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2017年12月20日 (水)

富士錦酒造の蔵開きは日本一の規模らしい

先日、調布市の仙川にある日本酒バーあふぎでの今年最後の蔵元を囲む会がありましたので、参加してきました。今回は静岡県の富士錦酒造の社長の清信一さんをお呼びしての会でした。清さんとは静岡県の酒造組合が主催するイベントなので時々お会いしてなかなかいいお酒を造っているなと思っていましたので、じっくりこの蔵のお酒を味わってみようと思ってきました。 

富士錦酒造はJRの富士駅から北の方に20㎞程上がった上柚町にあります。富士駅から山梨県の甲府駅を結ぶJR身延線の富士宮駅からも7-8kmも離れている富士山の西の麓に位置していて、標高が270mあるので、冬は結構寒いところのようです。酒造りとして適しているのは富士山の伏流水が豊富にあるからのようで、蔵の敷地内の30mの井戸からくみ上げた水を仕込み水として使っています。この水は富士山の溶岩層の第3層にある水で、富士山に降った雪や雨がしみ込んで80年近い時間をかけて湧き出てきた水で、硬度が32の軟水です。非常に柔らかくてとげをまったく感じない水で、これが富士錦のお酒の骨格になっているそうです。 

創業は元禄年間(1688~1704)年だそうで、300年以上の歴史のある蔵ですが、もともとこの地の地主で、ここで出来たお米を流通させる商売をしていたそうです。酒造りは余ったお米を使って、副業として始めたので、その生産量は200石足らずの小さな蔵だったようです。この蔵のお酒にははっきりした銘柄がなかったのですが、1914年(大正3年)に第14代目の当主の弟さん(清崟太郎)が衆議院議員を時の尾崎司法大臣を実家にお招きした時に、夕日を受けた富士山を見て感激して「富士に錦なり」と言われたことから、その言葉をいただいて「富士錦」と命名したそうです。

その後、戦後の農地改革や企業整備なので6年間休業していたこともありましたが、昭和26年に酒造りを再開しました。しばらくは他の蔵と同じような普通酒を造っていましたが、17代目の当主は昔の行われていた本物の酒造りを目指して開発を進めた結果、昭和46年に「富士天然醸造酒」を発売をしたのが大きな変革の始まりでした。そのお酒は「富士の湧き水と米だけで醸造した酒」というキャッチフレーズで出したお酒で、今でいう純米酒を全国に先駆けて出したのです。当時は純米酒という言葉すらない時代で、米のほかに調味料や醸造用アルコール入れることが普通に行われていましたので、価格が大幅に高くなる純米酒の醸造をやる人はほとんどいなかったようです。調べてみると全国で最初に純米酒を復活して出したのは京都の玉乃光酒造で、昭和39年のようですが、富士錦酒造のこの行為が業界に風穴を開ける大きなきっかけになったようですが、そのことはあまり知られていません。純米酒の普及と言えば純粋日本酒協会がありますが、この協会が発足したのは昭和48年です。でも、この協会には玉乃光は参加しているけど富士錦は参加していません。いろいろあるのでしょうね。 

富士錦が出した当初の純米酒は価格が高いうえに味は辛くて厚みのあるお酒でしたのであまり売れなかったようですが、その後研究を重ねて品質が上がりお酒も売れるようになり、現在は生産高も2000石になっています。 

そして今の富士錦の体制を築き上げたのは第18代目の蔵元の清信一さんです。信一さんは非常に変わった経緯で蔵元となっていますし、あの事件がなかったら今の僕はないと言っておられるほどですので、まず、それを紹介しましょう。 

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 信一さんは1993年横浜生まれの横浜育ちで、優しそうな顔立ちの現在54歳のダンディな方です。お父さんはシンガポールで金型を作る会社を経営していたので、将来はその会社を継ぐことを考えて、大学は中央大学の理工学部の管理工学科に進学されました。管理工学と言っても経営学とITを一緒にしていたような学問でしたので、卒業後は大和証券のシンクタンクの「大和総研」に就職して、生命保険会社などのシステム構築の仕事を担当して9年間務めたそうです。 

