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2018年4月20日 (金)

豊酒造(華燭)は一味も2味も違うお酒を目指しています

今年も3月の21日の行われた福井県酒造組合が主催する春の新酒まつりに参加することにしましたので、その前日にどこか蔵見学をしたいと思い、いろいろお願いした結果、鯖江市にある豊酒造・華燭を訪問することになりました。この蔵には18年前に訪問したことのある蔵で、去年の春の新酒まつりで久しぶりに社長のお逢いして、飲ましてもらった20年古酒が素晴らしかったので、ぜひ訪問したいと思っていました。 

<蔵の歴史と現状>

この蔵は鯖江駅から西に2-3㎞程行ったところにある小さな蔵で、創業は1753年と古い蔵ですが、9代目の佐々木惣吉さんが明治時代にj国立醸造試験所の一期生として醸造学を学び近代的な造りを取り入れて、蔵元が酒造りに深くかかわるようになったそうです。その後清酒鑑評会に入賞するためにYK35といわれた山田錦と協会9号酵母を使った酒造りを行うなど一定の成果を上げてきましたが、それを大きく変えたのが現在の社長で11代目の蔵元の佐々木宗利さんです。下の写真の左の方です。 

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右側の方が息子さんの佐々木克宗さんです。 

この蔵には以前には杜氏がおられて、古くは丹波杜氏、次が新潟杜氏、そして最近は能登杜氏と変わってこられて、宗利さんはこの3流派の杜氏の杜氏のもとで修業をし、数々の技術を習得し、全国新酒鑑評会や金沢国税局酒類鑑評会で金賞を取るまでになり、酒の生産高も頑張って1000石を達成するまでになったそうです。それで、販路を広げようと東京の酒販店に交渉すると、東京で売るためにはこういう味の酒にしろとかいろいろ言われているうちに、知らず知らずのうちに当社の当蔵の個性が失われてきたことに気が付いたそうです。特に最近は金賞を取るためのレシピが出来上がっていて、誰でも同じようなお酒が造れる時代になり、ある意味では蔵の個性が失われる傾向があることに危機感を感じたそうです。 

そこで平成14年(2002年)からは自らが杜氏になり、自分の造りたいお酒だけを造るようにしたそうです。僕が蔵を初めて訪れたすぐ後のことだったのですね。具体的には福井県の気候風土が生み出す地酒に徹して、基本的には山田錦はやめて福井県産の五百万石に特化して、協会9号酵母もやめて福井県で開発した酵母とM310酵母だけを使った、昔からの伝統ある淡麗なお酒造りを徹底するようにしたそうです。家族+αだけで酒造りをするので、お米の洗米、蒸し、麹造り、酒母、醪造りを見直し、必要最低限の作業に抑える努力をしてきたそうです。ですから蔵元杜氏だけで自分のやりたい酒を造るのであればどんなに頑張っても500石どまりだそうで、現在は約300石の生産量で少しずつ二したいそうです。 

宗利さんが杜氏になって酒造りを初めて16年目になり、今年で62才になるそうですが、6年前に息子の佐々木克宗さんが茨木大学の農学部を卒業して、蔵に戻ってきて酒造りを始めたので、いずれ息子に引き継いでもらいたいと思い、自分が持つ技術を全て教えてきました。その結果、昨年度に息子が造った精米度50%の五百万石の純米大吟醸が全国新酒鑑評会で入賞する実績を上げたので、今年の造りから商売のための酒造りはすべて息子に任せるようにしたそうです。宗利さんはこれからどうするのですかとお聞きすると、やりたいことは一杯あり、今までやりたくてもやれなかったことや商売の幅を広げる新しいことをやるそうです。 

その具体的なものの一つに昨年から販売し始めた「20年古酒の1997酒造り宗利」や、今年初めて造った酒で、これから販売する「華燭 無吟香吟醸酒」があります。前者は常温のタンクで20年熟成した古酒ですが、普通の古酒のよりずっと色が薄く熟成香が弱いけどテクスチャーが素晴らしく、柔らかくスウットと飲めるお酒です。後者は吟醸造りだけれでも吟醸香が全くないお酒を造ったそうで、お燗にすると最高にその実力を発揮する酒でした。いずれも宗利さんが造った逸品だと思います。詳しい内容は後で紹介します。そのほか発酵食品の開発に凝っていて、すでに食べる甘酒、塩麹より優しい醴塩、造り酒屋のこだわりの味噌を造って販売していますが、これからもっといろいろな発酵商品を増やしていくそうです。 

克宗さんも負けてはいません。売りを目的としたお酒造りは宗利さんの酒造り技術を踏襲するだけでなく、その中に自分の技をきらりと埋め込んで一層完成させると同時に、新しいチェレンジもしているそうです。新しいチャレンジを行うと言っても今風なものではなく、オリジナリティの高い新しい酒造りのようです。一つだけ見せてもらった物のは4-5%の微炭酸低アルコール酒で、飲ませてもらったけど僕には飲みやすいけどアルコールが低すぎる気がしましたが、さらに改良して何とか商品化したいそうです。 

こうやって見ると、今年から新しい弥次喜多コンビの親子による新しい酒造りがスタートする元年になりような予感がします。業界をあっと言わせるお酒を発信してもらいたいけど、お話を聞いてみると、これで儲けてやろうというような気合は感じない、とても自然体の取り組んでいる姿勢が良いなと思いました。とても息の合ったお二人のように思えました。 

<蔵見学>

それではどんな蔵で酒造りをしているのかを見学させていただきました。次に蔵の見学の様子をお見せしますが、2000年一度訪問したことがあるのですが、外観はほとんど変わっていない気がしました。 

蔵の正面の建屋です。昔のままです。 

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書面玄関の入口の土間です。18年前とほとんど変わっていませんでした。 

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洗い場のようですが、奥に薮田の搾り機が見えます。床はコンクリートで今流行りのリノリウムではありませんでした。 

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次の写真には和釜と放冷機が見えますが、古いものを使っています。

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麹室は石壁でしたが、内部は木製だそうです。室は1部屋しかないので、温度管理が大変だそうです。いずれ変えなければいけないと考えているようでした。中には天幕式の製麹機と中箱(10~15kg)の床があるだけだそうです。 

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仕込み部屋の2階が麹のさらしと酒母室になっているようです。 

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仕込み蔵は解放タンクが並んでいました。空調はしていません。 

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搾り機の隣に手製の袋搾り機のようなものがありました。組み立て型の槽搾り機のようなものらしいです。この写真ではどう使うかわからないでしょうね。良いお酒はこれで絞った後薮田を使うそうです。 

