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2017年8月30日 (水)

雄町サミットに参加して感じた審査について

今年の雄町サミットは第9回目ですが、開催場所を例年行われてきた椿山荘から九段下のホテルグランドパレスに変更しただけでなく、第1部では酒類業界関係者限定の唎き酒会と日本酒の専門家による審査講評と受賞酒の発表第2部では受賞蔵の表彰と食事付の懇親会の2部制にして行われました。去年までは懇親会の会場でしか唎き酒ができなかったので、主に唎き酒をしに来た人はほとんど食事ができなかったけれども、今回はすでに唎き酒を終えている人が多かったので、ゆったりと楽しむことができて、大変良かったと思います。 

この会は岡山県酒造組合と岡山県酒造好適米酒造組合とJA全農おかやまが主催する会で岡山県で栽培した雄町の良さを全国に広めるために開始したもので、確かに出品する蔵の数も、お酒の出品数も年々増加の一途で、今年は126蔵、出品点数が194点にもなりました。この会が開催された最初の年は雄町の栽培面積も少なかったけれども、今ではぐんと増えたようで、このあたりの経緯については下記のブログを見てください。一時雄町がなくなってしまう恐れがあった時期もあったなんて知りませんでした。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/08/post-eb0a.html 

僕が雄町サミットに初めて参加したのは2009年で、その後毎年のごとく参加してきていますが、昔毎年受賞してきた蔵が最近受賞できなくなっているのを良く見かけるようになりました。そのお酒を飲んでみると、確かに受賞酒に比べると特徴が薄い気がしましたが、どんな基準で選出しているかはとても気になります。落選した蔵元さんに聞いても審査の基準がよくわからないと言われる方が多かったように思えます。今年は審査員の方の報告をよく聞いて、僕なりにどんな基準で審査されているかを考えてみました 

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<審査員の講評の紹介> 

審査員は毎年少し変わるようですが、今年は下記の7人の方で行われました。 

1.日本酒造組合中央会理事 濱田由紀雄
2.日本醸造協会会長  岡崎直人
3.山形県産酒スーパーアドバイザー 小関敏彦
4.日本酒輸出協会会長  松崎晴雄
5.上田酒類総合研究所所長  上田護國
6.酒類総合研究所主任研究員 大江吉彦
7.岡山県工業技術センター所長 産本弘之
 

僕は専門家でないので、この方はどのような人であるかは良くわかりませんが、経歴から見ると松崎さん以外は国税局の鑑定官や、酒類総合研究所や工業技術センターの経験がある方ばかりのようで、お酒の審査の専門家であることは間違いないようです。この7人の方が審査の講評をしていただいたので、まずそれを紹介します。 

.日本酒造組合中央会理事 濱田由紀雄 

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 ・ 審査の基準は雄町らしさがあるかどうかで決めた。
 ・ 具体的には柔らかなふくらみ、繊細な味、切れの良さであ
   る

 ・ 米の品質特性をお酒に引き出すための技術力が年々高まっ
      ているように思える。
 ・ 吟醸の部:香りは派手ではないが雄町らしい繊細な味が出て
      いた。
 ・ 純米の部:味わいが少ないものが多かったが、熟成すれば
   良くなると感じた。

2.日本醸造協会会長  岡崎直人
 

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 ・ 吟醸の部:以前より落ち着いた香りのものが多くなった。
 ・ 具体的にはカプロン酸エチルの香りの出し方が上手くなって

   いるのと、イソアミル系の香りのお酒もあり、雄町に合った
   香
りの研究が進んでいると感じた。
 ・ 純米の部:この分野には80%精米のお酒も含まれて、この
   お酒の味はかなり違っているので、今後は別の審査を考え
   る必要があると思う。
 ・ 出品酒の中に4VGの香りのお酒もあったが、原因はわかっ
   ているので、今後は対応してもらいたい。

3.山形県産酒スーパーアドバイザー 小関敏彦

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 ・ 吟醸酒は123点の出品のうち45点が結審に残ったが、その
   う ち20点は製造過程より貯蔵課程に問題があるように思え
   たので、今後は注意してもらいたい。
 ・ 特に生酒は生熟のものが多く、出品する前に確認してもらい
   たい。
 ・ 火入れの場合でも8月の審査では火入れの遅れが味の変化
   となって出るので注意が必要。
 ・ 純米酒は生酛、山廃、原酒、生酒と色々あったが、そのお酒
   の飲み頃を考えて出品してもらいたい。
 

4.日本酒輸出協会会長  松崎晴雄 

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 ・ 一つの米だけの市販酒の品評会はここだけであり貴重な場
   である
 ・ 多様性のある幅の広いお酒が集まったので、どうやって雄町
   らしさを評価するかは結構難しかった。
 ・ 雄町の特徴は酸味と甘みにあると思うが、今回は米が溶け
   なかったのか全般的に軽めの酒が多かった。
 ・ 雄町の特性を生かすためには香りの高い酵母ではなく、香り
   の少ない酵母でオーソドックスな作りをして、酸と甘みのバラ
   ンスを取った方が良いように感じた。
 ・ 雄町の味には色々なタイプががあるので、雄町の特徴を生
   かした酒器を選ぶなどの工夫をした方が楽しめると思う。

5.上田酒類研究所所長  上田護國
 

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 ・ 雄町のお酒の特徴は独特の旨みがあって後味が軽いことだ
   と思う。
 ・ 吟醸酒は醸造技術が上がって酒質は確かに良くなっている
   が、逆に雄町らしさがなくなってきていると感じた。
 ・ 純米酒には雄町らしさのあるお酒が多かったとおもう。
 ・ 生酛系のお酒を一緒に審査したので審査はなかなか難しか
   った。

