置賜地区の地酒サミットで見つけた蔵の紹介
米鶴酒造の梅津社長さんからFACEBOOKで置賜地区の地酒サミットが米沢市で行われ、おいしい米沢牛が食べれる良い会ですよというお誘いがありました。置賜地区がどんなところかはよく知らなかったけど、山形県中央の南部だということくらいは薄々わかっていて、東光の小嶋総本店や米鶴酒造や雅山流の新藤酒造があることは知っていましたが、他の蔵ははっきり言ってほとんど知らないなのに17蔵が集まるそうなので、何か新しい発見ができるかもしれないと思ったのと、米沢牛が食べれる魅力に誘われて、新幹線日帰りで参加することにしました。
調べてみると置賜地区は確かに山形県の中央南部にあり、南は福島県、東は宮城県、西は新潟県に接していますが、その間には高い山が連なっており、その山々に囲まれた盆地のことを言うようです。主な街は米沢市、南陽市、長井市などがありますが、この地区がまとまってこのような企画をしているとは知りませんでした。
この会の主催はおきたま食のモデル地域実行協議会で、この協議会は山形おきたま農業協同組合の中にあるようなので、農協が主体でこの地区の酒造組合と力を合わせて行われているようで、今回が4回目だそうです。でも前回の第3回は平成28年の秋に行われたようで、きちっと定期的に行われているようではありませんが、この協議会の会長の発言によれば、第5回目は東京でやりたいとの発言がありました。東京ではあまり知られていない蔵が多いので、成功するかちょっと心配です。
今回は米沢市の結婚式場のグランドホクヨウで3月11日に行われましたが、参加者は200名ですが、会場が広いのでゆったりとした試飲会でした。写真を付けておきますが、東京ならこの倍の人を詰め込むのではと思います。
<おきたま地酒サミットのやり方について>
17蔵が中央にブースを構えていて、それを取り囲むようにテーブル席が用意されていて、とてもゆったりとして、蔵元さんとゆっくり話ができたのは良かったのですが、蔵元が来ていない蔵が半分くらいあったのはちょっと残念でした。また蔵の人が来ていてもお酒のことをあまり詳しくない方もおられたこともちょっと残念でした。僕は蔵元の方が出ている蔵と主に取材いたしましたので、僕が取り上げた蔵以外にも面白い蔵があったかもしれないと思っています。特にこの地区の若手の蔵元杜氏で造った「おきたま5蔵会」のメンバーには大変興味がありましたが、その大部分の蔵元がこられていなかったのはとても残念でした。きっと造りの真っ最中なので参加できなかったのではと思われますので、開催時期に関してはもっと検討してほしいと思います。
もう一つ残念なことがありました。それは参加者に配られた出展地酒一覧表は、わかり易くてとても良かったのですが、お酒の酒質の表示で、原料米は書いてあったのですが、精米度が書かれていないのは驚きました。精米度はお酒の質を考えるとき非常に重要なことの一つなので、絶対に書いてほしい情報です。もう一つ、当日のブースに来られている蔵の人の名前も書いて欲しかったです。これについては間際にならないと決まらないので書きにくいい情報とは思いますが、知りたい情報の一つですので、やってもらいたかったな。
<GI表示について>
会場でのご挨拶で山形県が日本酒のGI表示で県単位のGI表示山形を2016年12月に日本で初めて取ったことを知りましたが、これは山形県の日本酒に関する様々な関係者の努力によって達成した素晴らしいことですし、素直にお祝い申し上げます。GI表示はお酒の品質を保証するものであることはわかりますが、GI表示をするには蔵がどのようなことをしなけれないけないのかの説明がありませんでしたし、消費者にとって具体的にどのようなメリットがあるのかが良くわかりませんでした。例えばこの表示には厳しい審査があって表示できるのであれば、GI表示された酒はいい酒に違いないと思いますので、消費者にとってはわかり易いけど、GI表示するのにお金や時間や手間がかかり過ぎれば、蔵元にとってはめんどくさいことになるわけですから、生産者は誰も取らなくなる恐れがあると考えます。ですから、生産者も消費者もメリットのある仕組み造りであることを説明してほしかったです。
<僕が見つけた蔵の紹介>
冒頭に述べましたように、東光と雅山流と米鶴については知っている方も多いと思いましたので、紹介するのはやめて、僕が初めての蔵ばかりを紹介します、でも東光も雅山流も蔵人は来ていましたが、蔵元が来ていなかったのは残念でした。事前に雅山流の新藤さんと連絡を取った時に、この時期は造りに忙しい時で参加できないとおっしゃっていました。仕方がないのかな。
1.東の麓酒造
