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« 僕が愛用している試飲会のためのグラスの紹介 | トップページ | 長陽福娘のお酒は気取るところのない酒でした。 »

2017年7月 5日 (水)

新政・貴・仙禽の蔵元によるトークバトルと利き酒選手権

6月4日にインフィニット酒スクールが主催する若手蔵元トークバトルと利き酒選手権&懇親会に参加してきました。この会は去年も四谷3丁目にあるホテルウイングで行われましたが、トークバトルは新政酒造の佐藤祐輔さんと仙禽酒造の薄井一樹さんのお二人のトークで、あまりトークバトルにならなかったのと、きき酒選手権もどんな形で実施されるのかわからないまま参加したので、うまくブログにまとめることができず、書くのをやめてしまいました。

今年は永山本家酒造場の永山貴博さんも参加された3人でのトークバトルとなったのと、きき酒選手権も最後にこんなお酒でこんな質問をしたとの解説書がありましたので、詳しい紹介ができそうなので、ブログにまとめてみることにしました。

<3蔵元によるトークバトル>

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今年は新政の佐藤祐輔さんと仙禽の薄井一樹さんと貴の永山貴博さんの3人に司会の阿部ちあきさんが質問し、それに答える形式で行われました。

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阿部さんによるプロフィルの紹介がありましたが、それに少し手を加えた僕の方で調べたプロフィルについて、まずご紹介することにしました。紹介の順番は年上の佐藤さんからご紹介することにしました。

佐藤祐輔

1974年12月生まれ、現在42歳8代目の蔵元です。高校を卒業後は明治大学の商学部に入学したのですが、マネージメントの勉強に興味が持てずに退学して、1年浪人して東大の文学部に入り、好きな英文学を勉強したそうです。大学卒業後はフリーの記者として執筆活動をしていたそうですが、そんな時に静岡名酒「磯自慢」を知ってその味に衝撃を受け、2007年に蔵にもどることを決心したそうです。すぐに広島の酒類総合研究所で一年半みっちり酒造りを学び、それからは蔵の改革を次々に行い、2012年に社長となり現在に至っています。

永山貴博

1975年9月生まれ現在41歳5代目の蔵元です。高校を卒業後語学の勉強のためにカナダの国際大学に入学して、帰国後国税庁の醸造研究所で酒造りと米造りの勉強をした後1997年に蔵に戻り酒造りを開始します。醸造研究所時代におせわになった静岡の「喜久酔うの青島さんにいろいろ教えを受けながら、2001年に杜氏になり「貴」を発売します。その後、2013年に社長となり現在に至っています。

薄井一樹

1980年11月生まれ現在36歳の11代目の蔵元です。地元の高校を卒業後、大学を中退して日本ソムリエスクールに行って資格を取った後はソムリエの仕事をしていて、その時菅田先生と知り合ったそうです。2003年に蔵に戻り弟の真人さんと共に蔵の改革を行い、2008年に古い蔵の代わる新しい株式会社「せんきん」を立ち上げ、新たな路線を走ることになり、現在はその会社の専務取締役として活躍されています

この後は3人のトークバトルの内容をご紹介しますが、阿部さんの質問に対しての各人のご返答の形でまとめています。僕の記憶の間違いもあると思いますので、その時はご容赦お願いいたします。

質問1 今年の蔵の生産状況と28BYの造りについて

佐藤祐輔

開発中の自社田の田圃の草取りの準備もあるので、毎年生産量は少なくしており、今年は10本ほど減らして約2000石くらいの生産予定です。毎年最初の20-30本は試験醸造をしていて、今年は低発酵の造りで酵母を入れる前の乳酸菌が多い状態で醪に入れる試験をしましたが、マロラティック反応が進んでリンゴ酸が乳酸に代わってしまい、思った味にはならなかったそうですが、大変勉強になったそうです。

