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2016年10月31日 (月)

酒千蔵野は外観は変わらないが中身は進化していた

長野メッセの翌日、朝一番に尾澤酒造を訪問した後、酒千蔵野に向かう途中の道の駅にある有名な蕎麦屋の「そば信」で昼食をすることにしました。どういうわけか写真を撮っていませんでしたので、お店ホームページから借用しました。このお店は前の日に幻舞の千野健一さんにぜひ食べて来てくださいと言われたお店です。昼間12時半ごろ着いたけど広い駐車場が満杯で、停められるか心配しましたが、何とか停められました。ずいぶん人気があるのですね。 

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外見は道の駅によくある普通の蕎麦屋で、値段はざるそばで500円と格安でした。僕は天ざる780円を注文しました。食べてみると香りはもうちょっと欲しいけど、腰はしっかりするぐらいあって、こんな腰のあるお蕎麦は初めてです。 

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ここの蕎麦は石臼でひいてそれを手打して作っています。この店のお蕎麦をそのまま売っていたので、これを買えば家でも同じくらいの腰を楽しめるのかと思ってよく見ると、生麵なのでその日に食べてくださいと書いてありましたので諦めて、道の駅で売っている他社の半生麵を買って翌日食べたら、全く別物でした。やっぱりその場で打ったものをその日にすぐ食べないとだめなことがわかりました。 

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このガラスの奥の部屋がそばの手打ちをやるところで、実演が見えます。僕が見ているとき女性が手際よく打っていました(実は朝、尾澤酒造に行く前にトイレ休憩した時に見たもので、お昼には打っていませんでした)。 

ゆっくりここで昼食を楽しんでから酒千蔵野に向かいました。2時ごろ蔵に到着したら、千野健一さんと麻里子さんが迎えてくれました。蔵の外観は昔お邪魔した時のままで、どこかの美術館のような雰囲気の蔵でした。どうしてこんな建物にしたのかをお聞きしたら、麻里子さんの父が麻里子さんには相談せず、勝手に観光蔵を狙って作ったのでないかと思われますが、本当のことはよくわからないそうです。良い点もあるけど作業上はいろいろ使いにくい点も多く困っているそうです。 

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確かに外観上はとても広い蔵のように思えますが、建屋の半分の空間が造りには関係のない展示や会議室や吹き抜けとなっているので、造りのためのエリアは意外に狭いそうです。でもお酒の銘柄が多いし、造りの量もいろいろあるので、この狭さの中で500石のお酒を造るためにはかなり先の先まで読んで準備をしなければいけないので気が抜けないそうです

確かに建物としては綺麗だけど、蔵としてはもったいないような気もしますね。これからどうしていくのかは麻里子さんの考え一つでしょう。 

案内は麻里子さんにしていただきましたが、その日は1500KG仕込みの添え麹の引き込みをした日なので、蔵の中の見学はできないとのことでしたので、試飲をしながらのトークで終わりましたが。面白い話を2つ聞けましたのでご紹介します 

当日添え麹を引き込んだお酒は何ですかとお聞きしたら、宮内庁向けのお酒だそうです。そんなお酒を造っているなんて、知りませんでした。それは美山錦49%精米の純米大吟醸「御苑(みその)」で宮内庁の中にある生協で売っているお酒だそうですが、いくらで売っているかは知らないとのことでした。インターネットで調べると宮内庁生協のホームページはないのですが、そこで御苑を買ってブログに挙げている人がいました。4合瓶で1600円ですからそんなに高くは売っていません 

http://youpouch.com/2013/10/07/137632/ 

宮内庁の生協には誰でも行けるわけではありません。事前に宮内庁見学を申し込む必要がありますが誰でもはいれるそうです。もちろん蔵に在庫はありませんし、あっても買うことも、試飲もできません。インターネトで調べてみると外箱とお酒の写真を見つけましたので、ご覧ください。 

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やっぱりデザインに気品がありますね。これならもらった人はうれしいのではないでしょうか。 

この蔵の生産高はずっと変わらず500石だそうです。昔は普通酒が8割だったそうですが、今ではその逆で普通酒が2割強ほとんどが特定名称酒だそうです。ですから年4回しか使わない普通酒用の3トン仕込みのタンクもあるそうです。通常は600kg~1200kg仕込みだそうです。ですから御苑は結構大きな需要なのですね 

麹造りはどんなことに気を使ってやってりのですかとお聞きしたら、酒母と添えの麴は総破精で、留添えは突き破精、仲添えはその中間になるようにしているそうです、それをどのように作るのですかとお聞きしたら、種麹の量でコントロールしているそうです。総破精は100KGの蒸米に対して50g、仲は20~30g、突き破精は5~10gだそうです。総破精か突き破精かは見た目ですぐわかるそうです。 

インターネット検索で日本酒コンシェルジュの江口崇さんのイベントレポート日本酒レッスンにあった総破精と突き破精の写真を載せておきます。麻里子さんの説明では突き破精はお米の表面に2-3か所麹菌の入り口が見えるだけと説明を受けましたが、それとはちょっと違いますね。もしかしたら突き破精もどきかもしれません。 

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僕のような素人には実際にどうなってるかはよくわかりません。麻里子さんの説明では突き破精は確かにきれいなお酒ができるので、金賞受賞酒を狙ったような大吟醸酒では酒母から留めまですべて突き破精にすることがあるそうです。とてもきれいなお酒ができるそうですが、発酵力が弱いので、酵素剤を入れることが多いようです。福島県ではそのようにしているところが多いと聞いているそうです。でも、あえて麻里子さんのところではそうしていないそうです。 