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貯蔵室は結構広くて沢山の密閉型のタンクが並んでしました。ここのどこかに20年古酒のタンクがあるようです。 空調設備はありません。

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ご覧いただければわかるようにサーマルタンクが1本もありません。それはこの蔵のお酒は基本が火入れして常温貯蔵するのがベースなので、生原酒は冬場だけしているためにサーマルタンクがいらないそうです。 

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火入れの基準は瓶貯蔵するものは1回火入れ、タンク貯蔵するのは2回火入れだそうです。

以上で蔵の内部の紹介は終わりますが、特に蔵の設備には新しいものはなく、ごく普通の昔ながらの蔵をそのまま使用しているのようでした。でもあまり整理整頓されていないのがちょっと気になりました。蔵の中を奇麗にしないと奇麗なお酒にならないと思っているので、それだけは気になりました。

<試飲したお酒について>

最後に写真のようなお酒を試飲させていただきました。この写真はちょっとピンボケで拡大しても良くわからないと思いますので、左からその銘柄を示すことにします。この蔵が扱っている普通酒以外のほとんどすべての銘柄だと思います。蔵訪問でこんなに用意していただいたのは生まれて初めての経験です。 

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① 華燭大吟醸 滴 五百万石40%精米、ALC17度、日本酒度+5、酸度1.2 3年熟成酒 

② 華燭大吟醸 五百万石40%精米、ALC15度、日本酒度+4.5、酸度1.3 10年熟成酒 

③ 華燭純米大吟醸 五百万石40%精米、ALC16度、日本酒度+2、酸度1.2 

④ 華燭純米大吟醸 五百万石50%精米、ALC16度、日本酒度+1、酸度1.2 

⑤ 華燭純米大吟醸 五百万石50%精米、ALC16度、日本酒度+1、酸度1.2 

⑥ 華燭純吟 山田錦55%精米、ALC15度、日本酒度+0、酸度1.3 

⑦ 五穀豊穣 五百万石麹55%、掛60%精米、ALC15度、日本酒度+10、酸度1.2 

⑧ 華燭純米酒 低温瓶内貯蔵酒 五百万石60%精米、ALC18度、日本酒度+1、酸度1.7 

⑨ 越前国府 五百万石麹65%、掛60%精米、ALC155度、日本酒度+3月、酸度1.4 

⑩ 華燭特別純米 土蔵育ち 五百万石60%精米、ALC16度、日本酒度+6、酸度1.3 

⑪ 華燭本醸造 五百万石65%精米、ALC14.5度、日本酒度+0.5、酸度1.2 

⑫ 華燭1997酒造り人宗利 酒質すべて非公開 

⑬ 華燭 澄み透る吟醸酒 無吟香 五百万石55%精米、ALC15度 日本酒度+10、酸度1.2 

これらのお酒をひとつづつは説明しませんが、この蔵のお酒は+0~+5ぐらいで、酸度は1.2~1.3を標準としているようで、たぶんアミノ酸もあまり出さないお酒なので、淡麗と言われていますが、熟成させることにより味を調えているのだと思います。どのくらい熟成させるかは銘柄によって違うようですが、表示がないので詳しいことはわかりません。低温で熟成しているのは②と⑧だけではないかと思います。 

酵母は精米度50%以下の大吟醸クラスは福井県のF501酵母を使い、純米酒以下はM310(10号酵母)を使っているそうです。 

⑥のお酒だけ山田錦を使っているのは、福井県産の山田錦を使ったお酒を町おこしのために造ったためで、来年も山田錦でと言われたら造らないそうです。 

この中で興味があるのは④と⑫と⑬のお酒でしたので、それだけを紹介します。 

④ 華燭 純米大吟醸 

Dsc_0786_2のお酒は息子さんの克宗さんが造った28BYの出品酒で、特別の農家に作ってもらった五百万石を50%精米したものを使た純米大吟醸で、酵母は福井県のF501です。このお酒が全国新酒鑑評会で入賞したお酒です。 

精米度50%の純米酒で全国新酒鑑評会で入賞した例はほとんどないと思うので、凄いことだと思います。このお酒はラベルが2種類あって、写真の④のラベルは宗利さんが造ったもので、⑤のラベルが克宗さんが造ったラベルです。克宗さんのラベルは五百万石、50%精米、F501の5-5-5という意味をあらわしたものだそうです。少し漫画チックで、やっぱり若い人の感性は違うね。 

味の方はというと、酢酸イソアミル系の爽やかな香りの中に、奇麗なふくらみを感じるお酒で、この蔵としてはちょっと今風かな。でもこのお酒が2000円で買えるのならコストパフォーマンスは良いと思います。 

⑫ 華燭1997酒造り人宗利 

Dsc_0784このお酒が去年発売した20年古酒です。この蔵は昔からタンクにいろいろなお酒を寝かせていたようですが、このお酒だけは熟成がすごくうまくいって出来たようです。 

酒質に関する情報は一切非公開で、想像してくださいとのことでした。精米度は60%と聞いたことがありますので、日本酒度や酸度はきっとここの定番の辛口系と同じだと思います。要はどのように熟成させるかだと思いますが、20年間タンクに放置していたわけではないそうです。ここに何かノウハウがあるのかもしれません。 

飲んでみると20年の古酒とは言えない軽い熟成香がすれけどあまり気になりません。このお酒の良いのは何といっても口当たりの柔らかさで、甘いわけではないけど口の中に軽いうまみが残ります。これは精米度が60%なので熟成中で淡白質がアミノ酸に変化したのではないかと思いました。このお酒の良さを楽しむのであれば常温が良いと思います。 

普通の古酒は色も香りも付いて紹興酒のようになるけど、それはむしろ積極的に古酒になるように甘みや旨みをのあるお酒を熟成しているからだと思います。僕のお酒の先生の菅田さんが自宅で大関のワンカップを部屋で熟成させた実験をしていますが、3-5年は色が濃くなってきましたが、それを過ぎるとほとんど色が変わらなかったそうです。きっと甘みや旨みが少ないお酒は熟成が遅いのだと思います。 

しかもこのお酒の販売方法が変わっています。この蔵に来た人には問屋でも酒販店でも個人でも価格は同じで500mlが2000円で、購入した人がいくらで売ろうとかまわないそうです。 

