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« 結城酒造のお花見の会でちょっとだけの蔵見学 | トップページ | 東薫酒造は伝統の味を守り継いでいる蔵です »

2017年5月 3日 (水)

福井県の小さな蔵は個性豊かでした。

各県の酒造組合が主催する日本酒のイベントは沢山ありますが、その中で最も大きいのが新潟県酒造組合が開催する「酒の陣」です。このイベントは毎年3月に行われ、試飲して気に入ったものがあれば、その会場で購入できるのが気に入って、毎年参加してきましたが、年々参加者が増えて入場するだけでも1時間以上並ばなければいけない状態になってきました。また場内も満員電車の中の混み具合となって、ゆっくりお酒を嗜む状態でなくなってきていました。 

そこで今年は酒の陣の参加をやめて、その後に行われる福井県酒造組合が開催する「春の新酒祭り」に参加することにしました。福井県のお酒を飲むのは2013年に東京の椿山荘でおこなわれた「蛍と夕べの会」以来のことですが、その時の様子は下記のURLをご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-c1dc.html
 
春の新酒祭りは福井駅から少し離れた田原町にあるフェニックス・プラザでおこなわれました。この会はたぶん今年で9回目になるほど地元に定着したイベントとですが、毎年フェニックスホールの1階にある大ホール(最大2000名入場可能)でおこなわれています。僕は初めての参加でしたが、入場前に30分以上待つほどの人気があり、予想以上の混雑ぶりでした。
 
ここがフェニックスプラザの入り口です。
 
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下の写真がホールに入る前の通路で、出品したお酒の一部が買えるのですが、ブースの所で買うのとは違って、会場を出ると気に入った酒がどれだったかわからなくなるので、買いずらいと思いました。僕は結局買わずじまいで終わりました。
 
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会場はさすがに広かったですが、会場のレイアウトが判らないし、出品されたリストもないので、どうやって飲もうかさすがに困ってしまいました。蔵のブースが会場のどこかにあるかは書いてあったのかもしれませんが、新潟酒の陣のように、入場する時にレイアウト図を手渡してもらいたいものです。来年以降ぜひとも改善してもらいたいと思いました。参加した蔵は椿山荘の17蔵より多い24蔵でした。
 
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会場に入ってみますと人気のある黒龍や梵の蔵には試飲したい人がすらりと並び、それをかき分けて他の蔵を探すという状態でした。結果的には人が並んでいない蔵のお酒だけを飲む形となりました。帰りの電車の都合で2時間半の短い時間でしたが、小さいけど面白い蔵を見つめましたので、それを中心にご紹介することにします。
前の日に訪問した田邉酒造や美川酒造場ももちろん出店していましたし、どちらも小さな蔵ですが、この二つはブログに書きましたので、興味のある方はそちらを見てください。
田邉酒造
美川酒造場
 
1.原平酒造
 
源平酒造は九頭竜川の上流の大野市にあり、ここは北陸の小京都とよばれる歴史と文化を今に継ぐ城下町で、四方を山々に囲まれた緑と水の豊かな場所です。名水百選に選ばれた「御清水」があるので、酒造りに適したところで、いまでの4つの蔵が存在しています。その中にあって、300年以上の歴史がある由緒ある蔵が源平酒造です。
 
昭和の時代は日本酒ブームで、この蔵の売り上げも1億5千万以上もあったようですが、平成に入って日本酒離れが始まり、年々売り上げが下がり経営の苦しい状況が続き、その中でも2008年には全国新酒鑑評会で、2009年には金沢国税局酒類鑑評会で金賞を取るなど努力をしてきましたが、20010年についに売り上げが5000万円を切ることにjなり、事業継続は難しいと民事再生手続きを取ることになったようです。
 
その後株式会社アーキクリエイション(東京の南大塚に本社を持つ会社)がスポンサーとなり、再生活動が始まり社長の荻原さんが代表となり、蔵人も外から集めて新しい体制がスタートしたのが2012年です。その後2013年にはワイングラスでおいしい日本酒アワードで金賞を受賞するなど、着実に動いているようですが、現在の生産高はまだ100石前後のようです。
 