6.酒類総合研究所主任研究員 大江吉彦
 

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 ・ 多様性の富んだお酒が多く出品されたと感じた
 ・ 海外でのお酒の飲み方にはいろいろな飲み方があると思う
   が、町のお酒の幅は広いので、それに対応できるお酒だと
   思う

7.岡山県工業技術センター所長 産本弘之
 

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 ・ 岡山県のお酒が多く選出されたことにほっとしている
 ・ 雄町のお酒の特徴は酸が効いていてボディ感のあってふくら
   みのあることだと
教わってきた。
 ・ 吟醸酒はスレンダーの幹事の味でボディ感が少ないお酒が
   多かった。
 ・ 純米酒は色々なタイプのお酒がたくさん出ていたが、飲みご
   たえでさみしいお酒が見られた
 ・ 醸造技術よりは出荷管理の悪いのもが見られたので、改善
   してもらいたい。
 

以上で7人の先生方の講評の紹介を終わりますが、僕が感じたことは以下の点です。 

 ・ 雄町らしさの基準が人によって微妙に違うのが気になりまし
   た
。雄町らしさは膨らみと後味の奇麗さという方もいれば、酸
   味と甘みが特徴でそのバランスに特徴があると言われる方
      もおられ、何を基準するかをもっと明確にして共有した方が
      良いと思いました。
 

 ・ 純米酒には生酛系や古酒なども含まれており、評価するの
   が大変だったということはわかりますが、この場合、それ以
   外のお酒と基準を合わせるのは難しいのではと思いました
 

 ・ 吟醸酒の精米度は35%から60%で、純米酒の精米度が
   50%~80%というのは分け方としてはとても不自然な気が
   するので
、どうしてそうしたのかの説明がほしかったです。 

<僕が考える雄町らしさ> 

僕は雄町のお酒は大好きですが、色々なタイプのお酒があり、今まで飲んだ経験ではなかなか「これだ」と言いにくいです。確かに口に含んだ時のふくらみがしっかりしているものは後味に軽快さがないとバランスが悪くなるし、最初のふくらみをが少なくても、奇麗な余韻が漂えばこれも素敵だと思います。 

懇親会の会場で雄町らしさについて小関先生にお聞きしてみました。先生のお話では、雄町は味が出やすいお米で、味に幅があるので、その幅をうまく出せていて後味の切れとか伸びとか余韻があるのが理想的だが、切れと余韻は相反するもので、両方を出しているお酒は少ないし、この時期の審査ででそれを求めるのは難しいそうです 

結局、雄町が出せる味の幅の広さと後味の奇麗さや余韻があるものが雄町らしさなのかもしれませんが、僕個人は後味の余韻の奇麗さや複雑さが好きなので、大吟醸よりは精米度が50%~60%の純米酒が好みです。 

<優等賞受賞酒の酒質の傾向について> 

この会では出品されたすべてのお酒について酒質についての一覧をいただきましたので自分で優等賞だけのお酒の酒質を調べてみました。 

吟醸酒 

Photo

純米酒 

Photo_2

上記の表はエクエルで作って写真の形で載せましたので、小さくて読みにくい方はクリックすれば拡大できますので、それで見てください。 

この表から判ったことは日本酒度は+1~2で予想通りなのですが、酸度は1.4~1.5があって出品酒にしては酸があること、アミノ酸は蔵によって公開していませんが、アミノ酸値が1.0~1.3というのは結構アミノ酸を出していることが判りました。これが味にどう影響するかは僕は専門家でないので、皆さんで考えてください。 

<僕が気に入ったお酒の紹介> 

懇親会の会場での試飲は優秀賞含めて全種類飲むことができました。試飲場は大きな会場の隅にありましたが、会場に余裕があったのでゆっくり楽しむことができました。 

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会場では関係者の表彰や優秀賞の蔵へのインタビューなどが行われましたが、それについては省略しますので、市田さんのサイトを見てください。
https://writerichida.wordpress.com/2017/08/14/%e7%ac%ac9%e5%9b%9e%e3%80%8c%e9%9b%84%e7%94%ba%e3%82%b5%e3%83%9f%e3%83%83%e3%83%88%e3%80%8d%e3%81%ab%e4%bb%8a%e5%b9%b4%e3%82%82%e5%8f%82%e5%8a%a0%e3%80%82%e3%80%8c%e5%94%8e%e3%81%8d%e9%85%92%e4%bc%9a/ 

最後に僕が気に入ったお酒を紹介をします。僕が勝手に感じたことで聞き流してください。今もう1回やってみれば違うことになるかもしれません。 

<吟醸酒> 

利守酒造 赤磐雄町生     宮下酒造 極聖 純米大吟醸        

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結城酒造 結 純米大吟醸 

Dsc07528_2吟醸酒は雄町らしさというよりはバランスの良さが目立ちましたね。 

赤磐雄町生はさすがに味のふくらみも余韻の良さもあり、さすがに本家本元の強さを感じました。 

吟醸酒では岡山県、と山形県が5蔵受賞しましたが、僕にとっては岡山県の方が少し雄町らしさがあったような気がしました。 

吟醸酒と純米酒の両方を受賞した蔵は、利守酒造、宮下酒造、秀鳳酒造、結城酒造の4蔵でしたが、どの蔵も雄町については自信を持っている蔵と言えます。 

その中で最近安定した力をつけているのは結城酒造ですね。雄町らしさというよりはバランスの良さは秀でていました。杜氏の浦里美智子さんは造りを初めてまだ経験が少ないのに、すごいですね。 