他県の情報とか長野県の他の蔵の情報をどうやって得ているのですかとお聞きしたら、長野県が主催する杜氏の勉強会や地区の有志の杜氏が集まる研究会などで勉強しているそうです。今の日本酒の技術の発展はすごいスピードで進んでいる気がしますので、勉強は大切なのでしょうね。 

試飲したお酒 

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飲んだぽ酒はもっとありましたが、この4本だけ紹介します。どれも東京では飲めないお酒です。 普段飲めないお酒だけを選んでもらいました。

① 鞍骨城  特別純米 ひとごごち(信州松代の酒米) 

② 田舎あぜみち 春バージョン  純米酒生酒 美山錦

③ いなかあぜみち 秋バージョン  純米酒 ひとごこち
     (1回火入れ)

④ 幻舞 特別本醸造 美山錦 無濾過生原酒
    (西武限定酒の半年熟成酒)
 

あぜみちは契約農家さんに春と秋に配布しているお酒です。

訪問したメンバーと麻里子さんの写真です 

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昨日の懇親会 

おまけに昨日長野駅前の居酒屋KEIYAの懇親会の時に高沢夫妻と千野夫妻と一緒にお食事をした時の写真を載せますので見てください。

高沢パパの優しいお顔がいいですね 

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麻里子さんがそっと寄り添っているのが素敵ですね

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最後にいろいろと面倒を見ていた抱いた千野夫妻にお礼申し上げます。

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2016年10月27日 (木)

尾澤酒造は小さいけどアイデア満載の蔵でした。

尾澤酒造は長野県信州新町にある小さな蔵で地元では美寿々錦、首都圏向けには十九という銘柄のお酒を出しています。この蔵のお酒を知ったのは練馬のたつなみ酒店で扱っていたのがききっかけでしたが、この酒店で働いていた横川さんが店長の上田さんの勧めで尾澤酒造に蔵人として入ることになったので忘れられない蔵となりました。それまでは横川さんとは上田店長を囲んだ日本酒の会でよく一緒にお酒を飲んでいましたし、彼が将来は酒造りをしてみたいと常々言っていましたので、蔵人になることは驚かなかったけど、その頃は数十石しか生産していないあまり知られていない蔵でしたので、とても驚いたことが思い出されます。 

当時の十九のお酒は酸味が強くて荒々しいけど、何か面白いお酒でしたが、毎年味が変わるので、あまり飲んでいませんでした。最近飲んだらとてもきれいなお酒に変身していたので驚きました。どうしてそんなに変わったのかを知りたくて、長野メッセinNagano の翌日に蔵を訪問しました。蔵の杜氏(正確には製造責任者)している尾澤酒造の社長の奥様の尾澤美由紀さんと蔵人の横川敏隆さんが気持ちよく迎えていただきました。 

下の写真は社長の尾澤俊昭さんと専務取締役・杜氏の美由紀さんです。美由紀さんが目をつぶった写真しか取れなくてすみません。美由紀さんは平成4年にこの蔵にお嫁にきて南部杜氏の酒造りをお手伝いしながら酒造りを勉強していましたが、平成10年に蔵が一時休業することになります。それを復活させるために、平成13年に長野県醸造研究所の所長の馬場先生に指導を受けて勉強し、平成13年度から酒造りの杜氏として酒造りをしています。 

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蔵人の横川さんの写真もお見せしましょう。この蔵に来たのが平成16年なので、すでに12年のベテラン蔵人になるそうですがまだ独身です。、蔵の力持ちとして頑張っていますが、分析室の主として細かい作業も得意だそうです。誰かいい人がいたら紹介してください。気は優しく力持ちです 

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まず蔵の紹介をしましょう、。創業は江戸時代後期の1820年ごろだそうです。その頃はこの地は麻の一大産地で、船を利用して京都まで運んでいたそうで、尾澤家は麻問屋として活躍した庄屋さんだったようです。ですからお米が手に入ったのでお酒を造ったら地元の人に重宝がられたのが始まりだったようです。 

昔は長野県の大手の蔵にお酒を納めていて、一時は800石くらいの生産をしていたそうですが、ここからの購入がなくなって急激に生産が落ちることになったようです。このとき尾澤酒造の社長のお父様が起死回生の手段として、平成4年に四季醸造も可能な最新設備の工場を作ったのですが、この借金のために事業としてはますます苦しくなり、くなり、平成10年には一時酒造りを休業することになったようです。

美由紀さんは大変な時にお嫁に来たのですね。借金を返すために自らが杜氏として酒造りを再開するために長野県醸造研究所の所長の馬場さんに指導受けましたが、たった1回の仕込みでしか教えてもらえなくて、覚えるのが大変だったそうです。13BYから初めて本格的酒造りを始めることになるのですが、その時名付けたのが十九です。これは人間20歳で一人前なら今お酒は一歩手前の19歳。飲んでくださるお客様の声を聞いて20歳の酒になりたいという意味で「十九」としたそうです。 

蔵は信州新町の19号線(あれここにも十九がある)に面したところにあります。下の写真が表玄関でこの蔵のような建物はお酒の展示とギャラリになっています。奥にちらっと見えるセブンイレブンは尾澤さんが経営するお店です。 後で聞いたのですが今地方に卸しているお店の数も19だそうです。

下の写真がお酒の展示販売とくつろぎのギャラりーのための建物です。

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ギャラリの中をご紹介しましょう。1階は十九以外のお酒が陳列してある棚で、ここでは十九が買えないことを説明するとよく怒られるそうです。 

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2階はちょっとしたくつろぎのフロアで、いつも音楽が流れていて希望があればミニコンサートなどにお使いくださいとPRしているそうです。 