⑬ 華燭 澄み透る吟醸酒 無吟香 

Dsc_0785このお酒は今年4月から発売されつ吟醸酒ですが、摩訶不思議なお酒です。原料米は麹は五百万石55%ですが、掛米は不明です。アルコール度数は15度、日本酒度は+10、酸度は1.2とごく普通の辛口の吟醸酒のようですが、実は造りが違うようです。吟醸酒造りですが、吟醸香を一切出さないように作ったそうです。どうしてそんなお酒を造ったのでしょうか 

飲んでみると確かに吟醸香はしないし、うま味は少ないので、ちょっと物足りないお酒でした。不思議なことに、これをお燗すると、全く姿を変えます。少し甘みが出てくるのですが、お燗独特の香りもなく後味に嫌みがなく、飲み飽きしないいくらでもおいしく飲めるお酒になりました。

吟醸香のない吟醸酒を造るとこんなお酒になることを、前もって予測していたとしたら、凄いことです。

価格は500mlで1000円ですが、相談すれば1升瓶でも売ってくれるようです。 

以上でお酒の紹介は終わりますが、このほかにも色々な古酒がでてきました。30年ものもあり、飲んでみるとウイスキーのようなおさけもsりました。この蔵の古酒造りの技術は凄いものがあります。 

<発酵食品について> 

この蔵では醴塩、甘酒、味噌を扱っていますが、僕は醴塩(れいしお)が気に入りました 

Reishio_2塩は古代の甘酒(醴)を造る過程に天然塩を加え発酵することにより、塩糀の塩の使用量を1/3(当社比)で甘味と塩味が特徴の塩糀とは一味違う調味料になったそうです。タンパク質分解酵素・アミノ酸などの成分は塩糀と変わりませんので
塩分を控えたい方には最適だそうです。
 

ここではねぎを生のままで切ったものと醴塩を合わせたものを出していただきました。ねぎの香と感触を残しているものの、醴塩の塩分と旨みがバランスしているので、最高のつまみでした。これはそのまま冷凍しておくといつでも食べられるそうです。 

写真をお見せしますが左はへしこの醴塩あえで、右がねぎと醴塩和えです。 

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社長から醴塩の絶品レシピを教えてもらったので、家に帰ってから造ってみました。妻にも褒められたのでご紹介します。それは豚肉の醴塩漬けです。豚肉のロース部分(バラでもいい)を醴塩と混ぜてチャック袋に入れ24時間冷蔵庫で保存します。それをお湯の中で約40分煮るだけです。豚肉の中に醴塩の旨みが入り、それだけで絶品のおつまみになります。しかもゆでた残り湯はスープとして使えます。僕はコンソメとわかめともやしを入れて食べました。騙されたと思って造ってみてください。

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2018年4月15日 (日)

置賜地区の地酒サミットで見つけた蔵の紹介

米鶴酒造の梅津社長さんからFACEBOOKで置賜地区の地酒サミットが米沢市で行われ、おいしい米沢牛が食べれる良い会ですよというお誘いがありました。置賜地区がどんなところかはよく知らなかったけど、山形県中央の南部だということくらいは薄々わかっていて、東光の小嶋総本店や米鶴酒造や雅山流の新藤酒造があることは知っていましたが、他の蔵ははっきり言ってほとんど知らないなのに17蔵が集まそうなので、何か新しい発見ができるかもしれないと思ったのと、米沢牛が食べれる魅力に誘われて、新幹線日帰りで参加することにしました。 

調べてみると置賜地区は確かに山形県の中央南部にあり、南は福島県、東は宮城県、西は新潟県に接していますが、その間には高い山が連なっており、その山々に囲まれた盆地のことを言うようです。主な街は米沢市、南陽市、長井市などがありますが、この地区がまとまってこのような企画をしているとは知りませんでした。 

この会の主催おきたま食のモデル地域実行協議会で、この協議会は山形おきたま農業協同組合の中にあるようなので、農協が主体でこの地区の酒造組合と力を合わせて行われているようで、今回が4回目だそうです。でも前回の第3回は平成28年の秋に行われたようで、きちっと定期的に行われているようではありませんが、この協議会の会長の発言によれば、第5回目は東京でやりたいとの発言がありました。東京ではあまり知られていない蔵が多いので、成功するかちょっと心配です。 

今回は米沢市の結婚式場のグランドホクヨウで3月11日に行われましたが、参加者は200名ですが、会場が広いのでゆったりとした試飲会でした。写真を付けておきますが、東京ならこの倍の人を詰め込むのではと思います。 

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<おきたま地酒サミットのやり方について>

17蔵が中央にブースを構えていて、それを取り囲むようにテーブル席が用意されていて、とてもゆったりとして、蔵元さんとゆっくり話ができたのは良かったのですが、蔵元が来ていない蔵が半分くらいあったのはちょっと残念でした。また蔵の人が来ていてもお酒のことをあまり詳しくない方もおられたこともちょっと残念でした。僕は蔵元の方が出ている蔵と主に取材いたしましたので、僕が取り上げた蔵以外にも面白い蔵があったかもしれないと思っています。特にこの地区の若手の蔵元杜氏で造った「おきたま5蔵会」のメンバーには大変興味がありましたが、その大部分の蔵元がこられていなかったのはとても残念でした。きっと造りの真っ最中なので参加できなかったのではと思われますので、開催時期に関してはもっと検討してほしいと思います。 

もう一つ残念なことがありました。それは参加者に配られた出展地酒一覧表は、わかり易くてとても良かったのですが、お酒の酒質の表示で、原料米は書いてあったのですが、精米度が書かれていないのは驚きました。精米度はお酒の質を考えるとき非常に重要なことの一つなので、絶対に書いてほしい情報です。もう一つ、当日のブースに来られている蔵の人の名前も書いて欲しかったです。これについては間際にならないと決まらないので書きにくいい情報とは思いますが、知りたい情報の一つですので、やってもらいたかったな。 

<GI表示について> 

会場でのご挨拶で山形県が日本酒のGI表示で県単位のGI表示山形を2016年12月に日本で初めて取ったことを知りましたが、これは山形県の日本酒に関する様々な関係者の努力によって達成した素晴らしいことですし、素直にお祝い申し上げます。GI表示はお酒の品質を保証するものであることはわかりますが、GI表示をするには蔵がどのようなことをしなけれないけないのかの説明がありませんでしたし、消費者にとって具体的にどのようなメリットがあるのかが良くわかりませんでした。例えばこの表示には厳しい審査があって表示できるのであれば、GI表示された酒はいい酒に違いないと思いますので、消費者にとってはわかり易いけど、GI表示するのにお金や時間や手間がかかり過ぎれば、蔵元にとってはめんどくさいことになるわけですから、生産者は誰も取らなくなる恐れがあると考えます。ですから、生産者も消費者もメリットのある仕組み造りであることを説明してほしかったです 