美智子さんおめでとうございます。あれ持っていただいたのは特別純米酒ですね。
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<純米酒> 

純米酒の方が味に幅があって雄町らしく感じる一方、あまりにもタイプの違うお酒があってあまり雄町とはおもえないようなものがあるのを感じました 

結城酒造 結 特別純米酒   宮下酒造 極聖特別純米酒 

Dsc07539Dsc07523_4たまたま吟醸酒と同じ蔵のお酒が選ばれてしまいましたが、どちらも吟醸酒よりは酸度も高く、アミノ酸の量が増えているだけあって、雄町らしくなっていると思いました。どちらも余韻の程度が良かったです。 

その中でもちょっと変わった生酛造りの雄町に面白いお酒を見つけました。 

杉勇蕨岡酒造場 生酛純米原酒 

Dsc07526酸度が1.8もありアミノ酸も1.3もありますが、うま味は少なめで、温度が低いとちょっと辛みを感じますが、温度が上がってくると甘みが増えてきて、バランスが良くなりました 

そしてゆっくりと余韻が伸びていきます。膨らみという意味では雄町らしさはないけど、酸味を感じながらの余韻の良さはもう一つの雄町かもしれません。 

お燗にしたらすごくよくなると感じました。 

以上で雄町サミットで感じた僕の印象を述べさせてただきました。来年も今年と同じように行われるのなら、ぜひ参加したいです。

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2017年8月18日 (金)

「雄町」徹底勉強会は非常に役に立ちました

今年の雄町サミットの開催日の前の日に、日本酒学講師の会が主催で、「雄町」の徹底勉強会が開かれました。日本酒学講師の会というのはNPO法人FBOが認定する講師が未来の日本酒のために日本酒の魅力や知識を一般消費者伝えていくことを目的としている会で、平成25年に発足しています。この会は「酒と食文化アカデミー」というテーマで、月に1,2回程度で色々な会を開催しています。その一つとして、今回は市田真紀講師がコーディネーターとなって、雄町の生産者や蔵元などをお呼びして「雄町」を徹底的に勉強しようという会です。 

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市田さんは岡山生まれの利き酒師で雄町に精通された方なので、ぜひ勉強したいと参加を申し込みました。会場はFBOアカデミー東京校でしたが、当初は30名締め切りの予定でしたが、応募が多かったので、60名まで増員したそうです。 

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当日の会は日本酒学講師の会の副会長の入江亮子さんの司会でスタートし、会長の大越智華子ご挨拶から始まりました。会の構成は以下のように行われました。 

1.JA全農岡山営農・農産部課 本井傳崇之さんによる講演
  「酒造好適米雄町の来歴」
 

2.岡山県酒造好適米協議会会長 岩藤英彦さんによる講演
  「栽培農家が語る雄町の魅力
 

3.利守酒造代表取締役 利守忠義さんによる講演
  醸し手からみた雄町の魅力」

4.雄町で醸した日本酒のテースティング:解説 市田真紀 

5.質疑応答 

全部通しで約2時間の会でしたので、自分のための備忘録として簡単にまとめてみることにしました。 内容はいただいた資料を使っていますので、講演内容とは少し違っているかもしれません。

1.本井傳崇之さんによる講演 「酒造好適米雄町の来歴」

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雄町の呼び名で備前雄町とか赤磐雄町と言われますが、その名前は産地から来ており、備前とは岡山市、赤磐市、和気市、瀬戸内市、備前市からなる地域をしましますが、雄町を主に作っているのは岡山市と赤磐市だそうです。 

雄町の生産量は全国で約2500トンで、醸造用玄米の約2%強にしかすぎませんが、雄町の全生産量の94%が+、岡山県で作られています。どうしてそうなんでしょうか。それは岡山県が全国で一番晴れる日が多いからだそうです。本当にそれだけでしょうか。実は雄町は岡山の土地と水と気候が適していたからだそうで、詳しくは岩藤さんの講演で触れることにします。 

まず雄町の来歴を示します。雄町を最初に発見したのは現在の岡山市中区雄町岸本甚造さんで、1859年に伯耆大山のお参りの帰路に見つけた変わり穂の2本を持ち帰り栽培し育成を重ねて1866年に「二本草」と名付けて生産したのが始まりです。その後雄町に良い米があるという評判から岡山県を中心に栽培されるようになり、栽培地の地名から「雄町」と言われるようになったそうです 

雄町の生産量は次第に増加大正時代の中頃には9000haもの作付があったものの、雄町は丈が高く倒れやすいとか、病害虫に弱いとか生産量が少ないという欠点があったので、品質改良が盛んにおこなわれ、新しい米に順次変わっていき、昭和14年には3000haまで減少しています。 

でも酒米としては、赤磐郡の軽部村の村長の加賀美章が酒米としての良さに注目し、全国酒造家を歴訪し積極的な宣伝を行った結果、昭和のはじめには全国新酒鑑評会の1位から20位までを全部備前雄町の酒が独占したことにより、金賞を取るには雄町でなければ不可能と言われるほどまでに名声が出たのです。 

でも戦時体制に入った昭和17年には食料管理法が交付され、今まで高値で取引されていた酒米が一般米と同じ価格になったことからさらに減少し、昭和20年には1100haまで減少しました。昭和25年に酒造好適米に加算金を付ける買入制度ができたにもかかわらず、その時には山田錦に流れることになり、雄町の作付けはさらに減少し昭和48年には3haにまでになり、ほとんど絶滅状態になったようです。 

昭和50年に利守酒造雄町の復に向けた取り組みを開始し、良質米推進協議会を発足させるなどの努力により次第に増産され、雄町サミットが開催された平成20年には390haまで増加して、現在は550haとなっています。雄町復活の苦労話については利守社長の講演で触れることにします。 