永山貴博

毎年5月の末には甑倒しをしており、今年は生産量は約1200石ぐらいだそうです。毎年新しいことをチャレンジするよりは造りのブラシュアップをして改善することに心を割いていて、今年は醪を搾り機に送るポンプを強くかき混ぜるポンプではなく、比較的穏やかに送ることのできるロータリーポンプを使って、少しでもガスが残るようにしたとのことでした。お酒のダメージを与えないことが大事だと思っているそうです

今年は失敗はなかったけど、去年は活性濁りでうまくいかなかったこともあり、活性系のお酒造りは毎年大変だそうです。

薄井一樹

今年は6月末に甑倒しになり、生産量は約1700石くらいだそうです。今年は去年のトラブルの反省からとりあえず26BYの造りに戻りながら造りの修正をかけたそうで、成果が出たとのことでした。したがって、オーガニックの亀の尾の酒や本場のシャンパニューの酒の造りは来年度以降になるそうです。

今年は酵母を添加しない生酛はうまくいったのですが、新政から紹介していただいた美郷錦はうまく作れなかったそうです。新しい米は難しいそうです。

質問2 今の日本酒業界に対する意見について

共通の観点

若手というのは造りを初めて10年までを若手と言っていいと思いますが、僕たちは造りを始めた2003年から2007年日本酒が売れない時代なので、独自のお酒造りをしようとに大変苦労したけど、とても良い経験をしたと思っている

佐藤祐

現在のように日本酒がある程度売れるようになってきた時代になって、若手の蔵元が蔵に戻り易くなったのは、良いことだと思う。そして若手が他蔵の良い技術を取り入れるのは進歩を早めるので良いとだと思う。その意味で自分か開発した技術はどんどん開示しているので、それを利用してもらっていいととのことでした。それに対して、祐輔さんは技術を開示はしているけれども、それを真似しただけでは同じものはできないと薄井さんがコメントしていました。・・・やって失敗したら祐輔さんに聞けば教えてくれると思うよ・・・

酒造りの技術はどんどん進化するものであるが、結局どんな酒ができるかは最後には作る人の性格が出るので、人を見ていればどんなお酒を造ろうとしているかはわかるそうです。・・・性格が見えない酒は魅力がないということにつながるのかもしれませんね・・

永山貴博

貴を売り始めた時代はなかなか酒が売れない時代だだったけれども、今は若手の夜明けで大勢の人が集まる時代になっているので、うらやましいくは思うけれども、自分の時は何か自分なりの味を造っていかなければなないと思っていたそうです。そんな時にとても感銘を受けたのは静岡の喜久酔」青島さんから酒造りには哲学から入るべきという考えだったそうです。その人の哲学は生きてきた人生を反映するものなので、お酒はそれから無まれた結晶なのだと思うそうです。

薄井一樹

今は日本酒の市場が安定しているので、85点のお酒を造れば売れる時代になっているし、各県の研究所の先生から渡されるレシピ通り造れば簡単にそれができる時代になってきているが、冒険をしなくなってきているのではないかと思われるそうです。最近はおいしいけど無機的なお酒が多いのは気になるそうです。

永山さんが見た薄井さんは若い時は尖りまくっていたし、特徴のあるお酒だったけれども尖っているからこそ哲学を感じるし、最近はそれが洗練されてきたと思うそうです。

質問3 日本酒の国際化について

日本酒が海外に沢山輸出されるようになってきて最近新たにソムリエ協会が日本酒の利き酒師の資格制度(SAKE-DIPLOMA)ができるようですので、それについてご意見をください。

佐藤祐輔

資格試験の新たな制度がソムリエ協会からできたので、僕としてはワインに対する考え方を日本酒に当てはめようとしているのでないかととても気になるそうです。ワインと日本酒は全く製造も違うし、ワインと比較されても困る。例えば4VGの香りはワインでも日本酒の公的研究所でも良くない香りとされているが、それが人間の体に悪い影響を与えない限り許されるべきだと思う。全国鑑評会での中では減点法で評価されているは、技術向上の立場から公的機関が行ってきていることは理解できないことはないが、一般の日本酒にこれを当てはめるのはおかしい。多様化したお酒を認める国際基準を考えるべきだと思う。