<僕が見つけた蔵の紹介> 

冒頭に述べましたように、東光と雅山流と米鶴については知っている方も多いと思いましたので、紹介するのはやめて、僕が初めての蔵ばかりを紹介します、でも東光も雅山流も蔵人は来ていましたが、蔵元が来ていなかったのは残念でした。事前に雅山流の新藤さんと連絡を取った時に、この時期は造りに忙しい時で参加できないとおっしゃっていました。仕方がないのかな。

1.東の麓酒造 

この蔵は南陽市の宮内にあり、創業は明治29年で、酒田屋利右衛門の酒造部門を地元の在郷商人の遠藤家の栄次が引き継いだのが始まりで、当時は山栄遠藤酒造店という名前だったようです。(色々調べたけれども僕のような表現をした記事は一つもありませんが、色々読み解くと僕の表現が正しいのではと思っています) 

従って遠藤家が代々当主として引き継いで酒造りを続けてきました。お酒の特徴は丁寧な酒造りを する蔵で、 厳選した材料と高い醸造技術により、うまい酒造りをして いるにもかかわらず、ほんの数年前までは、地元だけで飲まれてい たようです。製造部長の新藤さんのお話では平成22年に東の麓酒造と名を変えたようです。 

去年までの社長は遠藤孝蔵さんでしたが、、去年の夏に88才で亡くなられて、現在は出羽桜酒造の仲野さんが社長を兼務されているそうです。詳しいことはわかりませんが、出羽桜酒造とは縁戚関係があったようです。現在の蔵の生産量は600石強のようです。 

Dsc00338_2この方が製造部長の新藤栄一さんです。その下に杜氏がおられますが、なんとその杜氏さんは元東北泉の杜氏をされていた神理(じんさとし)さんでした。神さんは3年前からこの蔵に来られて酒造りをしています。 

持っていただいたのは純米大吟醸の天弓 藍天です。このお酒は新藤部長と故遠藤社長が何か新しいコンセプトの酒を造ろうということで、東北芸術大学と共同開発したお酒です。丁度神さんが蔵に来た時から造り始めたようです。 

天弓とは雨が降った後の晴れの日に現れる虹のことで、この酒のシリーズには晴れ(天)」「雨」シリーズがあり、藍天は「晴れ」でやや甘口、桜雨、白雨、喜雨が「雨」で辛口だそうです。 

今回は藍天しか飲んでいませんが、藍天は雪女神40%精米、アルコール度16.5、日本酒度-2、酸度1.3の酒質で、18号酵母を使っているのでカプロン酸系の香ですが、あまり強く香りを出さないやや甘めの飲みやすいお酒でした。 

この蔵のスタンダードであるお酒の「東の麓」のお酒が9号酵母を使っているけど、カプの香りをださずに酢酸イソアミル系の爽やかな香りのするように作られていて、やや辛口のお酒でした。ですから、藍天はやや今風のお酒を狙ったものと思います。これからも新藤さんが中心になって蔵を引っ張っていくのでしょうが、仲野さんの味がどれだけ出てくるのか楽しみです。 

2.後藤酒造 

この蔵は江戸時代中期の1788年に初代後藤卯左衛門が高畠町に創立したのが始まりのようです。高畠町には後藤酒造のほか米鶴酒造、後藤康太郎酒造の3蔵がありますが、その中で高畠駅に一番近い最上川ほとりにあります。 

この蔵の近くには「辯財天」が祭ってある奥津島神社があり、その神社から「辯天」を名乗ることが許されたので、酒名を「辯天」としたそうです。「辯天」とは七福神の中で、音楽や芸能をつかさどる女神のことを言うそうです。 

下の写真方は専務取締役の後藤大輔さんです。大輔さんは蔵元の息子さんで東京農大を出られて、20年前から杜氏と一緒に酒造りをしているそうです。現在47才だそうですから、酒造りはほとんど彼に任されているようで、現在の生産高は600石のようです。 

Dsc00341_2大輔さんには2本の辯天を持っていただきました。右手に持っているラベルの青い辯天は純米大吟醸原酒で、お米は出羽燦燦48%精米で、アルコール度数17.5、日本酒度+3、酸度1.5です。協会18号酵母を使っていますが、それほどカプの香りはせず、口に含むとふあっと旨みと甘みが広がり後味がすっと消えていく良いバランスのお酒でした。

左手で持っていただいた辯天は特別純米原酒で、お米は出羽の里60%精米のお酒です。アルコール度数は17度、日本酒度+3、酸度1.5です。飲んでみると2回火入れの香りがするために吟醸香がマスキングされてしまい、ちょっと残念でしたが、うま味と酸味のバランスが純米大吟醸と同じように良いなと思いました。 

大輔さんに現在どんなお酒造りをしているのかお聞きしたら、先代が香り高い酒を求めていたので、自分としては香りを抑えた旨みを活かした食中酒を求めているそうです。 

この蔵は全国新酒鑑評会でここ20年間で11回も金賞を取っている蔵で、小さい蔵の中では実力もあり、頑張っている蔵だと思います。 

3.後藤康太郎酒造 

この蔵は後藤酒造と同じ高畠町にありますが、後藤酒造とは縁戚関係はないそうです。蔵は高畠駅から南東に5kmほど山の麓の方に行ったところにあり、近くに学業の神様として有名な日本三文殊の一つの亀岡文殊があります。その文殊がある文殊山からの伏流水を仕込み水にしています。創業は江戸時代中期だそうで、とても古い蔵ですが、地元のための酒造りを続けている地道な蔵で農村型蔵と言えるのかもしれません。 

小さいながら自社精米機を導入するなど、酒造りにはきちっとした取り組みをしていて、特に純米酒は40年前から取り組んでおり、地元では純米酒の錦爛(きんらん)と言われるほどだそうです。 

生産高は昔は1000石くらいあったようですが、現在は500石強の生産量のようです。写真の方は蔵元の息子さんの後藤隆暢(たかのぶ)さんで、現在41歳で蔵元杜氏として酒造りをしておられます。隆暢さんは東京農大を卒業され、他の酒屋に勤めた後、15年前の26歳の時に蔵に戻ったそうです。 