雄町はお酒の原料米としての価値だけではなく、雄町が持つ優秀な性質を他の酒米に伝える役割を果たしました。具体的には渡船を経て山田錦へ菊水を経て五百万石とつながっていき、結果的には、今人気の愛山、越淡麗、金門錦、美郷錦などへとつながっていく元親としての役割があったことはあまり知られていませんね。
 

2.岩藤英彦さんの講演 「栽培農家が語る雄町の魅力」 

 

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岩籐さんは昭和31年生まれですから、現在61歳になり40数年農業に携わたっと紹介がありましたが、確かに若い時稲造りを手伝っていたけれども、途中他の仕事をしており本格的に米造りを始めたのは30歳過ぎからだそうです。でも現在は雄町の造りの第1人者で、岡山県の蔵との契約がほとんどなので、他県ではほとんど手に入れることのできない貴重な雄町を造っている方です。 

雄町は丈が170cm以上もあり、倒れやすいので、できるだけ丈が高くならないように栽培しているけれども、一目で山田錦とは違うことはわかってもらいたいので、ある程度は丈を伸ばしているそうです。丈は170㎝あっても実がつくと穂が垂れてくるので実際の高さは140㎝くらいだそうです。その写真をお見せします。 

下の写真はまだ十分には実がついていませんが、女性が持っている雄町の丈は女性の背丈と同じくらいあります。 

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下の写真は収穫前の稲の状態で穂がしっかり垂れています。たぶん140cmくらいでしょうね。市田さんでも隠れることはななそうですよ。 

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ここの(赤坂)田圃は砂の上にある痩せた土地で、水の通りが良く、肥料も長持ちしないけど、水の流れが良いので酸素が根に入りやすいのが雄町にいい環境であるとのことでした。良い稲ができるかどうかは人の手が20~30%で、残りの70%は環境任せなので、台風が少なくて日照時間の長い備前が雄町に向いていると言えるのでしょう。 

良い稲ができても良い米ができるかどうかは100%人間の作業によるそうです。雄町は非常に割れやすいので、収穫に時間をかけゆっくり行い、乾燥には最大でも1時間0.5%の水分減少で行い、乾いた後でゆっくり冷却します。具体的には乾燥に1日、冷却に1日かけるくらいのスピードでやれば割れの少ない米ができるそうです。 

協議会としては稲の造りは有機肥料を使うこと以外の制限はしていませんが、米としての仕上げ方は統一するように努力しているそうです。 

最後に雄町が一番きれいに見えるのは8月末から9月初めの穂が出る時で、穂には白い長い「のげ」がついているので、一面が真っ白に見えるそうです。ぜひ見てくださいとのことでした。下の写真がその時の田圃の写真だと思います。確かに白っぽいですね。 

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3.利守忠義さんの講演 「醸し手からみた雄町の魅力」 

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まずは雄町復活のお話から紹介します。利守さんが蔵に戻ったのが昭和40年で、専務取締役になったのが昭和45年です。その年の11月に杜氏の田村さんと一緒に地元の農家に行ったとき、納屋の中に「雄町」の稲穂が年度別にずらりと並んでいるのを見て感激したそうです。杜氏と相談してこの雄町で酒を造ろうと決断して、その農家にお願いしたのですが、今はできませんと断られたそうです。雄町は造られていなかったのです。

多収穫品種のお米は1反で10俵取れるの対し、雄町は6俵くらいしか取れなかったので、10俵の所得補償をすることなどをして少しずつ増やしていったのですが、なかなかいい米がとれないので、良質米推進協議会を立ち上げて品質向上を行い、さらに1俵あたり35000円で出来た雄町米を悪いものも含めて全量買い上げることにより、雄町の復活に成功したそうです。 

一方、雄町米のお酒造りにも力をいれ、昭和59年から3年間連続して全国新酒鑑評会で金賞を受賞するまでになりました。雄町のお酒は味わいに幅があり、ふくよかな酒になるのと独特の切れの良さとか余韻があるお酒になるだけでなく、熟成させるとまろやかになりさらに良くなる長所があるそうです。 

雄町は精米時に割れやすいだけでなく、吸水もしやすいので酒造りのすべての工程で気を使う必要のあるお米だそうで、その具体的な例を示していただきました。 

精米: 軟質で大粒で心白が大きいので精米中に砕けやすいので、50%以下の精米が難しい。いかに慎重に真精精米歩合を上げるかがポイントになる。 

洗米浸漬: 洗米は15kgの手洗いで、浸漬は限定吸水で慎重に行う 

蒸し: 蒸米の自重で硬くならずに、ふっくらとしたべとべとしない蒸米にするために加圧式3段甑を開発した。(フジワラテクノアート) 

