基峰鶴の蔵元との会は驚きの会でした
4月の最初の日曜でしたが、南小岩にある「なだや酒店」の渡部知佳が企画した会で、南澤正昭がシェアしてFacebookでご案内していただいた会がありましたので参加しました。この会は佐賀県の基山商店(基峰鶴)の女将さんの小森綾子(りょうこ)さんをお呼びしての会でしたが、基峰鶴という酒は飲んだことがないけど、女性の蔵元さんが来るということで興味がわいたので申し込んだ次第です。
日曜日の13時にJR小岩の栃錦関の銅像の前に集合というだけで、どこに行くのかも、何時から日本酒の会が開かれるのかもわからず(実際には柴又のイタリアンレストランで15:30から行うと書いてあったのですが、僕がよく読まなかっただけのようです)、行ってみるとそれらしい人が誰もいないし、時間になっても渡部さんも南澤さんも現れないし、間違えたかなと思っていたら、渡部さんがにこやかに現れてほっとしました.。南澤さんは体調が悪くて欠席とのことでした。小森綾子もおられましたので、ここで初めてご挨拶しました。
そこで、ここから柴又の帝釈天までバスで移動したあと帝釈天に行ってからイタリアンレストランに行くことを初めて知りました。簡単に言えば柴又帝釈天の観光付き日本酒の会だということが判り驚いたのですが、柴又の帝釈天は単にお参りするだけでなく、結構観光できるところが多いのにまたまた驚いてしまいました。知らない方も多いと思いますので、日本酒の会の紹介の前に、ちょっとそれをご紹介します。
<柴又帝釈天>
柴又帝釈天は映画「男はつらいよ」の主人公のフーテンの寅さんの出身地として有名なとことですが、帝釈天はどんなところであるかは良く知りませんでした。ちょっとインターネットで調べてみると帝釈天とはもともとインドの最古の経典の中では軍神と呼ばれた神様で、仏教の中では守護神としてあがめられている神様のようです。この守護神は仏の教えを信仰し従うものは病難や火難などの災難に逢えば、帝釈天が必ず守護し、悪魔を除き退散してくれると言われており、古くから厄除けのご利益があると信じられてきたようです。
この帝釈天の板本尊が安置されているのが帝釈堂で、正式名称は経栄山題経寺という日蓮宗の寺院で、この寺ができたのが江戸時代の初期ですが、現在の帝釈堂の内殿は大正4年に、拝殿は昭和4年に完成したそうです。
帝釈堂内殿の外部は東・北・西の全面が装飾彫刻で覆われており、法華経に説かれる代表的な説話10話を選び視覚化したもので、大正11年(1922年)から昭和9年(1934年)にかけて、加藤寅之助ら10人の彫刻師が1面ずつ分担制作したそうです。
この羽目板の中央の段には十二支と天人、下方の段には千羽鶴が表され、高欄(縁)より下の部分には花鳥および亀を浮き彫りで表わしています。これらの彫刻を保護するため、内殿は建物ごとガラスの壁で覆われ、見学者用の通路を設け、「彫刻ギャラリー」と称して一般公開しています。
たまたまこの彫刻ギャラリーのガイドをしている人にお会いして、お聞きすることができましたが、本格的に行われたのは関東大震災以降で、材料を調達するのも、職人を集めるのも大変だったそうです。1枚の板の大きさは縦1.3m、横2.3m、厚み20cmもあり、表面から少しずつ掘っていくのですが、立体構造になっているので最後はどうやって掘るのか想像できないほど、ただただ感心してしまい、本当は色々触りたくなるほど感激しました。見たことのない人は是非行ってみてください。法華経を知らなくても十分楽しめます。
帝釈堂に内殿にある彫刻ギャラリーを見終わったらそのまま廊下を通って大客殿に行けます。大客殿は大きな座敷を4部屋を一列に配した総檜造りの平屋建てが特徴で、昭和10年に完成しました。その建屋から眺める日本庭園は邃渓園と呼ばれ、大客殿の竣工に合わせて造られ始め、少しずつ手を加えながら昭和40年に現在の形となり、2016年には東京都指定名勝庭園に指定されています。
庭園が回廊でゆっくり楽しめるようにデザインされており、下の写真は一番奥の回廊からから大客殿を眺めた時の写真です。奥に大客殿が見えますね。大客殿と彫刻ギャラリー両方で400円ですから大変割安です。