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この建物は道路の拡幅工事(平成18年)があったときに昔からあった蔵を改修してできたのもです。昔は麻問屋として使っていたようで、昔からの梁を使っています。地元の宮大工の山本伊太郎さんが造ったそうです。 

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では早速酒造蔵を紹介します。ギャラリー蔵の右奥に比較的新しい建屋が見えます。煙突のある建屋がボイラー室、検査室。分析室、一時保管用貯蔵庫、瓶詰ラインです。その奥の建物は入り口が原料処理で、その奥に仕込み室、2階に麹室、酒母室があります。この建屋ができたのは平成4年だそうです。 

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蔵に入ってすぐ気が付いたのは全体に塵一つなくきれいに清掃されていましたことです。床がリノリウムのようにつやつやしていたので、お金がかかったでしょうと聞きましたら、全部自分で塗装したそうです。確かにリノリウムほどつやつやしていないけど防水性のある塗装のようでした。 

最初に説明しておきますと、この蔵は約3億円の借金があったので、設備にはお金を掛けないことをモットーとしてきたようです。やっと4年前に借金の返済が終わり、それからは新しいものを積極的に導入したようです。 

<原料処理関係> 

まず洗米装置ですが給食センターが使っている洗米装置でウッドソンの洗米装置より1/10以下で買えるそうです。下の左の写真が洗米器で水圧で米を循環させ洗米するようです。この洗米器だけでは糠の取れが悪いので、右の写真の自家製のシャワー機でさらにきれいにするそうです。うまく作られていました。 

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浸漬についてはあまり詳しい説明はありませんでしたが、洗米したお米を袋に入れて浸漬させ、保温用の箱に移して蒸米用とするようです。僕は酒造りは素人ですが、麹米と掛米の最適浸漬量は違うと思うのですが、どうやっているのでしょうか

次は甑です。最大500kgのお米を蒸すことのできる甑です。周りに木の板が取り付けられていますがどうしてでしょうか。わかりますか。 量の少ないときは掛け米と麹米を一遍に蒸すこともあるようです。

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これは甑の断熱を良くするために近くの木工屋さんに頼んで作ったそうですが、まだばらしていないので、どこにどの板が来るかが判るように番号が振ってります。このゆかを見てください。リノリウムのようでしょう。うまく塗っています。 

甑にかける蒸気は不純物を取り除くためにボイラの蒸気と間接的に蒸気を発生した後、温度を上げて乾燥蒸気にして使っているそうです(福島製作所)。そんなことをしているのですね。 

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 <次は麹室> 

この麹部屋も平成4年に作られたものでその後いろいろ改良されたようです。 

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以前はこの入り口が蒸米を入れる引込口と出麹口が同じで蒸米を入れるときに部屋の温度を乱してしまうので、引込口を別に設けたそうです。下の写真が後でつけた引込口の前部屋です。 

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麹室中にもいろいろ面白いものを見つけました。まず床室の換気方法です。昔は天幕方式で室内を強制的に温風と換気で制御する方式だったそうですが、 これは小さい処理量には合わないとして、野口式天窓で緩やかに制御する方式に変えたそうです。野口式天窓は熊本県醸造研究所の所長の野口さんが発明された方式です。処理量に合わせた一番効果のある方法を選択して改善しているのがいいですね。 

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棚箱がおいてありますがこの部分が床です。凄かったのは床に載せたお蒸米の量が自動的に測れるロードセルがついていたことです(5年前)。水分がどのくらい飛んだかが判るので大変便利だそうです。これは最新鋭ですね。

この棚箱をよく見てください。昔はこの3つの箱を一つにした大木は箱だったのを切ってネギ止めで小型の箱にしたそうです。 

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右側の換気扇の上についてあるのがロードセルの表示版です。

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部屋の温度コントロールはニクロム線でやっていた方式をプールの暖房で使っている防水型遠赤外線パネルヒータに変えていました。ニクロム線は老朽化すると発火の元になるので、安全上変えたそうです。今ではステンレスヒーターが主流になっているようですが、安価にするためのこの方式を選択したそうです。上の写真の左側の古臭いコントローラーはこの遠赤外線パネルヒーター用のコントローラーとして使っています。これは節約の精神ですね

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麹の温度測定は自作の温度計を使っていました。これなら400円で買えるそうです。それをステンレスのパイプにさしてエポキシで固めたものです 

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測定した温度をワイヤレスで外部から見る温度計(A&D)も1台5000円で買ったそうです。醸造機器メーカーものは高いので、その言いなりにならない気持ちがあふれています。

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出麹室の外には出来た麹を乾燥するために以前室の中で天幕式製麹装置を使ていました。これは使ったものの再利用ですね。でもこれが要ること自体が問題かもしれません。

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 <次は酒母室> 

酒母室でも新しい発見がありました。この小さな蔵にはもったいない広さの酒母室でした。 

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手前の緑のタンクは汲みかけ機で安く作ってもらったそうです。 

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酒母のタンクは200L~400Lですが、タンクの外側を包んでいる冷却用のカバーを非常に重いゴム製から非常に軽い冷却カバーをオリオン精工と協力して開発したものだそうです。オリオン精工から恒温マットとして販売されています。ゴム式に比べて冷却能力がないのでここのように小さなタンクには適しているとのことでした。 

最後にこの部屋である秘密兵器を見つけてしまいました。それは何だと思いますか。思いもかけない使い方をしているものです。 

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それは酒母用の暖気樽に生ビールのアルミ空き缶を使っていることでした。2Lと3Lのアルミ缶を使っていますが、軽くて伝熱性がいいので大変重宝しているそうですが、欠点もあるそうです。それは熱いお湯を入れるので、何回も使っていると表面がべこべこになりついには割れてしまうそうです。その時はみんなで宴会をすればいいですね。 