その間に東京で知り合った人と1993年に結婚することになったのですが、その年の12月に奥様のお兄さんが交通事故で急死されたのです。奥様は富士錦酒造の社長の娘さんでしたので、後継ぎが無くなり信一さんに後を継いでもらいたいとの声が強くなってきたので、どうするか悩んだそうです。でも、仕事が一段落した2年後の1996年に富士錦酒造に入社することを決め、家族で柚野に拠点を移し、養子縁組をすることになったそうです。父の会社の後は弟に譲って、自分は蔵に入ったのですが、お母様は泣いて悲しんだそうです。それはそうでしょうね。でもそれをお許しになったお父様は心の広い人ですね。 

全く酒造りを知らない人でしたから、急遽東京農大の醸造学科に通って、蔵の事情をお話しし、半年で2年分のカリキュラムを勉強したそうです。前半の授業では必死に聞き落さないよう勉強したのち、後半の2か月は東京で泊まり込みの醸造実習を行い、1996年の11月から蔵に入りました。最初は総務部長として製造から営業、製品造り、経理と色々なことにかかわり、2年ほど勉強した後、1998年に専務になり、2006年に社長に就任しています。 

信一さんは会社に入ってから数々の改革を進め確実に成果を上げてきています。蔵に入ってまずやったのはコンピューター導入による作業効率のアップです。まずは事務処理を手書き中心からコンピューター化し、、お客様管理をシステム化して提案型営業へのシフトへと転換し、、経験や勘に頼っていた造りの仕事の数値化により再現性追求するなどを行ってきたそうです。システム化については自分の得意な分野ですが、東京で学んだシステム化で大切なことは関わる人の連携が大切だということはわかっていましたので、よく話し合って進めたので、比較的スムーズに行ったそうです。 

しかし、造りの部分は色々な作業を数値化しても、肝心なところは造り手の感性が大切なことはよくわかったそうで、その部分は今でも大切にして伝統を守ることも留意しているそうです。もう一つの大きな改革は蔵開きを始めたことだそうです。 

蔵開きは年に1回3月の春分の日に蔵を開放してお酒の試飲と蔵の見学が基本ですが、地元のそば粉で打ったそばを出したり、地元で取れた鮎の塩焼きを出したり、最近は子供のための移動動物園を設けるなど、地元の村おこしの会の協賛を得て、子供も大人も家族も楽しめる完全に地元密着型のイベントになっているそうです。これを始めたのは信一さんが蔵に入った翌年からだそうで、自分から杜氏の社長にけしかけて実現したもののようです。

第1回目は雨のため800人ほどでしたが、年々参加者が増えて、今年の2017年は21回目で1万4000人が来場したそうです。僕がグーグルマップで確認したら、蔵の中にそんなに広い敷地はありません。蔵の周りの田圃にビニールシートを敷いて、富士山を見ながらお酒を飲んで過ごすようです。それにしても1万4000人とは凄すぎます。日本中の蔵の中でもこんなに人が集まる蔵開きはないと思います。インターネットで拾った蔵開きの風景を載せておきます。天気が良いと最高ですね。来年はぜひ行ってみたいですね。 

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最初は会社がある場所や蔵の存在を知らせる目的で始めたのですが、この町で作ったものを販売するなどしているうちに年々にぎわって地元の名も売れて、この町に移住する人が増えるなど地元に貢献できるイベントになった来たそうです。さらにお酒の知名度も上がり、お客様から酒屋さんに富士錦のお酒を指名してもらえるようになり酒の売り上げアップにもつながったそうです。 

最後にお酒造りについて触れてみたいと思います。信一さんが蔵に戻った時に一緒に富士錦酒造の杜氏になったのは南部杜氏の畑福 馨さんです。畑福杜氏と信一さんは入社同期の桜でお互いにとらわれるものがなく、真っ白な状態で出会ったので、二人で色々なお酒を試行錯誤しながら作り上げてきたそうです。これが信一さんにとって、大変良かったのではないでしょうか。畑福さんは平成22年の静岡県清酒鑑評会では純米の部で県知事賞を受賞するなど静岡を代表する名杜氏と称されていますが、平成23年に退職されることになりました。 

新しく来られた杜氏が小田島健次さんです。この方も畑福さんと同じ南部杜氏ですが、若くして杜氏になり静岡県の色々な蔵の杜氏を経験され、60才で定年になることを信一さんが聞きつけ、頼み込んで平成23年から富士錦酒造の杜氏となったのです。小田島さんは今年66才になられますが、常に少しでも上を目指す気持ちを持ち続けておられる方で、平成25年と28年で静岡県清酒鑑評会の純米吟醸の部で知事賞を取るほどの腕前を持った優秀な杜氏です。これからが楽しみですが、次の杜氏の育成も大切になりそうです。 

