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2017年12月 8日 (金)

東大蔵元会の惣誉と喜多屋の酒の秘密をご紹介します

毎年10月の第3土曜日は東京大学の本郷キャンパスでホームカミングデイが開かれます。ホームカミングデイというのはどの大学でも行われているようですが、年に一度卒業生の交流を深めるのを目的としたイベントを行う日を言うようです。東大では講演会やシンポジウムなどの真面目なものから、東大オーケストラOBやOGによる室内楽演奏会や親と子供が楽しめる広場や東大落語会など気軽に参加できるイベントもたくさん開催されています。 

その中にお酒の好きな人には絶対見逃せない東大蔵元会という利き酒会のイベントがあります。これは東大出身または東大で教えている日本酒の蔵元の説明を聞きながら、その蔵のお酒を試飲できるイベントです。いつも安田講堂前の銀杏並木の所で開催されており、1杯100円から200円(30mlくらいかな)で自由に飲むことができます。この会には卒業生でなくてもだれでも参加できますが、卒業生が主体となっているためかあまり混んでいないので、酒好きの人には絶好の穴場のイベントです。 

今年はあいにく雨になってしまいましたので、屋外のイベントなので準備が大変そうでしたが、11時には予定通りオープンしていました。その時の写真を下に載せておきます。まだあまり人がいませんね。 

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今年の参加蔵は去年より1蔵増えて11蔵になっていました。会のメンバは下記の通りですが、今年は新政酒造、出羽桜酒造、金水晶酒造、大七酒造は他の仕事の関係で、本人が出席できずに代理人が来られていました。本人が参加していないとやっぱり寂しいですね。その代わり去年来られなかった喜多屋の社長の木下浩太郎さんと花の露の社長の冨安 拓良がお見えになっていました。 

1.わしの尾 代表取締役 工藤  (工学部2003年卒)  

2.新政酒造  代表取締役 佐藤 祐輔(文学部1999年卒)  

3.出羽桜酒造 代表取締役 仲野 益美(東大非常勤講師)  

4.金晶水酒造 常務取締役 斎藤 美幸(教養学部1988年卒)  

5.大七酒造   代表取締役 太田 英晴(法学部1982年卒)  

6.下越酒造   代表取締役 佐藤 俊一(農学部卒) 

7.惣誉酒造   代表取締役 河野 遵(経済学部1983年卒)             

8.武重本家酒造 代表取締役 武重 有正(工学部1981年卒) 

9.長龍酒造   代表取締役 飯田豊彦(経済学部卒1986年卒) 

10.喜多屋  代表取締役 木下浩太郎(農学部1987年卒) 

11.花の露  代表取締役 冨安 拓良 

東大蔵元会が発足したのは3年前でそんなに前のことではなく、僕はこの会に去年初めて参加したので、その時のことについては下記のブログにまとめましたので興味のある方はご覧ください。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-e423.html 

今年は僕の仕事の関係で1時間ほどしかいられなかったので、去年ほどの情報は得られませんでしたが、去年来られなかった蔵を中心に新しい情報だけを纏めてみることにしました。花の露とは初めてお会いしたのですが、時間をゆっくり取れなかったので、この蔵の紹介は来年にすることにします。 

1.惣誉酒造 

この蔵は栃木県の市貝町にありますが、市貝町はJR宇都宮駅から東へ10㎞程入ったところで、小貝川の最上流の人口12000人の小さな町です。創業は明治5年で、約150年弱の歴史を持つ蔵ですが、もともと江戸時代に滋賀県で酒造りをしていた蔵がここに出店として始まったそうです。どうしてこんな田舎町に滋賀からわざわざ出てきたのかはよくわかりませんが、鬼怒川の伏流水と冬場は厳しく冷え込むという土地が酒造りに向いていたからでしょうね。それ以降、地元に愛されるお酒造りを続けていて、今では3000石の生産量がありますが、そのほとんどを県内で消費してるそうです。それだけ地元の人に信頼される酒質を守っていたのでしょう。 