<仕込み室について> 

仕込み室は1階にあり。完全空調をすれば四季醸造も可能なような冷蔵庫の中のような造りの立派な建物でした。昔はこのフロアに6000Lのタンクがずらりと並んでいたそうですが、2つの大型タンクを残してすべて2000L~3000Lのタンクにしたそうです。 

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2基の大型タンクは洗浄用の水と仕込み用の水をためているタンクとして使っています。この蔵の井水はそばを流れる川の水より低いので、汚れていてとても洗浄水としても使えないそうです。 

洗浄水は市水をミクロフィルターと活性炭ろ過をして使っています。洗浄水も仕込み水も一度仕込み室の大きなタンクにためてから使っていますが、それは温度を安定化させるためだそうです。細かいところに気を使っているのですね 

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仕込み水は蔵から車で1時間くらいのところにある大岡(?)の湧き水をトラックで毎日取りに行っているようです。そのタンクが倉庫におかれていました。 

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使用している酵母は長野B、C、D、と協会7号酵母、9号酵母、14号酵母が主体のようですが、協会酵母はすべて泡あり酵母を使っているそうです。泡アリ酵母は一味違うので、泡アリ酵母を使うと泡なしには戻れないとのことでした。 

泡があふれださないようなプラスティックカバーです 

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泡消し器もありました。いずれも手造り感一杯の器具でしたね

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以上で仕込み室の紹介を終わります 

<搾り室> 

藪田を使用していますが、最近アルミ板からポリプピレン版に交換したそうですが、軽くはなって作業性は良くなったけどポリプロピレンの加工が悪く、漏れを起こしたりして、大変苦労したそうです。ポリプロピレン版は十分な注意が必要なようです。 

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この部屋に面白いものを見つけました。醪ポンプのようですが、神様、仏様、十九様と書いてあります。 

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岩手県のタクシードライバーを醸している喜久盛酒造の杜氏に今年の春まで貸していたもので、そのお礼にそのような張り紙をして返却されたものです。何かで蔵が醪ポンプが壊れて苦労しているのを知り、余っている1台を貸しだしたようです。優しい心遣いですね。 

<分析室> 

左の扉が分析室の入り口で正面の扉が検査室(税務署の方の控室)の扉です 

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分析室の中にはずらりと最新鋭と思われる分析機器がおかれていました。

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左から速アルコール測定装置、振動式密度計(日本酒度、重ボーメ度、比重など)、アミノ酸測定装置のようですが、一式買うと200万円もするそうですが、リースで購入したそうです。たぶん京都電子工業製ではないかな。そのほかにも光学顕微鏡、インキュベーター、オートクレーブ、クリーンベンチなど酵母培養のための設備も充実していました。この位の設備を持っている蔵は2000石クラスだと思います。凄いの一言です。 

<瓶詰ライン> 結構広いですね。

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<貯蔵庫>
 

ちゃんとした低温貯蔵庫は他にもあるのですが、ここは瓶詰したお酒を一時的に保管するところで、カーテンを閉めれば冷蔵庫(2℃、5℃)に早変わりする優れものです。 

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以上で蔵の紹介は終わります。 

見学させていただいての全体的な印象は生産高の割には設備は整っているし、敷地も余裕があるのに驚きました。以前は借金を返すためにできるだけ無駄な金を掛けないことを徹底してその結果色々なオリジナルな自家製の機器も生まれてきましたが、借金の返済めどが立ったあたりから、ちょっとお金を掛けるようになってきていると思います。その結果今の設備体制になっていると思います。 

昔と十九の味が変わった大きな理由は1つは綺麗な仕込み水を使ったこと、清掃を徹底した行ったことだと感じました。これから生産高を上げるための一番の問題点はやはり仕込み水の確保でしょう。これは難しいけど解決しなければならない問題です。

個人的には麹造りのちょっと疑問を感じました。普通は酒母と添えは総破精、留は突き破精、中はその間にするようで、そのためには浸漬、蒸からそれに合わせなければいけないのだと思うのですが、生産量が小さいだけに工夫が要りそうですね。僕にはどうすれば良いかはわかりません。

最後に長時間にわたって蔵の説明を丁寧にやっていただいた尾澤美由紀さんと横川敏隆さんに心より感謝いたします。

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2016年10月11日 (火)

松崎晴雄が語る9号酵母の誕生の歴史と功績

9月10日に日本酒ヒストリア 近現代史を探る①「吟醸酒質の確立-9号酵母と熊本の酒」というセミナー・ワークショップが西五反田の不動前にある料亭「水仙」で行われましたので、参加してきました。

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水仙は不動前駅から坂を右に上がったところにあり、写真のような店構えですが、中は立派な料亭の雰囲気のお店でした。この場所は熊本の瑞鷹さんの紹介のようです。

今回の企画はSAKE2020プロジェクトが行ったものですか、このプロジェクトはどんな活動体なのでしょうか。それは日本酒界の有志が集まり、地域や職域を超えて日本酒の振興に取り組むNPOに近い活動体で、2020年のオリンピックに海外からくるお客様をおもてなしできる日本酒環境を整えることを目標としているそうです。具体的には日本酒ビジネス関係者向けのセミナー活動、一般消費者向けのイベント、海外の人が日本酒を楽しむための活動(飲食店のメニューの翻訳など)を行うようです。 

この活動体のメンバーをご紹介しましょう 

代 表 者 : 日本酒輸出会会長  松崎 晴雄
           日本酒ジャーナリスト John Gauntner
 

実行委員 : 酒食ジャーナリスト   山本 洋
         岡永代表取締役    飯田 永介
         トモグラフ代表取締役 川越 智勇
         東京酒店代表取締役 柴田 亜希
 