Dsc00342隆暢さんには2本のお酒を持ってもらいました。右手に持っているお酒は羽陽錦爛の純米大吟醸で、原料米は雪女神40%精米、アルコール度数16度、日本酒度-7、酸度1.3です。このお酒には山形県のGIマークがついていました。飲んでみると日本酒度-7の割には甘く感じないけど、口の中ほどまで旨みを感じるので、アミノ酸が多いのではと思いました。お聞きするとアミノ酸度は1.1とのことでした。 

左手に持っていただいたお酒は、純米吟醸高畠の四季で、原料米は出羽燦燦精米度不明、アルコール度15度、日本酒度+3、酸度1.3です。飲んでみるととてもすっきりした飲みやすいお酒でした。このタイプのお酒がこの蔵のベースの味のようです。 

隆暢さんの造りたいお酒はどんなお酒ですかとお聞きしたら、この蔵は伝統のある蔵なのでその技術は伝承しつつ、世の中の流行りを追うことなく、派手ではないけど時代にあった酒を気づかれないように造っていきたいそうです。これからどんなお酒に落ち着いていくのかは大変興味があります。

4.中沖酒造店 

この蔵はJR奥羽本線の赤湯沢駅から西に8㎞程行ったところ、フラワー長井線の西大塚駅の南にあります。ここは置賜地区の中央のやや北側にあり、まさに米どころにあると思いますが、国内最大級のダリアの生産地で有な場所のようです。 

創業は大正12年ですからそれほど古い蔵ではないですが、創業当時から家訓の「酔心は浄心に宿る」をモットーに地元向けのお酒を造っており、生産量が現在300石位の小さな蔵です。 

写真の方は3代目蔵元の高橋義孝(よしゆき)さんです。現在42歳の蔵元杜氏で、専門の大学を出ているわけでなく、福井県の早瀬浦で1年修業をした後、蔵に戻って酒造りを続けておられます。置賜地区の蔵元杜氏が5蔵集まって五蔵会を造っていますがそのメンバーの一人です。この会で唯一お逢いした五蔵会の杜氏さんでした。 

Dsc00344持っていただいたのは代表銘柄の羽陽一献の純米大吟醸 醸心(じょうしん)です。原料米は雪女神40%精米、酵母は山形酵母KAのブレンド、アルコール度16度、日本酒度-4、酸度1.4のお酒です。

飲んでみるとそれほど強くはないが、さわやかな香りの中に甘みと旨みが奇麗に広がってぱっと消えていくお酒で、雪女神らしい特徴をうまく引き出しているように思えました。

純米吟醸の夜游(やゆう)も飲みましたが、すっきりした辛口で、普段飲みできるおさけでした。噂によるとこの蔵には大吟醸10年氷温貯蔵熟成酒1升2万円もするお酒があるようで、飲んでみたかったです。この蔵は小さいけど色々とチャレンジしているようなので、大いに頑張ってもらいたいです。 

5.香坂酒造 

この蔵は米沢市中央にあり、創業は大正12年ですから比較的若い蔵です。ホームページの会社紹介によると、全国でも珍しいもち米とワイン酵母を使ったお酒とか山形県で一番日本酒度の高い辛口(+19)のお酒とか、しぼりたての純米酒を-30℃で凍結させたお酒とか珍しいタイプのお酒を造っているようですが、この会には持ってきていませんでした。 

Dsc00339写真お方は従業員の黒岩さんで、2本のお酒を持っていただきました。左手で持っているのが純米大吟醸紅梅、搾りたて生原酒です。お米は出羽燦燦ですが、どぶろくのような澱がいっぱいのお酒ですが、日本酒度が+4ですがそれほど辛くなく適度な甘みですっと飲めました。 

右手のお酒は純米吟醸紅梅で、お米は出羽燦燦でアルコール度数15.5、日本酒度+3.5、酸度1.3でした。飲んでみると非常に軽い感じで飲めてしまうお酒でした。 

この蔵の社長は東京農大を出られ、現在66歳の香坂洋一さんですが、息子さんの香坂洋平さんも東京農大を出られて、現在蔵で活躍中とのことでした。お二人ともこのブースには来られていなかったのはとても残念でした。お二人に酒造りの考え方など色々なことをお聞きしたかったです。 

以上で蔵の紹介は終わりますが、最後にこの会を紹介していただいた米鶴酒造の梅津さんの写真を載せておきます。梅津さんは会の最初に山形GIについてご紹介していただきました。蔵の人とのツーショットです。

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2018年4月 4日 (水)

秋田酒の会で見つけた注目藏と面白いお酒

今年の秋田の酒を楽しむ会は3月7日にTKPガーデンシティ品川で行われました。この会は大変人気なイベントのようで発売と同時にあっという間に売り切れるみたいで、去年はのんびりしていて購入できなかったのですが、今年は友人が購入した切符を僕に譲っていただけることになり、参加してきました。チケットは郵送してもらったのですが、よく見るとチケットの発行番号が何と1番だったのです。どうやって手に入れたのかな。下の写真をクリックすると確認できます。この番号が後で幸運を呼ぶことになります。 

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この会に参加した27蔵の内半分以上の蔵は良く知っている蔵でしたが、知らない蔵の中で注目したい蔵を見つけことと僕が面白いなと思ったお酒を見つけることを目的とて参加しました。でも夜の部の秋田の酒を楽しむ会は参加者が540人と非常の多いのでゆっくり調べることはできないと判断し、第1部の秋田の酒利き酒会にも参加しました。一部は業界関係者を対象としていますが、飲食店や酒屋さんだけでなく、マスコミ関係の方もOKのようでしたので、この形で参加しました。お前はマスコミではないぞと怒らないでくださいね。一応日本酒コンサルタントという肩書がありますので。・・・お前が勝手に名乗っているだけじゃないか・・・そんな声が聞こえてきそうですが、秋田の酒のブログを書くことで勘弁してください。 

一部の会場ですが、夜部のためのテーブルが置いてあって、壁際に蔵のブースがあるという感じでした。

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<僕が見つけた注目したい蔵> 

1.秋田晴 秋田酒造 

この蔵は秋田市を流れる雄物川の河口近くにあるJR羽越本線の新屋駅から徒歩10分くらいにある蔵です。この地は古くから湧き水の町と言われるほど良い水に恵まれていましたので、川口新助が明治41年にこの地で酒造りを開始しました。当初は萬歳酒造としてスタートしましたが、日露戦争に勝利したことから國萬歳酒造となったようです。その後、昭和44年に高九酒造店と國萬歳酒造の合同の瓶詰工場の秋田酒造が生まれますが、平成24年に國萬歳酒造と秋田酒造が合併し現在の秋田酒造となります。國萬歳酒造の時は川口和夫さんが社長としていたようですが、平成17年から娘の野本眞子さんが社長となって蔵を引き継いでいました。しかし、平成26年には不幸にして眞子が52歳の若さで急死されましたので、眞子さんの長男の野本翔さんが社長となったそうです。現在の蔵の生産量は500石ぐらいと思われます。 