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写真の方は新しく三重県から来られて杜氏になられた眞野さんです。持っていただいたのは6段仕込みの純米大吟醸蝶ラベルです。醪の仕込みは通常初添え、仲添え、留添えの3段仕込みで行いますが、さらに3段追加する方法を6段仕込みと言います。真野さんのお話ではこれは偶然生まれた方法だそうで、社長からもう1本仕込んでくれと言われたけど、時間がないので、さらに3段追加したら面白い味になったので、この方法が定着したようです。でもその仕込み方は秘密のようです。

飲んでみると最初に甘い香りがするけどしっかりした味わいの中に辛みも感じながら消えていく独特のバランスのお酒でした。最初のうまみと後味の引き締まりのあるお酒なので、しっかりしたお料理にもある食中酒として面白いように思えました。まだまだ生産量は小さいけどこれからどんな変化を示すか楽しみな感じです。 

2.鳥浜酒造
 
鳥浜酒造は若狭湾の中の三方五湖の三方湖の近くにある蔵で、大正9年に若狭の町民50人が出資してできた会社で、初代は小堀彦五郎さんが社長でスタートして、その後小堀家が歴代社長を継いできていますが、株式会社なので誰が社長でも良かったようです。
 
現在の社長は5代目の小堀康彦さんですが、康彦さんの父の茂彦さんの代に最盛期を迎えたようで、蔵人が7-8人くらい働いていたそうですから、1000石近い生産高があったかもしれません。しかし平成の時代になると生産量が少なくなり、安彦さんが蔵に戻った平成7年には経営が厳しくなってきたそうです。そして平成11年に父が亡くなり、安彦さんが社長になったのですが、経営はさらに悪化していたので、平成14年に廃業を提案したそうです。
 
ところが株主から増資をするので酒造りを続けるように懇願されて、平成15年に造りを再開したそうです。蔵の建物は土蔵・木造2階建ての近代の清酒醸造工場としては貴重な建築物で登録有形文化財なので、観光地として蔵の見学ができるようにか改造したり、従来のお酒とは違った新しいブランドの「鳥濱」を出すなどして今日に至っています。経営は少し安定してきていますが、現在の生産高は120石程度だそうです。
 
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写真の方が社長兼杜氏の小堀安彦さんで、持っていただいたのは「鳥濱五百万石50%精米の純米吟醸です。飲んでみるとしっかりとした旨みで、酸味はすくなく最後に軽い渋みでバランスしています。味付けの濃い料理に合いそうです。この地方は川魚が主流でその濃厚な味付けに合うお酒として、甘口の「加茂栄」が主流だったのを少し飲みやすくしたもののようですが、それでもしっかりした味わいでした。その秘訣はと聞いてみたら、秘密だけど、酒母造りに工夫をしているとのことでした。 
 
3.雲の井 吉田金右衛門商店
 
この蔵は福井市の中心から西北西に12㎞程東尋坊の方に行った九頭竜川の西域の小高い丘陵地帯にある佐野市にあります。越前海岸に近く海の幸に恵まれている地区で、酒造りは盛んでかっては杜氏を出した地区でもあるそうです。
 
蔵元は代々地主の家柄で、江戸時代からあったそうですが、酒を造り始めたのは明治4年だそうです。福井県は精米は共同精米と聞いていましたが、この蔵は地元の五百万石と山田錦を中心に、全量自家精米でやっているそうですから、酒質の管理には非常に気を使っているように思えました。すべて小仕込みで、蔵内平均精米歩合が55%の純米の特定名称酒のみを造っているそうです。生産高は200石たらずで少ないですが、日本名門酒会の会員だそうですから、知る人は知る蔵なのでしょう。
 
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写真お方は社長兼杜氏の吉田和正さんで、、杜氏歴の15年近くになるベテラン杜氏です。かなりこだわりの酒造りをしていて、麹造りは突き破精で丹念に小箱でやるとか、速醸でもしっかち打瀬を取るなど、徹底した吟醸造りにこだわっているようです。持っているのは雲の井の山田錦の純米大吟醸の袋撮り熟成生原酒で、一般には出回っていないようで、自慢の秘蔵酒かもしれません。香りはそれほど高くはないけど、テクスチャーも柔らかく、バランスの良いうまい酒でしたので、もし見つけたら絶対買いですね。 

4.華燭 豊酒造
 
豊酒造は鯖江市下野田町にある蔵で、ここはJR鯖江駅から西に2-3km行ったところになります。創業は1753年だそうですからとても歴史のある蔵です。華燭とは珍しい銘柄ですが、華燭とは会津の絵蝋燭のことをいうそうですが、おめでたい時のお祝いに使うもののようで、8代目の当主の時に大正天皇のご成婚を祝ってつけたらしいです。現在の生産高は300石レベルのようです。
 