この団体が発足したのは今年の3月のようです。4月にはサクラサケ、7月にはジョンゴントナーさんの英語の酒セミナーと一般向けの酒蔵ツーリズムとすでに3回のイベントがありましたが、今回は熊本で起きた地震の被災地を応援を含めて、熊本酵母のセミナーと熊本のお酒を飲むイベントとして緊急に開催されたようです。日本酒には長い歴史がありますが、今日の洗練された酒質の基礎を作ったのは近代以降ですので、それを歴史的な視点から紐解くセミナー・ワークショップをシリーズで展開していくセミナーの第1回目として9号酵母に着目して開かれたものです。 

日本酒ヒストリア 近現代史を探る①「吟醸酒質の確立-9号酵母と熊本の酒」は酒類ジャーナリスト・コンサルタントとしても著名な松崎晴雄さんがお話していただきました。会場はこんな雰囲気のこじんまりしているけど、和風テーブル席の格式のある部屋で行われました。

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奥で説明されている方が松崎さんです。もうちょっとアップしましょうね

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こんな感じで約1時間講演をいただきました。その内容について僕なりの整理してまとめてみましたので、紹介いたします。 

1.熊本の酒づくりの原点 

熊本は温暖な気候のところなので、清酒造りが難しいということで江戸時代の細川藩の時には清酒造りは禁止されており、赤酒しか認められていなかったのです。赤酒の製造工程は清酒とほとんど変わらないのですが、保存性を高めるために醪に木灰を入れて、酸性からアルカリ性に変えるために、糖やアミノ酸が反応し赤褐色になるので赤酒と呼ばれました。赤酒は甘めで独特の麹臭がするので今では日本酒としてよりみりんの代わりの高級な料理酒として使われています。料理に用いた場合、肉類・魚類などのたんぱく質を固めず、(身をしめず)ふっくらとした仕上がりにすることができるそうです。 

明治になって清酒の製造が許されましたが、永年清酒の製造をしてこなかったので、なかなかおいしい清酒を作ることができなかったそうです。この環境を変えたのが明治39年に熊本税務監督局の鑑定部長に就任された野白金一さんです。ここで野白さんは熊本県の蔵の酒造りの技術指導をいたしました。明治42年に熊本県酒造組合は県の酒造業者の出資で、酒造技術向上のために熊本県酒造研究所を設立し、初代所長として野白さんを迎え入れることにしたのですが、これが熊本県の清酒の発展の始まりとなったといわれています。この研究所は最初は瑞鷹の工場の一部にあったようですが大正7年に株式会社として現在の地(熊本駅の近くに移転しています。野白さんはのちにこの会社の社長になっています。 

2.野白さんの功績 

野白さんは当時は市販されていない高級酒の吟醸造りの発展に貢献しました。具体的には空調設備の整っていないころ麹室の温度湿度を調節するために野白式天窓を考案したり、温暖な熊本でも吟醸造りが可能となる様々な技法を開発しています。その結果昭和5年には瑞鷹の酒が全国酒類品評会で全国1位を獲得し、全国から注目されるようになり、野白さんは「吟醸酒の神様」といわれるようになります。 

そして昭和28年に、のちに協会9号として領布されることになる吟醸用「熊本酵母」の開発に成功します。この熊本酵母は熊本県酒造研究所の蔵から抽出培養されたもので、蔵で使うほか、交流のある蔵に提供して使われていたのですが、評判が広がり全国から協会として広く領布してほしいとの要請が来たことから、昭和43年に日本醸造協会から9号酵母として領布が始まり、吟醸酵母として広く使われるようになりました。 

そうはいっても吟醸酒は広く市販されているお酒ではなく。品評会用の高級な酒のイメージが強いのですが、この吟醸酒造りの技術がもとになり、清酒全体の酒造技術向上に貢献した功績が大きかったと思われます。 

3.吟醸ブームにおける9号酵母の役割 

吟醸酒が広まってきたのはそんなに古いことではなく、昭和の終わりごろといわれています。その前は大手蔵から大量に安価なお酒が出回った時代であり、吟醸酒があまり注目されなかったのですが、オイルショックで景気が下向きになったころから地方のおいしいお酒を飲みたいという動きが出てきた頃(昭和60年すぎ)から吟醸酒が注目されるようになったようです。 

YK35という言葉を知っていますか。原料の酒米には山田錦(Y)を、酵母には協会9号(K)を、精米歩合を35%まで高めれば(35)、良い酒ができて鑑評会でも金賞が取れる、という公式めいた言葉を意味します。この言葉は昭和60年ころに広島で生まれたといわれていますが、協会9号酵母が吟醸酒に適した酵母ということをはっきりと言っているところが凄いですね。 

当時全国の吟醸酒が協会9号を使っていたかというとそうではありません。東日本では茨城県で生まれた協会10号が広く使われて、西日本では協会9号が使われていて全国を2分していたようです。それが平成になって山形県の蔵が協会9号を使って、協会10号より香りがあって味わいの濃いお酒が金賞をとっことをきっかけに、協会9号が全国で広く使われるようになったようです。 

今では9号より香りの高い18号酵母が現れたり、各県が独自に開発している新しい酵母が現れるなど多様化していますが、9号酵母が吟醸酒酵母として魚介を引っ張て来ていたことは間違いないことだそうです。 

4.熊本酵母と9号酵母と9号系酵母の違い 

熊本酵母は熊本県酒造研究所の蔵から抽出した酵母であり、それを協会で培養したものが9号酵母なので、同じものですが全く同じものとは言えません。それは培養を重ねているうちに少しづつ変異するからです。協会9号が出た後も熊本県酒造研究所は独自に培養を続けており、その中から、熊本1号(KA-1)や熊本4号(KA-4)などを領布しています 