静岡県の蔵のお酒の話をするときにはどうしても静岡県沼津工業センターの研究員の河村傳兵衛さんとの関係に触れておく必要があります。河村さんは吟醸造りでは独自の理論を持ち情熱をもって静岡県の蔵の酒造りを指導してきた方で、今日の静岡流酒造りを築いた人です。静岡県の蔵の中には河村流に従わなかった蔵もあるようですが、富士錦は河村先生の指導を受けそれを活かして使っている蔵の一つですが、信一さんのお話では僕は悪い生徒で良く怒られていたので、一番の弟子にはならなかったと謙遜して言われていました。でも、富士錦のように非常に奇麗な水でお酒造りをするには河村流の造りが適していたのではと思われます。 

以上で蔵の紹介を終わりますが、河村先生のことや、静岡酵母をしれたい方は下記のブログをクリックして見てください。
 http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-27e3.html 

それでは早速飲んだお酒の紹介に入ることにします。今回は8種類のお酒を飲むことができました。飲んだお酒はお店のママの板倉さんの前にずらっと並んでいますが、よくわからないので、これから1本ずつ紹介していきます。 ママのことを知りたい人は下のブログをクリックしてください。

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/index.html



1.富士錦 大吟醸出品酒 山田錦 

Dsc_0357このお酒は平成29年3月に行われた静岡県清酒鑑評会で入賞したお酒ですが、去年知事賞を取っているお酒は純米大吟醸でしたからちょっと違うものです。どうして純米大吟醸を出さなかったのかは聞きませんでした。 

原料米は兵庫県産の山田錦40%精米で酵母は静岡酵母のHD-1です。アルコール度数は17度、日本酒度は+3、酸度1.4でした。 

飲んでみるとカプロン酸エチルの香りはするけどそれほど強くはなく、酢酸イソアミルのさわやかな香りもする独特の香りでした。蔵の5℃の冷蔵庫で半年以上熟成していたので、香りは減っているけど、奇麗な仕上がりでしたが、味乗りはしてきていました。 

今の段階の方が食事と合わせるのなら良いと思いました。 

2.富士錦 純米大吟醸 雄町 

Dsc_0358原料米は岡山県産の雄町45%精米で、酵母は協会18号と他の酵母とのブレンドだそうです。ブレンドと言っても2つの酵母を同時に入れるのではなく、別々のもろみを立てて最後の段階でもろみをブレンドしてから搾るそうです。2つの酵母を同時に投入すると強い酵母が勝ってしまうからだそうです。 

アルコール度数は15.5度、日本酒度+2、酸度1.3でしたが、飲んでみると含んだ時にもしっかり味わいを感じますが、飲んだ中盤から味がスウット伸びてくるバランスのお酒で、つい微笑みが出てしまうようなお酒でした。良いです。 

このお酒は今年の雄町サミットで入賞したお酒ですが、造った時はもっとクリアーなお酒だったそうですが、熟成することによってうまく味が乗ってきたそうです。雄町はどうもそういう特徴があるようです。雄町を扱いだしたのは去年からだそうで、来年も楽しみですね。 

3.富士錦 特別純米誉富士 

Dsc_0360このお酒は原料米に「誉富士」60%精米を使ってるのが特徴です。誉富士は静岡県が平成10年に開発したお米で、山田錦を放射線処理とその後の系統選抜によってできたお米で、山田錦より背丈が低く(1mくらい)根元がガッチリしていて倒れにくいのが特徴ですが、心白は山田錦より大きくあまり高精米には向かないけど、味は出しやすいお米のようです。このままでが吟醸用には使えないので、静岡県では現在改良中のようです。 

酵母は静岡酵母のNEW-5で、酒質はアルコール度数は16.5度、日本酒度+3、酸度1.2です。飲んでみると酢酸イソアミル系のさわやかは香りがしていますが、味がしっかりしていて飲み応えのあるお酒でした。常温でもぬる燗でもおいしく飲めるそうです。 