下の写真の左の方が11代目の蔵元の佐々木宗利さんです。丹波、新潟、能登の杜氏のもとで、15年間修業をした後、2002年から杜氏として、蔵を引っ張ってきていました。右の若い方は息子さんの克宗さんで、茨城大学の農学部を出た後、蔵に戻って父から酒造りを学び、今年から杜氏として酒造りを始めたそうです。 
 
僕はたまたま2000年に蔵を訪れたことがあるのですが、その時宗利さんが蔵に眠っていた珍しいお酒を飲ませていただいたことが強く印象に残っています。ですから熟成酒に経験が豊富な方だなとは思っていました。
 
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持っていただいたのは平成8年のお酒で20年古酒ですか、見ての通り色がほとんどついていないのです。本当に古酒ですかとお聞きし飲んでみました。熟成の香りは少ししますが、飲んでみるとめちゃめちゃ柔らかくて、バランスのいいお酒に仕上がっていました。いくらなら買ってくれますかと聞かれたので、1万円でも買いますよとつい言ってしまうほどでした。
 
実はまだ市販していないお酒で、今年に販売する予定だそうで、出たらすぐ買いたいですね。あまり熟成が進んでいないので何℃で熟成しているのですかと、聞いたらなんと20℃以下の室温だそうです。さらにどうしてこんなお酒ができるのですかときいたら、一つは密閉型の琺瑯タンクの熟成させていることと、作り立てのお酒には味を乗せないで淡麗に作ることだけですよというお話でした。このお酒は五百万石60%精米で酵母がM31だそうなので、とても価格を1万円にはできないから、いくらにするかな?おっしゃっていました。
 
この蔵の熟成の技術はすごいと思いましたが、世間ではまだあまり知られていないような気がします。世の中には熟成古酒ランキングというのがありますが、調べてみたらまだ載っていません。でもとてもいいお酒ですので、ぜひ飲んでみてください。
 
5.白龍 吉田酒造
 
吉田酒造は黒龍のある永平寺町にありますが、同じ町ですが黒龍よりは九頭竜川のずっと上流にあります。創業は1806年といわれていますので、約200年以上の歴史のある蔵で、白龍という名をずっと引き継いできています。白龍とは九頭竜川の白く泡立つ激流を白い龍となぞらえたものだそうです。
 
歴史は長いのですが、6代目の蔵元となった吉田智彦さんが蔵を引き継いだ時は福井県の中では最も小さな蔵と言われたほどだったそうです。智彦さんは東京農大を卒業後国税局農業試験所で酒造りを勉強し蔵に入ったのですが、まずやったのが自社田で山田錦を栽培することだったようです。最初は生産量が少なかったのですが、完全熟成堆肥を使って、生産量が安定したそうで、その後順調に生産が伸び、現在ではお酒の生産量も430石になっているそうです。
 
ところが昨年突然智彦さんがなくなり、現在は奥様の由香里さんが社長となり、娘さんが酒造りをしていますが、まだ杜氏見習い中だそうです。
 
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中央の方が由香里さんです。持っていただいているのは自家田の山田錦60%精米の山廃仕込みの特別純米原酒です。山廃仕込みは得意な蔵ではないそうですが、このお酒は評判が高く、このイベントで人気になったお酒のひとつのようです。うまみと酸のバランスが良く、後味の奇麗なお酒でした。ご主人をなくして、大変な状態なのでしょうから、ぜひみんなで応援しましょう。
 
6、福千歳 田嶋酒造 
 
この蔵は福井市の中ですが、福井駅から西に1㎞弱行った足羽川のほとりにあります。創業は1849年ですから江戸時代末期だそうですが、その場所は今の地ではなく今よりずっと西のはずれの清水町にあったそうです。そして今の地に来たのが昭和28年で、その時から町に名前(今はその名前はありません)の千歳を取って福千歳という銘柄が誕生したようです。
 
酒造りは昔から能登杜氏が来て行ったそうで、昭和51年までは全量山廃つくりだったそうです。昭和51年以降に初めて速醸のお酒を仕込むようになっていますが、やはり一押しは山廃でしょう。そのお酒も今変わろうとしています。それは蔵の跡取りの田嶋雄二郎さんが蔵に戻ってきたからです。
 