9号系酵母というのがありますが、これは熊本県酒造研究所からもらい受けた熊本酵母を各県で独自に培養をした酵母とか、購入した9号酵母を蔵で培養して保存してあるような酵母を総称して9号系酵母と呼んでいます。 

また、9号酵母から派生した酵母は色々あるようで、例えば金沢酵母の協会14号は9酵母から生まれていて、今人気の酵母である協会18号酵母も9号酵母から生まれれていると言われています。その面でも9号酵母は酵母を代表する優良酵母といえます。協会14号酵母は 酢酸イソアミル系の香りのする酵母で、協会18号はカプロン酸エチルの香りが高い酵母ですが、それが同じ9号酵母からできているのは不思議な気がします。培養選別をしていくと違ったものになるのでしょうね。

九州のお酒は全部が9号酵母ではありませんが、酸があって厚みがあり、苦みがあって奥行きのある味わいは熊本酵母や9号酵母の影響が多いのは間違いないそうです。 

5.最後に 

近代の酒造史に果たした熊本県酒造研究所と熊本酵母は日本酒遺産にしたいと思っていて、今後そうなるように働きかけるそうです。また、日本酒ヒストリアの第2弾は広島を取り上げるそうですので、楽しみですね。個人的に松崎さんにお聞きしたら、6号酵母や7号酵母についても取り上げてみたいと言われていました。

以上で松崎さんの講演内容の紹介は終わりますが

今年の4月に起きた熊本大地震で熊本県の多くの蔵が大きな被害を受けたことは知っているでしょうが、熊本県酒造研究所が持っている熊本酵母はどうなったのでしょうか。そのことについて地震の後に蔵を訪れたダンチュウの方からの説明がありました。

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<熊本大地震で熊本酵母はどうなったのか>

蔵は煙突が新幹線側に倒れるな大きな被害がありましたが、熊本酵母は無事だったそうです。それは野白先生の時代からどんなことがあっても酵母は守るということが伝えられていて、2重3重の保護がされていたからだそうです。具体的には酵母を冷凍保存している冷蔵庫には停電時の自家発電装置がついていること、それがだめになった時のために乾燥保存をしていたそうです 

それだけでなく、酵母の保存してある場所は煙突が倒れ来ても影響のない場所にレイアウトしなおしたり、酵母の培養室の冷蔵庫は頻繁に開け閉めするものなので作業上大変不便になるのにもかかわらず、地震時に冷蔵庫の扉が勝手にあかないようなフックを付けるなど酵母を守ろうという心配りが社員全員に行き届いていたそうです。だからこそ酵母が守られていたのですね・・・・ ありがとうございます。

<熊本のお酒の試飲>

このあと別部屋で熊本県の9号酵母のお酒をいろいろいただきましたが、、お酒の個別の説明はありませんでしたので、写真だけの紹介をさせていただきます。

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左から 千代の園酒造 大吟醸 山田錦、純米吟醸 神力55
            瑞鷹 東肥の赤酒、 龍力大吟醸 米のささやき

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左から
香露 特別純米 神力60、 瑞鷹 純米大吟醸 銀 山田錦48
瑞鷹 純米吟醸 YK-55、 純米酒 菜々 、特別純米 レイホウ

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左から 亀萬酒造 野白金一式純米酒、 純米吟醸 萬坊

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左から 香露 大吟醸 山田錦35 、吟醸酒

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お酒の批評はしませんが、最後写真の香露の大吟醸の角瓶は僕が昔、大吟醸とはこういうお酒を言うのだと教えられたお酒でした。その時の印象はとても薫り高いいかにも大吟醸というお酒でしたが、今回久しぶりに飲んだら、香りはずっと抑え気味ですが、酸味も感じられるが、バランスの良いお酒になっていたので驚きました。香露の酵母も時代によって変わて来たのか、造りが違うのかわかりませんが変化していることは確かだと思います。

今回飲んだお酒を統一して説明するのは難しいけど、ざっくり言えば、ある程度の幅があって、スッと広がるちょっと野太い感じがするお酒ではないかなと思いました。

この後このお店の懐石料理を食べながらの懇親会に入りましたが、これについては省略させていただきます

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2016年10月 5日 (水)

インフィニット日本酒中級コース第9回(化学的根拠)

多く世界中の醸造酒の中で日本酒ほど化学的根拠に基づいて醸造している酒は無いということを知っている人はどの位いるのでしょうか。醸造酒で最も有名なお酒は何と言ってもワインですね。ワインは化学的根拠に基づいて造られていないのでょうか。決してそうではありませんが、日本酒ほどではないことは事実のようです。それはワインは日本酒と違って醸造プロセスが簡単であまり化学的な検討をする必要がないからだそうです。でも最近はそれが見直されるようになってきており、例えば美味しいワインを造るためには、適度なアミノ酸を含ませることが良いことが解ってきていますが、元々ブドウにはアミノ酸はほとんど含まれていません。それではどうやるのでしょうか。 

ブドウの場合アミノ酸は土壌の栄養分から取るしかありません。それでは土壌にアミノ酸の元になる窒素成分を増やせば良いのでしょうか。そんなに単純ではありません。ぶどう畑は肥えた土地は不向きで、むしろ石などが一杯ある痩せた土地が向いているそうです。それは栄養分が多いとぶどうの実に養分が行かずに茎に行って良いブドウができないからだそうです。ですから、ただ 窒素肥料をあげれば良いわけではありません。窒素を入れすぎると香りも悪くなるそうです。これを解決するには農業化学に関した専門知識が必要なようです。 最近はそれを専門にやっているプロ集団がいるようです。

