どぶろくスタンダードは一度は呑んでみる価値のある酒です。
僕は今までどぶろくを飲んだことはほとんどなかったのですが、先日東武デパートの酒売場で、そこの販売員をしている鈴木里香さんの強いお勧めで、初めてどぶろくを買いました。このどぶろくは普通のどぶろくとは違うものだそうで、いま大人気で東武に入荷すると、あっという間に売り切れるほどだそうです。見た目は白いにごり酒で何が違うのか飲んでみないとわからないので、買うことにしました。
このお酒は岩手県の遠野市にある民宿「とおの」のオーナーである佐々木要太郎さんが造っているどぶろくで、種類はどぶろく・スタンダードと水酛と生酛の3種類しかありませんが、この日はスタンダードしかなかったので、それを購入しました。下の写真がそのどぶろくです。
このお酒の酒質として記述されているのはお米が遠野1号とアルコール度数14度だけで、そのほかのことは何も書いてありません。早速飲んでみましたが、口に含むとまずさわやかな甘みが来ると同時に、甘酒やおかゆのようなつぶつぶの舌触りを感じるけど、中ほどに来るとつぶつぶ感が亡くなり、炭酸ガスによるシュワシュワ感と酸味と旨みが混じった新しい味わいを感じたと思おうとスーッと消えてしまいます。後味が良いので何杯でも飲めてしまうどぶろくでした。味の濃いお料理にも合わせることができる不思議なお酒です。この味ならお料理と一緒に出しても全く違和感はありません。ですからフレンチやイタリアンのシェフからも認められているようです。
不思議なことに日本酒の澱酒のような生酒ぽい味がしなくて、全体的にはさわやかでありながら、適度な旨みと切れを感じる上品さなあります。これで、4合瓶で2200円で、少し高めですが十分その価値を感じました。飲んだバランスの感じでは、精米度は50から60%でないかと思いましたが、わかりません。
スタンダードは協会酵母を使った速醸の造りで、2200円/720mlですか、この他には酒母が水酛造りのどぶろく2700円/720mlと生酛造りどぶろく3300円/720mlがあるそうですが、飲んだことがないのでどんな味高はわかりません。写真を見つけましたので載せておきます。絶対に飲んでみたいと思います。
どぶろく水酛 どぶろく生酛
<どぶろくが生まれた経緯について>
まず、どんな経緯でこのどぶろくガ生まれたのかをご紹介しましょう。まず要太郎さんのお写真を付けておきますが、僕はお逢いしたことがないので、インターネットからお借りしました。
佐々木要太郎さんは遠野市で4代続く民宿の「とおの」の長男として1981年に生まれましたので、現在は37歳だと思います。彼は実家が民宿をやっているのが嫌でしょうがなかったそうです。それは朝早くから仕事をして休みらしい休みもなく家族で旅行したこともほとんどなかったからです。だから、サラリーマンにあこがれて、高校を出ると同時に盛岡に出て就職先を探し、検査技師をやったり、電話機販売のの営業マンをしたりして、曲がりなりにも通信関係のサラリーマン生活をして結婚もして子供もいたそうです。でもいろいろな事情で妻と離婚することになり、娘を引き取ることになって、子育てをしながら会社勤めをするのは難しいと考えていた時に、父親から実家に戻って一緒に仕事をやらないかとお誘いがあって戻ったそうです。
父親としては民宿の事業を新しく発展させたいと考えていた時に、遠野市がどぶろくの特区になるということを聞き、どぶろく造りをすれば新しい事業が立ち上げられるが、免許の申請が必要なので、これを息子にやらせれば、一挙両得と思ったそうです。どぶろくの特区が認定されたのは2003年ですが、要太郎さんは2002年に実家に戻って一緒に仕事を始めたそうです。
遠野地区はむかしからどぶろくの製造が盛んで、この地では「どべっこ」と呼ばれていたそうで、どぶろくを造ったことがない要太郎さんは他の人に教わってどぶろくを造って、民宿で飲ませるようになったのですが、ある時、新潟の杜氏に「こんなまずい酒は飲めるものではない」と怒られたれたので、造りを基本から勉強しようと岩手県の工業センターなどに教えをくたのですが、一番教えを受けたのが奈良県の久保本家酒造の杜氏で生酛純米酒の造りの名手の加藤さんだったそうです。加藤さんに教わったのは米のすべてを溶かしきることだったそうで、それまでは米のいい部分だけを抽出しようとしていたそうで、これから大きく造りが変わることになります。この時期がいつのことだかはわかりませんが、どぶろくを初めて作ったのは2004年で、どぶろくの免許を取ったのが、2005年で、宿泊設備を備えたレストラン「とうの屋 要(よう)」を造ったのが2011年ですからその前あたりではないかと思われます。