このお米は自社田で作ったお米で、2014年にフルネットの純米酒大賞を取って、社員一同大いに盛り上がったそうです。 

4、富士錦 純米原酒 ひやおろし 

Dsc_0364_2このお酒は原料米を酒造好適米ではない食用米の愛知県産の「あいちのかおり」65%精米を使ったお酒を秋まで貯蔵したひやおろしです。 

「あいちのかおり」は愛知県の農業作物の研究所で、愛知の希少米「ハツシモ」と「コシヒカリ」の系統「ミネノアサヒ」を交配して誕生した愛知県を代表する飯米の品種です。 

酵母は静岡酵母のNEW-5で酒質はアルコール度数は17.5度、日本酒度+2、酸度1.4です。飲んでみると味は比較的軽めですが、口当たりがすごく柔らかいお酒でした。富士錦の水の良さが上手く引き出されているような気がします。 

お燗して飲みましたが、口当たりの柔らかさは変わりませんでしたが、後味に辛みを少し感じるようになっていましたが、バランスは崩れていませんでした。 

このお酒は名古屋国税局主催の平成29年清酒鑑評会の純米の部で優秀賞を取ったそうです。ここに出品するにあたっては5本あったタンクの酒を蔵人がテースティングしてもっともよかったものを出したそうです。同じように作ってもタンクによって違うのですね。 

5.富士錦 純米 青ラベル 

Dsc_0367このお酒は静岡県産の五百万石を使ったお酒で、このお米を使った理由は5年ほど前に花の舞酒造が地元の農家に五百万石を造ってもらった時に、造ったお米を全量使いきれなかったので、富士錦酒造が買い取ることになって、始まったお酒です。 

五百万石65%精米で酵母は静岡酵母NEW-5を使っていますが、今まで飲んだお酒とは味が違ったお酒になったそうです。五百万石は溶けにくいお米なので、どうしても味が軽くなる傾向があるそうです。 

酒質はアルコール度数15.5度、日本酒度+3、酸度1.3で、飲んでみるときりッとしたちょっとシャープなお酒でした。こういう味は外国人お好みになるのか、去年のモンドセレクションで賞を取ったそうです。 

6.富士錦 湧水仕込み 純米酒 

Dsc_0365_2このお酒はひやおろしと同じ「あいちのかおり」65%精米の純米酒で、酵母も同じですが、東京の酒屋さんお注文で、アルコール度数を変えて名前も少し変えて出したお酒です。 

酒質はアルコール度15.5度、日本酒度+4、酸度1.5でしたが、飲んでみると、口に含んだ時の味が弱くて、特徴が薄い感じがしました。これはアルコール度数が低いせいかもしれません。 

社長のお話ではこのお酒は作り立ての時は結構おいしかったそうですが、現時点ではちょっと味が変わってしまったようで、その原因はわからないそうです。 

お酒の味は難しいですね。 

7.富士錦 純米吟醸生酒 熟 

Dsc_0371このお酒はちょっと特殊なお酒です。原料米は長野県の美山錦55%精米の純米吟醸の生酒ですが、12月に絞った生酒を瓶に詰めて、4度の冷蔵庫に保管していた熟成酒です。 

酵母は静岡酵母のNEW-5で、酒質はアルコール度17.5度、日本酒度-1、酸度1.6でこの蔵のお酒としては少し甘口で酸味で切れを出してバランスさせたお酒です。 

飲んでみると甘みを含んだしっかりした味わいがドンと来るけど、後味がすっきりと消えていくお酒でしたので、アミノ酸は少ないのではないでしょうか。味の濃いお料理にもある酒好きの人に合うお酒だと思いました。 

どうしてこんなお酒を造ったのですかときたら、10年前くらいに冷蔵庫の中に新酒の生酒が残っているのに気が付いて、春の蔵開きに出したら、評判が良くて追加注文が来たので、それ以来、蔵の定番として造っているそうです。 

驚いたのはこれを燗をしたらまるで姿を変えて、柔らかくてフラットになってとても飲みやすいお酒に変身したことです。お燗温度はやや高めの45度くらいがよさそうです。 

8.富士錦 本醸造 寒造り 

Dsc_0375このお酒は原料米は「あいちのかおり」65%精米の本醸造ですが、酵母な静岡酵母のNO2を使っています。 

酒質はアルコール度15.5度、日本酒度+5、.酸度1.3で、少しアルコール度を低めにした辛口ですっきりした軽い味わいの冷にもお燗にも合うお酒を狙ったようです。 

飲んでみると他の純米酒より香りが高いのは酵母のせいだと思われます。飲んでみるとあまりアルコール感がしない本醸造らしくないお酒でした。 

お燗にしてみたら味が少し膨らんでくるので、お燗にあっていると思われますが、このお酒は2017年の燗酒コンクールの熱燗の部で金賞を取ったそうです。 

以上で飲んだお酒の紹介を終わります。 

最後にこの蔵のお酒を全体に見てみますと、熟を除くと日本酒度は+2~+5、酸度は1.2から1.5と比較的狭い範囲の酒質を示していました。社長はうちの蔵は酸が高いお酒は得意でないからと言われていましたが、これはやはり河村傳兵衛さんの影響が色濃く出ているのと、仕込み水の良さを引き出すために自然とここに収まったのではないかと思われます。 