野本翔さんは2014年に急遽蔵に戻るわけですが、それまで全く別の仕事をしていたそうで、蔵の経営をされるのは大変だったとは思います。この蔵には加藤貢さんという杜氏がおられますが、全国新酒鑑評会ではここ20年間で6回も金賞を取っている実力者です。加藤さんの流儀は時代に流されない昔ながらの技法を大切にしながら、酒質の向上に努めている方でその代表的なお酒が酔天楽」大吟醸です。僕も今回飲んでみましたが、アルコール添加のお酒ですが、しっかり旨みを感じる大吟醸でした。こういう人がいると安心ですね。 下の写真お方が野本翔さんです。

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翔さんにお聞きしたのですが、自分としてはアルコール添加の大吟醸の技術を大切にしながら新しいお酒造りのチャレンジしているそうで、それがA(エース)シリーズのお酒でした。Aシリーズには2種類あって、純米吟醸Aと純米吟醸Aスカイブルーので、その酒質は以下の通りです。 

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① 純米吟醸A(赤いラベル):原料米あきたこまち55%精米、酵母協会1801、アルコール度数:16度、日本酒度-12、酸度1.8、アミノ酸1.4、 

② 純米吟醸Aブルースカイ:原料米三郷錦55%精米、酵母あきた雪国酵母、アルコール度数16度、日本酒度+4、酸度1.6、アミノ酸1.3 

この酒質を見れは呑む前からどんなお酒かはわかる感じしますが、飲んでみるとその通りのお酒でした。①のお酒はカプロン酸の華やかな香りと共にまず甘みを感じた後にしっかり旨みを感じるけど酸ですっきり切ってくれるお酒でした。一方②のお酒は最初にそんなに強い甘みを感じないけど後に奇麗な旨みを感じて消えるお酒なので、一言で言えば透明感があってちょっとドライだけど端麗辛口ではない旨みを感じるお酒でした。 

このお酒は呑んだお客の反応を見るために造ったチャレンジ的なお酒なのだと思いますが、これをベースにこれからどんなお酒造りを目指してくるのかは今後が楽しみです 

2.奥清水 高橋酒造店 

この蔵は秋田県の大曲市と横手市の中間にある美里町6郷にありますが、この地はたくさんの湧き水がでるところで、その湧き水は名水100選に選ばれるもので、「笑願清水」と言われているそうです。この水を使って明治18年に高橋さんが酒造りを始めたと言われています。奥羽山脈の浸透水が湧水となっていることと、この地の名前の宝門清水から名を取って奥清水という銘柄にしたそうです。 

ですから高橋家がこの蔵を引き継いできたのですが、平成4年に3代目の高橋当主が病死され、後継者がなかった結果、現在の小山潤一郎さんが後を継いで現在にいたっているそうです。現在は吟醸酒・純米酒・本醸造を中心に県外の出荷をメインにしている生産高600石位中堅の蔵です。 

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この方が社長の小山さんです。とても面白い人で、僕は酒造りのことは全くわからないのです。杜氏が勝手に造りをしていて詳しいことは何も教えてくれないのですと、笑っておっしゃっていました。ある意味では杜氏を信頼して任せている大物社長と言えるのかもしれません。 

この蔵の杜氏は古内茂美さんで山内杜氏の中では最も若い人のようですが、それでも今年60歳のベテラン杜氏ですが、大納川、月桂冠、朝の舞、秀よし、白瀑などを色々な蔵で修業をされ、10年くらい前に白瀑の山本さんが自ら杜氏をすることになり、山本をやめて高橋酒造に来たとのことです。古内さんは横手育ちの方ですが、長崎大学で化学分析を専門にやってた方のようで、とても勉強家で研究熱心な方のようです。最近、古内さんが白ラベンダー酵母の培養に成功したのです。 

この地は米処で、美山錦や三郷錦や酒こまちが栽培されていますが、三郷錦の名前が付いた由来の町ではありません。この地で有名なのは湧水とラベンダーだそうです。この地の町長さんが町起こしのために、このラベンダーから採取した花酵母を使ったお酒を造るように強く頼まれたそうです。 

町長に強く頼まれたので、社長は培養室を1000万円もかけて造って、杜氏にその開発を任せたそうですが、彼は夏場はその培養室に入り浸って3年間研究した結果、ついにラベンダー酵母の培養に成功したそうですが、その方法は社長にも一切教えてくれないばかりか、培養室にも入れてくれないそうです。 

そうやって生まれたお酒が下記のお酒です。このお酒は大吟醸と純米吟醸の2種類があります。 

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① 純米大吟醸「三郷雪華」:原料米は三郷錦38%精米、酵母は三郷雪華酵母(ラベンダー酵母)、アルコール度数は16.8、日本酒度±0、酸度1.6、アミノ酸度0.8 

② 純米吟醸「三郷雪華」:原料米は三郷錦55%精米、酵母は三郷雪華酵母(ラベンダー酵母)、アルコール度数は16.4、日本酒度+1、酸度1.8、アミノ酸度0.6 

飲んでみるとどちらの同じような香りで、酢エチとも酢イソとも違うマスカットのような香りがして、程よい甘みと旨みを感じながらきれいに消えていくお酒でしたが、大吟醸の方が旨みの広がりが大きい気がしました。①のお酒は平成29年度の秋田県清酒品評会の純米の部で主席を取ったお酒だそうです。 

古内さんは現在も新しい酵母の培養を行っているようですので、今後どのような酵母のお酒ができてくるか楽しみですね。 

3.出羽の冨士 佐藤酒造店 

この蔵は鳥海山の麓の由利本荘にある蔵ですが、同じ由利本荘市にある雪の茅舎とはは全く違うところにあります。雪の茅舎はJRの羽後本庄の町の中にありますが、出羽の冨士は羽後本庄から出ている由利高原鳥海山ろく線の終点にある矢島駅の七日町にあります。羽後本庄からは約20㎞ほど南に下がったところで、まさに鳥海山の麓の登山口にあたります。 

