宮城県の小さな蔵には魅力を感じます
毎年11月のはじめに仙台市内の勝山館で、宮城県酒造組合が主催するみやぎ純米酒倶楽部「穣の宴」が開催されますが、今回は今年で第20回を迎える伝統ある会です。この会には今まで1回も参加していませんでしたが、お料理が素晴らしく、良いお酒がいっぱいあるので、絶対行くべきと、僕の日本酒友達の入江さんに勧められて初めて参加しました。
勝山館はあの勝山企業が運営する仙台の迎賓館で、結婚式場、宴会場、レストランなどで使われる所で、地下鉄北4番丁駅から歩いて5-6分の所にあります。開宴は夜7時ですから、真っ暗の中、探しながらたどり着きました。暗いので館の全体は全くわかりませんが、高い塀に囲まれた立派な入口でした。
中に入ると「穣の宴」に案内があり、ほっとしたのを覚えています。
勝山館の案内を見ますとこんな外観だったのですね。
会場に入ってみますと中央に各蔵のブースがあり、壁際にお料理のコーナーがあって、その間に立食用のテーブルが置かれていました。去年までは今回の参加者は400名程度だったと聞きましたが、今年は550名のようですので、ちょっと混みあっていましたね。
「穣の宴」はもともと、みやぎ純米酒倶楽部が支援してできた会のようですが、現在はみやぎ純米酒倶楽部が発展的に解消して10年前に出来た宮城サポート倶楽部が支援しているようです。宮城サポート倶楽部に参加している蔵と宮城県酒造組合に参加している蔵は全く同じ25蔵のようです。今回は森民酒造店と橋平酒造店が不参加だけで、23蔵が参加していたようです。
宮城県蔵は一ノ蔵と浦霞が有名ですが、僕はその中でも小さな蔵で良いお酒を醸している蔵を取り上げてブログに載せてきました。 具体尾的には墨廼江、日高見、勝山、伯楽星蒼天伝を取り上げてきましたが、ごく最近浪の音も取り上げました。以前に書いた記事を下記に載せておきますので、興味のある方はクリックしてご覧ください。
墨廼江:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-8dc1.html
日高見:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-83e1.html
勝山:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-993c.html
伯楽星:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-401f.html
蒼天伝:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-98f1.html
浪の音:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2018/01/post-8dc1.html
今回はそれ以外の蔵で僕が気に入ったお酒を醸して売る蔵を見つけるのが目的で参加しましたので、それを紹介しますが、その前に紹介するものがあります。
<お料理編>
この会のお料理は仕組みもすくめて大変良かったと思います。お料理はチケット制で入場と同時にこんなチケットを配られます。
これは僕がもらったチケットで、料理をいただくと判子が押されます。これなら料理は入場者の人数分用意されているはずなので、ゆっくり楽しむことができます。しかも会が進んで残り20分になるとチケットに関係なく余っている料理がフリーに食べられるのです。これは凄いですね。それでもこの会の会費は5400円ですから安いです。
しかもどの料理もとてもおいしかった。ちょっと食べたお料理の写真を載せておきます。
1.4元豚のロースト
<宮城県の米>
蔵の華:耐冷性が弱点の美山錦に変わるお米として、山田錦と寒さに強い東北140号を交配して1997年に宮城県で開発された酒造好適米で、山田錦や雄町より淡麗で美山錦よりふくよかで、味わいはやららかで清楚な傾向だそうです。純米吟醸用に使われることが多く、宮城県の酵母との相性がいいそうです。