放冷機: 麹米には表面の水分を飛ばすため60度の温風を吹き付ける装置を開発した。 

麹造り: 無通風式自動製麹装置を開発(フジワラテクノアート)した。 

醪造り: 蒸米をどのくらい枯らすかがポイントになり、溶け過ぎに注意する。
 

4.雄町で醸した日本酒のテースティング 

雄町で醸した7種類のお酒を市田さんの解説を聞きながら、7種類のお酒をお弁当のおつまみを食べながらテースティングしました。お酒は以下の7種類です。 

1.赤磐雄町 純米大吟醸 精米度40%
  ALC15度、日本酒度+3.酸度1.4

2.阿櫻 純米吟醸 無濾過原酒 精米度50%
  
ALC16.6度、日本酒度+0.酸度1.8

3.極聖 特別純米 高島雄町 精米度60%
  
ALC15.5度、日本酒度+3.酸度1.5

4.玉川 山廃純米酒 無濾過生原酒 精米度68%
  
ALC20.1度、日本酒度-7.酸度3.2

5.三光天賦 純米 無濾過生原酒 精米度65%
  
ALC18.6度、日本酒度+4.酸度2.2

6.出羽桜 純米吟醸 雄町 精米度50%
  
ALC16度、日本酒度+5.酸度1.6

7.篠峯 夏凛 純米吟醸 無濾過生 精米度60%
  
ALC15.8度、日本酒度+5.5酸度1.9

写真は市田さんのものをお借りしました。 一つ一つの解説はしませんが、雄町らしさを感じるにはアルコール度数は15-16度、日本酒度は0~+5、酸度は1.8以下が合うような気がしました。このうち雄町サミットの優秀賞を取ったのが3番の極聖と6番の出羽桜でした。利守酒造は1番のお酒の出品はしておらず、吟醸系は赤磐雄町生を純米系は特別純米を出して賞を取っていました。

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 おつまみの写真です。白く見えるのは雄町のご飯です。食べてみたらそれなりの美味しかったけど、ちょっと旨みが足りないので、チャーハンかカレーライスがいいかな。 

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5.質問コーナーは何人かされましたが、省略します。ただ、僕の質問で雄町で全国新酒鑑評会で金賞を取っている蔵は少ないけど、新潟の越の雄町は連続金賞を取っていますが、どうしてでしょうかとお聞きしたら、新潟で生産された雄町は備前雄町とは違うものだと言われて、なるほどと思いましたが、雄町ではないと切り捨てるのも理解はできるものの、これから考えていく必要がありそうな気がします

以上で雄町勉強会の紹介を終わります。 

最後にこれを企画していただいた市田さん、入江さん他の関係者の皆様に感謝いたします。ありがとうございました。

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2017年8月 6日 (日)

杉錦の生酛系のお酒は赤ワインをイメージしています

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先日調布市の仙川にある日本酒バー「あふぎ」で静岡県の杉井酒造の杉井社長をおよびして杉錦のお酒を楽しむ会がありましたので、参加してきました。「あふぎ」は十数人しか入れないとても小さなお店ですが、ママの板垣さんが、静岡県の藤枝市出身で静岡県のお酒が大好きで去年この地にお店を構えてから、静岡県のお蔵さんをお招きして、時々日本酒の会を開いていまして、今回は第3回目だそうです。 

前回の志田泉のお酒のことやお店のことならば下記のブログを見てください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-c472.html 

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今回は杉錦を醸している杉井酒造の社長兼杜氏の杉井均乃介さんをお呼びしての会です。僕は最近静岡のお酒には大変興味を持っていて、昔は毎年東京の如水会館で行われる静岡県の地酒祭りに行っていたのですが、それでは本当の静岡のお酒が判らないと、2017年には浜松市のオークラアクトシティホテル浜松で行われ地酒祭りに行って静岡のお酒を勉強してきたほどです。その時のことは下記のブログに書いてありますので、興味があればご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-7f5e.html 

そのブログで最初に取り上げたのは小夜衣を醸している森本酒造の森本社長で、次に紹介したのが杉錦の杉井社長です。この二つの蔵はとても小さな蔵で、静岡県のお酒造りを指導してきた河村伝兵衛さんが指導してき静岡県のお酒とはだいぶ違うお酒を造っていますが、お二人とも静岡県の蔵人では知らない人はいないほど有名な方です。その杉錦のお酒を、杉井さんの言葉で説明を受けながら飲める機会を逃してはなるまいと、勇んで参加しました。ところが当日は僕の勘違いで仙川駅を通り過ぎて調布駅まで行ってしまい、慌てて仙川駅まで戻るというチョンボをしてしまい、開宴に10分も送れることになりました。前にお邪魔したことがあるので安心していた油断ですね。 

静岡県の酵母や河村伝兵衛のことを知りたい方は下記のブログを読んでください。静岡県のお酒や酵母のことが良く判ると思います。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-27e3.html 

では早速、杉井酒造と杉井さんの紹介をしましょう。杉井酒造は静岡県藤枝市小石川町にある蔵で、藤枝駅から約1㎞程焼津の方の戻った瀬戸川の近くにあります。創業は天保13年ですから、江戸時代末期に杉井家本家から分離した杉井才助さんが今の地で商いを始めたのが最初で、酒造りを始めたのは明治に入ってからのようです。 

明治の中頃までは「亀川」、大正期は「杉政宗」という銘柄の酒を造っていて、「杉錦」を始めたのは昭和に入ってからのようです。そして現在の杉井均乃介さんは6代目に当たるそうです。 

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杉井さんは昭和32年(1957年)生まれで、今年60歳になられますが、静岡市の高校を卒業後、東京農業大学に入学され、卒業後24才で蔵に戻って酒造りを始めました。最初の2年は東京の醸造試験所で研修をされたのち、蔵におられた南部杜氏と一緒に酒造りをしながら勉強してきたそうです。それだけでなく静岡県の工業技術センターの主任研究員の河村伝兵衛さんから吟醸造りについて色々と指導を受けたそうで、それがとても役になっているそうです。 

1994年7月に杉井酒造の社長になられましたが、まだその時は杜氏にはなっておりません。その頃、理由はお聞きしませんでしたが、杉井酒造の杜氏が森本酒造の杜氏も兼務していたことがあり、森本さんからお前の蔵の杜氏の酒はよくないと言われて、森本さん自らが杜氏となって造りを始めたので、自分もそうしようと思い杜氏になったのが2000年だそうで、酒造りの面では森本さんと同じ年に始めたことになるそうです 