この蔵は南陽市の宮内にあり、創業は明治29年で、酒田屋利右衛門の酒造部門を地元の在郷商人の遠藤家の栄次が引き継いだのが始まりで、当時は山栄遠藤酒造店という名前だったようです。(色々調べたけれども僕のような表現をした記事は一つもありませんが、色々読み解くと僕の表現が正しいのではと思っています)
従って遠藤家が代々当主として引き継いで酒造りを続けてきました。お酒の特徴は丁寧な酒造りを する蔵で、 厳選した材料と高い醸造技術により、うまい酒造りをして いるにもかかわらず、ほんの数年前までは、地元だけで飲まれてい たようです。製造部長の新藤さんのお話では平成22年に東の麓酒造と名を変えたようです。
去年までの社長は遠藤孝蔵さんでしたが、、去年の夏に88才で亡くなられて、現在は出羽桜酒造の仲野さんが社長を兼務されているそうです。詳しいことはわかりませんが、出羽桜酒造とは縁戚関係があったようです。現在の蔵の生産量は600石強のようです。
この方が製造部長の新藤栄一さんです。その下に杜氏がおられますが、なんとその杜氏さんは元東北泉の杜氏をされていた神理(じんさとし)さんでした。神さんは3年前からこの蔵に来られて酒造りをしています。
持っていただいたのは純米大吟醸の天弓 藍天です。このお酒は新藤部長と故遠藤社長が何か新しいコンセプトの酒を造ろうということで、東北芸術大学と共同開発したお酒です。丁度神さんが蔵に来た時から造り始めたようです。
天弓とは雨が降った後の晴れの日に現れる虹のことで、この酒のシリーズには「晴れ(天)」と「雨」シリーズがあり、藍天は「晴れ」でやや甘口、桜雨、白雨、喜雨が「雨」で辛口だそうです。
今回は藍天しか飲んでいませんが、藍天は雪女神40%精米、アルコール度16.5、日本酒度-2、酸度1.3の酒質で、18号酵母を使っているのでカプロン酸系の香ですが、あまり強く香りを出さないやや甘めの飲みやすいお酒でした。
この蔵のスタンダードであるお酒の「東の麓」のお酒が9号酵母を使っているけど、カプの香りをださずに酢酸イソアミル系の爽やかな香りのするように作られていて、やや辛口のお酒でした。ですから、藍天はやや今風のお酒を狙ったものと思います。これからも新藤さんが中心になって蔵を引っ張っていくのでしょうが、仲野さんの味がどれだけ出てくるのか楽しみです。
2.後藤酒造
この蔵は江戸時代中期の1788年に初代後藤卯左衛門が高畠町に創立したのが始まりのようです。高畠町には後藤酒造のほか米鶴酒造、後藤康太郎酒造の3蔵がありますが、その中で高畠駅に一番近い最上川ほとりにあります。
この蔵の近くには「辯財天」が祭ってある奥津島神社があり、その神社から「辯天」を名乗ることが許されたので、酒名を「辯天」としたそうです。「辯天」とは七福神の中で、音楽や芸能をつかさどる女神のことを言うそうです。
下の写真方は専務取締役の後藤大輔さんです。大輔さんは蔵元の息子さんで東京農大を出られて、20年前から杜氏と一緒に酒造りをしているそうです。現在47才だそうですから、酒造りはほとんど彼に任されているようで、現在の生産高は600石のようです。
大輔さんには2本の辯天を持っていただきました。右手に持っているラベルの青い辯天は純米大吟醸原酒で、お米は出羽燦燦48%精米で、アルコール度数17.5、日本酒度+3、酸度1.5です。協会18号酵母を使っていますが、それほどカプの香りはせず、口に含むとふあっと旨みと甘みが広がり後味がすっと消えていく良いバランスのお酒でした。
左手で持っていただいた辯天は特別純米原酒で、お米は出羽の里60%精米のお酒です。アルコール度数は17度、日本酒度+3、酸度1.5です。飲んでみると2回火入れの香りがするために吟醸香がマスキングされてしまい、ちょっと残念でしたが、うま味と酸味のバランスが純米大吟醸と同じように良いなと思いました。
大輔さんに現在どんなお酒造りをしているのかお聞きしたら、先代が香り高い酒を求めていたので、自分としては香りを抑えた旨みを活かした食中酒を求めているそうです。
この蔵は全国新酒鑑評会でここ20年間で11回も金賞を取っている蔵で、小さい蔵の中では実力もあり、頑張っている蔵だと思います。
3.後藤康太郎酒造
この蔵は後藤酒造と同じ高畠町にありますが、後藤酒造とは縁戚関係はないそうです。蔵は高畠駅から南東に5kmほど山の麓の方に行ったところにあり、近くに学業の神様として有名な日本三文殊の一つの亀岡文殊があります。その文殊がある文殊山からの伏流水を仕込み水にしています。創業は江戸時代中期だそうで、とても古い蔵ですが、地元のための酒造りを続けている地道な蔵で農村型蔵と言えるのかもしれません。