現在の社長は5代目の河野遵さんですが、1961年生まれで、1983年に東京大学経済学部を卒業された後、松下政経塾など色々なところを経験されたあと、1989年に蔵に戻って1995年に社長に就任しています。社長になってすぐやられたことは新しい杜氏の阿部孝男さんと協力して2001年に生酛造りを復活させたことです。生酛造りは酒母に乳酸を投入する速醸法が開発されるまでの酒母造りとしてに用いられた方法です。生酛造りは、蒸米と米麹を丁寧に櫂で磨り潰すことにより、自然の力で乳酸が程よくわいてくるのを待つ方法のために、速醸法に比べて酒母を造るのに手間と時間がかかるけれども、コクがあって、きりりとした酸と色々な旨みが出る味わい深いお酒になります。 

生酛造りは江戸時代に完成した伝統ある製法ですが、その技術に現代の技術をかみ合わせて開発したのが惣誉の生酛造りで、惣誉では生酛ルネッサンスと呼んで今ではその技術で多くの酒を造っています。そして今目指しているのは伝統と現代の技術を融合させた製法によりエレガントな味わいを出すお酒造りだそうです。 

こうして生まれたお酒の一つに東京大学コミュニケーっションセンター(UTCC)だけでしか販売していない「淡青 純米大吟醸」と「淡青特別純米」があります。淡青という色は今や東大のスクールカラーとなっていますが、それは第1回東大・京大対抗レガッタをやる際に抽選で東大のボートのオールの色がライトブルーに、京大のオールの色がダークブルーなったという経緯があります。そのスクールカラーの発祥の当事者となった東大ボート部のOBが懇親会で飲むお酒の「淡青」を造ろうということになり、惣誉の河野さんに依頼したというわけで、今年の9月15日に発売となりました。どんなお酒なのでしょうか。 

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この2本が僕が購入した「淡青」で左が純米大吟醸、右が特別純米です。ラベルがおもしろいでしょう。青い水の上にはボートを漕ぐ様子が書かれていますが、これは東大ボート部が勝利した時のシーンを版画家の原田維夫さんが描いたものだそうです。この酒は東大の卒業生や関係者が同窓会や宴席の場で利用していただくとともに、母校への愛好心を醸成し同窓会活動の活性化につなげてほしいという思いで商品化したものだそうです。 

主な製品の概要を下記に示します。 

・ 淡青 純米大吟醸 生酛造り 

   原料米: 兵庫県東条と吉川(特A地区)産山田錦
   精米度: 45%精米
   酵 母: 協会7号、協会9号、協会14号
   アルコール度数:15%
   価 格: 3585円
4合瓶

・ 淡青 特別純米 生酛造り 

   原料米: 兵庫県吉川(特A地区)産山田錦
   精米度: 60%精米
   酵 母: 協会7号、協会9号、協会14号
   アルコール度数:15%
   価 格: 1720円 4合瓶
 

ここに示した数値ではどんなお酒はわからないと思いますので、このお酒のコンセプトを社長にお聞きしましたので、ご紹介します。今流行りのお酒はカプロン酸エチルの香りが強く、甘目でフレッシュなお酒が多いですが、このお酒は冷蔵保管しないと品質が維持できない欠点があるので、冷蔵庫に保管しなくても味がへこたれないこと、海外でもおいしく飲めるように熟成によってますます味が乗ってくること、味が複雑で深みがあって品の良い香りのある酒を目指したそうです。 

そのために凄いことをしています。それは3種類の酵母を使った別々の醪を造り、それに製造年度の違う2種類のお酒も含めて瓶に詰めるときにブレンドして、2回火入れをして作っているそうです。そこまで気合を入れているお酒とは思いませんでした。 

特別純米を飲んでみると、強くはないけど品のある香りとともに口に含むとしっかりした味わいがあるけれども後味は少し辛みを感じながら切れていくお酒でした。日本酒度は4で。グルコース濃度を1.1~1.2に抑えて酸度1.8にして切れの良さを出しているようですが、それほど強く酸は感じませんでした。これは生酛造りの味わいのある酸のせいではないかなと思いました。 

純米大吟醸の方は香りは全く同じですが、口に含んだ時の甘みが違いました。グルコース濃度を1.8まで上げてうまみを出していますが、精米度を上げることによる奇麗さがあるので、後味の切れと余韻に差が出るようです。やはり僕がこっちのほうが好きだな。 