永山貴博

新しい資格試験ができるのは良いことだと思うが、日本酒を国際基準で評価するためにはワインのブドウにあたる原料のが大切にされるのはわかるが、ワインとは違う並行複発酵なので、原料だけで味が決まることはありません。またワインにはないアルコール添加、純米酒の考え方、乳酸の添加についてはトレーサビリティなどあらためて検討していかなければならないので多少心配である。

鑑評会基準をすべての蔵に当てはめるのはおかしいし、過去の伝統を守ってきた蔵癖のある造りを大事にすべきだと思う。

薄井一樹

日本酒の国際化には国際的な資格制度が必要なのはわかるが、昔からのSSIがいいのかソムリエ協会が良いのかは一概には言えない。いずれにしても時代の流れによって世界基準としてアップデートされなければならないと思う。造りとしては米、酒母が大切だと思うのでこれを大切にする基準を考えていくべきだと思う。

質問4 2017年度の酒造りについて

佐藤祐輔

一昨年は焼酎の麹をテストし、今年は低発酵の造りにチャレンジした。来年は造りの挑戦はしないで、自社田の有機米を使うことになるので、原料処理を徹底にやるつもりである。溶けない米ができた時に酵素力で溶かすのはよくないので、原料処理の仕方で対応していきたいので、蔵の中で最も経験のあるものを原料処理に使うつもりである。

永山貴博

西日本は山田錦、雄町、八反錦など大粒の軟質米が多いが、特に今年は八反錦は溶けなくで50%も粕が出た。今年の田圃の状態を見ると来年はとても心配だが、人がどう手をかけるかで対応していきたい。

薄井一樹

毎年米が溶けるかどうかで値段を変えていいのではないか。栃木県では早稲の亀の尾と晩稲の山田錦が同時にできるので、来年は無農薬で作る2つのお米を同時に使うことになり、どんなお酒になるか楽しみです。

<参加者からの質問:インフィニット酒スクールでは4VGはオフフレーバーと教わっているが、これはどのような時に出るのでしょうか、また麹造りで酒母、初、仲、留で変えて行っているか、突破精と総破精ではお酒の味にどのように違いを出すのでしょうか

佐藤祐輔

4VGは生酛系の造りで蔵付き酵母や野生酵母を取り入れた時は必ず出てくるので4VGはオフフレーバーとして悪いとするのはやめてもらいたい。飲み手がこの香りなら良いとする範囲であれば、認めていい香りだとおもう。

麹造りに関しては酒母は米を溶かさなければならないので、酒母は強い麹を造って留は菌量を減らして突き破精にするほうが良いという醸造上の理屈はあるけれども、新政では麹造りを40時間から72時間までの色々な作りをした結果、現在では40時間という短い麹造りをしているそうです。ですからすべて総破精になるとのことでした。麹造りはアルコール添加する場合と純米の場合では最適な麹造りが違うとのことでした。麹造りで味は変わってくるのでオリジナリティを出すには麹造りは重要なところであるが、総破精か突き破精かという単純なことではないようです。

永山貴博

鑑評会出品酒クラスで、泊まり込みでやる場合は適宜菌量を変えて突破精になるようにしていますが、ベーシックなお酒については菌量を一定にして決まった時間に決まった温度に来ることを大切にしているそうです。総破精とか突き破精ということを気にはしていないそうです。

薄井一樹

麹の破精回りでお酒の味が違ってくるのは確かで、奇麗なお酒を造るの場合は突き破精がいいとは言えますが、総破精と突き破精がどちらがいいかということはないそうです。造りたいお酒のコンセプトによって変えることにすればいいと考えているそうです。

<4VGに関する菅田先生のコメント>

このコメントはその場で出されたものではなくて、後日先生から聞いたものです。4VGは香りが少なければ問題はないように見えますが、本来出るはずがないプロセスで出た場合は、その香りの強さは大きくなくても、本来の吟醸香をマスキングしたり、後味に辛みが出ることがあり、その場合は本来目指したお酒になっていないことがあるので、その目安としてこの香りをチェックする意味があるそうです