この地は秋田県の湯沢、六郷、新屋と共に銘醸地の一つとして言われ、昭和の初めには10蔵もの酒蔵があったそうですが、今では天寿と出羽の冨士の2蔵のみとなっています。佐藤酒造店のお酒の生産量は正確にはわからないけど、500石位だと思います。 

創業は明治40年で初代は佐藤久吉さんが当主です。鳥海山を地元ではその奇麗さから出羽の冨士と呼んでいたので、その名前を取って銘柄にしたそうです。この地は鳥海山の伏流水が豊富に出るところで、その清らかな水がもたらす良好な口当たりが特徴のようです。 

この蔵には酒造歴40年の小番(こつがい)力杜氏がおられます。小番さんは昭和51年に佐藤酒造に入り、平成6年から杜氏として活躍されています。社長は4代目当主の佐藤誠さんですが、現在76才歳で高齢なので、後継者として息子さんの佐藤博之さんが2年前から蔵に戻って修業をしています。博行さんはある大学の経済学を卒業後法律関係の仕事をしてきましたが、酒造るのことは全く知らなまま蔵に戻ったそうです。下の写真が博行さんです。 

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今回はおひとりでブースに立っておられましたので、おひとりでは大変でしょうと言いますと、昔阪急デパートの試飲会のバイトをした経験があるので、大丈夫ですと言われました。お酒のことはまだあまり詳しくないようですが、人の好い若者という感じですが、見た感じと違ってもう40才だそうです。とても人がよさそうな方でした。どんなお酒を造りたいですかとお聞きしたら、この蔵のお酒の特徴は甘口、旨口なので、その味を守っていきたいとのことでした。 

この蔵でちょっと面白いお酒を見つけましたので、紹介します。 

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このお酒は銘柄が3番と書いてありますが、3番の蔵付き分離酵母を使った純米吟醸酒です。もともとはこの酵母は蔵の神棚から分離したもので、2代目の当主が見つけたものだそうですが、秋田県では総合食品研究センターが各蔵と共同して蔵付き酵母を分離培養して、1番から25番までの名前を付けて蔵付き酵母として販売していますが、その3番の酵母だそうです。秋田県雄蔵付き酵母を知りたい人は下記のURlをクリックしてください。 

http://www.akitanosake.net/kuratsuki-koubo-25.php

原料米は美山錦60%精米で、アルコール度数16度、日本酒度+2、酸度1.7、アミノ酸0.8です。飲んでみると香りはそれほど強くはないけど、栗のような甘みを感じて適度な酸味を感じながら比較的フラットにひろがり、何か昔を思い出すようなほのぼのとした味わいのお酒でした。最近こんなバランスのお酒は飲んだことがありません。 

これは面白いなと思い、そばにおられた酒食ジャーナリストの山本洋子さんに紹介したら、確かに面白いお酒ねと言われて、写真を撮られてしまいました、その写真をお見せします。 

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4.銀鱗 那波商店 

この蔵は秋田駅の北にある土崎にありますが、土崎は旧雄物川の河口にあり漁業で栄えたところです。秋田藩の御用達商人であった那波三郎右衛門裕生が藩の命で醸造試験所のようなものを造ったのが始まりのようで、それは1807年のことです。本格的に酒造業を始めたのが明治4年ですから、とても歴史ある蔵です。 

大正5年に酒造業を続けるかたわら、呉服業も始めたことから那波商店という名前になったそうです。銀鱗の言う銘柄がいつ生まれたかはわかりませんが、この地は漁業が盛んな街なので、ソーラン節の一節の踊るかもめの港」から引用して、多くの漁師に愛飲されるように命名されたようです。 

この蔵は昭和の初めにコンクリーつ造りの近代的な蔵を造ったほど酒造りには古くから力を入れていたようですが、今でも酒造りのほか呉服、味噌醤油を扱っている会社です。お酒の生産高は750石位のようです。 

下の写真の方は社長の那波尚志(なばひさし)さんです。 

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ここで見つけたお酒は蔵付き酵母こまち美人です。原料米は秋田酒こまち60%精米、酵母は白銀K-87蔵付き酵母、アルコール度数16、日本酒度-4、酸度1.8、です。飲んでみるとそんなにも香は高くないけど、ワインのような酸味と甘みのバランスがよく、とろっとした旨みを感じました。これが4合瓶971円とはコストパフォーマンスがとてもいいです。 

このお酒は去年までは醪の温度を18度で留めて加水して絞って火入れしていたのを16度で行ったので変わってきているのかもしれないとのことでた。秋田蔵付き酵母に21号がこの蔵の酵母ですが、白銀K-87との違いはよくわかりません。 

5.千代緑 奥田酒造店 

この蔵は秋田県秋田と大曲の中間にある大仙市協和境にある蔵で、四方を山々で囲われた場所にありますが、創業300以上も経つ老舗の蔵です。こんな辺鄙なところでも秋田へ抜ける要所だと酒造りができるのですね。 

初代の当主がこの町から眺める山々見て詠った「若葉映えある四方の山々千代緑」という俳句から千代緑という名がついたそうです。この蔵は山内杜氏が来て酒造りをして伝統を守ってきていて、先代の奥田重裕さんの時は1400石もの生産をしていたようです。 

現在は下の写真社の奥田重徳さんが社長兼杜氏で頑張っておられます。この蔵は酒造りだけでなくお酒の小売りもしているので、重徳さんは東京の成蹊大学の経済学部を卒業後、このの営業をしていましたが、5年ほど前から酒造りをはじめ、秋田醸造試験所で酒造りを学び、社長兼杜氏として蔵人4人と酒造りをしているので、生産量は300石位だそうです。 

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この蔵のお酒は商品名が番号で書かれているので、イメージがつかみにくいのですが、どのお酒を飲んでも全部それなりの美味しいお酒で、穏やかで優しい食中酒という感じでした。その中でもお勧めのお酒は社長に持っていただいたNO12の純米大吟醸です。麹米が山田錦50%精米、掛米が美山錦50%精米で、使用酵母がNO12でそのほかの酒質は秘密のお酒でした。この酵母は造り立てはバナナの香りがするのですが、瓶に入れるころはその香りが出なくなるのでそれをいかに残すかの努力をしたそうです。 

ここの蔵は今年はほとんど生のお酒を出品したそうですが、本来は半年以上寝かせると味が乗ってくるので、来年はそういうお酒を持ってきますと言われていました。ぜひお願いいたします。 