<帝釈天参道>
柴又駅から帝釈天に向かう参道で、なかなかの風情ですね。寅さんに関するお土産がたくさん売られていました。
柴又帝釈天の観光も終わり、柴又駅のすぐそばのイタリアンレストラン「ピッツェリア・ルナ・エ・トルチェ」で基山商店(基峰鶴)の女将さんの小森綾子(りょうこ)さんを囲んでの日本酒の会が始まりました。実は綾子さんは小岩駅から柴又帝釈天の観光もご一緒でした。下の写真はお店の入り口の写真です。
お店は本格的なイタリアン料理店で、ナポリからピザを焼く釜を輸入したほどの凝りようです。この窯の燃料は薪ですから本格的なもので、こんな窯を持っているお店は日本広と言えども少ないと思います。
下の写真は鶴見さんのブログに載っていた写真をお借りしました。右から中央の方がこのお店の店長に鶴見直人さんで、右の方が蔵元の小森さん、左の方がなだやの渡部さんです。みんないい顔していますね。
鶴見直人さんは柴又そだちですが、辻料理師専門学校のフランス校を卒業したあと、フランス料理店で研修を積んでいる時に、縁があってイタリア料理に興味を持ってイタリアナポリのピッツアが気に入って数々の有名店で修業をし、ついに柴又にお店を持つことになったそうです。現在は日本ナポリピッツア職人協会の一員となり、、ピッツアの技術向上や普及に努めているそうです。また、本場にはナポリピッツア職人協会があってそこにも属しているそうです。
写真の釜はナポリから船便で50日かけて横浜に運び、そこから10トントラックで柴又まで運んだそうですが、イタリア人らしく全く梱包もなく裸でついたそうですが、無事何事もなく動いたようです。
僕たちはピッツアとは呼ばないでピザと呼ぶことが多いようですが、もともとナポリ生まれのピッツアがアメリカにわたっていろいろな形になってから日本にピザの名前で輸入されたので、この方が有名になっていますが、本場のピザはピッツアと呼ばないといけないようです。この日に頂いたピッツアをお見せします。旨そうでしょう。具が生地の上に載っているだけでなく包み込むようになっていました。
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鶴見さんの夢は全国大会で優勝して、ナポリに行くことだそうです。今年は入賞だたようですから、近いうちに実現するかもね。そうなったら盛大にお祝いするそうです。
<基山商店について>
基山商店は福岡市から南に約20㎞くらい下がった福岡県との県境にある佐賀県の基山町にある蔵です。創業は明治の初期に地主数名が共同で酒造りを始め、その後小森初蔵さんが一人で引き受けた後小森商店として酒造りをしていましたが、大正9年に現在の合資会社基山商店となっています。その後、地元に愛され、親しまれる酒を造ってきた蔵ですが、杜氏は肥後杜氏の鶴田岩一さんが担当してきました。
蔵の社長は2代目当主の小森純一ですが、確か2005年から2017年まで基山町の町長をしていたのようで、なかなか蔵の仕事に手が回らなかったようです。息子の小森健一郎が2001年に東京農大の醸造学部を卒業後、奈良県の梅乃宿酒造で1年半修行して、2002年に蔵に戻ってきて鶴田杜氏のもとで酒造りをしていましたが、父の町長の仕事が忙しくなったことから、蔵を閉めようという話が持ち上がった時に、長女の綾子(りょうこ)さんが、店の販売を担当することになったようです。
綾子(りょうこ)さんは結婚されて20年くらい専業主婦をしていたのですが、100年近く続けてきた蔵を閉めるのは忍びないと思い、弟と手を組んで蔵の仕事を始めたのが2013年で、もう5年になりますが、すっかり板についている感じですね。健一郎さんは2015年から杜氏兼専務取締役として、綾子さんは営業販売部長として活躍されています。
写真の方が綾子さんです。蔵の生産量は350石と小さいので、なかなか東京の酒屋さんでは買えるところが少ないようですが、数少ない酒屋の中になだやが選ばれるなんて、渡部さんは先見の目があるなと思ったんですが、色々聞いてみると渡部さんは奇麗な綾子さんに惹かれて食いついたようで、下心満杯の渡部さんでした。