ササニシキ:1963年に宮城県で開発された食料米で、あっさりした触感で、こしひかりに並ぶ東北地方の優れた品種として栽培されてきましたが、耐病性や耐冷性が弱く次第にひとめぼれなどの他の品種に置き換えられてきています。酒米としてはどっしりとした酒質の酒ができるが、やや雑味が多くなるようです。
ひとめぼれ:ササニシキの後継品種として1991年に開発された食料米で、コシヒカリに次ぐ第2位の銘柄に成長しています。耐冷性は抜群で、東北から沖縄まで広く栽培されています。
とよしにき:1969年に秋田県で開発された食料米で、耐冷性は強くないが、耐病性や耐倒伏性が強いので、主に岩手県と宮城県で栽培されています。酒米としては南部杜氏が好むお米と言われています。
<宮城県の酵母>
初代の宮城酵母は1965年に宮城県の醸造試験所により「浦霞」の吟醸醪から分離した酵母で、1985年から協会12号酵母として領布されていましたが、最近は新しく華やかな吟醸香の酵母は開発され次第に使われなくなっています。この酵母は吟醸酒に向いた酵母でしたが、純米酒に向いた発酵力もあり、うま味と酸味のバランスの取れた酵母が期待されていました。
宮城県産業技術総合センターでは1997年より新しい酵母開発を進め、2000年に宮城マイ酵母の開発の成功しました。この酵母は初代宮城酵母を親としていますが、初代の酵母に比べてアルコール濃度が上がっても発酵力が落ちないので安定した醪ができるうえに、味わいも酸がとげとげしくなく、丸みを感じるので、全体的なバランスが良く、すっきりとした柔らかい酒質になったそうです。
蔵に行くと宮城マイ酵母とは言われないで、宮城A酵母とか宮城B酵母というのを聞きますので、もっと調べてみますと、同センターは2010年に3種類の酵母を発表しています。その名前は宮城酵母MY-4008、MY-4017、My-4021の3種類です。これを通称呼び名として、A、B、Cと呼んでいるのかもしれません。その時の説明では4021が一番香りが高く、4008が穏やかな香りだそうです。正しいことを知っている人がいたら教えてください。
では早速蔵の紹介に入ります。すでに紹介済みの浪の音ですが、ブログの中ではお酒の味については触れていませんでしたので、浪の音を含めて5蔵を紹介することにしました。
1.浪の音 佐々木酒造
佐々木酒造は名取市にあるとても小さな蔵で、東日本大震災で蔵が壊滅したので、仮設の蔵でお酒を造っています。お写真のご兄弟で酒造りをしていますが、右側の方がお兄さんの佐々木洋さんで左の方が弟の佐々木淳平さんです。洋さんは経営全般と麹室担当で、淳平さんが杜氏をしています。それではどんなお酒を造っているのでしょうか。
今回は純米大吟醸の浪庵、純米吟醸の玲瓏、特別純米の閖の3本を飲みましたが、僕が気に入ったのは特別純米酒と純米吟醸でした。閖はひとめぼれ60%精米で9号酵母を使ったお酒で、玲瓏はとよにしき55%精米で秋田B酵母を使ったお酒です。どちらもテクスチャーが良く滑らかさを感じるお酒ですが、香りは閖の方が穏やかな香りで、玲瓏の方が少し華やかな感じでした。、閖は飛び出るところはあまりないけど、どんな食事にも合わせられるバンスの良い仕上がりでした。玲瓏は閖よりはうまみを感じるので、少しバランスが違いますが、これもなかなか良い仕上がるいでした。このお酒の良さを感じるためにはあまり冷やさないほうがいいように思えました。
2.栗駒山 千田酒造
千田酒造は宮城県と山形県と岩手県の境界にある栗駒山の麓の栗駒中野町にある蔵で、大正9年に千田養治郎さんが最初鶯沢で操業を開始しましたが、その後栗駒中野町に良い水があるの知り、昭和12年に現在地に来たそうです。栗駒山の麓と言っても蔵駒山の頂上からは20kmも離れた小さな町の中にあります。
この方が5代目社長の千田善彦さんです。この蔵の特徴は何といっても栗駒山の雪どけ水の良さがそうでです。生産量は300石ぐらいで少ないのですが、蔵の設備には資金を使っているようで、精密醪温度センサー、自動製麹機、全量瓶貯蔵可能な大型冷蔵庫など最新設備を持っているそうです。