以上で僕が見つけた気になる蔵の紹介を終わります.。

この秋田の酒を楽しむ会は年々人気が高まり、2部では新政が超人気で、最後までこの蔵に並ぶ列が亡無くなることはなかったけど、他にもいいお酒がいっぱいあるのにどうしてこうなるのかな。じっくり色々な蔵のお酒を自分の舌で確認すれば好みの酒が見つかると思います。この会のとても良かったことは出品酒の酒質をほとんど全部(100%ではない)書いてあったことです。 

最近酒質を書かない蔵が増えてきていますが、その理由の一つは数字よりは感覚で飲んで楽しんでもらいたいという理屈のようですが、世界の色々なアルコールがある中で酒質を書いてあるのは日本酒だけで、世界をリードする表現方法だと思います。また酒質の数字を見るとある程度のお酒の味を想像できるのは事実で、飲み手にとっては自分の好みの酒に早く出会う確率を高めてくれるものです。ぜひ日本酒に酒質を書く文化は是非残してもらいたいと思っています。この数字が正しいかどうかはあまり正確に議論しなくてもいいと思います。数字はいつ測定するかで変わるのは当然です。僕は酒質の表示を強く望んでいます。 

今回見つけた面白い酒>

1.ロイヤルストレートフラッシュ

Dsc00171_2このお酒は白瀑の山本合名会社の山本友文さんが新しく造った酒でこの時点ではまだ販売されていないお酒です(3月14日には発売されたみたい)。銘柄はロイヤルストレートフラッシュです。ロイヤルストレートフラッシュはトランプの10~Aまでの絵札の同じスートの連続をいい、その中で最も強いのがスペートです。これは何を意味するのでしょうか。 

山本さんはある時、5種類のお米と5種類の酵母を使ったらどんなお酒になるのだろうと思い、やってみようと思ったそうです。原料米は秋田の5種類の米、秋田酒こまち、吟の精、三郷錦、改良信交、美山錦で、酵母はAK-1、こまちR-5、協会6号、秋田酵母NO12、秋田純米酵母です。 

酵母は一緒に投入するしかないけど、原料米は酒母、麹米、掛米添え、掛米仲、掛米留で使い分けたそうです。精米度はすべて50%精米です。出来上がったお酒の酒質はアルコール度15%、日本酒度+1、酸度1.6、アミノ酸度0.8です。 

飲んでみるといろいろな味わいがする複雑味のあるお酒でした。いいかどうかは各自で判断してください。 山本ならではの発想のお酒だと思います。

2.天巧 純米大吟醸 無濾過生 

Dsc00176天功は小玉醸造のブランドであることは酒通の人なら知っていると思いますが、太平山 純米大吟醸 の無濾過生はインターナショナルワインチャレンジで、第1位を取ったお酒の原酒を無濾過生で出した限定品です。 

原料米は山田錦40%精米、酵母は自社酵母、アルコール度数は17度、日本酒度+1.3、酸度1.3、アミノ酸1.1です。 

飲んでみると原酒だけあって、パワフルな味ですがそれを感じさせない素直さを感じるいわゆるうまい酒そのものでした。これが3300円で買えれば、すごく価値のあるお酒だと思います。 

僕はインターネットの直接販売で2本購入しました。 

3.影鳥海山 生酛 

Dsc00164鳥海山は天寿酒造のメイン銘柄の一つであり、なでしこ酵母で造った自信作ですが、6年前から影鳥海山として生酛純米酒の試験醸造を始めまして、去年から販売しているものの2年熟成たものだそうです。このお酒は2回火入れしたお酒をタンク貯蔵して1年後に瓶詰めしたら、生酛らしさが出ていなかったので、瓶貯蔵のまま7度の冷蔵庫でさらに1年寝かしたものだそうです。 

原料米は美山錦65%精米、酵母は901号でアルコール度数15度、日本酒度+1.0、酸度1.8、アミノ酸1.0です。 

飲んでみると熟成香が感じられるけど、生酛らしい酸味を感じるのでお燗すると引き立つように思えました。 

生酛の鳥海山は大吟醸がありますが、このお酒は酵母はなでしこ酵母で、生で1年ー5℃で貯蔵したものです。この二つを比較してみると面白いですね。 

4.Moving Suturday 

Dsc00149このお酒は福禄寿酒造の渡辺さんが造ったお酒で日本酒で作った貴醸酒だそうでが、その銘柄がMoving Satuerday というのが面白い。 

どうしてそんな名前にしたかは聞かなかったけど、MOVING SATURDAYとは、2008年4月5日から2009年9月26日まで、TOKYO FMで放送されていた土曜早朝の番組で、放送時間は毎週土曜日5:00 - 6:55と早起きしないと聞けない番組らしい。渡辺さんがこの意味で使ったかどうかわかりません。 

原料米は色々なお米を使うらしいが、精米度は50%、アルコール度数は14度とのことで、他の数値は非公開です。

飲んでみると普通の貴醸酒よりは甘さが少なく飲みやすいお酒でしたが、5月か6月ごろ発売になるようです。

5.純米大吟醸 IYAPU-3

Dsc00214_2この蔵を訪れたのが最後の最後だったので、十分味逢うことができなかったけど、この蔵の専務取締役の斎藤雅昭さんに持っていただきました。雅昭さんは東京の青山学院大学を出られて最近蔵に戻ったばかりで、背が高くとてもイケメンです。

そのお酒はIYAPU-3酵母を使ったお酒で原料米が秋田酒こまち50%精米、アルコール度数16度、日本酒度-1.0、酸度1.3、アミノ酸0.9でした。

「IYAPU-3」酵母は秋田県立大学(APU=Akita        Prefectual University)の岩野教授(I)と横山教授(Y)が開発した新酵母です。

飲んでみると香りは穏やかで落ち着いた香りで、味わいはまろやかでちょっまったりした面白いお酒でした。この蔵は酵母違いのお酒を楽しむ企画をしているので味わてみたらどうでしょうか。 

<僕が仕留めたお酒>

この会の最後にくじ引きでお酒が当たる余興がありました。山本さんの司会で佐藤祐輔がくじを引く形で行われ、約30人くらいしか当たらないのに、なんと僕が持っているNO1が当たってしまいました。確率5%です。しかもあったのは新政でした。

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お酒は新政のカラーズシリーズのラピスでした。祐輔さんがくじを引いて僕が当たるなんで夢のようでした。このお酒はチケットを買てくれた人にプレゼントしました。

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この会の最後に新政のブースに行っての記念写真です。この3人は東大出身の先輩後輩です。左から たくちゃん、祐輔さん、多摩のこうちゃんでした。

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以上で終わります

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