蔵見学で判った鶴齢の味の秘密
2月の連休の初日、東京は40年ぶりの大雪の日に鶴齢・青木酒造を訪ねました。この日の夕方に鶴岡に行く予定があったので、その前にちょっとだけ見学しようということで、取締役営業部長の阿部勉さんにお願いしたものです。阿部さんとは去年の純米酒大賞2013の会でお会いしたばかりなので、快く引き受けていただき感謝しております。
青木酒造は米どころで有名な南魚沼市にあり、JRの塩沢駅から歩いて5分の市街地にあります。この街は旧三国街道の宿場町として栄えたところで、雪国の歴史と文化の街を復旧させようと1998年から検討を進め、2009年に完成したそうです。江戸時代の雪の書「北越雪譜」を書いた鈴木牧之(ぼくし)にちなんで、三国街道塩沢宿「牧之(ぼくし)通り」と呼ばれてます。通りから電柱をなくし、白壁の木造建屋をベースにし、雪国の町の雁木造りのアーケードが特徴です。青木酒造のある場所からみた街の景観です。
平成23年度の都市景観大賞を受賞しています。雁木が良くわかる写真をお見せします。
こんな感じで雁木造りのアーケードがあります。雁木と言えば船着き場の階段を思い出す人が多いけれど、雪国の商店街で見られる雪よけの屋根の意味もあります。ですから雪が降っても傘なしで歩けます。
青木酒造はこの牧之通りの入り口にありますが、この通りを造る時に前あった母屋をすべて壊して新しく新築したそうです。下の写真が蔵の表玄関です。
中に入ると試飲できるコーナーと応接間があります。クリックすると大きくなりますのでじっくり見たい人はクリックしてください。
蔵見学の案内は阿部さんにやっていただきました。
青木酒造は創業から300年の歴史を持つ老舗蔵です。現在社長は12代目の青木貴史さんで、杜氏は今井隆博さんです。今井さんは3年前から前の杜氏に代わって造りをやっておられます。蔵見学の途中でお会いしたので、写真をパチリ。
この蔵は生産高は約3000石で、新潟では中堅どころでしょうか。仕込み水は超軟水と軟水の2つを使い分けているそうです。原料米は山田錦、五百万石、美山錦、越淡麗、雄町の5種類ですが、越淡麗の使用量は新潟県で一番多く使用しているとのこと、雄町は去年は手に入らなかったけど、今年は契約栽培で赤磐雄町と備前雄町を30俵ずつ購入できたそうです。楽しみですね。でも山田錦は予定量が入らず苦労しているそうです。
従業員は全員社員で、造りは9名で行い、2人が休みを取るように回しているので、通常は7人だそうです。造りは甑たおしが5月半ばと早いけど、初洗いは8月末と結構早く、造っていない時期は年間3カ月なので、3季醸造といえます。町の中の蔵なので敷地が狭く、これまで何とか増設で対応してきたそうですが、これからは増産は製造期間を伸ばすしかないかもしれないそうです。
それでは蔵見学をして特徴的だったところをお見せします。
<洗米と蒸し>
洗米は流水の洗米機で米ぬかを取り、普通酒は浸漬機で、特定名称酒は籠の手洗いで限定吸水管理を行うそうです。蒸は和釜で行い蒸上がったお米は放冷機で冷却した後、冷却した空気を使ってビニールチューブで搬送しながらさらに冷却をするそうです。下の写真が放冷機から蒸米を搬送するポンプです。黄色のところにビニールチューブをつなぐそうです。
<麹造り>
麹室は外からだけの見学でしたが、室は3つあるそうです。見せていただいたのは普通酒用の麹室でした。奥のビニール向こうは麹1日目用に使っている室で、手前の部屋は二日目以降の普通酒用として使い、特定名称酒用は別の室に送るようです。
この室のほかにハクヨーせいの最新の自動製麹機も導入しているそうですが、きめ細かい温度管理ができるけど、人によるかき混ぜを行うなど、機械任せにはしないそうです。
<酒母室>