この会が始まった経緯は渡部さんが小岩のあるピザ屋でここのピザおいしいねと店長に行ったら、柴又のピザ屋にはとてもかなわないと教えてくれたので、渡部さんがここにきて店長と仲良くなったのが始まりですが、この会が鶴見さんが柴又の店でピッツアを食べながらの日本酒の会をやりたいと渡部さんに声をかけたのがきっかけで、今回が第1回目だそうです。
<基峰鶴のお酒の紹介>
ですからお酒はすべて渡部さんが料理に合わせて用意したのですが、基峰鶴はたった4種類で他に8種類のお酒を飲む会になったのですが、僕の目的が基峰鶴のお酒なので、それだけを紹介することにしました。
1.基峰鶴 純米大吟醸 きたしずく 生
きたしずくは北海道で2013年に開発された酒造好適米で、親に雄町とほしのゆめの交配種であるF1と吟風を掛け合わせてて造ったお米で、吟風より酒質は落ちるが蛋白質が少ないので、雑味が少ないけど耐寒冷が強く育てやすいお米のようです。
このきたしずくを40%精米した純米大吟醸の生酒です。飲んでみるとしっかりした味とは言えないけど、奇麗な味わいが広がり、余韻も残るバランスのいいお酒でした。
この蔵の酵母は9号系がベースですが、純米吟醸以上はM310を入れて、香りを出すようにしているようです。このお酒なら首都圏でもOKだなと思いました。
2.基峰鶴 純米吟醸 山田錦 生
この蔵では25年くらい前から地元産の山田錦を使いたいと、基山町の農家に依頼して契約栽培をしています。この山田錦を50%精米した純米吟醸です。
飲んでみると、さすが山田錦ですね、うま味とふくらみを感じるおさけでした。香りはきたしずくの方が強く感じたけど、酸はこちらの方が少し多いような気がしました。お米によって味わいの出方が違うので、それに合わせた酸のバランスを取っているものと思われます。
2017年からフランスの地で、フランス人によるフランス人のための日本酒の会が開かれましたが、そこでプラチナ賞に選ばれたお酒だそうです。
3.基峰鶴 純米吟醸 レイホウ 生
レイホウは昭和44年に安定して数量が取れる飯米として開発され、昭和40年代には九州全体に普及しましたが、食味と耐病性に劣ることから徐々に減少し、最近は酒造用に栽培されてきたようですが、後で開発された夢一献に圧され気味とのことです。
この蔵ではレイホウとの相性が良いので、昔からつかってきたようですが、飲んでみるとそこそこおいしいお酒でした。華やかではないけど、癖のない飲みやすいお酒で、普段呑みには良いのかもしれないと思いました。
レイホウは飯米なので50%磨くことは少ないですが、50%精米の純米吟醸を出しているのは蔵の実力かもしれはないと思いました。
4.基峰鶴 純米吟醸 雄町 生
このお酒は55%精米の雄町の純米吟醸です。雄町と言えば山田錦の親にあたる古い生まれの米だけど、雄町ストと言われる人が大勢いるほど有名な酒造好適米です。雄町は造り手により、色々な味わいを出せるお米と言われているので、どんな味わいか興味がありました。
飲んでみると上記の3つの酒とはバランスが違い、旨が口に含んだ時にすぐ立ち上がるのではなく、少し後ろに来るのでアミノ酸が多いのかなと思っていたら、これは蔵で1年熟成したお酒なのが判りました。それならこのバランスになったのは理解できます。
杜氏の弟さんが造りたてのお酒が奇麗すぎたので熟成させたそうですが、生なので熟成が少し進み過ぎたのかもしれません。特に温度が上がると重たく感じました。
雄町は難しいけどやりがいのあるお酒なので、これからもチャレンジしてください。僭越ですが、雄町の酒としては茨城県の結城酒造の結を是非飲んでみてください。絶対に参考になると思います。
以上で飲んだお酒の紹介は終わりますが、この蔵のお酒は派手さはないけど柔らかさを持ったバランスの良いお酒を目指していることはわかりましたが、もう一つきらりの光るものがほしい気がしました。。よろしくお願いします。
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