最後に皆で集まった集合写真を載せておきます。最後の最後に、清社長の得意技をお聞きしましたので、ちょっとお教えします。清さんはカラオケがお得意で、特に矢沢永吉の唄が得意だそうです。今度一度カラオケで勝負することを約束してお別れしました。 

清社長長い時間色々説明していただき、ありがとうございました。 

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2017年12月 8日 (金)

東大蔵元会の惣誉と喜多屋の酒の秘密をご紹介します

毎年10月の第3土曜日は東京大学の本郷キャンパスでホームカミングデイが開かれます。ホームカミングデイというのはどの大学でも行われているようですが、年に一度卒業生の交流を深めるのを目的としたイベントを行う日を言うようです。東大では講演会やシンポジウムなどの真面目なものから、東大オーケストラOBやOGによる室内楽演奏会や親と子供が楽しめる広場や東大落語会など気軽に参加できるイベントもたくさん開催されています。 

その中にお酒の好きな人には絶対見逃せない東大蔵元会という利き酒会のイベントがあります。これは東大出身または東大で教えている日本酒の蔵元の説明を聞きながら、その蔵のお酒を試飲できるイベントです。いつも安田講堂前の銀杏並木の所で開催されており、1杯100円から200円(30mlくらいかな)で自由に飲むことができます。この会には卒業生でなくてもだれでも参加できますが、卒業生が主体となっているためかあまり混んでいないので、酒好きの人には絶好の穴場のイベントです。 

今年はあいにく雨になってしまいましたので、屋外のイベントなので準備が大変そうでしたが、11時には予定通りオープンしていました。その時の写真を下に載せておきます。まだあまり人がいませんね。 

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今年の参加蔵は去年より1蔵増えて11蔵になっていました。会のメンバは下記の通りですが、今年は新政酒造、出羽桜酒造、金水晶酒造、大七酒造は他の仕事の関係で、本人が出席できずに代理人が来られていました。本人が参加していないとやっぱり寂しいですね。その代わり去年来られなかった喜多屋の社長の木下浩太郎さんと花の露の社長の冨安 拓良がお見えになっていました。 

1.わしの尾 代表取締役 工藤  (工学部2003年卒)  

2.新政酒造  代表取締役 佐藤 祐輔(文学部1999年卒)  

3.出羽桜酒造 代表取締役 仲野 益美(東大非常勤講師)  

4.金晶水酒造 常務取締役 斎藤 美幸(教養学部1988年卒)  

5.大七酒造   代表取締役 太田 英晴(法学部1982年卒)  

6.下越酒造   代表取締役 佐藤 俊一(農学部卒) 

7.惣誉酒造   代表取締役 河野 遵(経済学部1983年卒)             

8.武重本家酒造 代表取締役 武重 有正(工学部1981年卒) 

9.長龍酒造   代表取締役 飯田豊彦(経済学部卒1986年卒) 

10.喜多屋  代表取締役 木下浩太郎(農学部1987年卒) 

11.花の露  代表取締役 冨安 拓良 

東大蔵元会が発足したのは3年前でそんなに前のことではなく、僕はこの会に去年初めて参加したので、その時のことについては下記のブログにまとめましたので興味のある方はご覧ください。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-e423.html 

今年は僕の仕事の関係で1時間ほどしかいられなかったので、去年ほどの情報は得られませんでしたが、去年来られなかった蔵を中心に新しい情報だけを纏めてみることにしました。花の露とは初めてお会いしたのですが、時間をゆっくり取れなかったので、この蔵の紹介は来年にすることにします。 