酒母室だけは1年中、空調制御して温度を一定にしているそうです。この蔵で使っている酵母は7号、9号、14号、18号、秋田酵母、小川酵母など色々使い分けているそうです。
<仕込み>
仕込みは1トン仕込みと2,2トン仕込みをしているそうです。昔はすべて開放タンクでしたが、今では空気との触れ合いの少ない密閉型に変更したそうです。3段仕込みの一番最初の初添えは普通酒であっても大吟醸であっても100%下の写真の小さなタンクを使うそうです。このやり方は掃除や移送等の手間はかかるけど、丁寧な仕込みを徹底しているようです。
特定名称酒はほとんど3000Lの1トン仕込みをしています。このタンクを毎年増設していき、今では21タンクがあります。タンクの首の部分だけが出ているフロアで作業できるようになっています。すべてのタンクが密閉型のサーマルタンクです。
タンクには温度を正確に測定できる温度計がついています。
しかもこの温度計の誤差を1本1本検定をして、実際の温度が表示温度と何度違うかを示してありました。0.2度の誤差も許さない管理をしているそうです。下の写真が温度コントローラーですが、詳しく見たい方はクリックして拡大してみてください。
普通酒用のタンクは9000Lの2.2トン仕込みのタンクで別の部屋にありました。ここも作業用フロアが完備していました。この部屋には音楽が流れていました。
僕が行った時は櫂入れを行う時の掛け声の歌が流れていましたが、たまにはクラシック音楽も流れるそうです。ボーズ製のスピーカーです。
<火入れ>
以前は火入れでお酒が崩れることがあったので、パストライザーを導入して火入れの安定化に力を入れているようです。
最後にちょっとすごいものを見つけました。それはチタン製ボトルで、高級酒を火入れと急冷をするためのもので、軽くて伝熱が良く耐久性があるのでチタン製なのですが、これは高いよ。
どの蔵にもあるのかもしれませんが、従業員のための賄いの部屋がありました。これは青木社長の思いれで造られたものだそうです。
以上で蔵の紹介は終わりますが、基本的には少量生産を大事にしながら、お金をかけるところにはきちっと投資をして、機械任せにしないで人が手をかけなければいけないところは手抜きをしていない様子がわかりました。阿部さんのお話では他の蔵の良いところを取り入れながら、独自の造りを目指していくそうです。
全体に言えることは蔵がきれいで清潔な感じがしました。細かいところのへの気配りが、安定した味を作れる秘訣かもしれません。阿部さんのお写真を載せておきます。
蔵見学の最後に試飲をさせていただきましたが、この場所では特定の酒販店しか出していない生酒などは試飲できないことがわかりました。そこで蔵の近くにある酒販店を賞j解していただき、以下のお酒を買うことができました。
このお店が地酒販売の金沢屋です。鶴齢のお酒がずらりと取りそろえてありました。特約酒販店に出している生酒には、特別純米(精米度55%)には山田錦、五百万石、美山錦、越淡麗があるのですが、残念ながら山田錦は売り切れていたので、純米吟醸(50%)を選んで購入しました。
家に宅急便で届いたお酒の写真を付けておきます。すべてのお酒が新聞紙でくるんで届けられましたので、写真を撮るために仕方がなくはがしてしまいましたが、24BYも含んでいるので、早く飲まなくてはいけないね。
以上で鶴齢の造りの紹介は終わりますが、鶴齢のお酒を購入して蕎麦屋で昼食を取った後、喫茶店でコーヒーを飲もうとOHGIYA CAFEEに入ったら、これから旅先で一緒になるメンバーと鉢合わせ。こんな事もあるのですね 。同じ蔵の見学でしたそうですが、雪のため電車が遅れて、蔵で僕と会うことはなかったようです。
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