僕が飲んで気に入ったお酒は特別純米でした。お米はササニシキ55%精米で、口に含むと酢酸イソアミル系の爽やかな香りとともに、ドンと来るのではない奇麗な甘みと共に酸味を感じながら後味の方まで旨みが奇麗に広がるお酒でした。日本酒度は+2、酸度が1.8、アミノ酸が1.2でしたので、なるほどねいう感じでした。このお酒もあまり冷やさないお方が良いと思いました。この蔵も水の良さをうまく引き出していると思います。
3.荻の鶴、日和田 荻野酒造
荻野酒造は千田酒造と同じ栗駒市にあると言っても離れていて、ほとんど岩手県との県境にあるJR東北本線の有壁駅のすぐそばにある蔵です。この地は奥州街道の宿場町として栄えたところで、平安時代に金が発見されたことから金成町と言われたそうです。創業は江戸時代末期ですから約180年の伝統ある蔵です。この蔵の水も栗駒山からの伏流水で奇麗な軟水だそうです。
写真の方は8代目蔵元となる専務取締役の佐藤曜平さんです。この蔵は荻の鶴という銘柄を造ってきましたが、曜平さんが東京農大を卒業酒蔵に戻ったのが平成14年で、すぐ作った銘柄が日輪田(ひわた)だそうです。日輪田はお日様と田んぼが輪になるというイメージで、すこし田舎っぽいお酒をイメージして作っているそうです。生産高は500石位だと思います。
僕が気に入ったお酒は日輪田の山廃純米大吟醸でした。このお酒は雄町45%精米のお酒で、飲んでみるとしっかりとした酸味と旨みが口に中に広がるけど、スウット奇麗に消えていく中に後味に余韻を感じるお酒で、雄町らしさが出ていました。曜平さんは造りの責任者で、このお酒は自信作だとおっしゃていました。
4.宮寒梅 寒梅酒造
この蔵は東北本線の小牛田から出ている陸羽東線の西古田駅から西に1㎞弱行った多田川のたもとにある蔵で、まさに田園地帯の中にある蔵です。創業は大正5年ですから比較的新しい蔵で、蔵の名前も岩崎酒造だったようです。寒梅酒造と名を変えたのは戦後の復旧の昭和32年で寒さに耐えて咲く寒梅からとったようです。今では新潟県の越乃寒梅、埼玉県の寒梅と並んだ寒梅酒造となっています。
この蔵の特徴は自ら作る米の種類の多さではないでしょうか。美山錦、ササニシキ、ひとめぼれ、まな娘、愛国などを栽培しています。そのほか秋田の亀の尾や熊本の神力も使っているそうです。この蔵の生産量は300石強の量ですが、家族ぐるみで酒造りをしています。父の岩崎隆聡さんが社長兼杜氏で、常務の健弥さんが麹造り、娘さんが酒母造りをしているようです。お写真お方が岩崎健弥さんで、娘さんの真奈さんのお婿さんだそうです。この蔵は最近設備投資をして四季醸造をしているそうで、これからが楽しみな蔵です。
色々の酒を飲んでみましたが、カプロン酸系の香りの高いお酒が主体で、最初の1杯でうまいと言わせることを狙っていいるようです。僕が気に入ったお酒はあまり香が高くない特別純米の鶯咲(おうさき)でした。お米は愛国55%精米の純米酒で、繊細でキメ細かい味わいで程よい余韻があるお酒でした。愛国というお米は元々静岡で開発された食料米で、宮城県で栽培されるようになって、愛国と名付けられたと言われています。明治から大正にかけて、東北の亀の尾、西日本の神力と並んで関東の愛国とよばれた時期もあったのですが、食料米としてはすたれて今では酒米として少量造られているようです。こんなお米を使うのは何かこだわりがあるのでしょうか。
最後に奥様とのツーショットを載せておきます。
以上で「穣の宴」で見つけた蔵の紹介を終わりますが、他にも魅力的な蔵もありましたが、時間がなくてご紹介できない状態でした。たった2時間でおいしいお料理も食べながらの会の中で見つけるのは大変なことだとわかりました。これからはお料理はなくてもゆっくり試飲できるような会に絞って参加するようにしたいと思った次第です。でもこの会が悪いわけではなく、このような会では思い切って楽しむようにした方がいいのかなと思いました。
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