1.惣誉酒造 

この蔵は栃木県の市貝町にありますが、市貝町はJR宇都宮駅から東へ10㎞程入ったところで、小貝川の最上流の人口12000人の小さな町です。創業は明治5年で、約150年弱の歴史を持つ蔵ですが、もともと江戸時代に滋賀県で酒造りをしていた蔵がここに出店として始まったそうです。どうしてこんな田舎町に滋賀からわざわざ出てきたのかはよくわかりませんが、鬼怒川の伏流水と冬場は厳しく冷え込むという土地が酒造りに向いていたからでしょうね。それ以降、地元に愛されるお酒造りを続けていて、今では3000石の生産量がありますが、そのほとんどを県内で消費してるそうです。それだけ地元の人に信頼される酒質を守っていたのでしょう。 

現在の社長は5代目の河野遵さんですが、1961年生まれで、1983年に東京大学経済学部を卒業された後、松下政経塾など色々なところを経験されたあと、1989年に蔵に戻って1995年に社長に就任しています。社長になってすぐやられたことは新しい杜氏の阿部孝男さんと協力して2001年に生酛造りを復活させたことです。生酛造りは酒母に乳酸を投入する速醸法が開発されるまでの酒母造りとしてに用いられた方法です。生酛造りは、蒸米と米麹を丁寧に櫂で磨り潰すことにより、自然の力で乳酸が程よくわいてくるのを待つ方法のために、速醸法に比べて酒母を造るのに手間と時間がかかるけれども、コクがあって、きりりとした酸と色々な旨みが出る味わい深いお酒になります。 

生酛造りは江戸時代に完成した伝統ある製法ですが、その技術に現代の技術をかみ合わせて開発したのが惣誉の生酛造りで、惣誉では生酛ルネッサンスと呼んで今ではその技術で多くの酒を造っています。そして今目指しているのは伝統と現代の技術を融合させた製法によりエレガントな味わいを出すお酒造りだそうです。 

こうして生まれたお酒の一つに東京大学コミュニケーっションセンター(UTCC)だけでしか販売していない「淡青 純米大吟醸」と「淡青特別純米」があります。淡青という色は今や東大のスクールカラーとなっていますが、それは第1回東大・京大対抗レガッタをやる際に抽選で東大のボートのオールの色がライトブルーに、京大のオールの色がダークブルーなったという経緯があります。そのスクールカラーの発祥の当事者となった東大ボート部のOBが懇親会で飲むお酒の「淡青」を造ろうということになり、惣誉の河野さんに依頼したというわけで、今年の9月15日に発売となりました。どんなお酒なのでしょうか。 

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この2本が僕が購入した「淡青」で左が純米大吟醸、右が特別純米です。ラベルがおもしろいでしょう。青い水の上にはボートを漕ぐ様子が書かれていますが、これは東大ボート部が勝利した時のシーンを版画家の原田維夫さんが描いたものだそうです。この酒は東大の卒業生や関係者が同窓会や宴席の場で利用していただくとともに、母校への愛好心を醸成し同窓会活動の活性化につなげてほしいという思いで商品化したものだそうです。 

主な製品の概要を下記に示します。 

・ 淡青 純米大吟醸 生酛造り 

   原料米: 兵庫県東条と吉川(特A地区)産山田錦
   精米度: 45%精米
   酵 母: 協会7号、協会9号、協会14号
   アルコール度数:15%
   価 格: 3585円
4合瓶

・ 淡青 特別純米 生酛造り 

   原料米: 兵庫県吉川(特A地区)産山田錦
   精米度: 60%精米
   酵 母: 協会7号、協会9号、協会14号
   アルコール度数:15%
   価 格: 1720円 4合瓶
 

ここに示した数値ではどんなお酒はわからないと思いますので、このお酒のコンセプトを社長にお聞きしましたので、ご紹介します。今流行りのお酒はカプロン酸エチルの香りが強く、甘目でフレッシュなお酒が多いですが、このお酒は冷蔵保管しないと品質が維持できない欠点があるので、冷蔵庫に保管しなくても味がへこたれないこと、海外でもおいしく飲めるように熟成によってますます味が乗ってくること、味が複雑で深みがあって品の良い香りのある酒を目指したそうです。 

そのために凄いことをしています。それは3種類の酵母を使った別々の醪を造り、それに製造年度の違う2種類のお酒も含めて瓶に詰めるときにブレンドして、2回火入れをして作っているそうです。そこまで気合を入れているお酒とは思いませんでした。 