小さいながら自社精米機を導入するなど、酒造りにはきちっとした取り組みをしていて、特に純米酒は40年前から取り組んでおり、地元では純米酒の錦爛(きんらん)と言われるほどだそうです。
生産高は昔は1000石くらいあったようですが、現在は500石強の生産量のようです。写真の方は蔵元の息子さんの後藤隆暢(たかのぶ)さんで、現在41歳で蔵元杜氏として酒造りをしておられます。隆暢さんは東京農大を卒業され、他の酒屋に勤めた後、15年前の26歳の時に蔵に戻ったそうです。
隆暢さんには2本のお酒を持ってもらいました。右手に持っているお酒は羽陽錦爛の純米大吟醸で、原料米は雪女神40%精米、アルコール度数16度、日本酒度-7、酸度1.3です。このお酒には山形県のGIマークがついていました。飲んでみると日本酒度-7の割には甘く感じないけど、口の中ほどまで旨みを感じるので、アミノ酸が多いのではと思いました。お聞きするとアミノ酸度は1.1とのことでした。
左手に持っていただいたお酒は、純米吟醸高畠の四季で、原料米は出羽燦燦精米度不明、アルコール度15度、日本酒度+3、酸度1.3です。飲んでみるととてもすっきりした飲みやすいお酒でした。このタイプのお酒がこの蔵のベースの味のようです。
隆暢さんの造りたいお酒はどんなお酒ですかとお聞きしたら、この蔵は伝統のある蔵なのでその技術は伝承しつつ、世の中の流行りを追うことなく、派手ではないけど時代にあった酒を気づかれないように造っていきたいそうです。これからどんなお酒に落ち着いていくのかは大変興味があります。
4.中沖酒造店
この蔵はJR奥羽本線の赤湯沢駅から西に8㎞程行ったところ、フラワー長井線の西大塚駅の南にあります。ここは置賜地区の中央のやや北側にあり、まさに米どころにあると思いますが、国内最大級のダリアの生産地で有な場所のようです。
創業は大正12年ですからそれほど古い蔵ではないですが、創業当時から家訓の「酔心は浄心に宿る」をモットーに地元向けのお酒を造っており、生産量が現在300石位の小さな蔵です。
写真の方は3代目蔵元の高橋義孝(よしゆき)さんです。現在42歳の蔵元杜氏で、専門の大学を出ているわけでなく、福井県の早瀬浦で1年修業をした後、蔵に戻って酒造りを続けておられます。置賜地区の蔵元杜氏が5蔵集まって五蔵会を造っていますがそのメンバーの一人です。この会で唯一お逢いした五蔵会の杜氏さんでした。
持っていただいたのは代表銘柄の羽陽一献の純米大吟醸 醸心(じょうしん)です。原料米は雪女神40%精米、酵母は山形酵母KAのブレンド、アルコール度16度、日本酒度-4、酸度1.4のお酒です。
飲んでみるとそれほど強くはないが、さわやかな香りの中に甘みと旨みが奇麗に広がってぱっと消えていくお酒で、雪女神らしい特徴をうまく引き出しているように思えました。
純米吟醸の夜游(やゆう)も飲みましたが、すっきりした辛口で、普段飲みできるおさけでした。噂によるとこの蔵には大吟醸10年氷温貯蔵熟成酒1升2万円もするお酒があるようで、飲んでみたかったです。この蔵は小さいけど色々とチャレンジしているようなので、大いに頑張ってもらいたいです。
5.香坂酒造
この蔵は米沢市中央にあり、創業は大正12年ですから比較的若い蔵です。ホームページの会社紹介によると、全国でも珍しいもち米とワイン酵母を使ったお酒とか山形県で一番日本酒度の高い辛口(+19)のお酒とか、しぼりたての純米酒を-30℃で凍結させたお酒とか珍しいタイプのお酒を造っているようですが、この会には持ってきていませんでした。
写真お方は従業員の黒岩さんで、2本のお酒を持っていただきました。左手で持っているのが純米大吟醸紅梅、搾りたて生原酒です。お米は出羽燦燦ですが、どぶろくのような澱がいっぱいのお酒ですが、日本酒度が+4ですがそれほど辛くなく適度な甘みですっと飲めました。
右手のお酒は純米吟醸紅梅で、お米は出羽燦燦でアルコール度数15.5、日本酒度+3.5、酸度1.3でした。飲んでみると非常に軽い感じで飲めてしまうお酒でした。
この蔵の社長は東京農大を出られ、現在66歳の香坂洋一さんですが、息子さんの香坂洋平さんも東京農大を出られて、現在蔵で活躍中とのことでした。お二人ともこのブースには来られていなかったのはとても残念でした。お二人に酒造りの考え方など色々なことをお聞きしたかったです。
以上で蔵の紹介は終わりますが、最後にこの会を紹介していただいた米鶴酒造の梅津さんの写真を載せておきます。梅津さんは会の最初に山形GIについてご紹介していただきました。蔵の人とのツーショットです。
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