それで杉井さんはどんなお酒を醸し出しているのでしょか。杉井さんが杜氏になったすぐは、お酒の味が変わったと言われたそうですが、3年努力した結果全国新酒鑑評会で3年連続金賞を受賞することができ、お客様の信頼を回復したのですが、なにか納得がいかない気がしていたそうです。 

今は吟醸造りが良い酒を造る基本という風潮があるようですが、吟醸造りだけがすべてではない、自分らしい切り口を考えようと思ったそうです。その時出会ったのが東京大学の農学博士の「坂口謹一郎」さんの本の「日本の酒」で、日本の長い稲作と食文化の歴史と共に歩んできた清酒は「日本人が大昔から育て上げてきた一大芸術作品である」という言葉だったそうです。 

その本の中で、日本の酒造りはうまい酒を作りだすための先人の知恵と工夫が凝縮されていて米と水、麹菌、酵母、乳酸菌などの自然の働きによって醸し出されることが書かれてあり、昔の技術を使えば深い味わいの酒が造れる可能性があるに違いないと、昔の造りの勉強を始めたそうです。そうしてたどり着いたのが「生酛・山廃」と「熟成」だったそうです。現在の生産高は400石位しかありませんが、全体の85%を生酛・山廃つくりで熟成するようになっています。 

でも吟醸造りのお酒の研究をやめたわけはありません。その証拠に今年の(平成28年醸造度)の静岡県清酒鑑評会で、純米吟醸部門と、吟醸部門の両方でナンバーワンとなる知事賞を獲得したからでも判ります。本日はそのお酒が飲めることなので、とても楽しみです。このお酒は全国新酒鑑評会にも出したのですが、金賞ではなく、入賞だったそうですが、金賞を取るためには、カプロン酸エチルの香りが出る酵母をつかって、マニュアル通り造れば誰でも金賞が取れる時代になっているので、あまり価値がなくなっているかもしれないとのことでした。 

この蔵の水は発酵力の強い中硬水だそうですから。生酛・山廃の造りには向いていたのでしょうね。もちろん杉井さんは知っていたからおやりになったなだと思います。 

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ではこの会で飲んだお酒を順次説明していきましょう。

1.誉富士 生酛純米酒 しずおか地元研究会20週記念酒
 

Dsc_0870_2このお酒は鈴木真弓さんが主宰する「しずおか地酒研究会」の20周年記念として杉井さんが造った生酛純米酒です。一般的に静岡のお酒は酢酸イソアミル系のさわやかな香りがして、酸が少なく日本酒度が高くすっきりした味わいのお酒が多いのですが、静岡らしい味を保った生酛を造ってもらいたいと依頼されて作ったお酒だそうです。 

具体的には生酛は湧き遅れをしないように総破精で立ち上げて、醪の麹は突き破精にした吟醸造りをするそうです。

お米は静岡県産の誉富士で、麹米が70%精米、掛米60%精米で酵母はHD-1で1回火入れの純米酒酒質は、アルコール分15.4度、日本酒度+8.5、酸度1.6のお酒となりました。 

飲んでみると、酸味は穏やかで、べたついた甘みはなく口に含んだ時にうまみがポット広がり後味でキレを感じるとともに、ほのかな酢酸イソアミル系の香りがするお酒になっていて、生酛とはわからないお酒に仕上がっていました。でも生酛らしい深みを感じる静岡流生酛酒と言えるかもしれませんね。 

2.杉錦 純米大吟醸 知事賞受賞記念酒 

Dsc_0872このお酒は出品酒として造ったお酒で、お米は兵庫県産の山田錦40%精米、酵母はHD-1を使用した純米大吟醸酒です。このお酒は出品酒原酒を少し加水して作った出品記念酒です。 

酒質はアルコール分15.5度、日本酒度+0、酸度1.5です。原酒の酸度は1.7もあったので、賞は取れないと思ってだしたら、全国新酒鑑評会では入賞、静岡県清酒鑑評会では純米吟醸部と吟醸部の2つの部門とも1位の知事賞を取ることになったそうです(出品酒は原酒で出しています) 

吟醸酒は純米大吟醸酒にわずかアルコールを添加しただけなのでほとんど同じものだそうです。 

賞に至った裏話を聞きました。静岡の審査では出品されたお酒を4回きき酒をして決めるそうで、4回目の最後に残った2つお酒(杉錦と磯自慢)を投票で決まったそうです。おめでとうございます。 

飲んだ印象は香りは意外に高くなく、甘みと酸味のバランスが良くてきれいの飲めるお酒で、生酛の味を知っている僕にとっては少し物足りない感じでした。 原酒のお酒を飲みたかったな。

3.杉錦 生酛純米吟醸 

Dsc_0876このお酒は兵庫県の山田錦60%精米で、掛米を48%精米を使った純米吟醸で、酵母はHD-1ですが、去年までは山田錦50%精米でやって純米大吟醸としていたものを今年は変えたので、純米吟醸としたそうです。それは生酛の酒母造りは精米度が悪いほうがやりやすいので、60%にしたそうです。 

酒質はアルコール分15~16度、日本酒度+5、酸度1.4でしたが、飲んでみると生酛らしいしっかりした味わいで、甘みもそこそこ感じられるお酒でした。それは酸度が1.5と比較的少なかったからだと思います。どうしてこんなバランスのお酒にしたのかはお聞きしませんでした。山田錦の品の良さを生かすためだったのでしょうか? 