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この方が雄二郎さんで、東京農大を卒業後、蔵に戻ってきたのが6年前で、杜氏となったのが2年前だそうです。雄二郎さんがやりたい酒造りは以下の3つです。
 
  • 1.楽しみながら常にチャレンジして、笑顔になる蔵造り 
  • 2.福を呼べる酒造り(実際に喜んでいただける商品作りなど) 
  • 3.オンリーワンな酒蔵(ライスワイン、サクラロックなど) 
  • 持っていただいたのが左手に山廃純米大吟醸で、右手に持ってもらったのがサクラヌーボ生原酒です。山廃純米大吟醸はという名が、山廃純米吟醸はという名がつけられていて、ラベルもとわかり易くなっています。いずれも福井県産の越の雫というお米を使っていて、自家製酵母田嶋2号(9号系)を使った山廃つくりで精米だけが違います。この山廃の酸度は1.7もありますが、穏やかで、テクスチャにとろみがあってなかなかのお酒でした。 

    サクラヌーボはさくら酵母を使ったお酒で、生原酒はアルコール度数が19もあるので、ロックがいいように思えました。サクラヌーボにもいろいろな種類を造っているので、飲むときは要注意です。この酵母は農大時代に自ら開発した酵母なので、思い入れが強いようです。いずれにしてもこの蔵は雄二郎さんがこれから舵を取っていくのでどのように変わるのか楽しみです。蔵の生産高は聞きませんでしたが、雰囲気では500石ぐらいでしょうか? 

    7.越の鷹 伊藤酒造
     
    この蔵は福井駅から西北に九頭竜川を10㎞程下って行った江上町にあります。創業は明治27年ですから、すごく古い蔵ではないようです。歴史についてはホームページにあまり記載されてはいませんが、写真を見る限り昔からの酒屋で趣を感じる雰囲気を感じました。でも、設備は昔からのものをつかっているようですが、お酒の質は新しさを感じるように思えました。実際はどうなんでしょうか。
     
    現在の杜氏は下の写真の伊藤抵治さんです。伊藤さんは東京農大を卒業され他の仕事についたのですが、蔵の杜氏が他界したので、急遽蔵に戻ってもう約20年になるそうです。蔵に戻った時は借金まみれで、経営も苦しく、特定名称酒は一切なく普通酒しか作っていなかったので、営業にまわっても相手にさせす途方に暮れたそうです。
     
    そんな時に常山の元社長に励まされて一念発起し、新しい酒造りの勉強を色々方に教わり、特に食品加工研究所の久保先生のお力を借りて科学的に醸造する方法を取り入れたそうです。そうして生まれたのが純米吟醸酒越の鷹だそうです。
     
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    目指す酒造りは福井県の米と福井県の酵母を使ったお酒でちょっと濃厚さもあるがフルーティでシャープなお酒を目指しているそうです。持っていただいたお酒は最近福井県が開発した酵母のFK-80を使った純米大吟醸です。お米は越の雫100%使用で、精米歩合は50%だと思います。この酵母は昨年開発されたばかりでこの蔵以外では使用されていないとのことでした。 

    飲んでみるとカプロン酸の香りと酢酸イソアミルの香りのするフルーティなであるけど切れの良さもあるお酒でした。FK-80酵母をインターネットで調べてもまだ出ていません。こんな酵母をいち早く導入できるのは、伊藤さんならではのことではないでしょうか。きっと経営の方も順調なのでしょうね。生産量は聞き損ないましたけど、200~300石ぐらいではないでしょうか。
     
    「春の新酒祭り」に出展した蔵の中で、生産高500石以下と小さいけど頑張っておいしいお酒を造っている蔵を見つけて紹介いたしました。他にも同様な蔵もあったと思いますが、たまたま出会って気に入った蔵を紹介したので、見逃している蔵もあるとおもぃますがご容赦願います。
    僕は日本酒を愛するものとして、日本の日本酒業界全体のレベルを上げるためには、大きな蔵のレベルアップはもちろん必要ですが、小さな蔵が良いお酒を造ることが全体を引き上げるベースになると信じていますので、小さな蔵で、いいお酒を造る努力をしている蔵を見つけたら紹介していきたいと思っていますのでよろしくお願いいたします。
     

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