特別純米を飲んでみると、強くはないけど品のある香りとともに口に含むとしっかりした味わいがあるけれども後味は少し辛みを感じながら切れていくお酒でした。日本酒度は4で。グルコース濃度を1.1~1.2に抑えて酸度1.8にして切れの良さを出しているようですが、それほど強く酸は感じませんでした。これは生酛造りの味わいのある酸のせいではないかなと思いました。 

純米大吟醸の方は香りは全く同じですが、口に含んだ時の甘みが違いました。グルコース濃度を1.8まで上げてうまみを出していますが、精米度を上げることによる奇麗さがあるので、後味の切れと余韻に差が出るようです。やはり僕がこっちのほうが好きだな。 

こんなに気合を入れたお酒ですから、ぜひ皆さん呑んでください。飲む価値のあるお酒です。最後に社長にこのお酒を持ってもらいました。見てください。お酒が違いますね。それは淡青は東大のUTCCでしか販売できないお酒なので、この蔵元会には持ってこれないので、中身は同じですが、ラベルに惣誉と書いてあるお酒を持ってきたそうです。 

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2.喜多屋 

この蔵は九州一の穀倉地帯の南にある八女市にあります。八女市と言ってよくわかりませんが、久留米市から南に十数km南に下がったところのようです。江戸時代末期の文政年間に米屋をしていた木下家の長男の斉吉が喜多屋という酒屋を始めたようです。喜多屋という名は酒を通して多くの人に喜びを与えたいという気持ちから付けられたようです。その斉吉さんは酒造りに情熱を燃やし、自ら蔵に入ってさけつくりをしたので、「主人自ら酒造りをすべし」が家憲となっているそうですからすごいですね。 

現在は7代目の木下宏太郎さんが社長として蔵を引っ張ていますが、宏太郎さんの時代になっても家憲は守り継いでおり、造りたいお酒のコンセプトを自分で考えるだけでなく、その作り方のレシピも考え、蔵人に指導をするなど、酒造りのすべてをコントロールしているそうです。この会社は全員社員なので、昔の杜氏制度はやめていますが、製造責任者は当然いますが、その人を含めて蔵人全員で技術を共有してお互いの役割をはっきり認識したたうえで酒造りをするように努力しているそうです。 

常に今までの常識を打ち破って新しい酒造りにチャレンジして、今までになかった理想のお酒を目指しているそうですが。それはどんなお酒なのでしょうか。それは芳醇でかつ透明感のあるお酒、つまり芳醇さと透明感を両立させたお酒を追及しているそうです。それは別の言葉でいえば、優しく、丸く膨らんで、余韻が奇麗に消えていく酒だそうです。その追及には終わりはないですが、2013年にその成果が実を結んだようです。それは2013年のIWCの酒部門に出品した「大吟醸 極上 喜多屋」が日本酒5部門の中で最優秀賞を獲得したからです。つまり世界一と評価されたのです。社長のお話では世界一になったことが重要ではなく、賞をいただいた時の表彰のコメントが「Intensity and Purity]ということで、目指した味わいが評価されたことが非常にうれしかったそうです。 

宏太郎さんはどんな人なのでしょうか。1962年に八女市に生まれ、久留米大学付属高等学校を卒業した後、東京大学農芸化学科に入学されています。一浪して1回留年したので卒業は1987年だそうです。その後5年間宝酒造で修業したあと、1992年に蔵にもどっています。そのあと、東京の醸造研究所に2年3か月勉強したそうですが、その時学んだことがその後一番役に立っているそうです。特にその時の先生であった岩野君夫さんを師と仰ぎ、一番の弟子と自称するほど、先生の理論や考え方を身に着け酒造りに生かしているそうです。先生はその後秋田県立大学の教授として赴任しましたが、そちらにもよく出かけて教わったそうです。その先生が言われた言葉に、「いいお酒は「残らず寂しからず」と言われており、それを自分流に解釈して現在の理想の酒の姿としているそうです。 

お話を聞くととても考え方がはっきりして、明快にお話しされる方で、しかも自信たっぷりのお話されるので、ついつい引き込まれてしまいますね。 

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社長になったのは1999年ですが、自ら蔵に入って色々な改革をしています。現在の蔵の生産高は4700石で、そのうちの特定名称酒は3000石でその平均精米度は54%ですから非常に質の高いお酒を中心においていることが判ります。これだけの生産をするには、ある程度の機械化を進める必要がありますが、伝統的な作りの良いところはきちっと抑えたうえで機械化しているようで、蓋麹法の良さをきちっと踏まえた独自の自動製麹装置を開発しても、蔵人全員に、蓋麹法をマスターするように指導しているそうです。 