日本酒が化学的根拠に基づいてお酒が造られているというのはどういうことでしょうか。それかこれまでにこの教室で学んできたそのものです。これを復習するために前回示した図をもう1回お見せします。

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お米にはデンプンと蛋白質と脂質が含まれていて、酒造好適米の周りには蛋白質や脂質 が多く、心白には蛋白質や脂質が少ないので、お米を精米していくと蛋白質や脂質は少なくなり、デンプンが多くなります。このデンプンが麹菌の酵素活性によりブドウ糖になり、それが酵母の酵素活性により、ピルビン酸、アセトアルデヒドを経てアルコールと炭酸ガスになります。それと同時にピルビン酸から色々な有機酸(乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸など)を作るとともにお酒の香りの成分のカプロン酸エチルをつくりますが、その出来かたは酵母の種類や醪の温度管理によって変化してきます。 

一方蛋白質は麹菌の酵素力によりアミノ酸になり、このアミノ酸が酵母の酵素力により、イソアミルアルコールのような高級(炭素数の多い)アルコールを作るので、油っぽい香りが出てくると同時にアミノ酸によるうまみや苦がでるので、コクのあるお酒になります。精米度が高いほど蛋白質は減ってくるので、高級アルコールの香りが減りアミノ酸も減ってくるのでうまみ成分より甘み成分が目立ってきます。また酵母によっては高級アルコールから酢酸イソアミルなどの香り成分を出すので、カプロン酸エチルとは違った香りがするお酒になるようです。酵母によりどんな香りの成分ができ易いかは下の図を見てください。

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脂質はもともとお米の中には少ないので、50%以上精米するとほとんどゼロになりますが、精米度が悪いと麹菌の酵素力により脂肪酸になり、醪の中で酵母の酵素力により各種脂肪酸エステルにあります。これは高級アルコールに近い香りを持つので、なかなか見分けにくいそうですし、一般的には精米度が80-90%の場合だけ考えればいいようです。 

以上のように化学的成分が味や香りを決めているようで、その大きな要素はアルコール濃度、加水量、アセトアルデヒドの濃度、酸の種類と濃度、香り成分の濃度、アミノ酸の種類と濃度、高級アルコールの種類と濃度などが挙げられますので、この化学的成分をどのようにコントロールするかで目的の味のお酒を造ることができます。これが日本酒が化学的根拠に基づいて作られるという理由です。 

実際にこれをどのようにして実現するかは、そう簡単なものではありません。例えば麹を作る過程では麹の温度、湿度、破精具合によって変わるので、麹がもつ酵素のアミラーゼ、グル子アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼの酵素力をどのように引き出すかは、蔵人の経験に頼るしかありません。また醪の発酵も麹が持つ酵素力と酵母の持つ酵素力を同時に使いながら発酵させる平行複発酵という複雑なプロセスを使うので、それをコントロールするには微妙な温度管理が必要となるようです。 

そのほか火入れとか活性炭ろ過などをすることがあり、それによっても味が変わります。火入れをしない生酒はアセトアルデヒドが残っているので麹の甘さと清涼感のある香りを楽しめますが、火入れするアセトアルデヒドは揮発し、アミノカルボニル反応でフラノンが発生するので、味は落ち着いてきますが、老香のような香りが出てきます。 

活性炭ろ過はフラノン類は取り除きますが、高級アルコールは取り除けません。また乳酸はとれませんが、他の酸はかなり取れます。香りは一部捕れますが、カプやイソの香りは取れません。ですから活性炭は使う量によ取り除く量をコントロールできるので、使用する側の技術力が問われます。  

そのほか醸造用アルコールの添加、熟成の仕方によっても変わってきますが、これについての化学的研究はまだ十分解析されたとは言えないようです。味や香りを決めている成分がわかってもそれをどのようにコントルールしてお酒を造るのでしょうか

黒龍酒造の畑山杜氏のお話では、お酒を造る場合まずお酒のイメージを考えどのようなお酒にするかをきめます(例えば軽やかに飲みやすいけど、味わいはそこそこあって後味が切れるなど)。その次にそれに合うためにはどの化学的成分どのくらいのにするかを考えます。そのあとに醸造プロセスの各工程をどうしていくかを経験に基づいて決めていくそうですす。ここが蔵の技術であり、ノウハウとなっているところでしょう。このように醸造している蔵が多くなってきている一方、まだそうしていない(そうできない)蔵が多いことも事実のようです。 

最近外国のワインメーカーの人が日本の化学的根拠に基づいたお酒造りを学びたい人が多くなってきているそうで、僕の日本酒の先生である菅田先生はもともとワインのソムリエで、日本酒を勉強してるうちに、日本酒がいかに化学的根拠に基づいて醸造されているかを知るようになって、ワインに対しても深く考えられるようになったそうです。 

先生にはちょっと心配があるそうで、日本酒が化学的根拠に基づいて作られるだけに、外国での日本酒造りも飛躍的に伸びる可能性を持っていることだそうです。何年先のことかどうかはわかりませんが、日本の本家が真に化学的根拠をもって酒造りをしていかないと外国の人たちに日本のお酒を見下される時が来ることを危惧しているそうです。化学的根拠に基づいて酒造りをしているといっても、まだまだ未知の部分が多く残されています。だからこそ、今からもっと努力してもっと良いお酒造りを研究して日本の酒造りの立場を確固たるものにする必要があると言っておられました。 

もう一つ言っておられたことは、日本酒メーカーと日本酒の飲み手が同じ土俵で意見交換ができるようにするためには、お酒の味わいに対して共通の表現ができるようにする必要があり、それは化学低根拠に基づいている表現をすることで可能ということでした。その表現の仕方の例を少し述べておきます。 