一般的に生酛系のお酒は速醸より酸が高いのは、酒母の段階では速醸の場合は酸度が7で、生酛系では酸度が10位を狙って作るので、醪の段階で速醸は酸度が1.2~1.4で、生酛系では酸度は1.7~2.0になるそうです。乳酸を添加しない生酛系の酒母では乳酸がしっかり出ているのを確認する必要があるので、酸がどうしても高めにせざるを得ないようです。 

4.杉錦 玉栄山廃純米酒 

Dsc_0879このお酒は滋賀県産の玉栄を使ったお酒で、玉栄は心白の発生率が低く、硬いお米なので、味が濃く雑味を出やすいので、吟醸系には向いておらず、熟成には向いているので、味をしっかり出せる生酛系のお酒に適しているそうです 

この蔵では2004年から生酛系の造りを初めて行ったのですが、最初のトライが玉栄を使った山廃で、その時のお酒がダンチュウで普段のみの純米酒のベスト1として評価されてあっという間に売り切れたそうです。ですから、その後はずっと玉栄のお酒は山廃つくりをしていて、今後変更するつもりはないそうです。 

生酛系には山廃と生酛の2種類がありますが、生酛は小さなたらいに酛を入れて櫂で擦る酛擦り作業をするのに対して、山廃は酛を酒母タンクに一緒にいれて、電動ドリルでかき混ぜてとかす方法を取っているそうですが、味わいは基本的には同じだそうです。どちらが良い味を出せるかは出来次第ですが、生酛の方が早湧きが起きにくいので、失敗が少ないそうです。でもうまくいった場合は生酛の方が時間がかかっているだけ、良くなるかなという思い入れがあるそうです。 

玉栄の精米度は65%で、酵母は泡なし7号酵母だそうで、酒質はアルコール度は15~16度、日本酒度+10、酸度1.6で、飲んでみると日本酒度の割には辛く感じないで、軽い酸味を感じる飲み飽きしないお酒になっていました。不思議なことにお燗をしたら甘みがぐっと出てきたのには驚かされました。 

杉井さんのお話では今回のお酒は1年熟成しているけど、貯蔵温度が低かったので、もう少し熟成した方が良いと思うとのコメントをいただきました。 

5.杉錦 菩提酛 

Dsc_0881江戸時代に安定した酒母を作る方法として生酛が開発されましたが、その前は菩提酛と言われる方法が使われていました。提酛は平安時代後期に奈良県の菩提山正暦寺で開発された方法です。 

その方法は変わったやり方で、新酒を作るのに残暑の暑い日を選び、いかきという籠の中に生米9割、蒸米1割の比率で入れて水の中に3日間浸しておくと酸性で泡立った「そやし水」ができます。この水を仕込水として使って麹や蒸米を投入してお酒を造るやり方です。このそやし水は乳酸菌が造った乳酸が多く含まれた水で、気温の高い時期の方が乳酸菌が良く増殖して素早く乳酸ができるからいいそうです。  

この方法は江戸時代になって水酛と呼ばれて広く使われるようになったようですが、安定性が悪く、混入する微生物の種類によって酒質が大きく変わる欠点がありましたので、生酛ができてから次第に衰退したようです。  

菩提酛はは昭和の時代になって日本酒の醸造教科書からなくなり、今まで詳しいことがわかなかったようですが、1996年に奈良県工業技術センターと奈良県内の醸造元が菩提酛研究センターを立ち上げて、研究を重ね1999年に菩提酛を使った醸造に成功したのです。 

杉井さんは勉強家で好奇心旺盛の方ですから、この菩提酛を使ってお酒を造ってみようと思い立ち、菊姫が復活出版をした酒造教科書の一つの「杜氏醸造要訣」に詳しい記述があったので、それを基に試験をして見事に成功させました。その方法はホームページに書いてありましたのでそれを載せておきます。杉井さんのお話では蔵内で菩提酛を立てて、これを使った醪から醸造しているのは千葉県の五人娘と杉錦だけではないかとのことでした。 

その造り方ですが一合ほどの炊いた飯と一掴みの麹を布の袋に入れて一斗ほどの水に漬けます。この時、酛の掛米にする白米を生のまま一緒に水に入れます。7日くらい放置しておくと軟らかな飯は自然に溶け出して乳酸菌が繁殖して水はすっぱくなり、自然に酵母菌も生えてきます。そこで漬けておいた白米を取り出して蒸し、麹とこのすっぱい水を加えて酛を仕込みます。乳酸により雑菌の繁殖は抑えられ自然に繁殖した酵母はすぐに醗酵し始めます。酸とアルコールが蓄積されて仕込み後10日ほどで酛ができあがります。この酛を使って通常の3段仕込みを行います。 

他の蔵の菩提酛は少し甘めに作るのですが、杉井さんは糖分を抑えた辛口に仕上げたのはワインのように酸味があって糖分が少なくアルコール度数を下げたお酒を狙ったようです。原酒はアルコール度数が19%、酸度が3.0もあったそうですが、割り水をして、アルコール度数13~14度、日本酒度+10、酸度19というお酒にしています。お米は誉富士70%精米、酵母は無添加です。 

今回飲んだお酒は2015BYで1年半熟成したもので、飲んでみるとあたりが柔らかく、そんなに辛く感じない飲みやすいお酒でした。お食事と一緒に飲むにはスイット呑めてしまいますね。 

6.杉錦 生酛純米酒 八十八(やそはち) 

Dsc_0883このお酒は明治時代の酒をイメージして作ったお酒で、精米度を約88%にして生酛作りしたお酒です。 

明治時代は精米技術がなく、生酛造りで温度の高い状態で醸造していたので、日本酒度は+17、酸度は4~5くらいだったと思われます。昔の酒には現代のお酒とは異なる味わいの良さや深さがあったのではないかと思ったのが、このお酒を造った理由だそうです。 坂口先生の本には明治時代の金賞受賞酒の日本酒度は+10で酸度は2.7であったことが書いてあります。