こんなに気合を入れたお酒ですから、ぜひ皆さん呑んでください。飲む価値のあるお酒です。最後に社長にこのお酒を持ってもらいました。見てください。お酒が違いますね。それは淡青は東大のUTCCでしか販売できないお酒なので、この蔵元会には持ってこれないので、中身は同じですが、ラベルに惣誉と書いてあるお酒を持ってきたそうです。 

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2.喜多屋 

この蔵は九州一の穀倉地帯の南にある八女市にあります。八女市と言ってよくわかりませんが、久留米市から南に十数km南に下がったところのようです。江戸時代末期の文政年間に米屋をしていた木下家の長男の斉吉が喜多屋という酒屋を始めたようです。喜多屋という名は酒を通して多くの人に喜びを与えたいという気持ちから付けられたようです。その斉吉さんは酒造りに情熱を燃やし、自ら蔵に入ってさけつくりをしたので、「主人自ら酒造りをすべし」が家憲となっているそうですからすごいですね。 

現在は7代目の木下宏太郎さんが社長として蔵を引っ張ていますが、宏太郎さんの時代になっても家憲は守り継いでおり、造りたいお酒のコンセプトを自分で考えるだけでなく、その作り方のレシピも考え、蔵人に指導をするなど、酒造りのすべてをコントロールしているそうです。この会社は全員社員なので、昔の杜氏制度はやめていますが、製造責任者は当然いますが、その人を含めて蔵人全員で技術を共有してお互いの役割をはっきり認識したたうえで酒造りをするように努力しているそうです。 

常に今までの常識を打ち破って新しい酒造りにチャレンジして、今までになかった理想のお酒を目指しているそうですが。それはどんなお酒なのでしょうか。それは芳醇でかつ透明感のあるお酒、つまり芳醇さと透明感を両立させたお酒を追及しているそうです。それは別の言葉でいえば、優しく、丸く膨らんで、余韻が奇麗に消えていく酒だそうです。その追及には終わりはないですが、2013年にその成果が実を結んだようです。それは2013年のIWCの酒部門に出品した「大吟醸 極上 喜多屋」が日本酒5部門の中で最優秀賞を獲得したからです。つまり世界一と評価されたのです。社長のお話では世界一になったことが重要ではなく、賞をいただいた時の表彰のコメントが「Intensity and Purity]ということで、目指した味わいが評価されたことが非常にうれしかったそうです。 

宏太郎さんはどんな人なのでしょうか。1962年に八女市に生まれ、久留米大学付属高等学校を卒業した後、東京大学農芸化学科に入学されています。一浪して1回留年したので卒業は1987年だそうです。その後5年間宝酒造で修業したあと、1992年に蔵にもどっています。そのあと、東京の醸造研究所に2年3か月勉強したそうですが、その時学んだことがその後一番役に立っているそうです。特にその時の先生であった岩野君夫さんを師と仰ぎ、一番の弟子と自称するほど、先生の理論や考え方を身に着け酒造りに生かしているそうです。先生はその後秋田県立大学の教授として赴任しましたが、そちらにもよく出かけて教わったそうです。その先生が言われた言葉に、「いいお酒は「残らず寂しからず」と言われており、それを自分流に解釈して現在の理想の酒の姿としているそうです。 

お話を聞くととても考え方がはっきりして、明快にお話しされる方で、しかも自信たっぷりのお話されるので、ついつい引き込まれてしまいますね。 

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社長になったのは1999年ですが、自ら蔵に入って色々な改革をしています。現在の蔵の生産高は4700石で、そのうちの特定名称酒は3000石でその平均精米度は54%ですから非常に質の高いお酒を中心においていることが判ります。これだけの生産をするには、ある程度の機械化を進める必要がありますが、伝統的な作りの良いところはきちっと抑えたうえで機械化しているようで、蓋麹法の良さをきちっと踏まえた独自の自動製麹装置を開発しても、蔵人全員に、蓋麹法をマスターするように指導しているそうです。 

