期醸造のはずなので、1か月4造りの9か月だと計算上約250石しかできないことになるけど、400石の生産となると1週間2本の醸造もやっているのでしょうね。そうなるとタンクも6本フル稼働せざるをえないと思うけど、どのようにしているのかはお聞きしませんでした。でも生産スケジュール管理が大切なことはわかります。
下の写真は仕込み室の2階のフロアです。とても作業のしやすい環境で、完全にコンクリート製の壁に囲まれていました。
搾りは小型の槽が2台用意されていて、1タンクのお酒を同時に2台の槽で絞るようで、ある程度搾ったら、袋を積み替えて1台の槽で搾るそうですが、油圧式でないので粕の比率が多くなるそうです。
以上で蔵の紹介は終わりますが、確かに狭い場所での酒造りですが、造りに支障があるようには思えませんでした。強いて言えば槽を薮田式に変えた方が効率的なような気がすいました。もう一つは床や壁を特殊塗装することにより清潔性を上げるとか、へパフィルターを使ってより奇麗な空気の取入れをすれば、もっといいお酒ができるような気がしましたが、今のままでも十分おいしいお酒を造れる環境にあることはわかりました。
<槐樹で飲んだお酒の紹介>
今回は5種類のお酒をいただきました。この蔵のお酒の生産量は3期醸造で年間400石だそうで、辛みや渋みを抑えた芳醇でやや甘口のお酒を目指しているそうです。杜氏は柿沼和洋さんが創業以来ずっと担当してきており、造りは蔵人3人と季節パートで頑張っているそうですが、忙しい時期は五十嵐さんもお手伝いするそうです。
このお酒はワイン酵母を使ったお酒で、原料米は一般米(彩のみのり)60%精米、アルコール度数13度のお酒です。この蔵はラベルに酒質を一切公開していませんが、SSIの報告では75%精米と書いてありましたが、最近変わったのかもしれません。
このお酒は半年くらいの熟成しかしていませんが、やや色がついていて、飲んでみると香りはワインの果実香とお酢に近い香りが混ざった香りで、甘くて酸っぱいお酒でした。
酸度は不明ですが、3.0以上はありそうで、コハク酸が通常の倍以上あるそうです。油性分の多いお料理にはぴったりではないかと思いました。
2.純米無濾過生原酒 雄町 3.純米吟醸 澱がらみ
2番のお酒は右側の白いラベルに赤い文字の鏡山と書いている雄町60%精米の純米酒です。3月の段階ではまだ販売前のお酒で、タンクから直汲みして持ってきたお酒だそうです。ですからやや澱がらみで、シュワシュワ感もあるお酒でした。
アルコール度数は17度もあるしっかりした甘みがあるお酒で、雄町らしさを出すにはもう少し奇麗さがいるかなと思いました。でも雄町らしいパワーはあったと思います。
3番のお酒は黒いラベルに銀色の鏡山と書いてるお酒で、玉栄50%精米の純米吟醸です。玉栄は滋賀県お米ですが、もともと近江との関係があって使っているとのことでした。飲んでみるとアルコール度数は16度ですが、厚みがしっかりあって、後味に若干の渋みがあるので、コクのあるお酒に感じました。
4.斗瓶どり滴酒 5.純米酒 澱がらみ
4番のお酒は薄い黄色のラベルに金の鏡山と書かれた大吟醸です。埼玉県で開発されたさけ武蔵35%精米の大吟醸斗瓶どり雫酒です。さけ武蔵は埼玉県が開発した最初の酒造好適米で、12年の歳月をかけて2004年に発表され、今では熊谷周辺で主に栽培されているお米です。改良八反流れと五百万石のDNAを持つ若水ををかけ合わせて造られたものです。
酵母はM310を使ったそうです。飲んでみると確かに奇麗な味わいになっているものの、やや膨らみが足りないような気がしました。この蔵は25BYで初めて全国新酒鑑評会で金賞を取りましたが、その時のお米は山田錦でしたので、まだ全国新酒鑑評会で金賞を取っていないさけ武蔵で金賞を取るべくチャレンジしているそうです。さけ武蔵は扱いにくいお米で、溶けやすいのにすぐ固まる傾向があって、これで賞を取るのは大変だそうです。でも着実にレベルは上がってきているので、近いうちに目的が達成されることを期待しています。 29BYの全国新酒鑑評会では入賞で、惜しくも金賞を逃しました。
5番のお酒は薄黄色いラベルに緑の鏡山と書かれた澱がらみの純米酒です。原料米はさけ武蔵60%精米で、酵母は協会1801酵母だそうです。飲んでみるとカプロン酸エチルの香りはするけど、それほど強くはなく、含んだ時にふくらみを感じるので、これは良いと思いました。もしかしたらさけ武蔵はM310より1801酵母の方が合うのかなと思いました。素人考えですが・・・・
以上で飲んだお酒の紹介は終わりますが、山田錦をやめてあくまでも埼玉県産のさけ武蔵にこだわるのはとてもいいことだと思いますので、これからもチャレンジを続けてください。この蔵が最も得意としているお酒の味は軽やかできれいなお酒ではなく、味わいのある甘口系のお酒だけに後味の切れだけは大切にしてもらいたいと思っています。
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
日本酒マーク(バーナーのことかな?)表示されてませんです。
投稿: Yokohamabaron | 2018年5月18日 (金) 12時14分
あれ、表示されていると思うけどね
投稿: Qchanpapa | 2018年5月18日 (金) 14時06分