お米は麹米は静岡県産誉富士70%精米、掛米は静岡県産ひとめぼれ90%精米なので、八十八と名前を付けたのでしょう。酵母は協会701号の純米酒です。昔は清酒はすべて純米酒だたtのですよね。 

出来上がった酒質はアルコール分13~14度、日本酒度+17、酸度2.0でした。この原酒はアルコール分は19度、酸度は3.0で割り水してこの値になっています。このままではすごく辛くてのめないのですが、室温で1年以上熟成させると甘みが出て、丸みも感じるようになるそうです。このお酒は2014BYのお酒なので、2年以上の熟成をしています。 

実際に飲んでみると穀物的な香りがするけれども、普通のお酒のような甘さはなく、アルコール分が低いので酔ってからも飲める飲み飽きしないおになっていました。昔の人も割り水をして飲んでいたのかな? 

7.杉錦 山廃純米 天保13年 

Dsc_0888_2このお酒は蔵の創業年の天保13年という名前を付けたお酒で、安価な一般米を使った純米酒だけど昔ながらのお酒の良さを持っているお酒を狙ったものです。 

具体的にはお米は麹米は静岡県産ひとめぼれ70%精米、掛米は静岡県産あいちのかおり78%、酵母は協会7号を使った純米酒です。一言でいえば、アルコール度数を上げた辛口で、酸度の高いお酒ですが、 醸造年度で日本酒度は違っているようです。年々色々と試されているんではないかと思います。

出来上がったお酒の酒質は2015年度醸造のもので、アルコール分15~16度、日本酒度+9、酸度2.6でした。 

冷えたまま飲んでみると軽い熟成の香りがして、ちょっと酸っぱいドライなお酒ですが、温度が上がってくると甘みを感じだし、良いバランスとなってきます。酸味が強いので焼肉に合わせると良いと思います。お燗をするとしっかりした味を感じながらソフトな柔らかさを感じるお酒になります。これは冷やして飲むお酒ではありませんね。 冷えているとただ酸っぱいお酒です。

この蔵の熟成はすべて1回火入れの瓶貯蔵で行っています。一般的には吟醸酒で香りを大事にするお酒は1回火入れで貯蔵しますが、一般酒は1回火入れしたお酒をタンク貯蔵して、瓶詰めする前にもう1回火入れするようです。 

8.純米 本みりん 飛鳥山 

Dsc_0906このみりんは静岡県で生産されている唯一の本みりんで、江戸時代に確立されたみりん本来の製法に従って復刻製造した本みりんです。原料にはもち米と米麹と米から作った焼酎を使うので、普通のみりんのように水飴や醸造用糖分や醸造用アルコールは使いません。従って普通のみりんの倍の価格がします。 

その製法は日本酒とはだいぶ違っていて、蒸したもち米に米麹をまぶし、冷やしてから米焼酎と一緒にタンクに入れて約2か月間発酵させます。こうしてできた熟成液を袋に入れて槽搾りで絞れば完成です。ろ過や火入れはしません。 

飲んでみると、濃厚だけれども自然で深い甘みをもち、フルーティで後味がすっきりする味わいでした。でもアルコール度数は日本酒と同じ14~15度もあるので、要注意です。 

以上でこの会で飲んだお酒の紹介を終わります。 

最後に杉井さんの酒について、全体を通じて感じたことを述べてみます。杉井さんはお酒造りに研究熱心でかつ好奇心が旺盛なので、自分で思いついたことをどんどん実行してしまう方だと思いますが、単なる思い付きではなく、裏打ちされたしっかりしたお考えを持っているように思えます。 

吟醸造りに関しては静岡県の先生であった河村傳兵衛さんの教えをきちっと学び、それを身に着けるだけでなく自分なりのお酒に仕上げていく技術と姿勢を感じました。また、今流行りの吟醸酒を造るだけでは満足せず、日本が昔から育ててきた日本酒古来の酒造りの手法を使うことを積極的にチャレンジし、菩提酛、生酛、山廃のお酒を造ってきましたが、凄いのはこの技術で今風の味のお酒を造るのではなく、昔のお酒の味を再現することにチャレンジされたのには驚かされました。失敗したら売れないお酒ができてしまう可能性があると思いますが、熟成の技術と組み合わせることにより、なんとなるとの自信があったものと思います。 

この杉井さんの考えのにはもっと先を見たお考えがあるように思えました。それは赤ワインの世界を日本酒で実現しようと考えておられるのだと思います。高級な赤ワインは味わいが奥深くて、良いものを飲むと何とも言えないほどの幸せ感を与えるお酒になると思っている人は多いと思います。その赤ワインは酸味が強く糖分がほとんどないお酒ですが、ブドウの持つ独特の成分と熟成の技術により醸し出されるものであることを杉井さんは良く知っておられるので、日本酒の場合も酸が多くて糖分の少ないお酒を熟成させることにより赤ワインに近いお酒を実現しようとしているように感じました。 

鯵の深みという点では、まだまだ道半ばと言えますが、きっと杉井さんならいずれか達成できる日が来るのではないかという期待があります。 

大変難しい課題かも知れませんが、ぜひ実現させてもらいたいものですね 

最後に「あふぎ」のママと杉井さんの2ショットをお見せします。いい雰囲気でしょう。 

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いつもお料理の最後に作っていただく静岡おでんをお見せします。
とてもおいしいですよ。

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