こうやって平成9年には最新鋭の設備を備えた新工場を建設し、さらなる品質向上に努め最近は海外への輸出にも力を入れすでに販売している国は17か国にもなっているそうです。その喜多屋が蔵元会にはどんなお酒を持ってきていただけたのでしょうか。 

持ってきていただいたのは下の写真の3本です。この写真ではよくわからないので、お酒の紹介の時には特別純米 蒼田はインターネットから借用し、他の二本は購入したものを家で撮ったものを載せました。 

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それからお酒の特徴は社長が語ってくれましたが、酒質については説明がなかったので日本酒サービス研究会からインターネットで載せていたものを書き写して載せました。これからどうして社長が説明したお酒になったかも考えてみました。 

<特別純米酒 蒼田 山廃仕込み 

Skitaya05_2原料米:福岡県産山田錦60%精米
ALC度数:15~16
日本酒度:-3~ー1
酸   度:1.9~2.1
アミノ酸度:1.8
 

このお酒は山廃仕込みが出す酸味を活かした肉料理に合わせたフルーティな日本酒を目指したお酒です。酵母は18号と9号を使っているそうです。18号の華やかなかおりと9号の発酵力の強さを活かすためですが、同時使用のブレンドではなく、18号と9号を時間差でいれるそうです 

飲んでみるとフルーティだけど旨みも酸味もあり、あまり飲んだことのないバランスのお酒でした。これは酒質の数字を見ても良くわかりますね。食中酒としての甘みを最初に感じさせながら、中盤で旨みと酸をバランスさせて切れを出しながら、味も濃い料理にも合わせられるお酒になっているようです。 

純米大吟醸 喜多屋 50%磨き> 

Dsc_0466原料米:山田錦と雄町50%精米
ALC度数:15~16
日本酒度:+2~+4
酸   度:1.2~1.4
アミノ酸度:1.5
 

このお酒は山田錦の柔らかい味の良さと雄町の押しの強さをうまく引き出したお酒を目指したものです。山田錦と雄町の使用量の日は6:4だそうです。麹米と掛米を別のお米を使うことはよくありますが、2つの原料の良さを引き出すためには、そのやり方ではできないそうです。具体的には酒母、初添、仲添、留添で原料米の味が引き出せるように原料米の比率を変えるそうです。難しそうですね。 

酵母は自社酵母ですが、M310酵母をベースとしとしていて、大吟醸系は皆この酵母を使っているそうです。 

飲んでみるとフルーティな上品な香りの中に、複雑な味わいを感じさせるお酒になっていました。あまり酸味を上げない代わりに、甘みを少し抑えてる割にはアミノ酸を少し高めに持ってきているのは適度な旨みを持たせて、食事に合うお酒を狙ったのではないでしょうか。 

<大吟醸 極醸 喜多屋 

Dsc_0469原料米:福岡県産山田錦35%精米
ALC度数:16~17
日本酒度:+3~+5
酸   度:1.0~1.2
アミノ酸度:0.9
 

このお酒はIWC2013で最優秀賞を取ったお酒で、芳醇でありながら透明感を持たせたお酒を狙ったものです。 

飲んでみると上品な香りと共に柔らかく甘みが広がって口の中にすっと入っていき、その後ぱっと膨らんで消えていくお酒でした。確かに芳醇な味を色々感じるけど、最後にそれが一つになって消えていくのが透明感につながるのでしょう 

酒質から見るとちょっと辛口で酸味が少なく、アミノ酸を抑えて奇麗さを出す大吟醸の標準的な数字ですが、数字には見えない秘密があるのでしょう。これについての蔵しい説明はありませんでしたが、今までの経験の中で天から降りてきたような手法を思いつき出来たものだそうです。その手法はよくわからないけど、確かに一度飲む価値は絶対にあるお酒であることは間違いないです。

これで今回の東大蔵元会のお酒の紹介は終わりまが、両方の蔵とも今までにないお酒を造ろうという気概を感じました。これが現状に満足しない東大蔵の魂かな?

最後に新しく参加された花の露 社長の冨安 拓良のお写真を載せて終わりにします。来年に詳しく紹介しますので必ず来てください。待っています。

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