トークバトルの感想

以上で3人のトークバトルの紹介は終わりますが、3蔵とも造りの哲学を持っているという点では共通ですが、僕が質問した麹造りをとっても皆違う造りをしていることからわかるように、昔からある技術を大切にしながら、自分たちの蔵にあった改善をしていることはよくわかりました。バトルをしている中で本音が見えてくるのが楽しかったです。

きき酒選手権

インフィニット酒スクーるの利き酒選手権はとても見ていて楽しい選手権ですが、どのようにやってるかを知っている人は少ないと思いますので、まずそれを紹介しましょう。

今回は8人がまず予選を行って4人に絞ぼってから、4人で決勝戦を行うものですが、予選も決勝戦もやり方は同じですので、予選で行われた例で説明します。

まずテーブルに1~5の番号を付けたテースティンググラスに5種類のお酒を入れておきます。脇には吐き用の紙コップを置いておきます。

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最初に1分間だけ5種類のお酒を自由にテースティングする時間が与えられます。その後、先生から「1番のお酒に対して火入れ回数を答えてください」というような問いが出されます。回答者は30秒だけ試飲をして紙に書いて答えるという順で進められました。

回答している状況の例をお示ししましょう。

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実際にやってみるととても難しいので、なかなか当てられないようで、予選では5問中2問の正解で決勝に行ける状態でしたが、決勝では藤原さんが5問すべて正解という快挙で優勝されました。僕の写真にいいものがなかったので、田崎さんの写真をお借りしました。

左の方が去年の優勝者の手塚さん、右の方が今年の優勝者の藤原さんです。おめでとうございます。

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どんな問題が出されたか知りたい人のために、懇親会会場内に問題の回答が出されていましたので、それから予選の例を写真をお見せします。

5種類のお酒は下の写真です。

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これに対する問題と解答の写真です。拡大すれば読めると思います。

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とても難しいでしょう。中々正解できるものではありません。決勝では蔵元3人がグループで一緒に応えていましたが、確か2問しか正解しなかったようで、インフィニット酒スクールに通って勉強すると弁明していました。 蔵元のようにプロであっても、数値を推定する訓練はしていませんので、なかなか当たらないのだと思います。インフィニットスクールはお酒の数値を当てるのが目的ではなく、お酒の酒質をテースティングしていくにつれて、数値が推定できるようなるということのようです。

以上できき酒選手権の紹介を終わります。

<懇親会>

ここでは新政、貴、仙禽のお酒を楽しみましたが、ここでは個別の解説はしません。園田お酒は何と約40種類もありましたが、これらの酒は最初にどんと出たわけでないので、会が終わった時に撮った写真をお借りしました。

<新政>

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<貴>

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<仙禽>

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この試飲会で面白い経験をしました。それは貴の山廃純米の雄町は蔵付き天然酵母で作られたものでしたが、味は深みも酸もあってチーズにぴったりのお酒でしたが独特香りがあったので、菅田先生と祐輔さんに確認をしてもらったら4VGの香りでした。確かに蔵付き酵母の場合はどうしてもこの香りが出るので、これをオフフレーバーとするのは確かにちょっと辛いところだと思いました。

最後にこの3つの蔵のお酒のイメージを女性書道家の山嵜さんに一文字で書いていただきました。

新政は華やかな舞、貴は男らしい鳳、仙禽はキラキラ輝く耀でした。山嵜さんはお酒のことはわからないと言いながら、とてもよく表現されていると思いました。

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最後にこの企画をしていただいた菅田先生とそのお弟子さんたちに感謝したいと思います。来年も盛大に実施されることを期待したいと思います。 

会の締めのご挨拶をあいている菅田ゆうさんです。

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コメント

うんちくより、呑んで好みのかほりと味がいいということですね。

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