実はどぶろくの質が上がったのは醸造技術が上がっただけではないのです。その裏には米造りがあったそうです。もともと遠野らしい酒造りをするには遠野で造った米を使いたいという思いがあったので、2003年から米造りを開始していました。最初から無農薬無肥料であきたこまちを栽培をしていましたが、ある時遠野には遠野1号というお米があるのにどうして秋田のお米を使うのかと言われてハット思ったそうです。
遠野1号は北海道原産の「坊主6号」と山形原産の「亀の尾」を掛け合わせて造ったお米で、岩手県遠野農事試験所が昭和10年から開発に取り組み、昭和14年に寒冷に強く病中にも強いお米「遠野1号」として世に出したそうです。その後の農業技術の発展とともに生まれた新しい米に押されていつしか栽培されなくなっていたのです。要太郎さんはこの種もみを持っている農家からたった5gの種もみをもらい、発芽させては植え替えて徐々に量を増やしていきました。遠野1号の栽培を始めたのが2006年で、酒造りに使えるようになったのが2008年です。でもこれでいいお米が取れたわけではありません。
米造りは最初から無農薬無肥料の栽培を始めましたが、もともとこの土地は慣行農法を続けてきた田圃なので、無農薬無肥料を始めても急にはいい田圃になるわけでないそうです。15年間無農薬無肥料を続けた田圃と、5年間続けた田圃では稲のでき方が全然違うそうです。15年間続けてきている田圃で作った稲は病気には強いし、生き生きとしているそうで、米を蒸した時の香も違うそうです。ですから最近やっといい米がとれるようになり、自分が思ったどぶろくになりつつあるそうですが、まだまだ進化の途中のお酒のようです。
現在はレストラン「とおの屋 要」の裏手に「醸し田屋」という名の醸造施設を造り年間約100石(1升瓶で1万本)の製造している小さな造りですが、3年前から都内の飲食店お取引も始まり、2016年からはスペインやフランスやイタリアや香港などの海外進出も始まりました。ここでは要太郎さんはお米を作る農家であり、どぶろくを造る醸造家であり、料理人でもあり一人3役をこなすだけでなく、営業で飛び回る必要があります。ですから1年中大忙しで人手が足りないことと、今の技術を後の人に伝えたいことから、3年前から「どぶろく農家プロジェクト」を造って、スタッフの採用をおこない、今では短期研修生を含めて5人体制で行っているそうです。
今の要太郎さんの夢は良いお酒を造ろうとか、良いお料理を食べてもらおうという短期的な目標ではなく、もっと長いスパーンで造り上げてきた本物のお米、酒、料理を遠野に来て味わって、感じてもらって帰ってもらうことのようで、今だに終わりの見えない世界に向かって走っている方のようです。
<どぶろくの製造方法>
最後にこのどぶろくの作り方を要太郎さんが書いたものを見つけましたので、ご紹介します。この記述は水酛造りの場合でしたが、参考になると思います。水酛造りは生酛造りより前に開発された酒母造りの方法ですが、詳しいことを知りたい方は下記の僕のブログを見てください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/02/post-0238.html
まず、生米と炊いた米を水中に2週間ほど浸しておいて十分に乳酸菌を繁殖させたそやし水を造ります。それに60%精米の蒸米と麹米を入れて発酵させていくと天然の酵母菌が増殖した酒母が出来上がります。スタンダードのどぶろくは酒母を乳酸と酵母を添加して酒母を造るので、手間がかかりません。その後日本酒の並行発酵と同じ要領で醪造りに入りますが、30日から40日かけて発酵させ、アルコール濃度14%までにします。この後が普通の日本酒と違ってきます。
この醪を絞ったらどぶろくでなくなりますので、そのまま火入れをせず生のまま瓶詰めをして、3~6か月瓶内熟成をしてして出荷するそうですが、原料となるお米は新米でなく1年寝かせた古米を使うそうです。その方が米の甘みが多くなるとのことです。この瓶内発酵に一番の秘密があるのかもしてませんが、瓶内発酵で最もいいバランス人るような醪造りにも秘密がありそうですが、よくわかりません。
宿泊設備を設けたレストランのことをオベールジュというのですが、とおの屋要はそのオベールジュです。民宿とおのとは別棟にあります。その写真がありましたので、お見せしますが死ぬ前に一度は行ってみたいと思っています。
とおの屋要の外観 玄関
レストラン
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
先日自分たちで作って飲みましたよ。
投稿: Yokohamabaron | 2018年3月19日 (月) 11時26分
素晴らしいお酒🍶みたいですね☺️東武百貨店で調べます。出羽
投稿: U | 2019年10月 5日 (土) 22時03分