こうやって平成9年には最新鋭の設備を備えた新工場を建設し、さらなる品質向上に努め最近は海外への輸出にも力を入れすでに販売している国は17か国にもなっているそうです。その喜多屋が蔵元会にはどんなお酒を持ってきていただけたのでしょうか。 

持ってきていただいたのは下の写真の3本です。この写真ではよくわからないので、お酒の紹介の時には特別純米 蒼田はインターネットから借用し、他の二本は購入したものを家で撮ったものを載せました。 

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それからお酒の特徴は社長が語ってくれましたが、酒質については説明がなかったので日本酒サービス研究会からインターネットで載せていたものを書き写して載せました。これからどうして社長が説明したお酒になったかも考えてみました。 

<特別純米酒 蒼田 山廃仕込み 

Skitaya05_2原料米:福岡県産山田錦60%精米
ALC度数:15~16
日本酒度:-3~ー1
酸   度:1.9~2.1
アミノ酸度:1.8
 

このお酒は山廃仕込みが出す酸味を活かした肉料理に合わせたフルーティな日本酒を目指したお酒です。酵母は18号と9号を使っているそうです。18号の華やかなかおりと9号の発酵力の強さを活かすためですが、同時使用のブレンドではなく、18号と9号を時間差でいれるそうです 

飲んでみるとフルーティだけど旨みも酸味もあり、あまり飲んだことのないバランスのお酒でした。これは酒質の数字を見ても良くわかりますね。食中酒としての甘みを最初に感じさせながら、中盤で旨みと酸をバランスさせて切れを出しながら、味も濃い料理にも合わせられるお酒になっているようです。 

純米大吟醸 喜多屋 50%磨き> 

Dsc_0466原料米:山田錦と雄町50%精米
ALC度数:15~16
日本酒度:+2~+4
酸   度:1.2~1.4
アミノ酸度:1.5
 

このお酒は山田錦の柔らかい味の良さと雄町の押しの強さをうまく引き出したお酒を目指したものです。山田錦と雄町の使用量の日は6:4だそうです。麹米と掛米を別のお米を使うことはよくありますが、2つの原料の良さを引き出すためには、そのやり方ではできないそうです。具体的には酒母、初添、仲添、留添で原料米の味が引き出せるように原料米の比率を変えるそうです。難しそうですね。 

酵母は自社酵母ですが、M310酵母をベースとしとしていて、大吟醸系は皆この酵母を使っているそうです。 

飲んでみるとフルーティな上品な香りの中に、複雑な味わいを感じさせるお酒になっていました。あまり酸味を上げない代わりに、甘みを少し抑えてる割にはアミノ酸を少し高めに持ってきているのは適度な旨みを持たせて、食事に合うお酒を狙ったのではないでしょうか。 

<大吟醸 極醸 喜多屋 

Dsc_0469原料米:福岡県産山田錦35%精米
ALC度数:16~17
日本酒度:+3~+5
酸   度:1.0~1.2
アミノ酸度:0.9
 

このお酒はIWC2013で最優秀賞を取ったお酒で、芳醇でありながら透明感を持たせたお酒を狙ったものです。 

飲んでみると上品な香りと共に柔らかく甘みが広がって口の中にすっと入っていき、その後ぱっと膨らんで消えていくお酒でした。確かに芳醇な味を色々感じるけど、最後にそれが一つになって消えていくのが透明感につながるのでしょう 

酒質から見るとちょっと辛口で酸味が少なく、アミノ酸を抑えて奇麗さを出す大吟醸の標準的な数字ですが、数字には見えない秘密があるのでしょう。これについての蔵しい説明はありませんでしたが、今までの経験の中で天から降りてきたような手法を思いつき出来たものだそうです。その手法はよくわからないけど、確かに一度飲む価値は絶対にあるお酒であることは間違いないです。

これで今回の東大蔵元会のお酒の紹介は終わりまが、両方の蔵とも今までにないお酒を造ろうという気概を感じました。これが現状に満足しない東大蔵の魂かな?

最後に新しく参加された花の露 社長の冨安 拓良のお写真を載せて終わりにします。来年に詳しく紹介しますので必ず来てください。待っています。

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