・ アセトアルデヒドが多い → 清涼感がある、青々しい 

・ カプロン酸エチルの香り → メロン、リンゴのフルーティ香り 

・ 酢酸イソアミルの香り → バナナ、洋ナシのような華やかな香り 

・ 酢酸エチルの香り → セメダインの香り 

・ 乳酸の香りが強い → ヨーグルト、バターの香り 

・ 高級アルコールが多い → 厚みがあってふくよか 油脂臭あり 

・ アミノ酸どが高い → 甘み、旨み、苦みがありコクがある 

・ フラノンが多い → ナッツ、カラメル、醤油、紹興酒の香り 

・ アルコール濃度が上がる →甘みと苦みが増える

といった感じでしょうか。専門的すぎるけど僕なんかは化学的用語の方が判りやすい気がしますが、一般的ではないのでしょうね 

おまけ:旨みと甘さの違いはどうすれば判るのでしょうか 

甘さと酸はお酒を口に含んだ時からすぐに感じますが、旨みはワンクッション遅れて中ほどから感じると同時に苦みも感じはじめますこの旨みと苦みが味の厚みを造るのでボディのあるお酒になるのです。簡単に言えば甘みは最初に感じ、旨みは中ほどから感じるということでよさそうでが連続で来ますので、単純な甘みは甘さで、複雑な甘みで苦みを感じれば旨さということのようです。 

また、酸はアフターまで続くことが多いので、お酒の切れとつながります。でも切れは酸味だけでは出てこないで、苦みの存在が必要なようです。苦みが多すぎるとはアフターの余韻として残ってしまいます。この辺のバランスが重要なようです。

それではいつものように試飲をして化学的根拠を理解していきます

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1.越乃寒梅 超特選大吟醸 山田錦30%精米 
  Alc度16.6、日本酒度+5、酸度-、AA度- 酵母-
 

2.醴泉 純米吟醸 山田錦50%精米 
  Alc度15-16、日本酒度+2、酸度1.5、AA度1.2、酵母熊本9号
 

3.想天坊 純米吟醸 高嶺錦58%精米  
  Alc度15.5、日本酒度±0、酸度1.4、AA度-、酵母-
 

4.加茂金秀 特別純米 雄町、八反錦50-60%精米 原酒
  Alc度13、日本酒度-、酸度-、AA度-、酵母-

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それでは早速菅田先生がコメントしていただいた見解をご紹介します

外観で透明感を見ると1.3.2.4の順で、2は精米が58%でも透明なので、明らかに炭素ろ過をしています。1は精米度が30%なので炭素ろ過しないでも透明なことがありえます。

1.越乃寒梅 超特選大吟醸 山田錦30%精米  

香りがとてもシンプル。エタノール香と乳酸香がメイン。これは30%も精米しているからだと思われます。カプロン酸の香りも少ないので、少し熟成しているかもしれないと思われます。でもフラノンの香りがほとんどしないので活性炭ろ過しているかもしれません。 

味を見てみます。少し熟成の香りがします。甘みが少しあるけどこれはフラノンからの甘みもふくまれます。またピリピリしたアルコール感があるけどボリュウム感はありません。これはアルコール添加したためアルコール添加により味が薄まっているからと思われます。 

酵母はカプロン酸エチルの香りはしないけど、その前駆体のカプロン酸の樹脂香りがするのでカプ系の酵母であることがわかるそうです 

2.醴泉 純米吟醸 山田錦50%精米 

香りが1番より多いようです。これは高級アルコールからきていると思われます。酢酸イソアミルと酢酸エチルの香りとツンとした乳酸香も感じます。酵母は熊本酵母なのでイソ系の酵母です。 アルコール度が15.5なので加水もしているはずです。

飲んでみるとアフターが酸っぱい。軽やかな酸でした。アタックに程よい甘みと旨みが軽いながら広がってきますが、これは日本酒度+2とアミノ酸1.2のバランスからきていますが、加水していても酸度が1.5まであるので少し酸っぱく感じます。蔵としては夏酒として売りたかったのかもしれません。アルコール感アルコール度数が1度違うとずいぶん違うもので、このお酒のアルコール感は1番のお酒よりより弱いことはよくわかります。 

3.想天坊 純米吟醸 高嶺錦58%精米 

活性炭ろ過しているいるので、香りはシンプルですが、高級アルコールの香りだけが見だってきます。これが活性炭ろ過の特徴です。 高級アルコールは多少苦みがあるだけで味わいにはあまり影響しないそうです。

飲んでみると、アタックから中盤までアマ旨い苦いがずっと伸びてきます。ずっとアフターまで引っ張ているのがアミノ酸です。この伸びは 精米度が60%くらいにならないと出てこないし、60%精米はこんなバランスになることが多いようです。

4.加茂金秀 特別純米 雄町、八反錦50-60%精米 原酒 

13%のアルコールということは水の量が多いということなので、酸が出てきやすい。原酒なので甘みが少し残っているはずなので、甘酸っぱい感じが予想されます。 

香りは淡くて乳酸香を感じます。アルデヒドの青臭さがあるので、その強さから1回火入れと思われます。これがあるとカプ系かイソ系かはわかりにくいが、酢酸エチルの香りが少し残っているのでイソ系の酵母と思われます。 

飲んでみると甘さを感じて酸度は1.3くらいあるように思われます。軽くて淡いけどアフターに伸びがあるので、夏酒としてはいいのかもしれません。酸とのバランスから日本酒度は-5くらいと思われます。でもアルコール度数が低いと評価が難しくなります。

以上が菅田先生が試飲したお酒の印象ですが、試飲することによりここまでわかるのですね。僕にはとても無理です。少しでもそのレベルに近づきたいものですね。 

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